第1358回「『ぼうさいこくたい2022』取材レポート」
取材報告:西村愛キャスター、早川紗世ディレクター

西村)きょうは、先日開催された「ぼうさいこくたい2022」のレポートをお送りします。一緒に取材をした早川紗世ディレクターです。
 
早川)よろしくお願いします。
 
西村)「ぼうさいこくたい」は関西で初めて開催されました。こくたい、というとスポーツのイメージありますが、防災推進国民大会のこと。子どもでもわかりやすくひらがな表記になっています。この「ぼうさいこくたい」は、内閣府などが主催する日本最大級の防災イベントで、災害の経験と教訓を未来に繋ぐため、毎年開催されています。今年は参加団体が今までの中で最も多く、320団体、272プログラムが2日間にわたって行われました。こんなに全国で災害に取り組んでいる団体があるのですね。それだけ災害が増えてきているということ。しっかり向き合わなければいけない問題だと実感しました。
 
早川)会場には親子連れもたくさん来ていましたね。
 
西村)子どもたちも楽しんでいました。はじめに「よんなな防災会」ブース巡りツアーに参加してきました。「よんなな防災会」とは、47都道府県の公務員をはじめ、地域防災の担い手や民間企業に勤めている人、中学生~大学院生が有志で参加している団体です。防災・減災をキーワードに、勉強会、共有会、交流会などを通じて学び合い、繋がりを深めています。その「よんなな防災会」主催のブースを案内するのは、MBSの夕方の番組「よんちゃんテレビ」のお天気コーナーでもおなじみ、気象予報士の広瀬俊さんです。わたしは夕方4時半からのツアーに参加したのですが、約20人が参加していて、満員御礼のツアーとなりました。広瀬さんが、気象予報士の目線で注目ブースを案内してくれたのですが、その中でわたしが印象的だった展示をご紹介します。「伊勢湾台風カルタ」の展示です。
 
早川)伊勢湾台風は1959年(昭和34年)に発生した台風15号です。
 
西村)被害が大きかったことしか知りませんでした。台風災害としては、死者行方不明者数が明治以降最多の5098人。この伊勢湾台風から60年という節目が2019年でした。それをきっかけに、名古屋市港防災センターが伊勢湾台風を経験してきた人々の体験談を集めてカルタを作りました。私が一番印象的だったのは、
「被災して いかだで移動し 避難所へ」
というカルタです。流れてきた木材を利用して作ったのでしょうか。この時代ならではだと思います。
 
早川)このカルタ、"いかだ"という記述が多くて、
「電車より、いかだ行き交う 駅舎かな」
というカルタもあります。
駅のホームが浸水して電車が通れず、いかだで物資を運んでいる写真が載っています。
 
西村)この「伊勢湾台風カルタ」はホームページがあります。今紹介した言葉も写真も載っていますので、気になった人はぜひご覧ください。オンラインショップでも購入することができます。幅広い世代で楽しみながら災害について知り、その土地の歴史を語り継いでいくひとつのツールになりますね。
 
早川)子どもと一緒にできます。昔の写真を見ながら「台風が来たらこうなる」という勉強にもなり、備えにも繋がると思います。
 
西村)続いて、屋外のなぎさ公園の中のブースをご紹介します。岩手県大槌町のみなさんがブースを出していました。岩手県沿岸のほぼ中央にある大槌町は、古くから漁業の盛んな港町。毎年秋には、お祭りがあって、虎の舞などの伝統芸能、神輿などで賑います。大槌町は2011年の東日本大震災で町の中心部を含む広範囲が被災し、甚大な被害を受けましたが、復興へ向けてしっかりと歩み続けているといいうことが、ブースから伝わってきました。お話を伺ったので聞いてください。
 
音声・西村)こちらは「おらが大槌夢広場」のブースです。
 
音声・北浦さん)「おらが大槌夢広場」の北浦と申します。
 
音声・小笠原さん)大槌町役場の小笠原と申します。
 
音声・西村)おふたりはおいくつですか?
 
音声・北浦さん)35歳です。
 
音声・小笠原さん)40歳です。
 
音声・西村)北浦さんは関西のご出身だそうですね。
 
音声・北浦さん)出身は京都で、今は大槌町に住んでいます。
 
音声・西村)なぜ大槌町に?
 
音声・北浦さん)防災や復興について、兵庫県立大学の大学院で学んでいたのですが、コロナ禍でなかなか他の被災地のことがわからなくて。行ってみないとわからないことがたくさんあるので、被災地に足を運んで学びたいと思ったからです。震災から10年経っても必要なことや大事なことはあると思います。なにか力になれたらと思って行きました。
 
音声・小笠原さん)わたしたちのような経験者が今後10年、100年でいなくなっていく。そんな中で気持ちを薄れさせずに伝えていくことが必要。
 
音声・西村)若い世代の語り部は育ってきていますか。
 
音声・小笠原さん)昨年度から育成制度について町民の意見を交えて考えいます。今は意識を高める講座を開催して、伝承のスタートラインに立ち、語り部を1人でも多く増やそうというと声をかけているところです。

 
西村)大槌町の一般社団法人「おらが大槌夢広場」、大槌町役場のブースでお話を伺いました。実際に震災を経験した人がこれからの世代や震災を経験してない地域の人たちに伝えようと試行錯誤しています。
 
早川)語り部の育成が大きなテーマなのですね。
 
西村)その他にも大槌町役場のみなさんが語った本を実際に出版していて、これを語るために使ってもらえたらとのこと。大槌町役場は高さ10mの津波に襲われ、庁舎の2階まで津波に飲み込まれ、町長をはじめ、40人の職員が命を落としました。そのときの記録が本になっていて、インターネットでも購入することができます。
さらに、この日は早川ディレクターと娘さんの桃佳ちゃんが屋外展示の取材をしてくれたんですよね。
 
早川)なぎさ公園周辺には、30以上の団体が屋外展示を行っていて、多くの家族連れで賑わっていました。お天気も良かったので、キッチンカーが出ていて、お弁当を持ってピクニックしている家族連れも。全てを回りきることはできなかったのですが「NTT西日本」のブースで、災害に対する取り組みを取材しました。その様子をお聞きください。
 
音声・早川)こちらはどんなベースですか。
 
音声・スタッフ)音声で相手にメッセージを伝えることができるサービス「災害用伝言ダイヤル171」を実戦形式交えながら体験してもらっています。
 
音声・早川)桃佳さん(小学4年生・9歳)は「災害用伝言ダイヤル171」を使ったことはありますか。
 
音声・桃佳さん)ありません。
 
音声・スタッフ)「災害用伝言ダイヤル171」って聞いたことはある?
 
音声・桃佳さん)ないです。
 
音声・スタッフ)災害が起きたときは、みんなが電話を使うので混雑して繋がらなくなります。離れたところにいる人にメッセージを伝えたいときに「災害用伝言ダイヤル171」を使ってみてください。
まずは「171」と押してください。
 
音声・伝言ダイヤル)「こちらは災害用伝言ダイヤルセンターです。録音される方は1、再生される方は2...」
 
音声・スタッフ)録音をするので1を押してください。
 
音声・伝言ダイヤル)「ピッという音の後に30秒以内でお話ください」
 
音声・桃佳さん)「わたしは小学校に避難しています。元気です」
 
音声・スタッフ)「災害用伝言ダイヤル171」という名称は知っているけど内容を知らない人がほとんどです。使い方はそんなに難しくないので覚えてほしいです。災害時に救われる命があるかもしれません。
 
音声・早川)初めて「災害用伝言ダイヤル171」を使ってみてどうでしたか。
 
音声・桃佳さん)災害が起きたときには「災害用伝言ダイヤル171」を使ってみようと思います。すごく良い経験になりました。

 
西村)いわゆる声の伝言板ですね。実際にわたしも使ったことがあるのですが、難しいですよね。
 
早川)取材の音声では詳しい工程を省いているのですが、メッセージの録音・再生には電話番号が必要です。このサービスを使いたい場合は事前にどの電話番号で録音・再生するかを家族できちんと決めておくことが重要。娘の桃佳にはわたしの携帯番号を覚えさせているので、今回はわたしの携帯番号で録音をしました。でも、なかなか人の携帯番号って覚えてないですよね。
 
西村)わたしも夫の携帯番号、わかりません...
 
早川)今は家に電話を引いてない家庭もありますし。災害時に携帯電話が繋がりにくいことが多いので、公衆電話の使い方も子どもに教えておく方がいいですね。
 
西村)そもそも公衆電話がどこにあるのか。
 
早川)公衆電話の場所はインターネットで調べることができるのですが、災害時はおそらくスマホが使えません。公衆電話の場所を調べることができないので、事前の備えが必要です。「災害用伝言ダイヤル171」は、毎月1日と15日に体験利用ができるので、家族で使ってみてください。
 
西村)その他にも体験をしてきたんですよね。
 
早川)神戸市消防局の地震の体験車「ゆれるん」が会場に来ていて、たくさんの子どもたちが列をつくっていました。震度7の揺れを体験できるということで、わたしと娘で体験してきました。
 
西村)震度7といえば東日本大震災の震度ですね。
 
早川)東南海地震を想定した震度にしているとのこと。体験の様子と神戸市消防局 川原さんのインタビューをお聞きください。
 
音声・早川)大きな地震を体験したことありますか。
 
音声・桃佳さん)ないです。
 
音声・早川)どんな感じだと思いますか。
 
音声・桃佳さん)すごく揺れると思います。家具が揺れるとビックリします。
 
音声・早川)そろそろ順番です。
  
音声・桃佳さん)楽しみです。
 
音声・早川)準備はいいですか。
 
音声・桃佳さん)めっちゃ緊張します!
 
「想定:東南海地震」ガタガタガタガタ(体験車が激しく揺れる)
 
音声・桃佳さん)めっちゃ揺れてる!おーすごい!!6弱すごい!怖くはないよ。
 
音声・早川)終わった。怖かった!震度7の揺れは私も初めて体験しました。桃佳さん、震度7の揺れを体験してみてどうでしたか。
 
音声・桃佳さん)思っていたよりすごく揺れてビックリしました。
 
音声・早川)これぐらいの揺れの地震が大阪に来る可能性があります。これからはどうする?
 
音声・桃佳さん)地震がいつ来てもいいようにしっかり備えておこうと思います。
 
音声・神戸市消防局 川原さん)阪神・淡路大震災から27年経って、地震を知らない人が増えてきています。そんな中、東南海・南海地震に備えてもらうために、まずは地震を体験してもらって、地震の恐ろしさを知ってもらうことで、地震に対しての備えをしてもらおうと思っています。悲鳴も聞こえて、かなり怖がっているお子さんもいますが、それが地震への備えに繋がると考えています。地震はいつ起こるかわかりません。日頃から家族で話し合ったり、家具の固定をしたりと備えてほしいですね。
 
早川)神戸市消防局の川原さんのお話も合わせてお送りしました。
 
西村)早川さん、怖そうでしたね。息切れしていましたね。
 
早川)怖かったです。
 
西村)桃佳ちゃん、すごく冷静な声でしたが、どんな状況だったのですか。
 
早川)テーブルと椅子がセットしてあり、テーブルは固定されているので動かないのですが、椅子は固定されてないので、震度7の揺れだと体を持っていかれる感じ。これが家なら家具は倒れるし、食器は飛んでくる。かなり怖い思いをすると思います。安全が保証された中での震度7の揺れ体験は、子どもにとっては遊園地のアトラクションみたいだったのかも。
 
西村)家では、食器棚のストッパーをつけておく、食器が飛ばないようにマットを敷いておくなど細かい対策が大切ですね。
 
早川)重いものは下に、軽いものは上に置きましょう。
 
西村)転倒防止板をセッティングするなど家具が倒れてこないように備えなければ。桃佳ちゃんからも「しっかり備えようと思った」という言葉がありました。
 
早川)桃佳は家に帰って、勉強机の上の方に置いてあった辞書を下に移動させていました。体験したかいがあったと思います。
 
西村)冷静だったので、そんなに怖くなかったのかなと思ったのですがきちんと備えを実践したのですね。大きな経験になりましたね。実際体験することは大事なこと。家族、友達、ご近所さんとも話し合って、日頃から備えを実践していくことが大切だと思いました。
きょうは、神戸で開催された「ぼうさいこくたい2022」の様子を早川紗世ディレクターと一緒にお伝えしました。