radikoで今すぐ聴く!
上野誠の万葉歌ごよみ
ポッドキャストの楽しみ方
ポッドキャストの受信ソフトに、このバナーを登録すると音声ファイルが自動的にダウンロードされます。
ポッドキャストの説明はコチラ
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサープロフィール
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2024年7月20日 放送分】
【2024年7月13日 放送分】
【2024年7月6日 放送分】
【2024年6月29日 放送分】
【2024年6月22日 放送分】
【2024年6月15日 放送分】
【2024年6月8日 放送分】
【2024年6月1日 放送分】
【2024年5月25日 放送分】
【2024年5月18日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年7月20日 放送分】
2024年7月20日
【巻】…10・1961

【歌】…わが衣(きぬ)を君に着せよと 霍公鳥われをうながす 袖に来居(きゐ)つつ

【訳】…わが衣をあの人に着せなさいと、ホトトギスが私にうながして、袖に止まっている

【解】…今回ご紹介する歌は、「私(女性)の着物をあなた・君(男性)に送りなさい」と言葉を話すことができないホトトギスが、鳴いて促しているというファンタジーな内容です。当時、着物・下着の交換をするということは、愛情の証のひとつで、肌に触れるものを送るという行為は特別な事だったそうです。今の時代も指輪やネックレスをプレゼントするということは、それなりの仲になっていることが多いと考えられます。そんな二人の様子に見かねたホトトギスが、もうそろそろ進展して良いのではないかということで、二人の仲を取り持つかのように、けしかけて女性の背中を押してくれている様子が目に浮かびます。ホトトギスが見ていても、なんだかもどかしかったのかもしれませんね…この二人の関係はいったいどうなったのか気になるところです。

停止

上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年7月13日 放送分】
2024年7月13日
【巻】…10・1958

【歌】…橘の林を植ゑむ 霍公鳥常に冬まで住み渡るがね

【訳】…橘の林を植えよう、ホトトギスがずっと冬まで住み続けられるように

【解】…歌の出だしは、「橘を植えよう」ではなく、「橘の林を植えよう」となっています。林を植えるというのは、広大な地いっぱいに橘を植えて林にするのか、それとも、どこかにある橘の林を全て移植するのか・・いずれにしても、現実的ではありません。では、なぜこのような表現にしたのか。秋には姿を消してしまうホトトギスも、橘の林を植えるくらいのことをしたら、冬までずっと里にいてくれるかなあ、と歌っているのです。そんなことができるはずもないことはもちろん作者も知っているでしょうが、大げさに表現することで、ホトトギスに対する思いの深さを伝えているのです。

停止

上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年7月6日 放送分】
2024年7月6日
【巻】…10・1957

【歌】…卯の花の散らまく惜しみ 霍公鳥野に出(で)山に入り 来鳴き響(とよも)す

【訳】…卯の花が散るのを惜しんで、ホトトギスは野に出、山に入り、やって来ては声を響かせる

【解】…万葉歌では、ホトトギスと卯の花の取り合わせがよく登場しますが、この歌もそのひとつ。描いているのは、山にいるホトトギスが里に出てきて、また山に戻るというのを繰り返している様子です。里に下りてきた時のホトトギスは、あたりに声を響き渡らせていたに違いありません。ホトトギスがなぜそんな行動をするのかは「卯の花の散らまく惜しみ」と作者は分析しています。つまり、卯の花が散ってゆくのが惜しいので、少しでも多く花を見ようと何度も里に来るのだと。ホトトギスが本当にそう思っていたのかは分かりませんが、自然をよく観察していた人ならではのイメージですね。現代は、日常の忙しさで自然に注意を向ける機会が少なくなりがちですが、例えば自然の音に耳をすませてみれば、この歌のように色々なイメージが浮かんでくるかもしれません。

停止

上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年6月29日 放送分】
2024年6月29日
【巻】…10・1951

【歌】…うれたきや 醜霍公鳥(しこほととぎす) 今こそは声の涸(か)るがに来鳴き響(とよ)めめ

【訳】…腹立たしいバカなホトトギスさんよ、今こそやって来て、声が涸れるほどに鳴いて欲しいのに

【解】…「うれたし」は、腹立たしいとか嫌な奴だなあ、といった表現で、醜霍公鳥の「醜」も悪いものや嫌なものにつける接頭語。ホトトギスにこれほどマイナスな言葉を投げかけるのには、理由があるようです。それをうかがわせるのが歌の後半。今こそやって来て、声が涸れるほどに声を響かせて欲しいのに、とのこと。どういう事情があるのか分かりませんが、まさに声が聞きたいタイミングに鳴いてくれないホトトギスに、いらだちや失望を感じているようです。ホトトギスにすれば、人間の都合だけで嫌な言葉を向けられるのは迷惑千万な話ですが、裏返して考えると、作者はそれほどホトトギスの声を愛しているということなのでしょう。

停止

上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【2024年6月22日 放送分】
2024年6月22日
【巻】…10・1947

【歌】…会ひ難き君に会へる夜(よ) 霍公鳥 他(あた)し時ゆは今こそ鳴かめ

【訳】…会い難いあなたに会った夜は、ホトトギスさんよ、他の時よりは今鳴いてくださいな

【解】…「会ひ難き君」は、なかなか会えない人のことですが、その人と一緒にいられる機会が訪れたようです。作者は、ホトトギスに呼びかけます、「他の時はいいけれど、今こそ鳴いておくれ」。大切な人が来ることが分かって、お酒やご馳走など、迎える準備を万全に整えたのに、これだけが足りないと思ったのが、ホトトギスの声。一緒にいる時にホトトギスの声が聞こえたら最高だと思いながら、相手は鳥ですので、自分の力ではどうにもできません。ですので、「他の時はいいから、この時だけは鳴いておくれ」と切に訴えているのです。実現の可能性は極めて低いでしょうが、こう歌うことで、「これだけあなたのことを大切に思っています」というメッセージは「会ひ難き君」に伝わることでしょう。

停止