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上野誠の万葉歌ごよみ
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上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2022年11月19日 放送分】
【2022年11月12日 放送分】
【2022年11月5日 放送分】
【2022年10月29日 放送分】
【2022年10月22日 放送分】
【2022年10月15日 放送分】
【2022年10月8日 放送分】
【2022年10月1日 放送分】
【2022年9月24日 放送分】
【2022年9月17日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2022年11月19日 放送分】
2022年11月19日
【巻】…3・310

【歌】…東(ひむかし)の市の植木の木垂(こだ)るまで 会はず久しみ うべ恋ひにけり

【訳】…東の市の植木が大きくなるまで久しく会わなかった、どうりで恋しく思うことだ

【解】…門部王(かどべのおほきみ)が東の市の木を見て作った歌。当時、物の売り買いをするための市が開かれた場所には、目印となる大きな木がありました。門部王が見た木もそれで、東の市の象徴だったのでしょう。ただ、前に目にした時より枝を大きく広げていて、その成長具合に、長い年月がたったことに気づいたとのこと。門部王は、その期間に会わなかった人がいたようで、「どうりで恋しく思うことだ」と歌っています。市の木の姿に、自分の気持ちを重ねた形ですね。ただ、万葉歌は誇大表現が多いので、本当に長い年月会わなかったのかどうかは分かりません。もしかすると、ほんの数日会わなかっただけでも、長い年月がたったような恋しさであったということなのかもしれません。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2022年11月12日 放送分】
2022年11月12日
【巻】…3・305

【歌】…かくゆゑに見じといふものを 楽浪(ささなみ)の旧(ふる)き都を見せつつもとな

【訳】…こうなるからといって見ないと言っていたのに、楽浪の旧き都を見せてくれたね、いたずらに

【解】…高市黒人の歌は全て旅の歌で、必ず地名が入っています。「楽浪の」は、近江にかかる枕詞で、今回の舞台は近江の旧き都、つまり、天智天皇が作った大津京(現在の滋賀県大津市)です。高市黒人は、この地を見たくないと周囲に言っていたのでしょうが、結果として見ざるをえなくなって、その時の気持ちを歌にこめました。この旧都は、かの壬申の乱で戦場となった場所で、華やかだった風景が、戦乱で焼かれて見る影もなくなっていたのでしょう。そんな旧都の姿を黒人は見たくなかったに違いありません。彼の歌は、この作品のように、旅の寂しさや辛さを詠んだものがほとんどなのですが、そこが、多くの人をひきつけていて、黒人ファンであるという人は少なくありません。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2022年11月5日 放送分】
2022年11月5日
【巻】…3・279

【歌】…我妹子(わぎもこ)に猪名野(ゐなの)は見せつ 名次山角(なすきやまつの)の松原いつか示さむ

【訳】…私の妹に猪名野は見せてあげることはできた。名次山の角の松原は、いつ見せてあげられるだろう

【解】…前回に続いて高市黒人の旅の歌です。今回は、夫婦で旅をした時のもの。猪名野は、現在の兵庫県伊丹市周辺、名次山と角の松原は兵庫県西宮市にあたります。おそらく夫婦は、山陽道を西へ西へと向かう旅をしていて、その道中で高市黒人は、妻と猪名野を見ることができたのでしょうが、「名次山の角の松原は妻に見せられるだろうか」と心配げに歌っています。古代は交通手段が未発達の時代でしたから、旅は常に危険とともにあり、無事に帰れる保証がありませんでした。ですので、当時は夫婦での旅というのが非常に珍しく、それだけに、名所を一緒に見ることができるだろうかという思いはより強くあったのでしょう。反対に、美しい景色を夫婦で見ることができた時の感動は、現代人には想像できないくらい深いものだったに違いありません。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2022年10月29日 放送分】
2022年10月29日
【巻】…3・271

【歌】…桜田へ鶴(たづ)鳴き渡る 年魚市潟潮干(あゆちがたしほひ)にけらし 鶴鳴き渡る

【訳】…桜田へ鶴が鳴き渡ってゆく、年魚市潟が引いてしまったらしい、鶴が鳴き渡ってゆく

【解】…高市黒人の旅の歌8首のうちの第2首目。桜田は、現在の名古屋市南区にあった地名で、その桜田の方へ鶴たちが鳴き渡ってゆく様子を歌っています。鶴が移動する理由は、潮が引いたから。桜田の近辺に年魚市潟という干潟があって、そこの潮が引くと、鶴が移動するというのを黒人は知っていたのでしょう。この歌を詠んだ時に年魚市潟の様子を実際に見た訳ではなく、鶴たちが鳴き渡るのを見て、潮が引いたのだなと想像して歌ったと思われます。黒人がこの歌にどのような心情をこめたのかは分かりませんが、潮は満ち、そしてまた引いてゆくという時の流れには、ただ身を任せるしかないということを再実感し、虚しさのような感情とともにこの歌を詠んだのではないでしょうか。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2022年10月22日 放送分】
2022年10月22日
【巻】…3・270

【歌】…旅にしてもの恋(こほ)しきに 山下の赤(あけ)のそほ船沖へ漕ぐ見ゆ

【訳】…旅をしてもの恋しい時に、山下の赤いそほ船が沖に漕いでいたのが見えた

【解】…高市黒人の旅の歌8首のうちの1首。旅の途中、なんとなく恋しい気分になっている時に、ふと目に入ったのが、沖を進む一艘の船でした。その船は「赤いそほ船」、つまり、赤い塗料を塗った船で、遠くからでもその姿を確認できたのでしょう。どこに向かっているのか分からないけれど、一艘で大海を漕ぎ進む船の様子に、高市黒人は自身の気分を重ねたに違いありません。この時の黒人は何が恋しかったのか・・故郷のことか、故郷に残した恋人のことか、詳細は分かりませんが、黒人でなくても、旅というものは、孤独感やもの悲しい気分に包まれたりするもの。特に秋はそんな気分になりがちではないでしょうか。

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