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上野誠の万葉歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(奈良大学文学部教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2020年5月23日 放送分】
【2020年5月16日 放送分】
【2020年5月9日 放送分】
【2020年5月2日 放送分】
【2020年4月25日 放送分】
【2020年4月18日 放送分】
【2020年4月11日 放送分】
【2020年4月4日 放送分】
【2020年3月28日 放送分】
【2020年3月21日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年5月23日 放送分】
2020年5月23日
【巻】…19・4167

【歌】…時ごとにいや珍らしく咲く花を 折りも折らずも見らくしよしも

【訳】…季節ごとにたいそう珍しく咲く花は、折っても折らなくても見るのが楽しいことだ

【解】…この歌のひとつ前の4166番は長歌で、「季節ごとに沢山の花があるけれども、乙女たちがアヤメグサや花橘に糸を通して楽しんでいる。そこにホトトギス・・いい夏の始まりだ」という趣旨の内容です。今回ご紹介する4167番は、その反歌。季節ごとにめぐってくる花を、手折って見ることもあるし、そのまま手折らずに見ることもあるが、どちらも楽しいものだ、と詠んでいるのです。現在は、花や枝を手折ることはできませんが、それでも、散歩しながら野生の花を写真におさめたり、整備された公園で、整然とならぶ花たちを観賞したりと、色々な楽しみ方はできます。また、鳥の声を合わせて見ると、巡る季節の奥深い美しさが一層、実感できるかもしれません。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年5月16日 放送分】
2020年5月16日
【巻】…18・4102

【歌】…白玉(しらたま)を包みて遣(や)らば 菖蒲草(あやめぐさ)花橘(はなたちばな)にあへも貫(ぬ)くがね

【訳】…白玉を包んで贈ったならば、アヤメグサや花橘に合わせて紐を通せばよいのにね

【解】…白玉といえば団子を思い浮かべますが、万葉時代での白玉は真珠を指します。現代のように養殖ができない時代ですので、何万という数の貝を獲った中でたまたま見つかるくらいだったため、現在よりももっと貴重なものでした。その白玉(真珠)をアヤメグサや花橘に合わせて紐を通すとはどういうことか。古代では、5月の風物詩として、アヤメグサなど、いい匂いがするものに紐を通して輪のようにし、それを頭にかざしたり部屋に飾って邪気を祓っていました。その中に、もし白玉が入ったら・・大切な妻に白玉を贈ると、花たちと一緒に紐を通して、とても美しく輝くものになるだろう、と作者は想像をはせながらこの歌を作ったものと思われます。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年5月9日 放送分】
2020年5月9日
【巻】…10・1955

【歌】…霍公鳥(ほととぎす)厭(いと)ふ時無し 菖蒲(あやめぐさ)蘰(かづら)にせむ日 此(こ)ゆ鳴き渡れ

【訳】…ホトトギスよ、いつだって嫌だとは言わないから、アヤメグサをかずらにする日、ここを鳴き渡って行って欲しい

【解】…旧暦の5月5日は、宮廷に出仕したり宴会をする時に、アヤメグサを頭に巻くという習わしがありました。旧暦で5月5日はもう夏で、疫病が流行りだすため、アヤメグサの匂いで邪気を祓おうと考えていたようです。一方の霍公鳥は初夏の鳥。これは、私たちが知っているホトトギスではなくカッコウを指すとの説もあって、はっきりはしていませんが、夜も鳴く鳥で、うるさいと嫌がる人が少なくなかったようです。しかしこの歌では、「嫌には思わないから、ここを鳴き渡って行って欲しい」と言っています。花鳥風月を楽しむ日本人は、鹿と萩という風に、ものの取り合わせを大切にしていて、この歌の場合、霍公鳥とアヤメグサの取り合わせになれば最高!と作者は考え、同じ鳴くなら、私のところから鳴き渡ってくれと、歌っているのです。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年5月2日 放送分】
2020年5月2日
【巻】…12・3011

【歌】…我妹子(わぎもこ)に衣春日(ころもかすが)の宜寸川(よしきがわ) 縁(よし)もあらぬか 妹が目を見む

【訳】…我妹子に衣を貸すという訳ではないが宜寸川、その縁(方法)もないのかなあ、恋人の目を見る

【解】…我妹子は私の恋人という意味。恋人に衣を貸すというのは、一夜を共にするという意味ですが、その「貸す」は春日という言葉を起こし、春日山から流れる宜寸川へとつながっていきます。さらに、宜寸川は同じ音の「縁(よし)」を起こし、最後は、恋人に会う縁(よし=方法)がないのかなあという一文に落ち着いています。結局、前半の「我妹子に衣春日の宜寸川」は、後半の「縁もあらぬか妹が目を見む」を起こすためのもので、序言葉による言葉遊びになっているのです。古代の人々のユーモアセンスが楽しく伝わってくる歌ですね。

※上野誠さんの新刊本が発売されました!
「万葉学者、墓をしまい 母を送る」講談社 1400円+税

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年4月25日 放送分】
2020年4月25日
【巻】…7・1074

【歌】…春日山 おして照らせるこの月は 妹(いも)が庭にも清(さや)けかりけり

【訳】…春日山を明るく照らすこの月は、恋人の家をもあざやかに照らす

【解】…平城京で暮らしている人々にとって、月は春日山から昇り生駒山に沈むもの。今日の歌は、春日山から出た月がどんな月かを詠んでいます。「おして照らす」というのは、春日山から眺められる一帯の街を明るく照らしている様子。恋人の家が鮮やかに浮かび上がっているのを作者は想像しています。月明かりの美しさを恋人への気持ちに重ねているのでしょうか。現代は、街に多くの照明があって月明かりを意識する機会は少なくなっていますが、それでも、満月の日などに、清らかな月明かりに気付いてふと夜空を見上げた経験、皆さんもあるのではないでしょうか。


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