第1411回「『水害ハザードマップ』危険箇所の記載漏れ...我が家の防災をどうチェックする?」
オンライン:防災アナウンサー 奥村奈津美さん

西村)津波や洪水などの発生時に、住民避難の判断基準として用いる「水害ハザードマップ」に必要な情報を記載していない自治体が8割に上ることが会計検査院の調査でわかりました。なぜこのような事態が起きたのでしょうか。
きょうは、防災アナウンサーの奥村奈津美さんに伺います。
 
奥村)よろしくお願いいたします。
 
西村)ハザードマップにはどのような情報が書かれているのでしょうか。
 
奥村)ハザードマップは、危険な場所を示している地図です。川の氾濫が影響を及ぼす範囲、自宅周辺の浸水域などがわかります。そのほかにも土砂災害・津波・高潮などさまざまなリスクを想定したマップがあります。国でさまざまな決まりを作って、各自治体がマップに落とし込んでいます。
 
西村)ハザードマップは、インターネットや自治体から配られる冊子で見ることができます。インターネットではどのように調べれば良いですか。
 
奥村)各自治体のホームページで検索するか、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」に住所を入力して、自分が住んでいる地域を確認してください。
 
西村)ハザードマップは、水害やさまざまな災害によって分けられていますね。
 
奥村)地域によってリスクが変わります。河川がある地域には洪水のマップ、土地が低い地域には、下水の処理が間に合わなくなる内水氾濫のマップがあり、ほかにも土砂災害・津波・高潮のリスクを示したマップもあります。
 
西村)会計検査院の調査で、水害ハザードマップに必要な情報を記載していない自治体が8割もあったとわかりました。記載されていない情報とはどんな情報ですか。
 
奥村)この調査結果は報道機関の独自取材によるもので、11月に会計検査院から正式に公表されます。公表されていないものなので詳細はわからないのですが、現時点でわかっていることは、記載漏れが起きた理由以前に、最新のハザードマップが作成されていない地域があること、全てのリスクがハザードマップに反映されているというわけではないということです。
 
西村)反映されていないリスクとはどんなリスクですか。
 
奥村)豪雨災害が激甚化していることを受けて、2015年に水防法が改正されました。最大規模の雨を前提とした最悪のケースの浸水想定を作ろうと打ち出しました。その改正から8年経ちましたが、想定最大規模に対応したハザードマップの作成率は96%。100%ではないということは、まだ最悪のケースが想定されていない自治体もあるということです。その後、2021年に中小河川の浸水想定区域も作ることになったのですが、これはどの程度ハザードマップに反映されているか不明です。つまり、ハザードマップに色が付いてない場所は、川のリスクが想定されていないこともあるということです。これまでの災害でもハザードマップがない地域、作られてない地域で、水害が発生したことがあります。当時のハザードマップよりも被害が拡大してしまった地域もありました。現在は改善されていますが、地球温暖化の影響もあり、雨の降り方も変わってきています。自治体のハザードマップもわたしたちの知識もアップデートが必要ですが、なかなか追いついていません。
 
西村)今年の夏も大雨が降ったところが多かったですよね。
 
奥村)7月は、地球の平均気温が世界で最も高くなりました。地球の気候が変わってきているので、これまでの想定では考えられない大雨が降る時代になっていくと思います。
 
西村)だからこそ、ハザードマップをチェックして、安全に避難ができるように備えなければなりません。全てのリスクを示すのは難しいのでしょうか。
 
奥村)ハザードマップは、安全な場所を示す地図ではなく、危険な場所を把握する地図。危険な場所は想定に基づいているので、想定を超える雨が降ったり、想定と異なることが起きたりします。側溝や用水路などの身近なリスクは、ハザードマップに反映されていません。ハザードマップを鵜呑みにするのではなく、ハザードマップにある危険性を認識した上で備えましょう。
 
西村)アンダーパスで車が水没して亡くなったという話もよく聞きます。アンダーパスもハザードマップには記載されていませんよね。
 
奥村)調査結果がきちんと発表されてないのですが、会計検査院の調査対象になっている約300の自治体の内、8割の自治体で必要な情報が抜けていることがわかったそうです。
 
西村)住んでいる地域のハザードマップを日頃から見ておいて、自分に必要な情報がきちんと載っているかをチェックしましょう。載っていない場合は、自分で防災散歩をして確認しておくことも大切ですね。ハザードマップは、どのようなところをチェックすれば良いのでしょうか。
 
奥村)まず家がある場所は避難が必要なのかを確認してください。家にとどまっていたら命が守れないエリアもあります。避難しなければ命を守れないエリアは3つ。
1つ目は、「家屋倒壊等氾濫想定区域」です。これは、川が氾濫すると川の水で木造家屋が流されてしまう、基礎の部分が削られて家が崩れる危険性があるエリアのことで、川の周りに斜線や水玉、ストライプの模様がついています。このようなエリアに住んいでる場合は、家にとどまっていたら、家ごと流されてしまう危険があるので、早めに安全な場所に避難しましょう。
2つ目は、「土砂災害警戒区域」や「特別警戒区域」。土砂が流れてくると木造家屋は流されるので、このようなエリアに住んでいる場合も、早めに水平避難や立ち退き避難をしてください。自治体によって記号が変わるので、ハザードマップの凡例をチェックしてください。
3つ目は、深い浸水想定です。1階しかない家で1階まで浸水してしまう場合、2階があっても体が不自由で2階に上がれない場合など、深い浸水想定の家に住んでいる人は、早めの避難が必要です。1度氾濫すると水が引くまで2週間ぐらいかかることもあるので、2階以上の階に垂直避難しても籠城生活を余儀なくされてしまいます。垂直避難は最後の手段と思って、なるべく早めの避難を心がけましょう。

 
西村)避難するタイミングや備えておくものは、家族構成や家の状況によっても変わりますね。
 
奥村)避難の逃げ遅れを防ぐ「警戒レベル」は5段階あります。警戒レベル5は手遅れで、災害が発生している状況。警戒レベル4までに避難してださい。高齢者、障がいのある人、乳産婦・乳幼児など避難に時間がかかる人は警戒レベル3で避難してください。備えるものは、家族構成によって異なります。避難しなければ命を守れないエリアに住んでいる場合は、非常持ち出し袋をしっかり用意しておきましょう。
 
西村)パーソナルな防災計画、避難計画が必要と実感します。
 
奥村)3月に新しい防災サービスを作りました。「pasobo」(パソボ)と検索してみてください。「1分であなたの備えがわかります」というサービスです。
 
西村)1分とは、気軽にできて良いですね。
 
奥村)自宅の住所、家族構成など13個の質問に答えるだけで、災害時のリスク、必要な備え、避難のタイミングがわかるサービスです。
 
西村)わたしも早速実家のリスクを調べてみたら、地震・洪水・浸水・台風に備えなければならない一時避難重点タイプに当てはまりました。大きな川が近くにあるため、1階が浸水することがわかりました。必要な備えもわかりやすい言葉で整理されているので、自分自身はもちろん、家族に伝えるツールとしても良いですね。
 
奥村)住んでいる地域、家族構成などによって、防災は変わります。診断結果をアルゴリズムで分析して、住んでいる地域と家族構成に合った情報をわかりやすく提示しています。ハザードマップは、自治体よっては何十ページにも及ぶところもあり、河川ごとのリスクをすべて見るのは難しいです。家族と共有して、災害時の行動に結びつけて、判断するのは大変。それをわかりやすくみんなで共有できるサービスがあればと、このサービスにたどり着きました。
 
西村)「冷え性の人はエアマットや毛布、エマージェンシーシートを用意すると良い」など具体的なことが書かれていてわかりやすいです。そのまま購入することもできて備えが進められるので、とても便利だと思いました。
 
奥村)災害が起きてからでは手遅れになってしまうので、災害が起きる前に準備することが大事。防災に関心がない人や遠く離れた家族などに「pasobo」(パソボ)のことを伝えて、防災のきっかけにしてもらえたらうれしいです。
 
西村)奥村さんありがとうございました。
きょうは、防災アナウンサーの奥村奈津美さんにお話を伺いました。