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上野誠の万葉歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2021年6月12日 放送分】
【2021年6月5日 放送分】
【2021年5月29日 放送分】
【2021年5月22日 放送分】
【2021年5月15日 放送分】
【2021年5月8日 放送分】
【2021年5月1日 放送分】
【2021年4月24日 放送分】
【2021年4月17日 放送分】
【2021年4月10日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年6月12日 放送分】
2021年6月12日
【巻】…10・1942

【歌】…霍公鳥(ほととぎす)鳴く声聞くや 卯の花の咲き散る丘に 田葛(くず)引くをとめ

【訳】…ホトトギスが鳴く声を聞いたのかなあ、卯の花が咲いている丘でクズ引きをしている乙女たちは

【解】…クズ引きというのは、つる性の植物であるクズを採取して、その中から繊維を取り出し、その繊維で紡いだ糸を使って衣服を作るという一連の作業につながっていて、かなりの重労働でした。歌の作者が思い浮かべているのは、この労働に従事している女性たち。卯の花が咲いては散る丘で彼女たちは働いているものの、忙しすぎて、ホトトギスの声も耳に入っていないのではないか、と心配する気持ちがにじんでいます。多忙の中でも、せめて季節を楽しんでもらえたらなあ、という思いでこの歌を作ったのでしょう。
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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年6月5日 放送分】
2021年6月5日
【巻】…8・1444

【歌】…山吹の咲きたる野辺のつほすみれ この春の雨に盛りなりけり

【訳】…山吹が咲いている野辺のツホスミレ(ツボスミレ)、この春の雨に咲いているのだなあ

【解】…高田女王がツボスミレについて詠んだ歌です。ツボスミレは、ともすれば見逃してしまいそうなくらい小さな紫色の花。春の雨の日に高田女王は、山吹が咲いている野辺で、ツボスミレの花を見つけました。華やかに咲く山吹とは比べようもなく地味な存在ですが、雨の中で小さいながらも花の盛りを見せるツボスミレの姿が、輝くように美しく見えたのではないでしょうか。雨と花の取り合わせの妙に加え、目立たぬ場所で発見した美への感動が、この歌から伝わってきます。



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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年5月29日 放送分】
2021年5月29日
【巻】…4・664

【歌】…石上(いそのかみ)ふるとも雨に障(つつ)まめや 妹に会はむと言ひてしものを

【訳】…石上のふるではないが、雨が降ってもじっとしていられようか、君に会おうと約束していたのに

【解】…大伴宿禰像見(かたみ)が詠んだ歌。「石上ふる」は、現在の奈良県天理市にある石上という地域の中の布留(ふる)という場所を指しますが、その「ふる」が、雨が降るの「ふる」に転じています。雨障みというのは、雨で家に閉じ込められている状態。大伴像見は歌で「雨だからと言って、じっとしていられようか」と詠んでいます。理由は、恋人に会おうと約束したのだから、と。当時は、交通機関も雨具も整っていないので、雨が降れば移動することが困難になり、会う約束をしていても会えなくなるケースが多々ありました。当時の人は、それが普通のことと受け止めていたようですが、像見はと言えば、雨でもすぐに家を飛び出しそうな勢い。それほど、恋人に会いたいという気持ちでいっぱいだったのでしょう。
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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年5月22日 放送分】
2021年5月22日
【巻】…15・3674

【歌】…草枕旅を苦しみ恋ひをれば 可也(かや)の山辺にさ雄鹿鳴くも

【訳】…草枕旅に苦しみ恋い焦がれていると、可也の山辺にさ雄鹿が鳴いていることだなあ

【解】…天平8年に都を旅立った遣新羅使人の歌。朝鮮半島までの厳しい航海の途中で、北部九州の糸島半島にある引津の港に停泊した際に作られたものです。この時は天然痘が流行して多くの人が命を落としている状況でしたから、ただでさえ困難な旅がさらに辛いものだったと想像に難くありません。そんな折に思い出したのは、きっと都のこと。引津にある可也山の山辺で雄鹿が鳴いているのを耳にして、奈良の風景や大切な人々のことを思い出したのではないでしょうか。つがいになる雌を探す雄鹿の声は、哀愁を帯びて遠く響き、それが余計に、作者の人恋しい気持ちを呼び起こしたのでしょう。
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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年5月15日 放送分】
2021年5月15日
【巻】…12・3146

【歌】…草枕旅の衣の紐解けぬ 思ほせるかも この年ころは

【訳】…草枕旅の衣の紐がほどけてしまった、妻が思っているのであろうよ、この数年は

【解】…草枕は旅にかかる枕詞。草を枕にする程、旅が苦しいことを表しています。この歌では、旅の途中で、衣の紐がほどけたとのこと。当時の男女は、旅の出発時に、男性の旅衣の紐を女性が結ぶという慣習がありました。女性それぞれが特有の結び方をして、男性が帰ってきた時に、ほどけた跡が分かるようにしていたようです。男性が貞操を守ったかどうかを知る手段だったのでしょうが、その一方で、女性が男性のことを強く思うと紐が自然とほどけるという考え方もありました。当時は長旅が多かったので、自然と紐がほどけることも多々あったでしょうから、誰も傷つかない、そのような考え方が生まれたのかもしれません。

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