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上野誠の万葉歌ごよみ
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上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2021年11月27日 放送分】
【2021年11月20日 放送分】
【2021年11月13日 放送分】
【2021年11月6日 放送分】
【2021年10月30日 放送分】
【2021年10月23日 放送分】
【2021年10月16日 放送分】
【2021年10月9日 放送分】
【2021年10月2日 放送分】
【2021年9月25日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2021年11月27日 放送分】
2021年11月27日
【巻】…12・3044

【歌】…君待つと庭のみをれば うちなびくわが黒髪に 霜ぞ置きにける

【訳】…あなたを待つ、と庭ばかり見ていると、うちなびくわが黒髪に霜が降りてしまった

【解】…「君」は、女性が男性を呼ぶ呼び方。作者の女性は、恋人もしくは夫が家に来るのを待っています。「庭のみをれば」というのは、庭を観賞するためというより、彼はいつ来るのかと、家の奥にじっとしてはいられなかったからでしょう。うちなびく黒髪に霜が降りたとありますが、髪に霜が降りるくらい寒いと感じたのは、作者の寂しく切ない心境から。そして、黒髪に降りた霜は、白髪にもイメージを重ねていて、髪が白くなってしまいそうなくらい、待っている時間が長く感じるのだと、相手に伝えているのです。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2021年11月20日 放送分】
2021年11月20日
【巻】…10・2257

【歌】…露霜の衣手(ころもで)濡れて 今だにも妹がり行かな 夜はふけぬとも

【訳】…露霜で袖が濡れたとしても、せめて今からでも恋人のところに行こう、夜は更けてしまったが

【解】…古代の夫婦は妻問婚、つまり、夫が夜に妻の家を訪ねて、翌朝早くには家を出るというものでした。今回の歌は、そういった背景のもとで詠まれています。「衣手」は、衣の袖のことで、夜が更けて野原を歩くと、草などについた露や霜で、衣の袖が濡れてしまいます。また、早朝には妻の家を出なければなりませんので、夜が更けてから訪ねると、家でゆっくり過ごせる時間がありません。そんな悪条件と分かっていても、作者は、少しでも妻の顔が見たいのだと歌っているのです。どれくらいの時を経た夫婦かは分かりませんが、妻を想う熱い気持ちが伝わってきます。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2021年11月13日 放送分】
2021年11月13日
【巻】…10・2135

【歌】…おし照る難波(なにわ)堀江の葦辺には 雁寝たるかも 霜の降らくに

【訳】…おし照る難波堀江の葦辺では、雁は寝てしまったのかなあ、霜も降るのに

【解】…「おし照る」は、難波を起こす枕詞。難波の海に日の光があたって波がキラキラ輝いている様を想像させます。堀江は、人工的に掘った水路や川のことで、大きな木が生えず、葦のような植物が多かったので、晩秋から初冬にかけてやって来る雁にとっては、寝るのに最適な場所だろうと作者は思ったのでしょう。たとえ、霜が降るような寒さであっても・・。歌を作った時、実際に葦辺に雁がいたのかどうかは分かりませんが、少なくとも作者の目には浮かんでいたに違いありません。このように、難波堀江の葦辺と雁、そして霜というのは、1300年前の人々にとっては、普通に連想される取り合わせだったのでしょう。

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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2021年11月6日 放送分】
2021年11月6日
【巻】…10・2246

【歌】…秋の田の穂の上(へ)に置ける白露の 消ぬべくも吾(あ)は思ほゆるかも

【訳】…秋の田の穂の上に降りた白露ではないが、消えてしまうように私は思ってしまうのです

【解】…自分自身を露や雪などに例えて、消えてしまいそうだと表現するのは、万葉集によく出てくるパターンです。これは、「あなたの前に出ると消え入りそう、それほど私は慕っている」という意味で、心を寄せる相手に自分の気持ちを察してもらおうとしているのか、もしくは、切ない気持ちを歌で吐露しているのでしょう。秋の田の稲穂に露が降りると、朝日の光で穂が金色に輝いて見えます。そういった風景に囲まれて生きていると、この歌のような表現が自然に生まれてくるのでしょう。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年10月30日 放送分】
2021年10月30日
【巻】…10・2179

【歌】…朝露ににほひそめたる秋山に 時雨(しぐれ)な降りそ あり渡るがね

【訳】…朝露に照り輝いている秋山に 時雨は降ってくれるなよ、そのままでいて欲しいから

【解】…紅葉と露を取り合わせた歌。「にほふ」は、嗅覚ではなく、照り輝いている様を表す視覚表現です。色づいた葉は、もちろんそれだけで十分美しいですが、朝露に濡れると、光沢が出てさらに輝きを増します。それを目の当たりにした作者が思ったのは、「時雨よ降ってくれるなよ」。雨で紅葉が散ってしまうのを怖れたからでしょう。言い換えれば、瞬間の美を惜しむ心がこの歌を生んだと言えます。ところで、歌の左注には「柿本朝臣人麻呂の歌集に出ず」となっています。この歌は、元々、柿本人麻呂歌集に入っていて、万葉集を編纂する際に、転載されたもの。ただ、柿本人麻呂歌集に収められていたからといって、人麻呂が作った歌かどうかは分かりません。

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