第1270回「東日本大震災10年【4】~被災地で歌い続けて」
ゲスト:シンガーソングライター 門松良祐さん

西村)きょうは、東日本大震災の被災地にこの10年間通って音楽を届けて、町の人たちと交流を続けてきたミュージシャンの方がゲストです。シンガーソングライターの門松良祐さんです。

門松)よろしくお願いします。

西村)私は、被災地のみなさんを応援する音楽イベント「ハッピーラッシュ♪♪♪」というイベントを毎年開催しているのですが、門松さんには何度も出演していただき、一緒にイベントを作ってきました。この番組でインタビューをすることになるとは!

門松)いつも呼んでいただいてありがとうございます!久しぶりに 毎日放送に来ました。きょうはうれしいです。

西村)東北とのつながりが深い門松良祐さんは、「ひまり」というユニットで2007年にデビューし、当時は松瀬一昭さんと2人で活動していました。現在は2児のパパでもあります。大阪出身・関西在住で、関西を拠点に音楽活動をする中で、防災士の資格も取得。高槻市の自主防災団体「ゴールドキャンプ」のメンバーとしても活動しているんですよね。どんな活動を?

門松)学校の体育館を借りて、何かあったときのために、体育館で一泊2日を過ごす訓練をしたり。ほかにはダンボールベッドを作ったり、みんなで食事を作ったり。2019年からそんな活動をしている団体です。
そこで僕も一緒に活動しながら防災を学び、防災をテーマにした歌を歌っています。最近は、コロナの影響でしばらく活動できてないのですが。


西村)音楽と防災を楽しみながら、みんなで学んでいこうと発信しているのですね。門松さんは、仙台のラジオ局でレギュラー番組を担当しているんですよね。いつからですか。

門松)2008年の4月からで、14年目になります。

西村)どれぐらいの頻度で東北に通っているのですか。

門松)今は多くて、月に1~2回ほどですね。

西村)そんな馴染みのある東北の町が、2011年の3月11日、津波に襲われてどう感じましたか。

門松)前日の3月10日に、宮城県でラジオの収録をしていたんです。2日前に大きな地震が一度ありましたよね。ちょうど気をつけてくださいという話をしていた翌日の3月11日にあの地震があって。僕たちは3月12日に広島県でライブの予定があったので、車で移動中、兵庫県を走行中に報道で地震を知りました。

西村)揺れは感じましたか。

門松)揺れは感じませんでした。自分たちが知っているリスナーがいる町ばかりがニュースで報道されて。今すぐにでも行きたいという気持ちだったのですが、翌日、広島でライブがあったので、そのライブで募金活動をしました。

西村)それから東北の町に行ったのですか。

門松)3月末にラジオの関係者に足りない物資を持っていきました。一般の方には持っていけなかったんですけど、まずは身近な人を助けようと。

西村)ラジオ局は被災したのですか。

門松)被災した後もずっと放送はしていたのですが、水が手に入らない、ガソリンが無くて車が動かないなど、みなさん困っていたので、できる限りの物資を積んで駆け付けました。

西村)そのときどんな話をしましたか。

門松)仙台市内の海沿いの町に行ったのですが、3月11日のままの景色を見て、言葉が出なくて。自分たちにはこれから先、何ができるんやろう...とずっと考えながら東京に戻っていました。

西村)どんな景色が広がっていたのですか。

門松)車も家も流されたそのままの状態で。大切なものを探している人もいました。

西村)その後ボランティア活動を?

門松)しばらくは、仙台でラジオの収録が出来ないので、東京で収録をしていたのですがこれではダメだと。ただ歌いに行かせてくださいではなく、体が動くのでなにか協力したいと思いました。いろんな人に相談したら、宮城県の亘理町という町のボランティアセンターが、全国から受け入れをやっているということで。5月に行きました。

西村)どんな活動をされたのですか

門松)亘理町で瓦礫の撤去などの力仕事をする予定だったのですが、ちょうどその日、台風が来てボランティア活動が中止になってしまったんです。そこでボランティアセンター長から、「全国から集まったボランティアのスタッフがここにいるので、みなさんが明日も元気に東北で活動できるように歌ってほしい」と言われたんですよ。

西村)どんな場所で歌ったのですか。

門松)大きな公民館で、パイプ椅子が並んでいるような場所です。

西村)その後は、被災した人にも歌ったのですか。

門松)亘理町の FM 「あおぞら」という災害ラジオ局に生出演して、町のみなさんに歌を届けました。

西村)どんな感想が届きましたか。

門松)スタジオライブをしたのですが、局のみなさんが涙流して「ありがとう。またぜひ来て欲しい」と言ってくださって。それから、自分たちにできることは続けていこうと活動をはじめました。

西村)被災した人から「自分の気持ちを語ることができなかった」という話をよく聞くのですが、みなさんはどうでしたか。

門松)それから通うにつれて、ちょっとずつ距離が近くなっていくのがわかりました。ボランティアスタッフの人、街を動かす行政の人にもいろんな想いがありながら、一緒に街を良くしたい、再建したいという思いで頑張っていると。そんな声をちょっとずつ聞けるようになって。これは通い続けたからこそ、僕たちに話してくれているのかなと感じましたね。

西村)10年間も通い続けているのはなぜですか。

門松)僕はありがたいことに、毎月、宮城でラジオやらせていただいているので、もう少し足を延ばそうと沿岸部にも行っています。しかし、5年ぐらい前から「人が来なくなった。忘れられているのではないか」という声をよくきくようになって。そんな中、「忘れてないよ、また来たでー!」と来るような、そんな存在になれたらいいなと思って続けています。中には、「また来たの?」と言われたり(笑)。そんな冗談も言えるような仲になっています。東北に行きたいけど行けないという人の分も行って、何か持って帰ってきたいという想いで続けています。

西村)門松さんの歌を聴いていると、被災地とのつながりを深く感じます。ぜひ、きょうはリスナーのみなさんにも生で歌を届けたいということで。ぜひ歌っていただきたいと思います。

門松)ありがとうございます!通い続けた宮城で、3月11日を境に、僕の気持ちも変わりました。いろんな方と接するうちに、東北のみなさんの内に秘めた力強さをすごく感じました。その力強い想いと、どんなに寒い冬でも耐えて、みんなを魅了する花を咲かせる桜が、重なったんです。そんな力強い歌を歌えたらと作った「櫻」という曲を歌わせてください。

♪生演奏披露♪ 「櫻」

西村)東北で出会った人たちの笑顔が浮かんできました。

門松)僕もいつも、いろんな人のことを思い描きながら歌っています。

西村)東北の町でこの曲を歌ったときは、どんな感想が届きましたか。

門松)みなさん涙を流して、「いい曲を作ってくれて、本当にありがとう」と言ってくださいました。

西村)最初はどんな場所で歌ったのですか。

門松)最初は実は広島県の因島という町で。町の方が復興支援ライブを企画してくださったんです。その収益を持って、宮城に足を運び、ライブをしたんです。

西村)広島のみなさんの気持ちを持ってライブをしたのですね。

門松)東北のみなさんは、本当に力強いです。触れれば触れるほど熱い思いがいっぱい溢れてくるんです。「やっと泣けたわ。ありがとう」という声を聞いたのは、初めてでした。笑うことも泣くことも、感情を表に出すことをずっと我慢していたけど、自然とこの曲で泣くことができたと。いろんな喜怒哀楽を、歌を聴くことで、出してもらえたらいいなと思っ、一本一本ライブをやっています。

西村)この1年は、新型コロナウイルスの影響でなかなかライブができていないのでは。最近の様子は聞いていますか。

門松)2月13日に大きな地震があったのですぐ連絡したら、みんな大丈夫ということで。こまめに連絡を取っています。みなさん10年前の経験があるから、もう1度気を引き締めるとともに、あの頃の経験を絶対忘れないようにしようと言っていました。一週間、高台で車に避難していたという人も。

西村)そんな不安な気持ちを抱えながら、日々過ごしているのですね。教訓は本当に大切ですね。そんな中、行きたいという気持ちも出てきますよね。

門松)来月、震災から10年を迎えるタイミングで、気仙沼の町のみなさんから歌いに来てくれないかというお話をいただきました。この状況を鑑みて、無観客の生配信ライブを3月14日(日)に、宮城県・気仙沼からやらせていただきます。

西村)門松さんは気仙沼に行くけれど、無観客でライブをするのですね。

門松)現地で気仙沼の町のみなさんをゲストにお招きして、トークライブもやります。

西村)どなたとトークするんですか。

門松)気仙沼で100年以上続くコヤマ菓子店の五代目社長さんとか、毎月11日にキャンドルに火を灯して大切な人を思い出す活動「ともしびプロジェクト」をやっている杉浦くんとか。
コヤマ菓子店は、家も店も津波に流されてしまって、同じ場所に店を建て直すことを目標に頑張って、2019年11月に再建したんです。小山さんは、気仙沼の今を発信するブログを毎日書き続けています。この10年を聞くにはこの人しかいないと思って。現状のお話とか、未来についてなどいろいろ喋ってもらおうと思っています。


西村)YouTube 無料生配信のURL アドレスは、番組ホームページにリンクを貼っています。コヤマ菓子店の小山さんとコラボレーションもあるのですよね。

門松)小山さんから震災からの思いを書き綴っていた歌詞に、曲をつけてくれないかという相談をいただいて。お店が再建するまでに曲を作ると約束していたんです。2人でコラボした曲を、気仙沼からの生配信で披露します。

西村)門松さんならではの活動のお話をたっぷり聞かせていただきました。
ここでリスナーのみなさんにお知らせです。
東日本大震災の発生から10年を迎える来月、ネットワーク1・ 17は、オンラインイベントを開催します。
今回は、私が企画してきた復興を応援するイベント「ハッピーラッシュ♪♪♪」と「ネットワーク1・17」のコラボレーションという形で開催します。オンラインイベント「東日本大震災10年~東北と関西をつなぐ」は、3月21日(日)午後1時から2時30分頃まで、 MBS ラジオの公式 YouTube チャンネルから無料配信します。新型コロナウイルスの感染が広がる中で、私たちもなかなか被災地を訪れることができません。でも、震災発生10年というこのタイミングで、私たちにできることを発信したいということで、今回オンラインイベントを企画しました。
門松良祐さんと、女性2人組の花*花もトークとライブをお届け。その他にも、ゲストが登場します。
門松さん、ぜひイベントに向けてひとことお願いします!

門松)イベントで、気仙沼に行ったいろんなお話をできたらと思っています。写真も持っていきます!

西村)このイベントの情報は、番組ホームページや、番組公式ツイッターでもお知らせしています。当日見ることができるという方もご安心ください。イベント終了後、3月31日まで MBS ラジオの公式 YouTube チャンネルで、無料で見ることができます。
みなさんどうぞ、オンラインでご参加ください。