第1396回「被災地支援で活躍する"つなぎ手"」
ゲスト:NPO法人まち・コミュニケーション代表 宮定章さん

西村)各地で豪雨や土砂災害が相次ぎ、被災者を支援するボランティアの活動が始まっています。被災地では、公的な支援を受けることができず、置き去りにされる被災者の存在が問題視されています。今、被災者支援に求められていることはどんなことなのでしょうか。
きょうは、阪神・淡路大震災をきっかけに設立された神戸のNPO法人、まち・コミュニケーションの代表 宮定章さんにお話を伺います。
 
宮定)よろしくお願いいたします。
 
西村)宮定さんは、多くの被災地で「つなぎ手」と呼ばれる人たちが行ってきた被災者支援の実例を冊子にまとめたそうですね。この「つなぎ手」とはどんな人たちですか。
 
宮定)避難所に行かずに家に残っている被災者のところに赴き、どんなことに困っているのかを聞いて、行政や医療機関、弁護士、建築士など支援してくれる人につなぐ人たちです。被災者の生活再建が少しでも前に進むように活動しています。
 
西村)世間話なんかもしながら、困っていることを聞き出すのですね。今何をしたらいいのかを判断して伝える、専門的な知識のある人につなぐ――これはかなりありがたい存在ですね。
 
宮定)わたしはさまざまな被災地に行きましたが、困っている人は、そもそも何を質問したら良いのかがわからない人も多いんです。そういう人たちにとって、隣のお兄ちゃんやお姉ちゃんのような存在になれたら。少しでも助けになれたら良いと思っています。
 
西村)どんな人が「つなぎ手」として活動しているのですか。専門的な仕事をしている人もいるのですか。
 
宮定)今回、冊子の中では17人の「つなぎ手」を紹介したのですが、住民団体やNPO法人、個人などいろんな人がいます。
 
西村)専門的な知識や資格がないと「つなぎ手」には、なれないのでしょうか。
 
宮定)専門的な知識のある人もいますが、自分の専門知識と関係のないことでも何でも聞きます。いつも隣で話を聞く身近な存在として、自分のわからないことに関しても支援することもあります。
 
西村)話を聞くのが上手な人は、リスナーのみなさんの周りにもいるのではないでしょうか。リスナーのみなさんも「つなぎ手」になれるかもしれませんね。
 
宮定)関西には"おせっかい" という言葉がありますが、それに近いと思います。
 
西村)これは、ボランティアとはまた違うのでしょうか。
 
宮定)ボランティア団体もいます。まずは、話を聞いて、体調を見て、どんなことが必要なのかを気にかける、という存在です。
 
西村)今月も九州で豪雨災害が発生しています。既に「つなぎ手」の活動をしている人はいるのですか。
 
宮定)冊子に掲載されている福岡のNPO団体が岩手の「つなぎ手」と一緒に7月11日に久留米に向かいました。久留米は何度も災害にあっていて、知り合いだったこともあり、「家を見てほしい」と声がかかったそう。今は床下の泥を抜く作業をしているそうです。
 
西村)被災者からはどんな声を聞きましたか。
 
宮定)「また災害にあうかもしれない」と不安を感じている人もいますし、初めて浸水被害にあった人は、「これからどうしたらいいんだろう...」と不安を感じていて、自分だけでは打つ手がないという声を聞いています。
 
西村)何からやって良いかわからないですよね。そういうときに「つなぎ手」の人が話を聞いて、会話をすことで、整理ができるかもしれないし、アドバイスをもらうことで、やることの見通しが立って気持ちが明るくなりそう。ほかにはどんな活動をしてきたのか教えてください。
 
宮定)東日本大震災では、たくさんの人が被災したので、避難所や仮設住宅に行く人以外に家に残る人も多かったんです。そんな中、石巻市の「チーム王冠」というチームが被災者の家を回って、相談に乗っていました。石巻市の「チーム王冠」は、多くのボランティアが避難所や仮設住宅に向かう中、家に残っている人たちに物資を配りました。在宅被災者という言葉が大きくクローズアップされるようになったんです。家は潰れていなくても被災して苦労している人がたくさんいることを知ってほしいと活動。そして、仙台や日本全国の弁護士の応援もあり、災害ケースマネジメントについての会議を開きました。コロナ禍ではオンラインで会議をして、鳥取県や徳島県など災害ケースマネジメントの手引きや組織を作っている県も一緒に進めてきました。「チーム王冠」以外にも全国のボランティア、地域の支援者が取り組んでいます。2023年5月に国の中央防災会議の防災基本計画が更新され、災害ケースマネジメントの整備が盛り込まれました。わたしは東日本大震災の後、石巻市の雄勝町で漁師をしながら支援をしていたのですが、「チーム王冠」に助けてもらったという人にたくさん出会いました。なかなか日の目を浴びない活動でしたが本当に一生懸命取り組んでいました。
 
西村)災害ケースマネジメントとは、被災者の個別の事情に合わせた支援方法を提案すること。「つなぎ手」のみなさんがいるからこそ、災害ケースマネジメントが広がっていったのですね。この冊子の中には、熊本県で小学校の先生をしていたという「つなぎ手」の女性も紹介されていますね。
 
宮定)彼女は早くに小学校を退職し、地域の居場所を作ろうと集いの場を作りました。そこに来たら「楽しい!」という人がたくさんいたそうです。物資がたくさん集まったのですが、倉庫に限りがあるので、早く配りたいとうことで、家の前に「物資あります」という看板を出して。2020年の球磨川の豪雨のときです。
 
西村)あの時は、球磨川が氾濫して大きな被害が出ましたよね。日頃からのつながりもあり、物資がたくさん集まったのですね。
 
宮定)知り合いではない人も集まってきて。最初は物資をもらいに来ただけの人と毎回会って話をしていると、輪が広がっていきました。さまざまな特技を持っている人がいますから。「わたしにも何かできることがあったら」という人が増えて、被災者支援の活動が広がっていったんです。
 
西村)どんなつながりが生まれたのですか。
 
宮定)物資は、仮設住宅限定ではなく、誰にでも配られます。本人の本音としては(置き場所がないので)物資が早くなくなってほしいからということでした。物資を配っているといろんな人と出会いました。浸水被害に遭い、なかなか片付けが出来なかったおじいさんのところにメンバーがお手伝いに行ったことも。看板を見て依頼に来る人もいました。看板見て頼みにくそうにしている人に声をかけ、大変な状況になっていた家の片付けを一緒にしたこともあります。家が片付くことによって、「安心して避難先に行くことができた」と聞いています。
 
西村)家が片付かないと心の整理もできないですし、次に進めないですよね。話を聞いてくれる「つなぎ手」の存在は大きいと改めて感じました。最近では、大雨の被害も各地で起こっていますし、これからいろんなところで災害が起こると思います。これからの被災者支援に必要なことはどんなことだと思いますか。
 
宮定)災害ケースマネジメントが国でも位置づけられ、被災者を支援するさまざまな制度ができてきました。これからは、その制度をうまく使って、取り残される人が少しでも少なくなるようにしていきたいです。人が被災者を救うということに変わりはありません。さまざま情報や人をつなぎ、制度とともに被災者を救うことが大切です。
 
西村)「人が被災者を救う」という大切な言葉をいただきました。
きょうは、被災地支援で活躍する「つなぎ手」について、神戸のNPO法人、まち・コミュニケーションの代表 宮定章さんにお話を伺いました。