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上野誠の万葉歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(奈良大学文学部教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi_p@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2019年7月6日 放送分】
【2019年6月29日 放送分】
【2019年6月22日 放送分】
【2019年6月15日 放送分】
【2019年6月8日 放送分】
【2019年6月1日 放送分】
【2019年5月25日 放送分】
【2019年5月18日 放送分】
【2019年5月11日 放送分】
【2019年5月4日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2019年7月6日 放送分】
2019年7月6日
【巻】…14・3348

【歌】…夏麻引(なつそび)く海上潟(うなかみがた)の沖つ洲に 船はとどめむ さ夜ふけにけり

【訳】…夏麻を引くではないけれど、海上潟の沖つ洲に船を止めよう、もう夜が更けてしまったから

【解】…巻14の東歌(あづまうた)の一首。東歌とは、東国地方で詠まれたもので、巻14全体の標題にもなっています。この歌の舞台は現在の千葉県で、東歌の中でも、船で生活をしていた人が詠んだ特異な作品です。彼らにとって、いつどこに船を停泊させるかはとても大切なことで、それぞれの日ごとに目標地が大体定まっていたと思われますが、今回の歌によると、それがどうも予定通りにいかなかった様子。夜も更けてしまったので、しょうがないから、沖の中洲に船を停めて夜を明かそう、と詠んでいるのです。
周辺条件が少し変わっただけで、夜を明かす場所を新たに探さないといけない生活は、現代人には想像し難い苦労やストレスがあったのではないでしょうか。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2019年6月29日 放送分】
2019年6月29日
【巻】11・2741

【歌】…大海(おおうみ)に立つらむ波は間(あひだ)あらめ
    君に恋ふらく止(や)む時も無し

【訳】…大海に立っている波に止む間なんてあろうはずもない、
    君を恋しく思うことも止む時がない

【解】…今回取り上げる“大海に立つ波”というものは、寄せては返す波で止む時がないもの。
    この歌は、その波の性質をわかって自分の気持ちを歌っているものです。
間あらめとは、止む間があろうかという意味で、止む間がないとは、思い続けるということ。
波が止むことがないように、君を想うことに休止はないということです。
万葉集では、少し好きなどという淡い恋心の歌はなく、好き=とても大好きなことを表しています。
恋歌の一つの形を勉強できる歌といえるでしょう。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2019年6月22日 放送分】
2019年6月22日
【巻】3・283

【歌】…住吉(すみのえ)の榎津(えなつ)に立ちて見渡せば
    武庫(むこ)の泊(とまり)ゆ出づる船人(ふなびと)

【訳】…住吉の榎津に立って見渡せば、
    武庫の泊から漕ぎ出していく船人が見える

【解】…すみのえは、現在の住吉のこと。住吉は港で、榎津という地名があったようで、
そこに立って遠くを見渡している様子。
武庫は現在の武庫川のあたりのことで、泊ゆの“ゆ”は、〜を通って、〜からという意味。
当時は住吉から武庫の方まで見えていて、船の出入りを見ていたいたようです。
船人まで見えたかは定かではありませんが、船の出入りを見ていると、そこに乗っている人のことを考えている。
作者の高市連黒人(たけちのむらじくろひと)は、旅の歌が多く、その中でも漁場のことを歌っていて、景色を風景画の様に見ているので、船の出入りをみて、この港にはこういう人がいて、船で出ていったのだなあなどというように船人の様子までも景色に加えているのです。
当時はおそらく、住吉から船が出て一番最初に泊まるのが武庫川だったのでしょう。高市黒人自身も全国を旅していたとされていて、その旅の時の感慨深い思いを歌にのせているようです。
優雅な船の旅を想像しながら詠みたい歌です。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2019年6月15日 放送分】
2019年6月15日
【巻】11・2682

【歌】…韓衣(からころも)君にうち着せ見まく欲(ほ)り
    恋ひぞ暮らしし雨の降る日を

【訳】…韓衣をあなたに着せてみたいと思う
    そんなこんなで待ち焦がれているよ、この雨の降る日に

【解】…韓衣とは、中国や韓国風の衣装のことで、韓(から)は外国のことを指しています。
うち着せとは、着せること。
見まく欲りとは、見たいという意味。
この歌の情景は、恋しく思いながら一日中恋人が来るのを待ち焦がれている様子です。
恋人に外国風の衣装を着せて、それを着ているのを見るのが幸せということ。
当時から肌に身に着けるもののプレゼントは特別なものなのだったのかもしれません。
雨の降る日に人を待つという世界観を表現した歌です。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2019年6月8日 放送分】
2019年6月8日
【巻】10・1916

【歌】…今さらに君はい行かじ
    春雨のこころを人の知らざらなくに

【訳】…今さらあなたは帰ることなどできないはずだ
    春雨の心をあなたは知らないわけではないのだから
    
【解】…い行かじの“い”は行くの接頭語。“じ“は打消しですので、君は行きますまい、君は行くことができないでしょうという意味。
君とは、女性が男性を呼ぶ言い方ですので、今さらあなたはもう行ってしまわないでしょうねと呼び掛けている。
上の句が、今さらあなたは帰ったりすることはできないでしょう
下の句は、春雨のこころをあなたも私も知らないわけではないでしょうというということで、春雨のこころとは、降ることによって足止めをするというもの。
本来、この男性は宵のうちに帰る予定だったが、雨が降ってきた。女性が雨が降ったから今日は泊まって行きなさいよと思っているが、それはストレートすぎて言えないので、春雨が泊まって行くようにそうさせたのよ、ということを歌で表現している。
積極的な女歌の一つといえるでしょう。

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