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〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」 |
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【2023年9月30日 放送分】 |
2023年9月30日 |
【巻】…6・980
【歌】…雨隠(あまごも)り三笠の山を高みかも 月の出で来ぬ 夜(よ)は降(くた)ちつつ
【訳】…雨が降り、その上、三笠の山が高いからだろうか、月は出てこない。夜はもう更けてゆくのに
【解】…月が美しい季節です。万葉集には、月の歌が沢山ありますが、今回は、安倍朝臣虫麻呂(あべのあそみむしまろ)の歌。雨が降っていると月は雲に隠れてしまいますし、山が高いと、月が顔を出す時刻が平地よりも遅くなります。どちらも、月の姿を見るには妨げになることばかり。また、「降(くた)ち」は、盛りが過ぎた状況のことで、「夜が降ちつつ」は、夜が更けて朝が近づいていることを表します。つまり、月が見られると期待していたのに、夜が更けても姿を現さないと嘆いているのです。この歌の場合、「月」には大切な人を重ねていて、「もっと早くに来てくれると思っていたのに、朝が近くなっても来ない」というのが本当の意味でしょう。ただ、古代の恋愛では、男性が女性の家を訪れるのが一般的でしたから、男性である安倍朝臣虫麻呂がこのような歌を詠んでいるのは、恋愛というより、宴会の席などで、待ち人来たらずということで歌ったものでしょう。
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