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上野誠の万葉歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(奈良大学文学部教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2020年11月21日 放送分】
【2020年11月14日 放送分】
【2020年11月7日 放送分】
【2020年10月31日 放送分】
【2020年10月24日 放送分】
【2020年10月17日 放送分】
【2020年10月10日 放送分】
【2020年10月3日 放送分】
【2020年9月26日 放送分】
【2020年9月19日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年11月21日 放送分】
2020年11月21日
【巻】…10・2190

【歌】…わが門(かど)の浅茅(あさぢ)色づく 吉隠(よなばり)の浪柴(なみしば)の野の黄葉(もみち)散るらし

【訳】…私の家の門口の浅茅が色づくとね、吉隠の浪柴の野の紅葉は散っているだろうよ

【解】…浅茅は背の低い茅で、秋になれば葉の色が変化しますが、紅葉の話題で取り上げられるのは珍しい植物です。家の前にある浅茅が色づいているのを見た作者が思ったことは、吉隠=現在の奈良県桜井市の浪柴という場所の紅葉はもっと早くに色づいて、今頃は散っているだろう、ということ。奈良県内でも、地形や高低差によって紅葉の時期が違うのでこのような歌が成立するのですが、浅茅の紅葉から浪柴を連想するのは、作者が浪柴に何らかの縁があったからでしょう。紅葉だけでなく、身近な季節の変化が、他の記憶や思いを呼び起こしたという体験、皆さんもあるのではないでしょうか。



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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年11月14日 放送分】
2020年11月14日
【巻】…8・1623

【歌】…わが宿にもみつ鶏冠木(かへるて)見るごとに 妹をかけつつ恋ひぬ日は無し

【訳】…私の家の色づいたカエデを見るごとに、あなたのことを思って恋しく思わない日などありません

【解】…鶏冠木(かへるて)は、カエデのこと。作者の大伴田村大嬢(たむらのおほいらつめ)は、庭にあるカエデが色づく度に、あなたのことを恋しく思うと詠んでいます。万葉集で「妹」は、たいていの場合、恋人のことを指しますが、この歌を贈った相手は、坂上大嬢。文字通りの妹です。姉妹でこのようなやりとりは違和感がありますが、彼女たちは、恋人同士になりきって遊んでいるのです。こういう風に男の人に声をかけられたら嬉しい、などと姉妹で盛り上がっていたのかもしれませんね。ちなみに、皆さんは、あるものを見ると必ず思い出すということはあるでしょうか。人恋しい気持ちになりがちなこの季節、「恋ひぬ日は無し」という方もいらっしゃるのでは。


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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年11月7日 放送分】
2020年11月7日
【巻】…8・1516

【歌】…秋山にもみつ木の葉の移りなば さらにや秋を見まく欲(ほ)りせむ

【訳】…秋山に色づく木の葉が散ってしまったならば、さらにさらに秋を見続けたいと思うだろう

【解】…山部王が秋の紅葉を惜しんで作った歌。「もみつ」は、紅葉するという動詞。そして「移る」は散ってゆくこと。秋山で美しく紅葉する木々を見た山部王は、ずっとこのまま紅葉を眺めていたいと思いながらも、散った後には「もっと秋を味わいたい」という気持ちでいっぱいになるだろうと、やがて訪れる寂しさまで詠み込んでいます。やって来るものへの期待と、去り行くものへの悲しみ・・人は、両方の感性を持っていますが、この歌は、後者。限りあるものを惜しむ作品のひとつとして挙げられます。



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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年10月31日 放送分】
2020年10月31日
【巻】…7・1306

【歌】…この山の黄葉(もみち)が下の花をわれはつはつに見て なほ恋ひにけり

【訳】…この山の紅葉の下の花を私はちらりと見て、ますます恋しく思うようになった

【解】…目の前の山で、紅葉している木の下を見ると花が咲いていた。ただ、それだけのことと言えばそうなのかもしれませんが、歌の作者は「なお恋ひにけり」、つまり、ますます恋しく思うようになった、と歌にしたのです。季節の美しい風景に加え、予想外の場所に花を見つけたことが、ささやかな発見となって感動を呼び起こしたのでしょう。季節がめぐる中で、旅には出なくても、身の周りを少し注意深く見渡してみると、この歌のような色々な発見がきっとあるはずです。

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上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2020年10月24日 放送分】
2020年10月24日
【巻】…10・2170

【歌】…秋萩の枝もとををに露霜(つゆしも)置き 寒くも時はなりにけるかも

【訳】…秋萩の枝もたわむばかりに露霜がおりて寒い寒い時節になったことだよ

【解】…「ををに」は、重みで倒れ込んでいる様を表現する言葉で、花が咲いてその重みで茎がしなったり、稲が穂の実りとともに頭を垂れるのが、そのいい例です。この歌の場合は、秋萩の枝に露霜がついて「ををに」になっているとのこと。実際には霜が降りるような気温では、露も霜になるので、露と霜が同時に秋萩につくというのは考えにくいのですが、露と霜が同時に存在しそうな時期、つまり秋から冬へと季節が移ろうとしている瞬間を、作者は「露霜」という表現でとらえたのではないでしょうか。そしてそれが、「寒くも時はなりにけるかも」という言葉を引き出しているのです。四季がある国では、季節が変化するが故に毎年毎年、発見があり、それが新しい歌へとつながっていくのでしょうね。

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