第1177回「寺を避難所に」
ゲスト:大阪大学大学院教授 稲場 圭信さん

今週は、寺や神社など宗教施設の避難所活用について考えます。寺社は昔から高台など比較的安全な場所にあり、板張りの体育館などとちがって「広い畳敷き」で、高齢者や障害者が生活する際の負担も少なくなります。また、法事など大勢が集まることを想定しているため、座布団・急須も数多くあり、炊事場も設置されていて、避難所としての機能を兼ね備えています。
東日本大震災をきっかけに活用するケースが増え、2014年の調査では、303自治体が2401の宗教施設と協力体制を構築。関西でも、災害時に1200人を受け入れる協定を自治体と結び、毛布・寝袋・米・簡易トイレなどの備蓄を進めている寺もあります。
南海トラフ巨大地震の避難者数は最大950万人と予測され、「避難所不足」が深刻化する可能性が懸念されています。
公共施設の数には限りがあり、新たに認定できる施設は少ないのが現状です。コンビニエンスストアより多いといわれる寺院を、避難所としてどう活用すればいいのでしょうか。宗教施設の防災活用について研究を続ける大阪大学の稲場圭信教授に話を聞きます。
 
千葉猛のひとこと
お寺や神社、教会といった宗教関連施設は、コンビニの数よりもずっと多いことにまずびっくりしました。これだけ多くの場所が避難所になれば本当に心強いです。改めて宗教関連施設の災害発生時の動きは重要だと思いました。阪神淡路大震災発生時の神戸長田のカトリック鷹取教会の活動を思い出します。

第1176回「災害インバスケット」
ゲスト:インバスケット研究所 社長 鳥原隆志さん

「インバスケット」は、未決裁の書類が入った「未処理箱」の意味で、制限された時間内に、主人公の立場になりきり、客からのクレームや部下からの相談など職場で起こるさまざまな案件を処理していくビジネスシミュレーションゲームです。この教材の開発・提供をてがける会社「インバスケット研究所」(堺市)が、防災研究者の指導のもと、南海トラフ地震発生時のメーカー企業を舞台にした「災害インバスケット」をリリースしました。
大津波警報が出る中、「従業員が行方不明」「近くの工場の火災が延焼中」「家族を探しに家に戻りたいという従業員を帰してよいか」など、被災した工場の責任者や部下から次々と送られてくるメールを、30分間でどう処理していくか、管理職としての判断力と危機管理能力が問われます。
南海トラフ地震に備え、企業のBCP(事業継続計画)が今、大きな課題になっています。被害を最小限にとどめ、事業を継続または早期に復旧させることが重要です。「災害インバスケット」は何を目指すのか、災害時に必要とされる能力は何か、インバスケット研究所の鳥原隆志社長に聞きます。

インバスケット研究所
https://www.inbasket.co.jp/

西村愛のひとこと
災害時は予想もしないことが次々と起きてしまいます。誰もが慌ててしまう中で、冷静に決断するのはたいへん難しいことだと実感しました。鳥原さんは『災害はいつ起きるかわからない。日ごろから、情報網の整備が大切』と話します。企業や家庭、町内会、さまざまな立場で考え、日ごろから訓練していきたいですね。

☆★防災小説 募集★☆
番組では、みなさんからの「防災小説」を募集します
 
<防災小説を書く上での約束事>
*自分を主人公にする
*地震が発生したときに自分がどう行動するか、何を感じるか、周りはどんな状況になるかなどを約800字(原稿用紙2枚程度)にまとめる
*必ず希望を持った終わり方にする
 
<今回の防災小説の想定>
*2019年6月の火曜日 あさ8時40分に発生
*あなたのいる場所で震度6強を観測
あなたは、その時、どこにいてどんな行動をとるでしょうか
 
<応募先>
封書:〒530-8304 MBSラジオ「ネットワーク1・17」防災小説 係
Eメール: 117@mbs1179.com
 
<〆切>
2019年6月14日(金)必着
  

いくつかの作品を、番組の中でご紹介します
番組で選ばれた方には、キャスターが選んだ素敵なものをプレゼントします
たくさんのご応募お待ちしています

第1175回「災害を"自分ごと"に~防災小説の取り組み」
電話:慶応義塾大学 環境情報学部 准教授 大木聖子さん

大地震に備えて、全国各地でざまざまな形の防災教育が行われています。南海トラフ巨大地震で全国一の津波高34メートルが想定されている高知県土佐清水市。市立清水中学校では、2016年から生徒たちが「防災小説」づくりに取り組んでいます。
800字程度で書く防災小説の結末は、「希望を持って終えること」が条件です。自らを主人公に、地震や津波が起きたら周囲はどんな状況になり、どう行動すれば命を守れるのか。災害を他人事ではなく「自分ごと」として想像してもらうのが狙いです。防災小説を考案し、清水中学校で出前授業を行っている慶応義塾大学環境情報学部の大木聖子准教授は「小説を書くことで、自分の中で一度"被災"している。被災する前のありがたさや、よりよい町の状況がイメージでき、生徒たちが何に向かって生きていけばいいのかを考えられるようになった」と、生徒たちの変化を語ります。番組では、防災小説の作品を紹介し、大木聖子准教授に取り組みの意義を聞きます。
 
千葉猛のひとこと
防災を「自分のこと」として考えるために、自分を主人公とした800字の小説を書く。災害が起きた時に自分が置かれる状況が、文章にすることによって鮮やかに目に浮かんできます。「防災小説」ぜひ全国の中学校に広がってほしいと願います。そして中学生だけでなく大人も書くべきです。私も書きます。

第1174回「『稲むらの火』を伝える語り部ジュニア」
ゲスト:広川町語り部サークル 熊野 享さん
    語り部ジュニア 木村 至希さん、佐々木 玲美さん

5月5日は「子どもの日」ということで、和歌山県・広川町で「語り部ジュニア」として学んでいる小学6年生の女の子2人をスタジオに迎えます。広川町では、安政南海地震(1854年)の際、豪商の浜口梧陵が稲わらに火を付けて村人を高台に導き津波から救ったという「稲むらの火」の逸話が、今も語り継がれています。
町には語り部サークルがありますが、来年2020年が梧陵生誕200年にあたるということで、地元の子どもたちに梧陵の人生や防災の心構えを伝えたいと、小学5、6年生から成る「語り部ジュニア」を発足させました。休日や夏休みを利用して、津波防災に関する講義を受けたり、梧陵が築いた「広村堤防」を実際に訪れたり、昨年度は1年間で12回の学習会を重ねました。
将来、広川町を離れたとしても、地震や津波が起こった際には「高台へ逃げて」と周りに伝えられる人になってほしいという願いから生まれた「語り部ジュニア」。子どもたちは、防災への心構えとともに、町の歴史や郷土愛も学びます。小学生が語り継ぐ大切さはどこにあるのでしょうか。語り部ジュニアの子どもたちと、彼らを率いる"先生"でもある熊野享さんに話を聞きます。
 
西村愛のひとこと
小学6年生のお2人は目を輝かせ、こう言いました。「梧陵さんのお話の中で1番伝えたいのは『災害で大変な中でも周りの人を思いやり、これから先を考えて行動する事が大切だという事』です」。過去の災害から何を学んで今後に生かしていくか。素直な子どもたちだからこそ感じられる事があると実感しました。