第1108回「シリーズ東日本大震災7年【1】〜子どもたちに原発事故を伝える」
リポート:MBSラジオ 亘佐和子記者

森松明希子さんは、原発事故のため、福島県郡山市から大阪市に、幼い子ども2人を連れて避難してきました。夫は今も福島に残って働いていて、母子避難の生活がもうすぐ7年になります。
東日本大震災避難者の会「Thanks&Dream」の代表も務める森松さんが最近力を入れているのが、子どもたちに原発事故や避難生活を伝えることです。原発事故とはどんなものなのか、なぜ遠く大阪まで避難してきたのか、子どもに伝えるのは難しいと思われがちですが、森松さんは子どもと対話し、一緒に考えてもらいながら、話を進めます。
番組では先月、大阪市生野区の東桃谷小学校で、1年生から6年生まで約200人の児童を対象に森松さんが行った特別授業を取材しました。東日本大震災には、地震・津波・原発事故の3つの大きな要素があること、子どもの命を守りたい一心で避難を決めたことなどを、丁寧に説明していきます。授業を受けた子どもたちにインタビューすると、大人が思う以上に、いろいろなことを感じ、原発事故について考えたことがわかりました。MBSラジオの亘佐和子記者が報告します。
 
野村朋未のひとこと
地震、津波、そして原発事故について。子どもたちに伝えるとともに、私たち大人もこの震災で感じたことや考えたことなど得た教訓を忘れないでいなければと思います。子どもたちはしっかりキャッチする力を持っていますね。被災者、避難者ともっとふれあい、話を聞く機会が増えれば、誤解やいじめもおこらないのではないかと感じます。

第1107回「阪神・淡路大震災23年〜借り上げ復興住宅から退去を求められる人々」
ゲスト:市川 英恵さん

阪神・淡路大震災で、被災者の住宅不足を補うため、自治体は、民間やURが持っているマンションを借り上げて被災者に提供しました。この「借り上げ復興住宅」の20年間の借り上げ契約が満了したとして、自治体は入居者に明け渡しを求めています。神戸市と西宮市は、期限を過ぎても明け渡しに応じない入居者を提訴し、うち80代の女性に対して神戸地裁は昨年10月、立ち退きを認める判決を言い渡しました。女性が住む部屋は16年10月が入居期限で入居許可書に記載がありましたが、入居時に市から口頭で説明はありませんでした。
女性は、数年前に腰の骨を折り生活に歩行器が欠かせません。神戸市は、明け渡しを求める住民に優先的に市営住宅の紹介や引っ越し代の補助を行っていますが、女性は「住み慣れた部屋だから生きていける。今から新しい環境になっても体が追いつかない」と話します。
今年から来年に向けて借り上げ復興住宅の入居期限を迎える人がピークになるとされています。この問題に詳しい市川英恵さんをゲストに迎えてお話を聞きます。
 
千葉猛のひとこと
きょうのお話で、住宅の問題は単に住む場所というだけではなく「命」にかかわる問題だということがわかりました。もし復興住宅問題が住む人の命を縮めてしまうことにつながるとしたら、それは「震災関連死」になると私は思います。阪神淡路大震災は決して過去のことではありません。今も続いています。

第1106回「命を守る口腔ケア」
ゲスト:神戸常盤大学短期大学部 教授、歯科医師 足立了平さん

災害後の避難生活の中で、高齢者に多く見られる疾患が肺炎です。阪神・淡路大震災では、肺炎は災害関連死の死因の約4分の1に及びました。中でも「誤嚥性肺炎」が多くを占めていたとみられています。
本来、食道を通るはずの食べ物や唾液が、誤って気管に入り込み、唾液と共に流れ込んだ細菌が肺に入り込んで炎症を起こすのが誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎は、食事だけではなく、寝ている間に飲み込む唾液中の細菌によっても起こります。災害直後の避難生活では、水不足から歯磨きや入れ歯のケアが充分にできないため、口内の細菌が繁殖しやすくなります。また、栄養や睡眠が充分にとれずに体力が低下し、誤嚥性肺炎にかかりやすくなり、特に高齢者にとっては死に至る危険性があります。逆に言えば、災害時に後回しにされがちな口の中のケアが、命を守ることに繋がります。
阪神・淡路大震災で被災者の歯科診療に奔走し、その後の大規模災害でも歯科支援活動を行っている、神戸常盤大学短期大学部の足立了平教授をゲストに迎え、災害時の口腔ケアの重要性や少ない水でも行える歯磨きの方法について聞きます。
 
野村朋未のひとこと
誤嚥性肺炎をひきおこす原因を間違えて認識していました。災害の時だけでなく、また高齢者だけではなく、口の中を清潔に保つケアが大切だとわかりました。口の中のケアが災害後の命を守ることにも繋がるという事をもっと広く知らせて行きたいです。早速、高齢の両親にも知らせて唾液を出す体操を実践してもらっています。

第1105回「シリーズ阪神・淡路大震災23年【4】〜復興住宅に通い続けた大学生」
ゲスト:兵庫県立大学4年生 一ノ瀬美希さん

阪神・淡路大震災後に整備された神戸市の東部新都心「HAT神戸」の復興住宅に、大学生らが2015年から運営してきた交流サロン「ほっとKOBE」があります。週に2回オープンし、高齢者がお茶を飲みながら談笑したり、子どもたちが集まって遊んだりして、住民の憩いの場になっています。
代表をつとめる兵庫県立大学4年生の一ノ瀬美希さん(22)は、高校生のときに、復興住宅で高齢者の孤独死が続いているというニュースを見て、自分が生まれる前の災害で今も苦しんでいる人がいることに、衝撃を受けたといいます。そして大学入学後、ボランティアとして復興住宅に飛び込むことになりました。サロンをオープンした当初は住人から警戒され、あいさつしても無視されることが続いたそうですが、何か月も声をかけ続けるうちに、少しずつ心を開いてくれる人が増えてきました。
今春、一ノ瀬さんが大学を卒業し兵庫県を離れるため、サロンの運営はHAT神戸の住民が担うことになります。「大学生の担い手がいなくなるのは申し訳ないけれど、住民が自ら運営してくださるのはベストな形だと思います」と語る一ノ瀬さん。復興住宅の高齢者の現状と、そこに通い続けた思いを、一ノ瀬さんに聞きます。
 
千葉猛のひとこと
「無理してしゃべらなくてもいいんです。そばにいるだけで」この言葉に感動しました。私は、とにかく話しかけることが第一と思い込んでいたのですが、そうじゃない。復興住宅に通い続けて、被災高齢者に寄り添い続けてきた「ほっとKOBE」の一ノ瀬さんのお話は考えさせられることが多いものでした。