オンライン:備え・防災アドバイザー ソナエルワークス代表 高荷智也さん
西村)各地で大雨が相次いでいます。きょうは、災害への備えとして大切なハザードマップの見方について、備え・防災アドバイザーで、ソナエルワークス代表 高荷智也さんに聞きます。
高荷)よろしくお願いいたします。
西村)ハザードマップを見るには、まず何から始めたら良いですか。
高荷)おすすめしたい地図が2つあります。ひとつは自治体が作っているハザードマップ。紙で印刷をされたものが各家庭に配られていると思います。自分が住んでいる町の紙のハザードマップを見てみてください。
西村)ハザードマップが家にない人はどうしたら良いですか。
高荷)スマートフォンやパソコンが使えるなら、「〇〇市 ハザードマップ」と自分が住んでいる町を入力して検索してください。市役所・区役所・町役場などのホームページにデジタルのハザードマップがあります。画像やPDFで紙のハザードマップと同じものを見ることができますよ。
西村)紙とデジタルならどちらのハザードマップがオススメですか。
高荷)自治体が作っているハザードマップなら紙もデジタルも中身は同じ。見やすい方で大丈夫です。スマホの画面が小さくて見づらい場合は紙がオススメ。紙のハザードマップが家にない場合は、町の役場の防災課・危機管理課などの窓口に行くと無料でもらえます。
西村)なぜ紙の方がオススメなのですか。
高荷)紙の方が広い範囲が載っているので地図として見やすいです。災害時にハザードマップを確認したいとき、停電が起こるとパソコンやインターネットが使えないことも。今はデジタル化の世の中ですが、確実に見られる媒体は紙だと思います。
西村)紙のハザードマップを見やすい場所に貼ると良さそう。どこに貼るのが良いですか。
高荷)家の中の見やすいところに貼っておきましょう。普段から目に入るので防災意識が高まります。リビングでも廊下でもトイレでも良いと思います。もうひとつ、国が作っているハザードマップもあります。これはスマートフォンやパソコンから見ることができるデジタル専用の地図。スマホやパソコンを使えるならぜひ覚えてください。「重ねるハザードマップ」という地図です。
西村)今、パソコンが目の前にあるので、検索してみますね。みなさん一緒に検索しましょう。
高荷)普段インターネットを見ている画面から「重ねるハザードマップ」と入力をしてください。地図が画面に出てきます。「重ねるハザードマップ」は、国土交通省が運営しているものなので、大きな利点があります。自治体が作っているハザードマップは、その町の情報しか載っていませんよね。災害や避難場所の情報は隣町のものは載っていません。「隣町の職場や学校に通っている」「隣町のスーパーで買い物をしている」などという場合は、自分の町のハザードマップだけでは情報が足りないことがあります。その点、「重ねるハザードマップ」は国の地図なので、日本中、北海道から沖縄まで同じ地図上で、災害や避難場所の情報を見ることができるのです。
西村)出張や旅行に行くときも、あらかじめ調べておくことができますね。
高荷)初めて出かける場所に行くときには、「重ねるハザードマップ」を見て、自分が行く駅、泊まるホテルや観光地にどのような災害リスクがあるのか確認してください。わたしは全国に講演会などで出張していますが、初めての駅やホテルに着いたら、まず「重ねるハザードマップ」を開いて確認しています。「今日泊まるホテルは、津波は来ないから、地震が来たらその場にとどまろう」という風に。慣れれば10秒でチェックできますので、ぜひ使ってみてください。
西村)今、「重ねるハザードマップ」の画面を開いています。
高荷)画面の左上にボタンがいくつかあると思います。「重ねるハザードマップ」の中には、洪水・高潮・土砂災害・津波の4種類のハザード情報をオン・オフしながら"重ねて"表示させることができます。自分が見たい情報のボタンを押すと重ねて表示されます。災害が多い地域は全部押すと、たくさん色がついてわかりにくくなるので、その場合は、ボタンをひとつずつオン・オフしてください。これでまず自宅周りにどのようなリスクがあるのをチェックしてください。
西村)一番上の検索窓に住所を入力すると付近の情報が表示されます。MBSラジオがある「大阪市北区茶屋町17-1」を入力してみます。出てきました!洪水・高潮・土砂災害といろいろありますが、洪水を見てみると、MBSラジオがある茶屋町は、3~5m浸水するエリアだそう。桃色になっています。2階部分まで浸水するようです。しかし、高潮になると一段階上の赤色になっていますね。5~10mで、2階の屋根以上が浸水するようです。高潮の方が一段階上がることに驚きました。
高荷)場所によって情報が変わります。町が大雨で沈む状況には二種類あります。ひとつが洪水。川の堤防が決壊して、水が街の中にあふれる。これは比較的イメージしやすいと思いますが、もうひとつが高潮という現象です。高潮は、大阪なら大阪湾が満潮を迎えるタイミングで、台風が海を通過すると低気圧の効果と強い風の勢いで、海側から水があふれる現象のことです。そうなると、川の堤防は1ヶ所も切れていないのに海水が盛り上がって海の方から浸水します。まるで津波のように沈んでしまうのです。過去に起こった最大の高潮被害は、1959年に起きた伊勢湾台風によるもの。伊勢湾台風は、死者約6000人という日本史上最大の水害でした。主に被害を受けた名古屋は、高潮で海側から浸水して甚大な被害を受けました。これは今の時代でも起こり得ます。堤防が決壊しなくても海側から沈むことがあるので、洪水・高潮はセットでチェックをしましょう。
西村)淀川が近いので、川の方が危険かと思い、高潮のことはあまり考えていませんでした...。いろいろ調べないとわからないですね。
高荷)ハザードマップを見れば、具体的な情報が載っています。改めてハザードマップを確認してください。
西村)MBSラジオは、ビルの9階にあるので、移動して避難するのではなく、高いところへ垂直避難をすれば良いですか。
高荷)ハザードマップの自宅周辺に色がついていない場合は、避難指示が発表されても、家にとどまって電気・ガスの停止に備えましょう。色がついている場合は、最大の高さまで沈んだ場合、部屋がどうなるかをイメージしてください。一戸建ての場合、洪水で3mまで水が来たら2階の床が沈むので、避難をしなければ命が危ないということになります。この場合、避難指示が出たら速やかに逃げましょう。マンションの4階、5階なら、3m沈んでも部屋は大丈夫ということに。ただし、停電や断水は、いつでも起こる可能性があるので、備蓄品はきちんと準備をしておかなければなりません。逃げるべきなのか、とどまって良いのかを判断をする材料として、ハザードマップを使ってください。
西村)広島で土砂災害が起こったときに、「大雨の被害大丈夫?」と広島の友人に連絡したんです。そうしたら「うちはマンションなので大丈夫」と。でもすぐそばに山があったんです。この場合、土砂災害に巻き込まれる可能性がありますよね。
高荷)土砂災害・崖崩れ・土石流・地滑りの危険性があります。重ねるハザードマップや自治体の紙の地図には、崩れそうなところにすべて色が付けられています。2014年の広島の土砂災害がきっかけとなり、ハザードマップの整備が進みました。もし自宅が土砂災害の危険性がある範囲にあるなら、建物ごと飲み込まれてしまう可能性もあります。マンションでも高層階なら土砂災害が起こっても安全である可能性は高いですが、2~3階で、ベランダ側に崖がある場合は、危ないので、念のために避難をすることを考えてほしいですね。
西村)西日本豪雨のときも逃げ遅れた人が多かったですよね。避難について、しっかりと備えておかないといけません。
高荷)最近は、ハザードマップに書かれている通りの被害が起こっています。逃げれば助かります。水害で命を落とさないために、紙のハザードマップ、重ねるハザードマップを改めて確認してほしいですね。
西村)どのようなポイントをチェックすれば良いですか。
高荷)紙のハザードマップには逃げる場所が記載されています。ハザードマップには、「命を守るための避難場所」と「生活をするための避難所」という2つの施設が載っています。
西村)避難場所と避難所は違うのですね。
高荷)名前は似ているのですが、津波から逃げる「津波避難ビル」「津波避難タワー」、水害が起こったときに逃げる「沈まない場所の学校」、大地震の火災から避難するための「運動場や広場」など災害から命を守る場所は避難場所と書かれています。一方で、災害で自宅が被害を受けて、家で生活ができなくなったときに、一時的に身を寄せるのが避難所。避難所は最寄りの学校であることが多いですが、避難場所は災害の種類ごとに違います。避難場所には、対応している災害が地図上に書かれています。
西村)災害への備えとして大切なハザードマップの見方についてお話を伺いました。高荷さん、どうもありがとうございました。