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〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」 |
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【2019年4月6日 放送分】 |
2019年4月6日 |
【巻】5・815
【歌】…正月(むつき)立ち春の来(きた)らば かくしこそ梅を招(を)きつつ楽しき終(を)へめ
【訳】…お正月がやってきて、毎年毎年、春がやって来たら このようにして梅を招いて楽しさの限りを尽くそうよ
【解】…新元号「令和」は、万葉集 梅花の歌32首の序文から採られました。 まずはその序文についての解説です。 730年に、大伴旅人の邸宅で梅の花見をする宴会が行われた。 みんなで歌ったものを集めて編集したものに、序文という説明文を付ける必要があり、序文は山上憶良または大伴旅人という2つの説がありますが、序文には名前を知らさないことに意味があったのかもしれない。 みんなで楽しい宴会をしているので、誰が序文を書いたかを記すことは無粋だったとされる。 「初春の令月(れいげつ)にして、気淑(よ)く風和ぎ、梅は鏡前(きやうぜん)の粉(ふん)を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(かう)を薫(かを)らす。」 お正月の良い月に、天候が良くて、風が柔らかく吹き、頬を撫でるようなこの季節。 ふと見ると、梅は鏡の前にあるおしろいのように真っ白く咲き、その匂いは帯に着けるにおい袋のように匂っている。 古代は匂いの良いものは蘭といわれていたので、梅も蘭といわれていた。 この「令和」は平和への願いでもあり、いろんな平和がある中で、親しい友達との楽しいお花見が一番良いなあという願いが込められているのではないでしょうか。 巻5・815の歌は、32首のこの宴で、一番最初に歌われたもので、紀男人(きのおひと)が詠んだ歌。 大宰府で位が一番高いのが大伴旅人で、紀男人の位はナンバー2だけど、宴のトップに歌った。それは、大伴旅人自身はホストなので、ナンバー2が全てのゲストを代表して歌を歌うからです。 春の来らば=春がやってきたら かくしこそは=このように 梅を招きつつ=梅をお招きして(私たちの宴の主賓、それは梅さんですよという意味) 楽しき終へめ=楽しさを味わい尽くすという意味。 ナンバー2の紀男人が主賓のご挨拶として歌を詠んだが、主賓は自分ではなく主の庭の梅さんですよ、と褒めているところに繊細な気遣いが感じられます。 万葉集は粋な文学であり、おしゃれで、相手を思いやる気遣いの文学であることを感じさせられる一首です。
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