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〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」 |
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【2022年11月12日 放送分】 |
2022年11月12日 |
【巻】…3・305
【歌】…かくゆゑに見じといふものを 楽浪(ささなみ)の旧(ふる)き都を見せつつもとな
【訳】…こうなるからといって見ないと言っていたのに、楽浪の旧き都を見せてくれたね、いたずらに
【解】…高市黒人の歌は全て旅の歌で、必ず地名が入っています。「楽浪の」は、近江にかかる枕詞で、今回の舞台は近江の旧き都、つまり、天智天皇が作った大津京(現在の滋賀県大津市)です。高市黒人は、この地を見たくないと周囲に言っていたのでしょうが、結果として見ざるをえなくなって、その時の気持ちを歌にこめました。この旧都は、かの壬申の乱で戦場となった場所で、華やかだった風景が、戦乱で焼かれて見る影もなくなっていたのでしょう。そんな旧都の姿を黒人は見たくなかったに違いありません。彼の歌は、この作品のように、旅の寂しさや辛さを詠んだものがほとんどなのですが、そこが、多くの人をひきつけていて、黒人ファンであるという人は少なくありません。
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