第1345回「夏休みに親子で取り組む『防災おさんぽ』」
オンライン:NPO法人ミラクルウィッシュ 代表 益田紗希子さん

西村)きょうは、この夏休みにぜひ、親子で取り組んで欲しい防災活動についてお伝えします。
2018年の大阪北部地震では、登校中の児童が地震で倒れたブロック塀の下敷きになり、亡くなりました。もし、外出中に地震が起きたら?登下校中に地震が起きたら?どのように危険を避け、どのように避難すれば良いのでしょうか。
きょうは、家の周りや通学路など、身近にある危険な場所を見つける「防災おさんぽ」などの防災活動を行っている、NPO法人ミラクルウィッシュ 代表 益田紗希子さんにオンラインでお話を伺います。

益田)よろしくお願いいたします。

西村)益田さんが防災活動に取り込もうと思ったきっかけを教えてください。

益田)わたしは、和歌山県出身で、津波の危険がありそうな場所に住んでいたのですが、独身時代は防災に興味を持ったことはありませんでした。東日本大震災が起きた3月11日に長女の妊娠が判明。妊娠によろこんで、病院から自宅に帰ったら、津波の映像が流れてきて涙が止まらなくなって。その時のことを思い出すと今も胸が苦しくなります。自分はお母さんになって良いのかなと。この子を守ることができる母親になりたいと、防災の勉強をはじめました。

西村)その時は、赤ちゃんを授かったよろこびや震災の悲しみで心が大変だったと思います。周りに頼れる人はいたのですか。

益田)夫が転勤族だったので、出産と同時に土地勘のない兵庫県・三田市に引っ越しをしました。

西村)土地勘もなく、実家も遠く、ご主人もお仕事で忙しいということは、いわゆるワンオペ育児だったのですね。

益田)そうなんです。子育ても初めてで、土地勘もないし、友達もいないし。親を呼ぶのも気がひける。家から出られない状況が半年ぐらい続きました。結構しんどかったですね。

西村)そこから頼る人や話し相手を見つけることはできたのですか。

益田)三田市には「赤ちゃん訪問」があって。自宅に保健師さんが来て「三田市には赤ちゃんを連れて行ける場所がありますよ」と教えてくれたんです。徒歩10分ほどのところに、そんな場所があると知ったことが一歩を踏み出すきっかけになりました。

西村)そこからどのように防災活動につながったのですか。

益田)赤ちゃんや子どもを連れて遊べる広場を運営している団体が、ママサポーターの募集をしていて手を挙げました。そこで、10人のママさんと一緒に「ミラクルウィッシュ」という名前をつけて活動することになりました。まずはおざなりしてきた防災のことをやりたいと。人に伝える以前に、自分の子どもを守れるようになりたいから、まずは勉強しようと思いました。何から勉強したら良いかもわからないけど、みんなで一緒にやれるのなら、と防災の勉強をはじめました。

西村)私も同じ気持ちです。まずは「大切な人を守るために」という気持ちすごくわかります。現在は大阪市内に転居し、2020年にNPO法人化、今年は防災士の資格も取得したのですね。

益田)勉強できることはありがたいこと。まだまだ知らないこともいっぱいあります。知ることによって、子育て目線で噛み砕いた言葉で、お母さんたちに伝えていけたらと思っています。

西村)今は、主にどんな活動をしているのですか。

益田)コロナ禍となり、防災の啓発について悩みました。配信やSNSなどオンラインを活用したり、状況によってイベントを開催したりして、できるだけ子育て中の人が参加しやすい形を模索しながら活動しています。

西村)コロナ禍でも親子で楽しみながら学ぶことができるのは良いですね。中でも益田さんがこの夏休みにおすすめしたい取り組みというのが「防災おさんぽ」ですね。

益田)周りをよく見ながら、普段使う道を歩いてみてください。倒れそうなブロック塀や自動販売機、瓦の屋根、家の玄関に置いてあるものなどを観察しながら「地震が起こったときにここは危ないな」「この道は地震が起きたら通れないかも」と想像しながら歩くといいと思います。

西村)先日7月17日に大阪市内で開催された「防災おさんぽ」に私も参加させていただきました。その模様と参加した保護者や子どもたちのインタビューをお聞きください。

音声・益田)自動販売機や看板、瓦の屋根などをチェックしてください。ブロック塀も結構あるので見に行きましょう。外に置いてある自転車道は道を寸断するので危ないです。

音声・西村)暑いです。今10時20分を回ったところです。子ども10人、大人4人で防災おさんぽをしています。今、小学校の横の道を歩いているのですが、意外と災害時に危ないものがたくさんあります。これからもみんなで探していきたいと思います。

音声・益田)1回止まりましょう。ここのブロック塀が倒れて割れちゃったら、むちゃくちゃ危ないよね。私たちの背の2倍ぐらいの高さがあります。――災害避難所は、小学校や中学校に設置されているので、このような場所に避難してください。もし今、ここで被災したら「災害避難所」のマークがあるところへ行く、と覚えておいてください。

音声・益田)この高架もこわいです。JRの線路ですね。こういうところも地震の揺れで割れちゃうかも。この道ももしかしたら通れなくなるかも...と覚えておきましょう。

音声・西村)ここのお宅...木が生い茂っていますね。

音声・益田)多分空き家。メンテナンスされていないので、崩れてくる可能性もあります。明らかにお手入れされてないこのような場所も危ないです。

音声・益田)ここ。バキっと折れるかもしれません。朽ちていますね。

音声・西村)テントの屋根を支えていたパイプだけが残っていて、錆びて曲がっています。たくさんがついているミラーが落ちてきたら危ないな...。

【参加者インタビュー】
音声・西村)なぜ「防災おさんぽ」に参加しようと思ったのですか。

音声・母A)防災の知識は、テレビなどで知ることしかなかったのですが、3児の母なので、もう少し意識して知識を高めたいと思って参加しました。子連れでも参加できますし。避難所の表示など以前から知っていることでも、聞くことで意識をするようになりますね。

音声・母B)5回目の参加です。子どもを1人で通学させているので、怪我など心配ごとはたくさんあります。インターネットで地図を見るだけでは気づけないことがたくさんあります。

音声・小学校6年生の女子児童)危ないところがいっぱいあるんだなと思いました。

音声・高校1年生の女子生徒)普段気づかないところに気づくことができて、すごく良かったです。ブロック塀っていろんな危険があるんだなと思いました。

音声・小学校4年生の男子児童)自分の通学路にも岩の割れ目とかいっぱいあるので、そこを通らないように気をつけたいと思います。特に錆びている屋根とか危ない。台風が来たら割れるので、そこの下は通らないように気をつけたいです。


西村)じっくり歩いてチェックしていくと、自転車で通り過ぎるだけでは気づかないところに気づくことができるんですね。

益田)赤ちゃんがいる家庭は、ベビーカーではなく、抱っこ紐などで歩いてみて欲しいです。災害時は、抱っこ紐で逃げるのがベストなのですが、その想定で散歩すると、より危険を実感できると思います。赤ちゃんを抱いていると足元も見えません。実際に避難する状況に近い形で、お子さんと一緒に歩いてみてください。

西村)下の娘が赤ちゃんのときに、前に娘を抱っこして、後に避難用のリュックを背負って、避難経路を歩いたことがあったんです。リュックの重さにびっくりしました。子どもを抱っこして、お兄ちゃんと手を繋いで、リュックも背負って、パニックになっている中を避難するのは大変。日頃から避難経路を確認しておかないといけないとすごく感じました。「防災おさんぽ」は、晴れているときに軽い荷物で行くのではなくて、小雨が降っているときや暗い時間など、いろいろなタイミングで試してみて、親子で意識を高めることが大事だと感じました。

益田)知らない土地に行ったときも「ここ危ないね」というふうな視点を持つことがすごく大事。住んでいる場所以外でも危険な場所はたくさんあるので、ゲーム感覚で「防災おさんぽ」を楽しんでみてください。いざというときに役に立つと思います。

西村)改めてこの「防災おさんぽ」で危険と感じたポイントは。

益田)古い一戸建ての家の瓦が落ちてくることもありますし、家自体が潰れてしまうこともあります。ブロック塀は新しいものに変わっているところが多いのですが、塀はキレイになっていても下の方がブロック塀のままだったり...。修繕されているとは言え、継ぎはぎされているだけのところもありました。

西村)ブロック塀の上に植木鉢を置いている家もよく見かけました。自転車や自動販売機も危ないですね。

益田)意外と危ないものがたくさんがあると思うので、そんな目線を持って歩くと良いと思います。

西村)「今、地震が起こったら、指定避難所の看板があるこの小学校に避難しましょう」と教えてくれましたね。

益田)子どもたちは、指定避難所のマークをあまり意識していませんよね。実は近くの小学校は避難所になっているということを知ってもらえたら。電柱などに「あと○mで避難所」という表示もあるので、その方向に避難すれば安心ということは伝わったと思います。

西村)自分の家の近くの指定避難所は知っていたのですが、旅行先などでも避難先の確認をしながら、日頃のお散歩に組み込んでいくことが大切。ミラクルウィッシュの「防災おさんぽ」のイベントは、Instagramなどで発信中です。益田さん、これから「防災おさんぽ」でどんなことを伝えていきたいですか。

益田)南海トラフがいつ来るかわからない状況です。災害時に大人が小さい子どもを守れるように、少し学ぶだけで命を守ることができるとを信じて活動しています。ぜひ「防災おさんぽ」をすることで、防災の意識を高めてもらえたらうれしいです。

西村)きょうは、夏休みにぜひ取り組んでほしい「防災おさんぽ」をテーマに、NPO法人ミラクルウィッシュ 代表 益田紗希子さんにお話しを伺いました。