第1269回「東日本大震災10年【3】
           ~宮城県と福島県で震度6強」
電話:宮城県石巻市在住 1・17リポーター 武山友幸さん

西村)今月13日、土曜の夜11時7分ごろ、福島県沖を震源とする地震があり、宮城県と福島県で震度6強を観測しましたね。
メールが届いています。香川県高松市 ラジオネーム・二代目みちのすけ さんからいただきました。
「福島、宮城で震度6強の地震がありました。お住まいのみなさんが気がかりです。東日本大震災から10年が経とうとする今、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続く中で、自然の脅威を見せつけられている感じがします」
今回の地震の規模を示すマグニチュードは、7. 3と推定されています。宮城県石巻市の石巻港で20cmの津波が観測されましたが、被害はありませんでした。ただ、激しい揺れの影響で150人以上がけがをしました。神社の灯篭が倒れて車を直撃し、けがをした人も。住宅の壁が崩れる被害もありました。また、東北新幹線の電柱が20ヶ所以上折れ、常磐道では約70mにわたって、大規模な土砂崩れがありました。震度6強を記録した福島県新地町を中心に住宅被害が1400件以上あり、大規模な断水も。まだまだ油断はできません。きょうは、地震についてお送りします。
今週の放送は、宮城県石巻市に住む1. 17リポーターの武山友幸さんに電話でお話を聞きます。武山さんおはようございます。

武山)おはようございます。よろしくお願いいたします。

西村)武山さん、石巻市は13日の地震では震度6弱を観測しましたね。地震が起こったときはどこにいたのですか。

武山)自宅の2階の寝室にいました。ちょうど揺れる前にトイレに行こうと思って起きていたんです。起き上がって立とうとしたときにカタカタカタ...と音がして。いつもの地震かな?とあまり気にしなかったんですが、いきなり縦揺れが来て、10秒くらい続きました。そのあとに激しく横揺れが来て。怖かったです。横揺れは船に乗っているような揺れでしたね。
10年前は、職場で仕事をしているときに被災して、そんなに大きな揺れは感じなかったのですが、今回は布団の上だったので、激しい揺れを感じて怖かったです。


西村)横揺れは長かったのですか。

武山)10年前は2~3分程度だったと思いますが、今回も2分以上は続いていました。

西村)揺れているときは、どんなことを思っていたのですか。

武山)10年前を思い出しました。1階に両親が寝ているのですが、揺れがすごくて動けなくて、声をかけるのが精一杯でした。「布団をかぶって!」と声をかけたのを覚えています。大きく揺れ出してから緊急地震速報が鳴って。テレビをつけてまず情報確認をしなければと思いました。

西村)テレビはつきましたか。
 
武山)停電はしていなかったので、テレビやラジオで情報収集をすることができました。
 
西村)すぐに情報を得ることができるというのは、安心に繋がりましたか。
 
武山)やっぱり情報は心強いです。インフラだと思います。
 
西村)1階に寝ていたご両親は無事でしたか。
 
武山)父の部屋にあった額縁の固定が甘くて落ちて割れてしまいました。少しずれていたらけがをしたかもしれないと反省しています。
 
西村)もっと大きな地震で大きな揺れだったら、ガラスの破片がお父さまの体に降ってきたかもしれないですね。私たちも、今一度、寝室や家の中をチェックしなければなりませんね。
 
武山)何故この時期に地震が起こったのだろうと考えます。やはり(地震を)忘れるなという意味だと思います。
 
西村)家の中のほかの場所はどうでしたか。
 
武山)母が居るところは無傷でした。台所と私の2階の部屋はめちゃめちゃになってしまいました。置いているものの7割が落下してしまって。家具は備え付けになっているので倒れてくる心配はないのですが。
 
西村)キッチンでは、食器棚が倒れたりしましたか。
 
武山)食器棚は大丈夫だったんですが、タイミングの悪い事に扉を閉めていなかったので、お皿が14~5枚くらい割れてしまいました。
 
西村)お皿を片付けるのも大変だったでしょうね。
 
武山)夜は何もする余裕がなくて。また大きい余震が来るのではと眠れなかったです。朝になって片付け始めて、外壁や屋根を確認しました。幸いなことに損傷はありませんでした。
 
西村)壁にヒビが入ったり、水道管が破裂していたりということはありませんでしたか。
 
武山)自宅は海からは1kmくらい離れた山手なのですが、近所に被害はありませんでした。南部にある山元町では断水があり、回復したのが木曜日の夕方でした。
仙台の水源になっている川の上流地域でも断水がありました。とあるお宅で、灯油のパイプが破損して灯油が漏れ出して。その地域の水の供給ができなくなって断水したんです。その断水が解消されたのが、金曜日の朝でした。

 
西村)土曜の深夜11時7分ごろに起きた地震で、そこまでかかるんですね。やはり水の備蓄は大切だと改めて思います。
 
武山)風呂に水をためておかないといけませんね。
 
西村)東日本大震災のときは津波の被害を受けましたが、今回も津波の心配をしたのではないですか。
 
武山)揺れているときから、絶対津波が来る!と思っていました。でも石巻港で20cmということでした。
 
西村)高台に避難した方もいらっしゃったのですか。
 
武山)日和山公園という高台に避難した人もいました。
 
西村)その後、余震の状況はいかがですか。
 
武山)余震は、結構続いています。今後1週間以内は、震度6強クラスの余震があると、当日の深夜に気象庁から発表がありました。
 
西村)余震は1日何回ぐらいありますか。
 
武山)私が感じるのは、多いときで5~6回、少ないときで2回くらいです。
 
西村)今回の地震で、気を付けた方がいいところなど、何か思ったことはありましたか。
 
武山)10年経つとどうしても忘れたり、まあいいかと思ってしまったりすることが多いですよね。食料や水の備蓄、あとは靴を置いておくなど。当たり前のことを普段からやることが大事だと思います。
 
西村)武山さんはご両親の介護をしているということですが、もし今回の地震がもっと大きかったとして、避難所に行こうと思いますか。
 
武山)それは悩みどころです。感染症の状況もありますし。どうしても避難が必要なときは、車に避難することもあるかもしれません。
 
西村)車には、何か準備しているものはありますか。
 
武山)食料は必ず置くようにしています。簡単にエネルギーを取ることができるゼリーや飴など。量が少なくても、カロリーの高いものを用意しています。あとは飲み水。大きいペットボトルは場所を取るので、500~600mlのペットボトルを必ず数本置いておくようにしています。
 
西村)武山さん、いろいろと具体的なお話をしていただきまして、ありがとうございます。
きょうは、宮城県・石巻市に住む1. 17リポーターの武山友幸さんにお話を伺いました。
 

ここからは、今回の地震について改めて振り返っていきます。亘佐和子プロデューサーです。
 
亘)よろしくお願いします。
 
西村)今回の2月13日に起こった地震。改めてどんな地震だったのでしょうか。
 
亘)東日本大震災を引き起こした地震の余震という発表がありました。政府の地震調査委員会によりますと、少なくとも今後10年間は、大規模な余震が発生する状況が続くということです。
 
西村)東日本大震災の発生から20年近く経っても、大きな地震が少なくとも今後10年は起こる可能性があるということですね。
 
亘)東北地方の太平洋側は、海側のプレートである太平洋プレートが、陸側のプレートである北米プレートの下に沈み込んでいく場所(日本海溝)です。10年前の東日本大震災は、このプレートが沈み込んでいる境目のところで発生した地震でした。
 
西村)あのときは、境目で地震が起こったのですね。
 
亘)マグニチュード9. 0という観測史上最大の規模の地震が起こって、巨大な津波が引き起こされました。今回はプレートの境目ではなく、海側のプレートの中で起きた地震。東日本大震災の地震と比べて深いところで起こった地震でした。
 
西村)どれぐらいの深さだったんですか。
 
亘)深さ55kmという深いところで地震が発生したために、大きな津波を起こすほど海底の地形が変化しなかったんです。浅いところで地震が起こると海の地形に影響を及ぼすので津波が起こります。今回は深いところで起こったので、たまたま津波が小さかったということなんです。
 
西村)津波は観測されましたよね。
 
亘)宮城県の石巻港で最大20cmの津波が観測されました。気象庁は、20cmを超える津波が予想される場合には、津波注意報を出すんです。でも、今回は注意報を出すほどの津波にはならないだろうということで、「海面変動の可能性あり」という発表になりました。
 
西村)つまり、大きな津波が起こる可能性は低いという。
 
亘)今回は津波の被害はなかったのですが、地震調査委員会の発表では、震源がもう少し浅くて、もう少し地震の規模が大きければ、高い津波が発生する可能性があったということでした。
 
西村)怖い発表ですね。
 
亘)もし少し場所が違っていたら、被害が出るような津波が起こっていたということなんです。東北地方の太平洋沖では、今後も津波を伴う地震が起きる恐れが十分にあるということでした。
 
西村)私もこの地震が起こった直後に、石巻に住んでいる友人に連絡をしたんですが、津波が来るかどうかが一番怖かったと言っていました。先ほどの武山さんからのレポートにあったように、揺れはとても大きかったんですよね。
 
亘)宮城県の山元町では、揺れの勢いを表す加速度が1432ガルを記録。加速度とは、建物に壊れる力を与えるものです。熊本地震のときに益城町で記録したのが、1362ガルという数値だったのですが、今回は、それを上回る1432ガルを記録しました。揺れの勢いは非常に強かったと言えます。
 
西村)その割には建物の被害が少なかったですね。
 
亘)揺れの周期の問題です。今回は、揺れの周期が1秒以下の短いものが大半でした。周期とは揺れが1往復するのにかかる時間。今回は、1往復するのにかかる時間が、1秒以下の短いものが多かったんです。0. 5秒以下のすごく短い振動も目立ったそうで、このような短い周期の揺れの場合は、建物よりもブロック塀や電柱などの小さい構造物に被害が出やすいんです。
今回、東北新幹線で20本以上の電柱が損傷したのは、短い周期の揺れが原因。2018年の大阪北部地震で、ブロック塀がたくさん倒れましたが、これも非常に短い周期の地震波がメインだったことが影響しています。だから揺れとしては大阪北部地震に似ている。阪神・淡路大震災や熊本地震では、周期が1~2秒のやや長い揺れが中心だったので、多くの建物に被害が出たのです。
15日の午後には和歌山で震度4を観測する地震がありました。
震源は和歌山県北部、地震の規模を示すマグニチュードは4. 1ということで、和歌山市で震度4、大阪の岬町でも震度3を観測しました。

 
西村)これはどんなところで起きた地震だったのでしょうか。
 
亘)これは先ほどの海の方で起こる地震とは違って、陸のプレートの浅いところで起きた地震。和歌山県の北部では普段からこのような地震が多いのです。震度1~2はよくあります。和歌山県北部で起こる地震は、マグニチュードは小さいのですが、浅いところで起こるので、揺れが大きくなることが時々あります。だから今回、和歌山市で震度4という値が観測されました。
和歌山市議会の議場で、天井の照明の一部が落下する映像をご覧になった方がいらっしゃると思います。

 
西村)みなさん、けがなく無事で良かったと思いました。
 
亘)ちょうど市長が新年度の予算案の説明をしていたときで、議員さんもたくさんいました。天井の金属製の装飾パネルが100枚も落ちたそうです。和歌山市ではこのパネルを取り外して、照明の下には防護ネットを設置。役所の建物は古いものも多いので、見直す機会になったのでは。
 
西村)自宅だけではなく、職場などいろんな場所の備えも大切ですね。
 
亘)西村さんも、何か改めて感じることはありましたか。
 
西村)寝室に大人の靴は用意していたのですが、子供の靴を準備してなかったんです。すぐサイズが変わるので。寝室に物が多いので、今地震が起きたらいろんなものに当たって怪我をしてしまうと思いました。日頃から片付けをしなければと思いました。亘さんは阪神・淡路大震災で被災されていますが、今回の地震で必要だと感じたのはどんなことでしたか。
 
亘)阪神・淡路大震災のときは、寝ているときに被災したのですが、今回の地震も夜11時過ぎてから起こりましたね。家具が倒れてきましたが、布団をかぶっていて助かったのを思い出しました。武山さんの話にもあったように、布団をかぶるというのは重要だと感じました。避難グッズも見直していきたいと思います。
 
西村)亘佐和子プロデューサーのリポートでした。