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上野誠の万葉歌ごよみ
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上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2023年12月2日 放送分】
【2023年11月25日 放送分】
【2023年11月18日 放送分】
【2023年11月11日 放送分】
【2023年11月4日 放送分】
【2023年10月28日 放送分】
【2023年10月21日 放送分】
【2023年10月14日 放送分】
【2023年10月7日 放送分】
【2023年9月30日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2023年12月2日 放送分】
2023年12月2日
【巻】…9・1691

【歌】…旅なれば夜中をさして照る月の 高島山に隠(かく)らく惜しも

【訳】…旅であるので、この夜中をさして照る月が、高島山に隠れてゆくのが惜しい

【解】…滋賀県の高島地域で作った歌。「夜中をさして」というのは、月が最も高い位置にくる時間を真夜中として、そこを目指して月が動いていることを表現しています。
    その後は、月が下って行ってやがて高島山に隠れてしまうのが惜しいと作者は歌っているのです。その作者は「旅なれば」、つまり旅の途中です。月明りをたよりに夜通し歩きながら詠んでいるのか、それとも、宿に落ち着いて月を見ながら詠んでいるのかは分かりません。いずれにしても、旅先でこれほど長い時間にわたって月を見るというのは、現代では、なかなかないことでしょう。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2023年11月25日 放送分】
2023年11月25日
【巻】…9・1688

【歌】…あぶり干す人もあれやも 濡衣(ぬれきぬ)を家にはやらな 旅のしるしに

【訳】…あぶって干してくれる人も私にはいない。濡衣を家に送ろうではないか、旅のしるしとして

【解】…名木川(なぎがわ)で作った歌2首のうちの1首目です。ちなみに名木川という川が、現在のどの川のことかはよく分かっていません。あぶり干すとは、火を焚いて、その熱で急いで乾かすこと。古代では、着替えがないので、雨に濡れたりするとすぐに乾かさないと命の危険を招くことがあります。歌では、乾かしてくれる人が今ここにはいないので、濡れた衣を妻がいる家に送ろうと歌っているのですが、実際には送れるはずもありません。作者は、このように歌うことで、妻に会いたいという気持ちを表現しているのでしょう。いわば、妻恋歌ですね。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2023年11月18日 放送分】
2023年11月18日
【巻】…9・1687

【歌】…白鳥(しらとり)の鷺坂山(さぎさかやま)の松蔭に 宿りて行かな 夜もふけ行くを

【訳】…鷺坂山の松蔭に今日は宿ってゆこう、夜もふけてきた

【解】…旅情は、郷愁であったり、人恋しさであったり、人生の迷いであったりと、憂いの気持ちにつながることが多いのではないでしょうか。今回は旅の憂いのひとつとも言える状況を歌っています。鷺坂は、現在の京都府城陽市にあり、交通の要衝の地でした。白鳥は、鷺坂にかかる枕詞で、作者が鷺坂山に入った時にはもう夜がふけてきていて、宿も見つからなかったのでしょう。古代の旅では、夜道を進むのは大変危険でしたので、作者は松の木陰で野宿をすることを決めます。こういう厳しい体験をすることがほとんどない現代人には、どういう心境だったのか想像しきれないところですが、憂いの気持ちが、じわりと伝わってくる歌です。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2023年11月11日 放送分】
2023年11月11日
【巻】…6・1037

【歌】…今造る久邇(くに)の都は 山川の清(さや)けき見れば うべ知らすらし

【訳】…今造る久邇の都は、山と川が清らかなのを見ると、なるほどここに都をお造りになるのは、もっともなことだ

【解】…聖武天皇は、ある時に大行幸を企画します。都の多くの人を連れて伊勢、岐阜、滋賀へと数か月の旅に出るのですが、この時、平城京に帰らずに久邇(現在の京都府木津市)を都とすることを宣言しました。これを受けて、大伴家持が、天平15年(743年)に作ったのがこの歌です。今まさに造営中の久邇の都が、山も川も清らかであるとしているのは、都は清らかな場所でなくてはならないとされていたからで、聖武天皇がこの地を都とするのは、「うべ知らすらし」、もっともなことだと讃えているのです。ちなみに、都はこののち、紫香楽、難波を経て、平城京へと戻っていきます。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2023年11月4日 放送分】
2023年11月4日
【巻】…6・1014

【歌】…前日(をとつひ)も昨日(きのふ)も今日(けふ)も見つれども 明日さへ見まく欲しき君かも

【訳】…おとといも昨日も今日も見たけれど、明日までも見たいと思うあなた様でいらっしゃいます

【解】…先週ご紹介した1013番の歌の次に掲載された作品。前の歌は、家に突然訪ねてきた客に対して歌った作品ですが、今回は、訪れた側の橘文成が、家の主である門部王に贈ったものです。一昨日も昨日も今日もお会いしたけれど、明日もお会いしたいと歌うことで、それほどあなたのことを大切に思っていると表現しているのです。橘文成は、急な訪問に対応してくれた門部王に感謝の意を伝えたかったのでしょうし、歌を受け取った門部王には、最高の賛辞となったのではないでしょうか。お礼をするには、色々な方法があるでしょうが、このように歌にしたことで、そのやり取りが現代に残ったのです。

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