第1239回「令和2年7月豪雨とコロナまん延~天ケ瀬温泉は今」
電話:天ケ瀬温泉「天龍荘」社長 大庭龍一さん

千葉)令和2年7月豪雨と名付けられた九州を中心とした豪雨で、ホテルや旅館といった観光業が大きな打撃を受けています。
 
亘プロデューサー)その前からコロナウイルスの蔓延がありましたので、観光業の打撃というのは本当に大きかったと思うんですよね。
 
千葉)そうですね。豪雨被災地の観光業界はどんな状況なのか、復興の見通しはどうなのか。
玖珠川の氾濫で大きな被害を受けた大分県日田市の天ヶ瀬温泉の状況を今日はお伝えします。
天ヶ瀬温泉にある旅館天龍荘の社長の大庭龍一さんと電話がつながっています。
天龍荘は、江戸時代から続く伝統ある旅館です。
大庭さん、どうぞよろしくお願いします。
 
大庭)はい、よろしくお願いします。
 
千葉)大雨が降った時の様子なんですが、大庭さんは避難されましたか?
 
大庭)はい、私は当日、旅館におりました。
朝の6時ぐらいからちょっと増水が始まりまして、一番多くなったのが多分7時40分か50分ごろだったと思うんですけど、旅館の2階におりました。

 
亘)2階に避難をされていたということですか。
 
大庭)そうですね、一応、避難をしておりました。
 
千葉)1階の状況はどうなっていったんですか。

大庭)そうですね、大雨の予想が出ていたんで気にはしていたんですけど、5時から6時ぐらいに、ちょっと激しくなってですね。ひょっとしたら玄関の方まで上がるかもしれないということで、土のうを取りに行ったりしました。土のうを玄関のところに積んだりしていたのが6時ぐらいだったと思います。
 
亘)前には川が流れているんですか?
 
大庭)そうですね。ここは玖珠川といいますけど、筑後川の上流の方になります。
 
千葉)玄関に土のうを積んで、土のうである程度おさえられたんですか?
 
大庭)いつも玄関の辺りまでは来るんですよ、年に1回か2回ぐらいはですね。
で、まぁ今度もそれでなんとかおさまるだろうと思って、土のうで何とかしようっていうことで積んだんです。増えるのがちょっと早かったんで、ちょっと怖いなーって思いもあったんですけど、いきなり入ってき始めたもんですから、ちょっと慌ててですね。
車を移動させるとかいうことをしました、先に。

 
千葉)1階まで水が流れ込んできて、だいたいどれぐらいまで上がったんでしょうか。
 
大庭)だいたい1メートル20センチぐらいですかね、床上がですね。
そのくらいまで入ってきました。

 
亘)やっぱり雨の降り方も尋常じゃなかったんでしょうか。
 
大庭)そうですね。かなり激しかったですし、ここよりも上流の方がかなりですね、激しく降ったんだろうと思います。
 
亘)それが流れてくるということですね。
 
大庭)そうですね。ここの温泉街は川に沿って両岸に旅館と住宅が並んでいるんですけど、ちょうどこの辺りはちょっと川幅が狭くなっているところです。
 
千葉)天龍荘の被害なんですけど、1階が1メートル20センチ水に浸かったら、どうなってしまったんですか。
 
大庭)もう、しっちゃかめっちゃかですけどね。
もう水が入ってきて、やっぱり1階に器械類とか、あと厨房とかもあったもんですから。
全部浮き上がってしまってですね、もう散々でしたね。

 
千葉)厨房の器械がやられてしまうと、旅館の営業ってすぐ再開するわけにはいかないですよね。
 
大庭)そうですね。厨房と事務所があって、そちらに電話とか器械類が全部置いてあるんです。それが全部やられたもんですから。
かなり旅館の中枢がやられているもんですから、ちょっと厳しいですね、今は。

 
千葉)ご家族はおケガとかはなかったですか。
 
大庭)そうですね。ケガは誰もなくて、2階で家族は様子を見ていたんです。
 
亘)従業員の方とかお客さんはいらっしゃらなかったんでしょうか。
 
大庭)当日はお客様はいらっしゃらなかったんですけど、従業員は3人ですかね。3人はもうここに残ってですね、雨が降りそうだったんで、旅館の方に泊まってもらっておりました。
 
千葉)旅館が避難所の役割みたいな形になったわけですけども、やっぱり1階でそれだけ器械がやられてしまうということになると、旅館の営業を再開するという見通しは...
 
大庭)そうですね、今のところはちょっと...秋にもちょっと無理かなというところで、今年いっぱいぐらいかかるんじゃないかと思っております。
  
亘)周辺の旅館も同じような被害を受けているんでしょうか。
 
大庭)私どもの温泉街の旅館が川に沿ったところに大体9軒ぐらいあるんですけど、そこは全部、うちと同じぐらいやられています。
 
千葉)今、電気とかガスとかライフラインというのは復旧しているんですか。
 
大庭)電気と水道は来ています。ガスはまあ、プロパンですので使えるのは使えます。

 
千葉)道路はどうですか?
 
大庭)道路はこの温泉街に関しましては通れる状況になっておりますけども、うちに来る時の国道が、若干まだ片側通行のところと通行止めのところがあります。
 
千葉)鉄道もありますよね?
 
大庭)鉄道も今、ちょっと止まった状態ですね。車なら来れますけどね。
 
千葉)被害を免れた温泉旅館というのは、今、営業はできているんですか。
 
大庭)今、営業できております。
ちょっと高いところにある旅館とかは、温泉も出ていますし、営業できる状況になっています。
連休になりましたんで、お客様も入っているみたいです。

 
千葉)お客さんは戻ってはいるんですか。
 
大庭)そうですね、被害を受けてないところは、連休でお客様の方もですね、入っております。
 
千葉)じゃあ、少しは温泉が復活の方向に向かってきているかなっていう感じですか。
 
大庭)そうですね、まだまだ被害にあった旅館は、しばらく難しいかと思うんですけども、被害を受けていない旅館もあるもんですからね、そこは普段通り、営業できる状態にありますので、できればたくさんの方に来ていただければと思っております。
 
千葉)温泉って泉源、温泉の源がありますよね。泉源への影響は大丈夫でしたか。
 
大庭)最初は不安でございましたが、水が引いて泉源のところを見たんですけど、何とか温泉は出ておりましたので、まだまだ今あげる状態になってないんですけど、まあ温泉はあることは間違いなく確認しておりますので、ちょっと安心しております。
 
千葉)天ケ瀬というと共同の露天風呂、川湯が混浴の露天風呂で全国的に有名ですけども、川湯はいかがですか。
 
大庭)川湯の方はですね、やっぱり、かなりやられてますんで、ここはちょっと復活まではですね、もうしばらく...温泉があるんですけど、浴槽の方がやられてますんで、これはもうちょっと日数が、まあ1~2カ月かかるんじゃないかと思います。
 
千葉)今回、水害ということになりましたけども、その前にコロナもありましたしね。
そういったところの影響というのは、天ケ瀬温泉の場合はどうだったんですか。
 
大庭)今年の2月ぐらいから影響がありまして、かなり落ち込みが激しくてですね。
6月、7月になって、若干ですね、自粛解除になって今から動き出す、7月になったら花火とか上げて、お客様を歓迎する準備ができておったんですけども、この度の水害でですね、花火等もちょっと延期するということになりました。

 
亘)じゃあ、ちょうどこれからというところで豪雨があったということですね。
 
大庭)そうですね、7月の...今から、まあぼちぼち動き出すかなあというところでございましたので。
大変厳しいですね。

 
千葉)やっぱり毎年から比べると、お客さんってかなり、2月頃から減っていたんですか。
 
大庭)そうですね。コロナの関係で、本当にもう例年の1割とか2割とかいう、そのくらいの数しか来てなかったんじゃないかと思います。
 
千葉)大庭さん、ちょっと込み入ったところまで聞いてしまいますけども、今回、1階の設備がかなり被害を受けたということで、そうすると、その復旧のためにかなりお金かかるんじゃないんですか。
 
大庭)そうですね、復旧のお金はまだちょっと見積もりとは取ってないんですけど、かなりの金額かかることになると思います。
 
亘)そこに対して支援っていうのはあるんでしょうか。
 
大庭)まあ大臣とかも来ていただいて、一応見ていただいておりまして、要望はいろいろですね、今から国・県・市に対して、していくところでございますけども、まだはっきりした支援は決まってはおりません。
 
千葉)大きな旅館だからやっぱり、何千万単位でかかってくるんですよね。
 
大庭)そうですね。はい。
 
千葉)これまでお客さんが少ない状況であったうえ、さらにその負担がかかってということになりますね。
  
大庭)そうですね、だからちょっと先々が不安ですね。
これが、もしうちが何千万か投資してまた元に戻したとしても、コロナ等の影響があってお客様自体の動きがあんまりないので、その辺の心配と、あと、またいつ水が来るかわからないっていうような心配もあるもんですから。
どこまで投資をするかですね、その辺のところがちょっといろいろ、いま、思案のしどころなんですね。

 
亘)復旧されるにしても、例えば、かさ上げをするとかそういうことはお考えになりますか。
 
大庭)そうですね。そういう話も一部出ておりました。
まあそれをやるにしてもですね、日数がかなりかかってくるので、その間どうするかとかそういった話になってきますね。

 
千葉)大庭さんは、天龍荘の社長としては14代目だとお伺いしたんですが。
 
大庭)はい、そうですね。天保年間の創業ですね。
 
千葉)江戸時代ですよね。
 
大庭)そうですね。江戸の後期から。
 
千葉)その間からずっと長い歴史の中で、こういった水害っていうのは何度かあったんですか。
 
大庭)水害は何度かあったみたいなんです。
一番大きいのは、昭和28年に筑後川が氾濫したことがあるんですけど、その時よりも水の量が多かったっていう風には聞いております。

 
千葉)じゃあ、まさかここまで来ないだろうっていう状況だったわけですね。
 
大庭)そうですね、ですから今まで旅館を続けてこられたんですけどね。
 
千葉)あと、これからね、片付けて復興していく中で、重要になってくるのはボランティアかなと思うんですが、ボランティアは入れているんですか。
 
大庭)おかげさまで、当初からボランティアの方たくさん入っていただいてですね、大体の片付けは今、一段落しているみたいですね、この温泉街見るとですね。
うちも、あともう少し残っているんで、その辺をちょっと入っていただこうかなと思っております。

 
千葉)県内限定ですよね。人数としては十分なんですか?
 
大庭)そうですね、でも、かなりの人数が天ヶ瀬には入っていただいているみたいですね。
うちも多い時は、うちだけで30人とかの数入っていただいたんですね。それで何とか早く片付いて。スーパーボランティアの尾畠さんも、2日後に来ていただいたんで

 
千葉)そっか、尾畠さん、大分に住んでいましたもんね。
 
大庭)そうなんです。
 
亘)ボランティアの方は主に泥出しとかそういう作業をされたんですか。
 
大庭)いろいろですね。結構、お年寄りで、ここに住んでいる人多いもんですからね。
なかなか重たいものを持って仕事するというのが大変ですから、本当に若い人に来ていただいて大変助かっておりますね、この温泉街は。

 
千葉)じゃあ、ちょっとコロナで大変な状況ではありますけども、ひきつづき、ボランティアの方々が入ってくだされば、なんとか片付けの部分は...
 
大庭)はい、片付けはもう終わると思いますけど。まあその後がですね、どうするかっていうところが、今から大きな問題になってくると思いますね。
 
千葉)そこをふまえて、大庭さん、温泉街、天龍荘の復興のために、今後どんな支援が必要になりますか。
 
大庭)支援としてはですね、まあ、オープンした後ですね。
温泉街、各旅館が今からお金を投じて再開に向けてやっていきますんで、それができた折にはですね、まあ天ヶ瀬温泉、災害でちょっと有名になりましたんで、今度は温泉に入りに、たくさんの方に来ていただければありがたいです。

 
千葉)海外からの観光客もやっぱり多かったんですよね。
 
大庭)そうですね、うちで大体、半分ぐらいがインバウンドのお客様だったですかね、1月ぐらいまでの状況はですね。
 
亘)半分が外国の観光客の方?
 
大庭)うちの場合はそうですね。
まあ、それがコロナで、ほとんどなくなった状態になりましたんで。

 
亘)どちらの国から来られているんですか。
 
大庭)韓国がメインですね。韓国、中国、台湾というところですかね。
 
千葉)そしたらもう、その辺もコロナが早くおさまって...
 
大庭)そうですね、海外からも来られるようになってくれると本当はありがたいんですけど、まあ、もうちょっとかかりそうな感じがしますね。
 
千葉)天ヶ瀬ってアジアでも有名な温泉なんですね。
 
大庭)そうですね、有名になっていたんですけどね。
 
千葉)みんなやっぱり、露天風呂には入るんですか?外国の観光客の方は。
 
大庭)そうですね、ここは「湯あみ着」といって、水着みたいなものを旅館で貸し出しをして露天風呂に入るというやり方をしていたんで、旅館に泊まるとそれをレンタルして、それを着て露天風呂に入りに行くと。そういうお客様もいらっしゃいました。
 
千葉)早くコロナがおさまって、とにかく水害の片付けと、あと、被害をうけた旅館がとにかく早く復興ができればいいと思うんですが...
 
大庭)はい、それを本当に早くしないといけないかなと思っておりますけどね。
 
亘)大庭さんは、いまは毎日どのような作業をなさっていますか。
お忙しいと思うんですけど、どんな感じなんでしょう?
 
大庭)まだまだ片付け等もあってですね、そういったこともしておりますけども。
電話機もちょっと浸かっていたんで、自分の携帯に全部つながるようにしたんで、電話の応対とかですね。
あとは今後に向けてどうするかということを、いま、みんなで考えているところです。

 
亘)例えば寄付とか、クラウドファンディングとか、何か私たちができることはあるんでしょうか。
 
大庭)そうですね、まあそういうことも、旅館の人たちと集まって話もまだまだ全然してない状態なので。そういった話もですね、若い人に入ってもらって、していきたいなと思っておりますけど。
まだまだ、どうしていいかわからない状況なんで、いろんな人の知恵を借りてやっていければと思っております。

 
千葉)とにかく、旅館が再開されていくっていう状況になったら、ひとりでも多く天ヶ瀬温泉に行って、いい温泉を楽しんで。
 
大庭)そうです、はい。
関西の方にはあんまり有名じゃなかったと思うんですけど、本当にいい温泉が湧いているんで、この温泉を楽しみに来ていただけるとありがたいです。