第1373回「トルコ・シリアで大地震~現地の状況は」
オンライン:AAR Japan[難民を助ける会]東京事務局 プログラムコーディネーター 栁田純子さん

西村)トルコ南東部で6日に発生した大きな地震は被害の全容がまだ明らかになっていませんが、日本のNPOやNGOが被災者支援に乗り出しています。
きょうは、AAR Japan[難民を助ける会]東京事務局 プログラムコーディネーター 栁田純子さんにお話を伺います。
 
栁田)よろしくお願いいたします。
 
西村)AAR Japan[難民を助ける会]は、どこでどんな支援を始めたのでしょうか。
 
栁田)地震発生後の翌日、2月7日からトルコ南東部のシャンルウルファで支援を開始しました。今回の地震の震源地であるカフラマンマラシュから約220kmの場所です。毛布やおむつの配布を開始しています。並行してハタイやカフラマンマラシュでも調査を始めました。
 
西村)現地はどんな状況ですか。
 
栁田)南東部のカフラマンマラシュ、アンタキアでは、建物の崩壊がひどく、インフラの整備も全く行われていない状態。救助を待っている人も多く、屋外で救助を待ちながら暖をとる人々の姿が見られます。
 
西村)建物が倒壊してがれきが積み重なった前で、焚き火をして暖をとっているのですね。
 
栁田)家族が倒壊した建物の下にいて、避難所に行くに行けない人も多いです。倒壊した建物の前で暖を取りながら救助をひたすら待つ人々からは政府への不満の声もあるようです。
  
西村)救助がなかなか来ない中、それぞれが助け合って救助しようとしている人も多いのでしょうか。
 
栁田)そういう人たちもいると思います。被害がとても大きいので、政府も対応できていない状況です。
 
西村)ライフラインはどんな状況ですか。
 
栁田)電気も水も通っていません。現地スタッフによると「ゴーストタウン化している」とのことです。
  
西村)ニュースで映像を見ていても大変な様子が伝わってきます。そんな中で震源地から少し離れたシャンルウルファで、毛布やおむつを配布しているとのこと。シャンルウルファのライフラインはどうなっていますか。
   
栁田)シャンルウルファは、カフラマンマラシュやハタイに比べてライフラインが生きています。営業している店もあるので、物資の調達が可能。シャンルウルファで物資を調達して、女性サポートセンターや簡易の避難所に毛布やおむつを届けています。避難所が人であふれていて、トイレの問題も深刻。次の対応が必要になってきています。
  
西村)トイレ問題は阪神・淡路大震災、東日本大震災のときにも多く報道されました。
  
栁田)行政の施設や公民館が避難所になっているので、多くの人がトイレを使う想定がされていません。衛生環境も悪く、行列もできています。
 
西村)被災者は避難する場所と知っていて避難所に避難したのか、被災してから情報を入手して移動したのかわかりますか。
 
栁田)私の知る限りでは、事前の避難訓練はトルコには浸透していないので、地震が起きてから、地域で助け合いながら避難したと思われます。
 
西村)水や食べ物はどうしているのですか。
 
栁田)行政の支援やトルコ各地から集まる物資、わたしたちのような支援団体からの物資配布で何とかつなげている状態です。
 
西村)どんなものを食べているのですか。
 
栁田)シャンルウルファは、電気・水道は使えますが、避難所で料理ができるわけではないので缶詰、非常食などを食べています。トルコ人やシリア難民が普段から食べているオリーブの缶詰などです。
 
西村)トルコでは備蓄をしようという考えはもとからあったのですか。
 
栁田)地方・行政レベルではしていなかったと思います。トルコ人は情に熱い人が多く、被災地にトルコ各地から物資を運ぼうと向かう人がとても多いんです。それが道路渋滞を引き起こして支援が届きにくい状況をつくりだしているという現実もあります。
 
西村)トルコ最大の都市、イスタンブールから被災地まではどれくらいの距離ですか。
 
栁田)イスタンブールからは車で12時間くらいです。かなり離れています。
 
西村)整備された道ばかりではなさそうですね...。震源地のカフラマンラッシュで倒壊した建物の前で暖をとって救助を待っている人々の食事はどうしているのでしょうか。
 
栁田)わたしたちのような支援団体によって届けられたものを食べるしか方法がありません。地域でなんとか食べ物を分け合っている状態です。
 
西村)炊き出しのような温かいものを食べる機会はあるのでしょうか。
 
栁田)ありません。今配布しているものは缶詰など冷たいものばかりです。今後は炊き出しの実施を検討しています。温かいものを少しでも早く届けようと準備を進めているところです。
 
西村)今は寒さが厳しいのではないですか。
 
栁田)トルコ南東部は、冬は雪が降ります。夜はマイナス10度ぐらいになってしまう日も。わたしは、マイナス10度を経験したことがありますが、外に出ると危険です。外出時は、顔を全部おおわないと自分の吐く息で鼻の中が凍ってしまいますし、風が吹くと体感温度がマイナス20度ぐらいになります。そんな状況の中で、屋外で暖をとりながら救助を待っている人もいるんです。
  
西村)地震が起きたときは未明なので、寝ているときに避難した人々ばかり。暖かい服装ではない人もいるのでしょうか。
 
栁田)着の身着のままで逃げています。支援物資は、暖を取ることができる毛布のニーズが高いです。わたしたちはまずその日をしのぐための毛布の配布を始めました。
 
西村)この寒さで体力的にもかなりダメージがありそうです...。
 
栁田)わたしたちは支援活動で越冬支援を行ったことがありますが、悲しいことに凍死してしまう赤ちゃんやお年寄りもいます。少しでも多くの人に迅速に暖を取れるものを届けたいと現地で頑張っています。
 
西村)小さな村はどんな様子ですか。被害状況が心配です。
 
栁田)現在、都市部では十分ではありませんが支援が開始されている状態。山岳部はアクセスが限られているので、被害状況が大きいと思います。わたしたちも今日、明日には調査に入る予定です。
 
西村)余震があって危険な状況もあると思いますので、気をつけて進めてください。
 
栁田)ありがとうございます。現地スタッフの心のケアも考えながら、できるだけ質の良い支援活動を長く続けられるように取り組んでいきます。
 
西村)これまでもトルコの地震救援をしてきたAAR Japan[難民を助ける会]としては、今回の被害の大きさをどう捉えていますか。
 
栁田)1999年のトルコ北西部地震や2011年の東部地震で緊急支援活動を行いました。過去100年でも2番目に大きい地震といわれていて、何百年に1回レベルの大きな災害。日本なら東日本大震災レベルの被害です。
 
西村)長期的な支援が必要となりそうでしょうか。
 
栁田)現在の支援活動は、その日を生きるための支援のみです。暖をとるもの、おむつ、食料が最優先となっています。長期化することが見込まれていますので、今後は人々が安心して生活できるような環境整備が必要。子どもの教育とか被災者の心のケア、住宅、コミュニティ形成など長期的な支援が必要になると思います。
 
西村)住宅を作るだけでもかなりの数になりますね。寒い中で暖を取りながら健康を維持することも厳しい状況になりそう。
 
栁田)家族を亡くした人など突然起きた大地震によって、心に痛みを抱えている人のケアもやっていきたいです。
 
西村)障がいのある人の支援やケアは行き届いていますか。
 
栁田)全然足りていない状況です。
 
西村)大きな被害が出ているというシリアでは、支援を予定していますか。
 
栁田)トルコに事務所を構えている当会としては、現在はトルコ国内で支援活動を行っています。トルコにはシリアから難民として逃げてきて生活している人も多いので難民支援を継続しています。
 
西村)被災者はどんなことを求めているのですか。
  
栁田)まずは物資。暖を取れるような毛布、灯油。電気がないので電気を使わずに暖を取れるもの。衛生用品、食料、住宅...多岐にわたるものが必要とされています。
 
西村)今、わたしたちにどんな支援ができるのでしょうか。
 
栁田)ありがとうございます。迅速に現地で物資を調達して、その日のうちにすぐに配布することが大切なので、まずは寄付をいただけるのがありがたいです。現金があればすぐに物資の調達が可能となり支援につながります。
 
西村)まずはお金の寄付ですね。そのほかに何かありますか。
 
栁田)当会はホームページでチャリティーチョコレートなどさまざまなものを販売しています。購入すると寄付ができますので、ぜひ買い物を通じて支援をしてもらえたら。古本やCD、ブランド品で支援することもできるのでホームページを見てください。物によっては送料無料で支援することも可能。状況に応じて支援の形を選んでもらえたら。購入以外でも、当会のSNSのシェア、リツイートなどをしてもらえたら、現在起きている状況や支援活動を幅広く知ってもらうことができるので、より支援が広がっていくと思います。
 
西村)AAR Japan[難民を助ける会]ホームぺージには、現地からの活動レポートが載っています。みなさんぜひご覧ください。柳田さん、きょうは、どうもありがとうございました。
 
栁田)現地の人々は、この現状を知ってほしい、わたしたちのことを忘れないでいてほしいということを日々いっています。ぜひともホームページから活動レポートなどを見て状況をフォローしてください。
 
西村)寄付などの支援や活動レポートなどぜひこちらをご覧ください。
https://aarjapan.gr.jp/
きょうは、AAR Japan[難民を助ける会]東京事務局 プログラムコーディネーター 栁田純子さんにお話を伺いました。