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上野誠の万葉歌ごよみ
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上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサープロフィール
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2024年3月23日 放送分】
【2024年3月16日 放送分】
【2024年3月9日 放送分】
【2024年3月2日 放送分】
【2024年2月24日 放送分】
【2024年2月17日 放送分】
【2024年2月10日 放送分】
【2024年2月3日 放送分】
【2024年1月27日 放送分】
【2024年1月20日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年3月23日 放送分】
2024年3月23日
【巻】…10・1844

【歌】…冬過ぎて春来(きた)るらし 朝日さす春日(かすが)の山に 霞たなびく

【訳】…冬が過ぎて春がやって来たらしい、朝日さす春日の山に霞がたなびいているので

【解】…季節の先駆けや名残を歌うのが万葉歌の特徴のひとつです。この歌は、冬と春の微妙な変化の中で詠まれたのでしょう。作者は、「春来るらし」と歌っていますが、この「らし」は、根拠のある推定を表すもので、春が来たと言う理由が歌の後半に出てきます。それが、春日山の霞。平城京の東にある春日山から太陽が昇り、霞がたなびいているのが見えたのでしょう。霞は春の象徴とされていましたから、春日山の光景を見て「ああ、春がやってきた」と作者は確信したのです。ちなみに当時は、春は東からやって来るとされていました。

上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年3月16日 放送分】
2024年3月16日
【巻】…10・1842

【歌】…雪をおきて梅をな恋ひそ あしひきの山片付(かたつ)きて家居(いえゐ)せる君

【訳】…雪をおいて梅を恋しがらないでくださいね、山際の方にいて家ごもりしているあなた

【解】…今回は、雪と梅のせめぎあいの歌。季節のうつろいとともに、主役も交代していきます。この歌では、そろそろ梅が主役になろうとしている頃でしょうか。そんな中で、山際に家を構えている人に「雪をさしおいて梅の花ばかり恋しがらないで」と呼びかけています。山際の日陰にはまだ雪が少し残っている状況なのか、歌の作者は、春に梅は当然だけれど、春の雪も風流だと伝えたいのでしょう。いわば、なごり雪の美といったところでしょうか。旬のものだけ注目するのではなく、うつりかわりの中に美を感じることも大切なのかもしれません。

今年も恒例の「ラジオウォーク」を放送いたします。
2024年3月23日(土)午後1時50分〜5時25分の生放送。
今回は、奈良の世界遺産を訪ねる旅です。現地でのウォークはありませんが、東大寺、興福寺、春日大社、春日大社原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡といった「古都奈良の文化財」について、スタジオでじっくり解説いたします。お聞きいただいた後に、皆さんのペースで現地をウォークいただける仕組みも考えておりますので、是非、お聴きください!


上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年3月9日 放送分】
2024年3月9日
【巻】…10・1836

【歌】…風交(まじ)り雪は降りつつ しかすがに 霞たなびき春さりにけり

【訳】…風交じり雪は降りながら、そうではあるけれど、霞がたなびいて春がやって来た

【解】…季節を象徴するものとして、冬の代表は雪。そして春は、春霞がそのひとつです。歌では、風が交じって雪が降るという、真冬を想起するような光景から始まりますが、次に登場するのが霞。春の代表ともいえる霞が雪の向こうに見えているという、アンバランスとも言える描写が、まさに季節の移ろいを体感させます。
このように、小さな変化が積み重なっていって、季節はバトンタッチしていくんですね。

ところで、今年も恒例の「ラジオウォーク」を放送いたします。
2024年3月23日(土)午後1時50分〜5時25分の生放送。
今回は、奈良の世界遺産を訪ねる旅です。現地でのウォークはありませんが、
東大寺、興福寺、春日大社、春日大社原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡といった「古都奈良の文化財」について、スタジオでじっくり解説いたします。お聞きいただいた後に、皆さんのペースで現地をウォークいただける仕組みも考えておりますので、是非、お聴きください!


上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年3月2日 放送分】
2024年3月2日
【巻】…9・1779

【歌】…命をし真幸(まさき)くもがも 名欲山(なほりやま)岩踏(いはふ)み平(なら)し またまたも来(こ)む

【訳】…命は無事であって欲しい、名欲山の岩を踏みつけて平らになるほど何度も何度もやって来ますよ

【解】…前回は、藤井連の転任の宴席で女性が詠んだ歌をご紹介しました。当時の役人は、転任後は、同じ赴任地に戻ってくることはほぼありませんでした。ですので、恋人であったであろう女性にとっては、永遠の別れになります。「明日から私は恋しく思うでしょうが、あなたは、名欲山の岩が平らになるくらい勢いよく踏みつけて、都に意気揚々と向かうのでしょうね」と、少しすねた気持ちがこもった歌を贈りますが、それに藤井連が返したのがこの歌でした。山越えは命がけだったので、もし命があれば、自分は何度も何度もあなたの元へ帰ってきますよ、名欲山の岩が平らになるくらい・・という内容です。女性が名欲山の岩を持ち出してきたので、それを誇張してユーモアを含めて返したのでしょう。この歌を受けて女性は、少しは気を取り直したのでしょうか。

上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年2月24日 放送分】
2024年2月24日
【巻】…9・1778

【歌】…明日よりはわれは恋ひむな 名欲山(なほりやま)岩踏(いわふ)み平(なら)し 君が越え去(い)なば

【訳】…明日からは私は恋しく思うでしょう、名欲山の岩を踏みつけて平らにするほどに、あなたが越えていったならば

【解】…前回は、石川大夫が転任するにあたって作られた歌でしたが、今回は藤井連(ふじいのむらじ)の転任の際に詠まれた歌。藤井連は任地替えで上京することになり、それを祝う宴席に呼ばれた女性がこの歌を作りました。名欲山は、現在のどの山かは不明ですが、京に行くときには必ず通った場所のようで、女性は「明日からは、あなたのことを恋しく思うのでしょうね」と寂しさを綴る一方で、「あなたは、名欲山の岩を平らになるくらい勢いよく踏みつけて、都に意気揚々と向かうのでしょうね」と歌っています。「あなたは、えらくなるから気分が良くていいでしょうけれど、私の切ない気持ちをわかっているのですか?」と、ちょっとすねたニュアンスが歌から感じられます。