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上野誠の万葉歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(奈良大学文学部教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2020年3月21日 放送分】
【2020年3月14日 放送分】
【2020年3月7日 放送分】
【2020年2月29日 放送分】
【2020年2月22日 放送分】
【2020年2月15日 放送分】
【2020年2月8日 放送分】
【2020年2月1日 放送分】
【2020年1月25日 放送分】
【2020年1月18日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年3月21日 放送分】
2020年3月21日
【巻】…10・1872

【歌】…見渡せば春日の野辺に霞立ち 咲きにほへるは桜花かも

【訳】…見渡すと春日の野辺に霞が立つ、照り輝いているのは桜花なのかなあ

【解】…秋の紅葉に並んで、季節の文学の代表といえるのは、春の花です。万葉歌で春の花といえば、梅の方が登場回数は多いのですが、今回は桜が主役。桜といっても、ソメイヨシノが日本で広がるのは明治からのことで、この歌の桜は山桜です。ソメイヨシノと違い、先に葉が芽吹いて、その後に花がつく山桜ですが、満開になった様はソメイヨシノと同じく華やかで、当時の人々の心を強くひきつけたでしょう。「咲きにほふ」は、花が香ることではなく、視覚的に照り輝いている様を表現したもの。春日野に霞が立ち、その中を一面浮き出るように照り輝く桜の風景が目に浮かんできます。作者は不明ですが、この歌は桜の歌の傑作とされている作品です。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年3月14日 放送分】
2020年3月14日
【巻】…10・1881

【歌】…春霞立つ春日野を行き帰り われは相見む いや毎年(としのは)に

【訳】…春霞立つ春日野に行ったり来たりして互いに会おうよ、毎年毎年

【解】…この季節は、外に出て、のびのびしたいところですが、新型コロナウイルスの影響で、それが難しい状況です。せめて、万葉歌で春の雰囲気を楽しんでいただければということで、今回はこの作品。春日野でのピクニックの歌です。「行き帰り」というのは、あちらこちらへ行くこと。春日野では、色々な場所で宴会が開かれていましたから、それぞれの場所を渡り歩く様子をこのように表現したのでしょう。あちらこちらの宴に参加すると、恋が芽生える可能性が高まります。「相見む」とは、あなたに会うという意味で、あなたというのは、特定の人を指しているのか、将来の恋人を想像しているのかは分かりませんが、とにかく恋心でワクワクする作者の気分は伝わってきます。そして大切なのは、「毎年」としているところ。これは、今が楽しくて仕方ないから、これからもそうあって欲しいと願って「毎年」としているのです。こう詠むと、宴席にいる人々が、楽しい気持ちを共有できて、より盛り上がったのではないでしょうか。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年3月7日 放送分】
2020年3月7日
【巻】…3・405

【歌】…春日野に粟蒔けりせば 鹿(しし)待ちに継ぎて行かましを 社(やしろ)し留むる

【訳】…春日野に粟を蒔いていたならば鹿がやって来る。鹿を待つように、あなたを待ちたいのだが、お社があるから、そんなことは出来ませんね

【解】…春日野は、行楽地であると同時に神様を祀る神聖な地域でもあり、いくつかお社が建てられていました。今回の歌では、そういった前提をもとに、男女が恋の歌を交わしています。作者の佐伯宿禰赤麻呂は、ある女性に熱心な口説き歌を贈りました。それに応えた女性の歌が404番。要旨は、「もし、春日野に神様のお社がなかったら、春日野に粟をまいていたでしょうが、お社があるのでまけませんよ」。粟は「会う」にかけた言葉ですので、「あなたとは会えませんよ」と返事しているのです。つまり、赤麻呂はふられているのですね。それでも赤麻呂は引き下がらず、今回の405番の歌を贈りました。「春日野に粟をまいたならば、それを食べにイノシシやシカがやって来る。そのイノシシやシカを待ち伏せするように、あなたを待ってデートしたいが、お社があるから粟をまけないので、会えないのですね」これに対し、女性はまた次の歌でお断りしているのですが、本当に気がないのなら返歌しないとも考えられます。もしかすると、この一連のやりとりは、二人が恋の鞘当てを楽しんでいたのかもしれません。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年2月29日 放送分】
2020年2月29日
【巻】…19・4295

【歌】…高円(たかまと)の尾花(おばな)吹き越す秋風に紐解き開けな 直(ただ)ならずとも

【訳】…高円の尾花を吹き越してゆく秋風に紐を解いてくつろごう、恋人に会う訳ではないけれどもね

【解】…3月21日に予定しておりましたラジオウォークですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止が決定しました。楽しみにしてくださっていた皆さんには誠に申し訳なく残念ですが、この番組では、ラジオウォークで歩く予定だった春日野地域に関連する歌をいくつかお届けしたいと思います。今回ご紹する歌の舞台は高円山。天平勝宝5年(753年)に、数人の大夫が壺酒を持って高円山に登り、春日野を眺めながら宴会をした時に作られたのが、この歌です。紐を解くというのは、リラックスした雰囲気を表現したものですが、恋人同士が共寝をするという意味もあるので、「おれたちは恋人同士じゃないけれど」とユーモアを交えて詠んでいます。作者の大伴宿禰池主は、親戚の大伴家持と特に仲がよく、その家持ら気の合う仲間と一緒の宴会だったので、とても楽しいひと時だったのでしょう。そのウキウキした気分が歌から伝わってきます。
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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年2月22日 放送分】
2020年2月22日
【巻】…10・1880

【歌】…春日野の浅茅(あさぢ)が上に 思ふどち遊ぶこの日は 忘れえめやも

【訳】…春日野の浅茅の上で、気の合った仲間たちと遊ぶ今日のこの日は、忘れられるはずもない

【解】…巻の10に「野遊」という項があって、その最初の歌がこの作品。野遊びは今でいうところのピクニックで、春の代表の遊び。また、春日野という場所は、人気の行楽地だったようです。高台になっている春日野は景色がよく、背の低い茅である浅茅が生えていて、その上に座ると気持ちがいい、しかも、一緒にいるのは、気の合う仲間ですから、楽しくないはずはありません。作者が「忘れえめやも」と歌に詠む「野遊」気持ちよさは、1300年たった私たちにも、とてもよく分かります。

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