第1423回「阪神・淡路大震災29年【3】~阪神・淡路大震災29年の神戸で」
オンライン:「1.17KOBEに灯りをinながた」実行委員
      FMわぃわぃ 総合プロデューサー 金千秋さん

西村)1月17日は各地で追悼行事や防災イベントが行われました。神戸市長田区で毎年1月17日に行われている「1.17KOBEに灯りをinながた」は、早朝5時46分ではなく、夕方5時46分に黙祷が行われ、地元の子どもや若い世代がたくさん参加しています。鉄人28号の大きなモニュメントが立つ広場で行われたこの追悼行事にわたしも参加してきました。
きょうは、「1.17KOBEに灯りをinながた」実行委員で、長田のコミュニティメディア「FMわぃわぃ」総合プロデューサーでもある金千秋さんにお話を伺います。
 
金)よろしくお願いいたします。
 
西村)「1.17KOBEに灯りをinながた」は、なぜ早朝ではなく、夕方の5時46分に黙とうを行うのですか。
 
金)「FMわぃわぃ」があるカトリックたかとり教会では、カトリックの聖歌とともに1月17日の早朝5時46分に1分間の黙とうをする追悼行事が行われています。1996年からロウソクを灯しているのですが、地域とともに始めたのは1999年から。「FMわぃわぃ」は、多言語放送をしていて、外国人、耳の聞こえない人、目の見えない人、車椅子の人、難病の人となどさまざまな人たちが参加しているラジオ局です。障害のある人は車椅子で朝早くに電車に乗って来ることは難しいので、いろんな人たちが参加しやすい夕方5時46分に実施することになりました。当時は、JR新長田駅前の広場でやっていたので、電車を降りてきた人、お買い物帰りの人がたくさん立ち寄ってくれました。
 
西村)わたしは、1月17日に長田のピフレホールであるゴスペルコンサートに毎年参加していて。コンサートが終わった後、広場に「ながた」の文字が灯籠で灯されているのを見て参加したのが最初でした。会社帰りや買い物帰りに立ち寄って参加している人も多いと思います。制服姿の学生さんも多いですよね。若い世代が多く関わっているのはなぜですか。
 
金)最初はカトリックたかとり教会でロウソクを作っていましたが、近所の高取台中学校や駒ヶ林中学校、「FMわぃわぃ」で放送中の小学生の番組の子どもたちも「ロウソク作りをやりたい」という声がありました。さらにほかの番組担当者からも参加したいと声が上がり、ありがたいことに、小学校、中学校、幼稚園、保育園からも「震災の話をしてほしい」「3歳の子どもにもロウソク作りをさせてほしい」というような話がありました。子どもたちは、12月にロウソクを作り、1月17日の学校帰りに自分が作ったロウソクが燃やされているようすや拝んでいる人を見る。それを26回続けています。当時3歳の子どもはもう29~30歳です。小学校の先生になっている人もいます。続けることでこの行事が若者へ伝わっていったのだと思います。
 
西村)うれしいお話ですね。今回、ロウソクを作った小中学生が、灯篭を並べる手伝いに来ていました。駒ヶ林中学校の1年生2人のインタビューをを聞いてください。
 
音声・西村)灯籠作りに参加してみてどうでしたか。
 
音声・男子中学生)震災後も想い続けている人がたくさんいるのだなと思いました。
 
音声・西村)自分が生まれる前の震災についてどんなふうに思っていますか。
 
音声・男子中学生)おばあちゃんやママも震災を経験しています。家がなくなって、車中泊をしていた人もいたと聞きました。おばあちゃんの家も全焼したそうです。そんなふうに悲しい想いをした人、命を落とした人もいたのだなと思いました。
 
音声・西村)学校でロウソクを作ったのですか。
 
音声・女子中学生)学校で作りました。お手伝いの人たちや班のみんなで協力して作ったけど難しかったです。ペットボトルが足りなくなったけどできました。
 
音声・西村)ペットボトルの灯籠を作って文字をかたどって並べたとき、どんな気持ちになりましたか。
 
音声・女子中学生)この行事は、地震後からずっと続いています。形も変わってきているらしいけど、ずっと続いているのは、地域の人や学校の協力があるからだと思いました。
 
西村)金さん、今の声を聞いていかがですか。
 
金)涙が出そうです。今は次世代の人がロウソク作りを受け継いでくれていて。クリスマスやお寺で使って残ったロウソクを12月に集めて。お店の人もロウソクを残しておいてくれるんです。それを溶かして、子どもたちが集めた卵パックに注いで、卵型の小さいろうそくを作ります。そして会場にロウソクを置いて、火を灯すと心に染みるんです。ロウソクの光を見つめることで、来年、再来年、10年先にいろいろなことを想い出すだろうなと。26回続けてきて実感しています。
 
西村)当日お手伝いした中学生だけではなく、ロウソク作りに携わっている人や家族も関心を持つでしょうね。
 
金)2リットルのペットボトルは水ではなく、お茶などが入っている大きなものが必要なんです。この寒い時期に約1000本のペットボトルを集めるのは結構大変。酒屋さんがお客さまにお願いして何百本と集めてくれています。ありがたいです。
 
西村)ロウソク作りのときに、金さん自身も語り部として話をするのですか。
 
金)わたしみたいな震災経験者や先生以外にも、震災を経験していない大学生も実行委員会に参加しています。震災を経験していなくても伝えることができる若い世代の語り部もいます。
 
西村)神戸大学の4年生のボランティアにどんな想いでイベントに参加したのか話を聞きました。神戸大学の学生です。
 
音声・大学生)わたしは元々東北の地震に興味がありました。神戸から東北に向かうにあたり、神戸で起きた震災を知らずに東北に向かうのではなく、神戸のことをよく知ってから東北の人と交流したいと思い、神戸の人と関わっています。今朝、5時46分の追悼を見ていると、一見元気そうに見える人でも悲しいことを経験している人はたくさんいるのだと感じます。そのような人たちと同じ想いを共有することはできませんが感じ取ることはできたらと思って参加しています。
 
西村)ボランティアスタッフの話をお届けしました。金さんいかがですか。
 
金)神戸大学というと、1995年当時、たくさんの学生がいろいろな地域で自主的にボランティア活動をしていました。コロナ禍があって、この3年間は、活動がなかなかできなかったのですが、今年は、大学が地域貢献に力を入れて、1月17日は、大学が休みになり、たくさんの人が参加してくれました。地域で大学が果たせる役割として、命を守ることの歴史を伝えられるようになってとてもうれしいです。神戸大学だけではなく、神戸常盤大学、兵庫県立大学、去年までボランティアサークルとして参加してくれていた神戸国際大学との連携もあります。大学生が社会人になる前に神戸の震災や復興の知恵を日本中、世界中に伝えてくれるのはとてもうれしいことです。
 
西村)心強いですね。このように、「1.17KOBEに灯りをinながた」には、若い世代や子どもも多く携わっています。なぜ若い世代を巻き込むことができるのでしょうか。工夫していることはありますか。
 
金)実行委員会には、大学、小学校、中学校、幼稚園など学校関連以外にも、タクシー会社、市民活動団体、障害者団体、アートの仕事をしている人、酒屋さんなど長田を中心としたさまざまな地域のさまざまな職種の人たちが集まっています。そこから幅広い世代につながっているのだと思います。
 
西村)いろんな立場の人がいるからこそ、想いを共有してみんなで作り上げていくことができるのですね。来年は震災から30年。震災を経験していない若い世代にどのように阪神・淡路大震災を伝えていきたいですか。
 
金)自治会、婦人会、子供会などたくさんの人たちとのつながりの中で伝えていっています。長田の住民の中には、外国人もたくさんいます。立て看板やチラシに外国語で紹介文を記載したり、参加を呼びかけたりしています。
 
西村)世代、国籍、障害のあるなしも問わずにたくさんの人が参加しているのですね。
きょうは「1.17KOBEに灯りをinながた」実行委員で、長田のコミュニティメディア「FMわぃわぃ」総合プロデューサーでもある金千秋さんにお話しを伺いました。