第1275回「新年度スタート!一人暮らしの備え」
電話:危機管理教育研究所代表 国崎信江さん 

西村)新年度が始まりましたね。進学、就職、転勤などで、一人暮らしを始める人も多いのではないでしょうか。いまや、全国の世帯数の3割は一人暮らし世帯。どんな備えが必要か、危機管理教育研究所代表の国崎信江さんにお話を伺っていきます。

国崎)よろしくお願いします。

西村)一人暮らしを始めたばかりの頃って、ワクワクドキドキもあると思いますが、不安なこともたくさんあると思います。一人だから、身軽で何とかなるのか、一人だから心配なのか、この災害が多い世の中で、国崎さんはどう考えますか。

国崎)一人であることの心配に備えていただきたいと思います。最大のリスクは、事故や災害で被害に遭っても、誰にも気付いてもらえないこと。自分の安否を確認してくれる人を作っておくことをおすすめします。例えば、趣味があれば、趣味仲間、ファンクラブ系の友達など。同じ一人暮らしの環境の人がいたら、お互いに安否確認することを決めておくといいと思います。
根本的には、自宅を安全な環境にしておくことが大切。


西村)自宅で一人で怪我をしたら大変ですよね。どうしたら良いのでしょうか。

国崎)身を守るためには、まずは家具を固定すること。家具はできる限り少ない方が良いです。プラスチックの収納ケースなど軽い素材の家具をおすすめします。

西村)まずは軽い素材のものを選ぶことが大事なんですね。

国崎)トイレに閉じ込められないように、トイレはドアストッパーを常につけた状態で入るようにしましょう。地震が起きたときに中に閉じ込められると「助けて!」いう声が外に響きにくいからです。一人暮らしなので、見られる心配はありません。扉の下にはめるタイプは毎回大変なので、扉に取り付けておくタイプがおすすめです。子どもの指挟み防止器具として売られているものが便利です。
物を減らして、倒れるもの、飛んでくるもの、走り回るものを減らすこと。事故や自然災害で怪我をしないための安全な部屋作りを意識していただきたいと思います。


西村)先日、東日本大震災10年を迎えて、石巻で被災した人とお話をしました。3月20日の地震のときもかなり大きく揺れて、家具が左右に揺れたり、椅子に座っている人が左右に大きく移動したという話を聞きました。
関西に住む私たちも揺れを想像して、家具の設置や部屋作りをしていかなければいけませんね。

国崎)ポイントは、できるだけ「物を減らす」こと。どうしても必要な家具は、できるだけ「軽めの素材」にして、「しっかりと固定」。
この3つのポイントを意識していただきたいと思います。


西村)我が家は子どもがいるので、写真を飾るのが趣味なんです。写真立てのガラスが危ないと思ったので、100円均一で見つけたプラスチック製のものを使っています。

国崎)その視点はすごく大事です。家具や家電製品は固定方法をイメージできると思うのですが、生活雑貨類は固定しにくいですよね。柔らかい素材の生活雑貨類を選ぶということはとても重要です。
 
西村)動線の確保は、どのようなポイントに気をつけたら良いでしょうか。
 
国崎)玄関などの避難動線上に物を置かないことを意識してください。
 
西村)大きな姿見などは倒れないように固定しておいた方が良いですね。そもそも鏡を置かない方が良いでしょうか。
 
国崎)あったら便利なものを我慢するとストレスになってしまうかもしれないので、例えば割れない鏡にするとか。気に入った鏡が良い場合は、しっかりと固定してください。
 
西村)新型コロナの感染防止を考えると、自宅で過ごす事ができる人は、避難所に行かずに在宅避難が良いですよね。
 
国崎)集団生活は感染リスクが高まるので、在宅避難できる方は在宅避難が推奨されています。
  
西村)でも1人で家にいると不安が増すのでは。
 
国崎)一人暮らしの身軽さを生かして、実家や友人宅に疎開するのも良いです。避難する必要はないけど、精神的に不安な場合には、身近にいる方に頼ることも考えてほしいですね。
地域のコミュニティに積極的に参加すると良いですが、実際にはそのようなコミュニティを求めていない人もいると思います。無理に地域のイベントに参加しなくても、例えば地元の人が経営している行きつけの店を見つけて、仲良くなっておくとか。よく行くコンビニ、カフェ、レストランなどお気に入りのところを見つけておくと良いです。

 
西村)お気に入りを見つけても、お店の方と仲良くなるところまでいかない人もいますよね。私もそのタイプですがちょっと勇気を出して話しかけてみようかな。
 
国崎)さらに簡単なのが、防災アプリをダウンロードしておくことです。
   
西村)防災アプリはいろいろあると思いますが、どれが良いのでしょうか。
 
国崎)わたしのおすすめは「My SOS」というアプリです。自分が SOS ボタンを押したとき、アプリをダウンロードした人が近くにいれば、その人が救助に駆けつけてくれるというアプリです。
 
西村)近くにいる人が救助に駆けつけてくれるんですか!
 
国崎)普段は繋がっていなくても、いざというときにだけ助け合う仕組み。これが今時の助け合いの形かもしれないですね。
 
西村)どんな人が助けに来るかわからないから、ちょっと不安...!?
 
国崎)詳細は伏せられていますが、「男性」などある程度の情報は見えるので、来てもらいたい人が選べるんです。選んだら、「今こんなことで困っているので、警察に連絡してもらえませんか」とか「直接来てもらえませんか」等、メッセージでやりとりができます。
 
西村)メッセージでやりとりするということは、自分の個人情報も登録するのですか。
 
国崎)相手に表示されている情報は一部です。全部丸見えということはありません。
  
西村)見知らぬ人が家に入ってくると思うと、ちょっと怖いなと思うのですが。
  
国崎)そういう場合は、女性を選んだり、自分の代わりにどこかに電話をしてもらったり。直接来てもらわなくても、何かお願いできることがあれば依頼するのも良いです。
 
西村)自分なりにいろいろな使い方を考えると活用できるのかも。都会の一人暮らしだとなかなか近所との関係を作るのが難しいという話も聞きます。
 
国崎)いま紹介した防災アプリ以外にも、さまざまなアプリがあります。自分が助けを求めたいときに、ショートメッセージを一斉配信するものなど。例えば 「goo 防災」。一般的な防災アプリを検索していただくと、安否確認機能があるアプリが結構あるので探してみてください。事前に仲のいい友達を全部登録しておいて、困ったときに一斉配信して、助けを求めることもできます。
 
西村)在宅避難時に備えて一人暮らしの場合は、どんなものを用意しておくと良いですか。
 
国崎)水や食糧はできるだけ多めに用意するのが理想ですが、一人暮らしの場合、たくさんのものを備蓄しておくのは難しいですよね。災害時だから、非常食という考えではなく、普段から自分の飲みたいものや食べたいものを少し多めに備蓄しておくのが良いです。わたしが最近おすすめしているのが、「ワクワク備蓄」「ハッピー備蓄」。水を何ケースも置いておくのは、ワクワクしないですよね。
 
西村)ワクワクしないですね、邪魔だなと思ってしまいます...
 
国崎)賞味期限を気にしなければならないし、面倒ですよね。飲み物なら、私はトマトジュースや豆乳が好きなのですが、それを箱買いするんです。夫はジンジャーエール、子どもはカルピス。それぞれ好きな飲みものを箱買いしています、ちょっとワクワクしませんか?いつでもそこに好きな飲み物が大量にあるので邪魔とは思いません。
 
西村)それいいですね!一人暮らしの家は、狭いので置く物も限られてきます。在宅避難に役立つものはどういったものでしょうか。
 
国崎)日常的に使っている生活用品で、災害時にも役立つものです。卓上コンロはガスが止まったとき、調理できるのであると本当に便利です。
暗くなると自動的にほんのり明るくなる足元灯も便利です。設置しておくと、日頃から真っ暗にならずに、安心して夜中でもトイレに行けます。さらに停電したときは、自動点灯するので、外すと懐中電灯として使うこともできます。蓄電されているので電池が減る心配もありません。もっと身近な携帯のモバイルバッテリーも必要です。日頃から充電しておけば、いざというときに充電できるので、いつでもスマホを使える安心感があると思います。

 
西村)携帯電話があれば連絡もできるし、情報も取ることができて、ラジオを聞くこともできます。懐中電灯代わりにライトをつけることもできますね。
 
国崎)スマホなどの携帯電話は防災ツールとしても活用できるので、2~3回フル充電できるような容量のモバイルバッテリーがあると災害時も心強いですね。
 
西村)非常持ち出し袋はもちろん、普段使っている鞄にも入れておくと良さそうですね。
 
国崎)わたしは常に自分の鞄にコンパクトな携帯トイレ、ゼリー飲料、笛、モバイルバッテリー、止血パッド等を入れています。
 
西村)まさに自分が歩く防災。常に備えておくと安心ですね。これは一人暮らしだけの問題ではなくて、わたしのような家族がいる人も同じことですね。
 
国崎)自宅でも外出先でも、いつでも災害に対応できると安心。特に1日1回でもエレベーター乗る習慣がある人は、エレベーター内に閉じ込められる危険性があるので、常に鞄の中に必要最小限のものを入れておくと良いです。
  
西村)わたしも常に備えて、家族や友人にも伝えていきたいと思います。
危機管理教育研究所代表の國崎信江さんにお話を伺いました。