第1398回「災害時の熱中症対策」
オンライン:帝京大学医学部付属病院 高度救命救急センター長 三宅康史さん

本格的な夏がやってきました。最高気温が35度を超える猛暑日が続き、熱中症で病院に搬送される人も増えてきています。この暑さの中で、地震や豪雨などの災害が起こったら、私たちはどのように暑さから身を守ればよいのでしょうか。
「災害時は平時よりも熱中症になる危険性が高まる」と、帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長の三宅康史さんは警鐘を鳴らしています。災害時は、水や電気などの供給が制限される上に、避難所などの慣れない環境下に置かれます。被災した場合は、普段行わない復旧作業など重労働をすることも考えられます。熱中症を引き起こす3大要因「環境」「からだ」「行動」の全ての面で危険性が高まるのです。
水分補給や衣服、体を冷やすグッズなど、災害時の熱中症対策について、三宅康史さんに詳しく聞きます。
  
西村愛のひとこと
災害時は断水や停電になり、トイレの回数を減らすために水を飲むことを我慢する方も‥。水や非常用トイレを多めに準備する。身体を冷やすグッズや塩分が摂れるタブレットの備蓄も忘れずに!!日頃使っているものが災害時にも大活躍します。熱中症対策と併せて、エコノミークラス症候群の予防→適度な運動をする事も大切ですね。

第1397回「久留米市の土石流から考える土砂災害対策」
オンライン:九州大学大学院 教授 執印康裕さん

各地で土砂災害が相次いでいます。今月10日、福岡県久留米市で発生した土石流では、住宅7棟が損壊し1人が死亡しました。
土石流が襲った地区は、背面に山が連なり、ちょうど窪んだ谷間の真下に位置します。今回は想定を超える豪雨により、大量の水や土砂が高速で谷を流れ落ちました。山のふもとは勾配が緩いため、流れ落ちた土砂が真下だけでなく扇状に広がり、広範囲に被害が出たと考えられています。しかし、住宅は山裾から距離があったため、被害に遭った住民からは、「まさか土砂が流れてくるとは...」という声も聞かれました。
土砂災害から命を守る対策としては、まず「ハザードマップ」で自分が住む場所のリスクを把握する事が必要です。しかし、今回の土石流では土砂災害警戒区域外に土砂が流れ込んでいて、一概に「警戒区域から外れているから安全」とは言えません。どんなことに注意すればよいのか、土砂災害に詳しい九州大学大学院の執印康裕教授に聞きます。
  
西村愛のひとこと
「家のすぐ後ろにあった山が崩れたのかな?」と思いましたが、そうではなかったんですね。山裾から距離がある場所で、土石流で土砂や樹木が流れ込み被害が出ました。執印教授は『"前回の大雨では大丈夫だった"と過去の体験はあてにならない』と話します。安全な時に頑丈な建物へ!2階以上の場所に避難しましょう!

第1396回「被災地支援で活躍する"つなぎ手"」
ゲスト:NPO法人まち・コミュニケーション代表 宮定章さん

各地で豪雨・土砂災害が相次ぎ、被災者を支援するボランティアの活動も始まっています。ただ、どんな被災地でも、公的な支援を受けることができず置き去りにされる人たちが出てくるのが課題です。今、被災者支援に求められていることは何なのでしょうか。
「多くの被災地で、"つなぎ手"と呼ばれる人たちが活躍している」と、NPO法人まち・コミュニケーションの代表・宮定章さんは話します。"つなぎ手"とは、被災者に寄り添って声を聞き、行政や医療機関・弁護士など適切な専門家につないで、被災者を支援する人たちです。
熊本県人吉市で居場所づくりをしてきた女性は、2020年の九州豪雨の際、「物資色々あります」と看板を掲げました。そして、看板を眺めていた高齢男性に声をかけてボランティアにつなぎました。高齢男性は家の片付けをボランティアに手伝ってもらい、避難所に移ることができたそうです。
番組では、被災地で活躍してきた"つなぎ手"や、被災者の個別事情に応じた支援を行う「災害ケースマネジメント」について、宮定さんに聞きます。
  
NPO法人まち・コミュニケーション
http://park15.wakwak.com/~m-comi/
   
西村愛のひとこと
被災した方、ひとりひとりの状況や気持ちに寄り添い話を聞く。その上で行政や弁護士など専門家につないでいく『つなぎ手』のみなさん。新たな生活への一歩を踏み出し共に歩んでくれる存在。心強いですね。宮定さんは、その人の気持ちや行動力で『つなぎ手』になれると話します。あなたも次の『つなぎ手』になれるかもしれません。

第1395回「豪雨の際に屋外に出る危険」
オンライン:静岡大学 防災総合センター 教授 牛山素行さん

九州などで線状降水帯の発生が相次ぎ、河川の氾濫や土砂災害などが起こっています。近畿でも先月はじめ、和歌山県北部で線状降水帯が発生して記録的な大雨となり、真国川が氾濫し、1人が死亡、1人が行方不明です。行方不明の女性は、冠水した道路で車が立ち往生し、車から降りたところで流されたということです。
大雨や台風の時、私たちはどのように身を守ればよいのでしょうか。豪雨災害時の避難行動に詳しい静岡大学防災総合センターの牛山素行教授の調査では、風水害・洪水・土砂災害で死亡した人のおよそ半数は、家の外で亡くなっていることがわかりました。
大雨や台風時の避難情報は、5段階の警戒レベルにわかれていますが、「レベル5」はすでに災害が発生しているか、切迫している状態です。屋外に出ると命取りになりかねません。必ず「レベル4」までに避難し、たとえ避難目的であっても、風や雨が激しくなってから屋外に出る行動は、極力避けることが大切です。番組では、豪雨時の避難行動について、牛山教授に詳しく聞きます。

西村愛のひとこと
大雨で避難する時。どれぐらいの深さで人は流されるのでしょうか?
牛山さんは「よく目安が示されているが、あてにしない方がいい。流れの速さによっても変わってくる。人や車は簡単に流されてしまうんです。」と話します。雨が降っている時は『流れてくる水や川には近づかない』大切なポイント、非常時でも忘れずに!

第1394回「避難所となる学校施設の浸水対策」
オンライン:群馬大学 理工学部 災害社会工学 金井昌信さん

先月初めに日本列島を襲った豪雨では、避難所となる学校の雨漏りや床上浸水などが確認されました。全国の公立校の2割は浸水想定区域にあります。しかし、実際に浸水対策を行っているのは、そのうちの約15%に留まっています。復旧に時間のかかる電源施設や重要書類を置く職員室が水浸しにならないよう、上の階に移動するなどの対策が求められます。
「避難計画」の見直しも必要です。避難者を一旦、体育館に誘導し、川の増水・氾濫の状況に応じて、別の場所にバスで移送する学校もあります。移動中の被災リスクを考えれば、校舎の高い所でしばらく過ごし、落ち着いたら別の場所に移動するなど、「避難生活をする場所」と「命を守る場所」は分けて考えるべきです。
学校を避難所にするなら、和式トイレを洋式トイレに変えていくことも必要かもしれません。洋式トイレのほうが高齢者・障害者にとって使いやすく、水が流れなくても袋をかぶせて利用できるからです。
記録的な大雨が相次ぐ中、学校はどんな浸水対策をすべきなのでしょうか。災害社会工学が専門で、地域防災や避難行動に詳しい群馬大学の金井昌信教授に聞きます。
  
西村愛のひとこと
豪雨災害が心配で自宅避難ができないから、近くの学校へ避難してきたら‥。その学校が浸水してしまうこともあるんですね。『避難生活を送る場所と、命を守る場所は分けて考えることが大切』と語る金井さん。災害時の避難計画を考える国や自治体だけではなく、私たちにとっても大切なキーワードですね。