第1237回「各地で豪雨~九州南部の被災地はいま」
電話:NPO法人「ピースプロジェクト」代表 加藤勉さん

千葉)停滞する梅雨前線の影響で、全国各地で記録的な豪雨が続いています。
九州の南部では4日(土)の未明から大変な雨となり、熊本県を流れる一級河川の球磨川が氾濫しました。
きょうは、球磨川の流域で被害を受けた町に支援に入っている方に電話をつないでお話を聞きます。
NPO法人「ピースプロジェクト」代表の加藤勉さんです。よろしくお願いします。
 
加藤)よろしくお願いします。
 
千葉)お忙しいところすみません。加藤さんは、どこでどんな支援をしているんですか。
 
加藤)いま、熊本の八代市・千丁コミュニティセンターというところで炊き出しの支援を行っています。
  
千葉)なぜ、その場所で支援をしようと決めたんですか。
 
加藤)私の友人のお兄さまがこちらの方に住んでいらっしゃいまして。
いつも、災害緊急支援に入るんですけれども、なかなか拠点を探すのが難しくてですね。今回はそういう伝手を使ってこの場を借りまして、炊き出し支援を開始させていただいております。

 
新川)毎日、朝からどんなふうに動いていらっしゃるんですか?
 
加藤)宿を熊本の方にとっていまして、熊本を出てこちらの方に来る途中に買い出しをします。それで、このコミュニティセンターに調理室がありまして、その調理室をお借りして材料を刻んだり煮込んだり、炊いたりして。こちらの千丁コミュニティセンターに避難されている方50人、それと、芦北スカイドームという、こちらからまた40分ほど、25キロぐらい離れた避難所に避難されている方に向けて100人分、合計150食をこちらの方で炊き込んで、準備できたものをこちらで配り、それから、芦北の方でも配膳するように届けております。
 
千葉)いま、加藤さんのいらっしゃる八代市は、どんな被害の状況なんでしょうか。
 
加藤)いまいる千丁の町は、比較的おだやかで買い物もできる状況なんですが、(八代市内の)坂本地区はもうほぼ壊滅状態で、そちらの方がこちらのコミュニティセンターに避難されているという感じになりますね。
 
千葉)流された家だとか、それから道路も一面、土に覆われているというような感じなんでしょうか。
 
加藤)私は坂本地区には残念ながらまだ入れていないんですけれども、避難されている方のお話を聞くと、特にこのコミュニティセンターに来られている方は、家を流された方が多くいらっしゃいまして、家には帰りたくても帰れないというような状況をお聞きしています。
 
新川)加藤さんが移動される中で、被災の様子などを見ることはありましたか。
 
加藤)今まで入れなかった人吉市が、道路が通れるようになったので朝早めに出て行ってきたんですけれども、こちらの方は災害復興支援というのがまだまだ手が足りていないようなようすが見受けられました。
 
新川)水とか泥とか、家の被災状況とか、目に見えるものはどんな状況ですか。
 
加藤)泥かきをしているようすを見ましたが、まだボランティアの方も入られてないようで、非常に苦労されているような感じに見てとれました。
 
千葉)家の1階は水に浸かって泥水がまだ入っているという状況なんですかね。
 
加藤)人吉の方でも2階近くまで水が上がっていましたし、芦北の方はちょうどスカイドームに行く途中に被災地を通るんですけれども、1メートル50~60センチくらいは水が上がっているようすでしたね。
 
千葉)加藤さんは豪雨が降った次の日の5日(日)に被災地に入られたとうかがったんですが、その時と比べてどうですか。被災地の様子は少し変わってはきているんですか。
 
加藤)みなさん、ご自宅の後片付けをしに帰ったりしたいんですけども、1日しか晴れがなくてですね、雨が降っていて、なかなか作業が遅々として進んでないような感じだと思います。
 
新川)避難されている方々の様子はどんな感じでしょうか。
 
加藤)やはり、お年寄りの方が避難所には多くいらっしゃって、病気をもってらっしゃる方とか、つらそうな表情をされていますし、お疲れの様子が見て取れますね。
 
新川)薬が足りていないという報道もありますが、持病を持たれている方もいらっしゃるんですね。
 
加藤)着の身着のままで逃げて来られていますので、持病の薬を持っていらっしゃらない方...医療関係の方がぼちぼち動かれていますので、薬もこれから手に入るようになるんじゃないかなとは思いますけれども。
 
千葉)コロナウイルスの感染が心配されている状況ですよね。避難所ではその対策はされているんですか。
 
加藤)どの避難所もしっかり対策はされていまして、ソーシャルディスタンスを取るようにということももちろんですけれども、入場時に体温を測って、アルコール消毒をした上で、上履きのスリッパに履き替えて、トイレとかに行く時にはまた、履き物を履き替えるというような安全対策がとられております。
 
新川)距離は取れるぐらいの広さはあるんですか。
 
加藤)これが十分かどうかは私は判断できかねるんですけれども、過去の避難所の在り方に比べると、しっかりと空間は取られているように思います。
 
新川)仕切りなどは立ててあるんでしょうか。
 
加藤)これも避難所によって違うんですが、今私がいる千丁コミュニティセンターは、仕切りというものがなくてですね、数カ所に分かれて、ある程度に人数を絞って空間を空けるようにしています。
そして、芦北の方はダンボールによる間仕切りをうまく使われていまして、1家族ごとにダンボールでの間仕切りを使ったスペース確保ということがなされていました。

 
千葉)コミュニティセンターは、いくつかの部屋に分かれているという感じじゃなくて、大きな部屋に何人も入っているという状況なんですか。
 
加藤)会議室とか集会室みたいな形で部屋が分かれていまして、和室に何人、会議室に何人という風に分かれている感じですね。
 
千葉)みなさん、マスクは大丈夫ですか、十分あるんですか。
 
加藤)マスクは十分に届いていると思います。
ただ、使い捨てのマスクですので、今後の数が足りていくのかどうか、ちょっといま判断できかねるところですけどね。

 
千葉)支援する加藤さんたちの活動も気を付けなければいけないことが多いと思うんですが、感染に気をつけられていることってどんなことがありますか。
 
加藤)私はラッキーなことに(抗体検査の)陰性証明がとれていましたので、当初、先に被災地に入ってきたんですけれども、あと、東京から来る応援部隊の人間に関しては全部、抗体検査を優先的に受けてもらいまして、陰性証明を全員取った上での活動となっております。
 
新川)加藤さんたちは炊き出しをされているということでしたが、どういった炊き出しをされているんですか。
 
加藤)通常、カレーライスとか牛丼とかが多いんですけれども、今回、お年寄りの方が多く、ご希望を聞いても「野菜が食べたいです」っていうようなこともありましたので、弁当箱のようなものに、ご飯と野菜、魚とかそういうものを用意しています。
きょうはちょっと奮発して、うな丼を提供するように、いま準備しています。

 
新川)食品を扱うということで、より感染に気を使われることもあるんじゃないでしょうか。
 
加藤)はい。野菜も生野菜は一切提供しないで、熱を必ず通して安全対策を施した上で提供するという配慮をしております。
 
千葉)食べる時も、一か所に集まってみんなで食べるというわけにはいかないですよね。
 
加藤)はい。みなさんのご自分のスペースに戻られて、お食事を召し上がるという形ですね。
 
千葉)食事は、みなさんに運んでいって、「はいどうぞ」と渡すんですか。
 
加藤)いままでなら、私どもの活動の骨子というのが「ふれあいの炊き出し活動」といいまして、いろいろ「どうでしたか」というようなお話を聞きながら、あるいは、みなさんの心のケアをしながら炊き出しをするんですけども、今回、コロナ対策ということで食事を提供してテーブルの上に置くまでが活動で、その先は避難されている方ご自身で受け取っていただいて召し上がっていただくと。
ですから、われわれと避難されている方の接点というのは、ごくごく少ない感じになっております。

 
新川)これまでの災害のように、ふれあいながら、ケアをしながら炊き出しをするような活動が、接触を控えないといけないから、むずかしいということですね。
 
加藤)残念ながら、そうなんです。
 
千葉)会話しながら、お互いにコミュニケーションを取っていくっていうのは、本当は重要なんですよね。
 
加藤)本当にみなさん誰ともしゃべらずに、自分の置かれたスペースで、本当におとなしく食べていらっしゃるんですね。
ですから、お声をかけたい、「大丈夫ですか」ってひとことかけたいんですが、いま残念ながらそれもできない。本当に悔しい思いで炊き出しをしております。

 
新川)ただ、やっぱりあたたかい食べ物があるというのは、本当に避難所にとっていま、ありがたい状況なんじゃないでしょうか。
 
加藤)はい。これもうれしいんですけれども、炊き出しを始めた翌日から、「これ食べてね」って、避難所の方が差し入れを持ってきていただいたりですね、なかなか触れ合えたりはしないんですけれども、そういう心のコミュニケーションというんですかね、そういうことはできています。「きのうの牛丼美味しかったよ」とかって言っていただけるだけで、とても心が休まる気はしています。
 
千葉)本当にいま、コロナの影響でなかなか被災地外からの支援が入りにくい状況なので、人手が足りていないんじゃないんですか。
 
加藤)今回の災害に対しては、ボランティアさんが集めにくい状況だろうなっていうふうに思っていまして、熊本県内だけで、この広い地域をカバーすることはとてもむずかしいでしょう。被災されている方はご高齢の方も多いですから、本当は力のある若いボランティアの方に来ていただいて活動していただくのがベストだろうとは思うんですけれども、今回はなかなかむずかしいのかもしれないですね。
 
新川)いま、避難されている方は、今後の生活に向けて片付けをしたりとか、日中されているんでしょうか。
 
加藤)これも、力のある若い方は積極的に、昼間も雨が降っていようと家に帰って後片付けをされているんですが、お年を召した方はもうそういう気力もなかなか湧かなくて、朝から避難所で新聞読んだりテレビご覧になったり、あるいはじっとされたりというような状況で。状況によって差があるように思いますね。
 
新川)しばらくは、いまいらっしゃる避難所での生活が続きそうな感じはあるんでしょうか。
 
加藤)はい。身内がいらっしゃる方は遠くから引き取りに来られているようですけれども、ご高齢の方で身寄りのいらっしゃらない方なんかは、当面、避難所暮らしが続くというような話をちょっとお聞きしました。
 
千葉)いま、足りない物っていうのは何かありますか。
 
加藤)物質的な面はちょっと分からないんですが、私自身が思うのはやはり、ボランティアというか人の手だと思いました。
 
新川)物というよりは人手ということですか。
 
加藤)はい。こういう洪水の災害の時というのは、家の泥かきや家の後片付けとかの作業を優先的にしていかなきゃならないと思いますので、これから暑い時期を迎えますし、人力による手助けがいちばん必要とされるんじゃないかなと私は思いますね。
 
新川)復旧に向けても関係してきますが、ライフラインとか食べ物などは足りているんでしょうか。
 
加藤)これも、孤立地区がいくつか点在していまして、今回、橋が寸断されているような箇所が何か所もあって、そういうところの話がまだ確実に情報として聞き取れていないんですけれども、湧き水で生活をせざるを得ないとか、かなり追い込まれた厳しい状況にあるところが未だにあるというふうに聞いています。
われわれがいる八代の方は、そこまで分断されているようなところは少ないように思うんですけれども、人吉市の方は厳しいところがまだまだあるんではないでしょうか。

 
新川)避難所の方は、水とか電気とかはもう戻っているんですか?
 
加藤)はい。私が今回、ぐるっと回らせていただいた範囲では、水道が出るところ出ないところ両方あるんですけれども、災害用の水だったり自衛隊さんから給水車が来ていたりして、全く足りないことはないと思います。
 
新川)炊き出しも行えるぐらいの水やガスなどはあるんですね。
  
加藤)そうですね。いま、私がいる千丁コミュニティセンターは、水も出ますし電気もきていますしガスもありますので、炊き出しをやるにはうってつけの場所ですね。
  
千葉)これから被災地で心配されることというのは、加藤さんとしてはどう思われますか?
  
加藤)これから暑さと...この雨はいつ止むのか、厳しい状況の中で復興活動をしていかなきゃならないというのは、ちょっと厳しいように思いますね。
 
新川)復旧が遅れると、被災された方のその精神的なダメージも大きいですよね。
 
加藤)はい。そういう意味でもボランティアの方とかですね、人が来て一緒に助け合うというような活動ができればいいなと思っております。 
 
千葉)加藤さんたちは、今後どのように活動をされる予定なんでしょうか。
 
加藤)私は一旦、東京に戻りますが、それ以降、出来る限り週末ベースでこちらの方に入って、炊き出し等の活動をやっていこうと思っています。
 
新川)先ほど、人吉の方に入られるとおっしゃっていましたが、活動拠点を変えられるんですか。
 
加藤)千丁のこの場所が借りられれば、炊き出しの準備はここでやって、その食材を持ってどこかで配るということのひとつに、人吉も候補に入れております。
 
新川)人吉市は八代市と近いんですね?
 
加藤)そうですね、車で30分ぐらいで行けるところですね。
 
千葉)食材なんかは十分確保できているんですか?
 
加藤)はい。熊本でも買えますし、この千丁の方はスーパーも開いておりまして、そちらで購入が可能です。
 
新川)炊き出し150食を毎日されているということでしたけれども、加藤さんが炊き出しをされる以外にも、お弁当とか何か、他の時間に配られたりはされているんでしょうか。
 
加藤)基本的にはわれわれが提供できない時間帯は、お弁当が提供されていますし、非常用の食料品も結構ふんだんにありますので、われわれは、できるだけあたたかい、できたての食べ物を提供するという趣旨で活動をしていまして、あたたかいものを食べて元気になっていただこうということですね。
 
千葉)ピースプロジェクトでも今後、例えば続々と応援部隊として人が入ってくるとか、そういう予定はあるんですか?
 
加藤)コロナがなければ、いま、おっしゃるみたいに、仲間が全国におりますので、声をかけて集めたいんですが...。本当にもう抗体検査で陰性証明が取れてソーシャルディスタンスが確保できる範囲内で活動していかざるを得ないなという判断をしています。
 
新川)何か支援したい、例えば物を送りたいという方も多いと思うんですけど、いま物を送るというのはどうなんでしょうか。
 
加藤)これも、私どもの方に結構たくさん問い合わせをいただいてるんですが、私の友人のところに送ってもらうぐらいしかないですね。いま、佐川便、ヤマト便ともに、配達困難地域に指定されていますので物が届かないような状況なんですね。
 
千葉)宅配便が使えない状況なんですね。
 
加藤)そうなんです。
 
新川)いま、ピースプロジェクトで、活動のための寄付を募られていますよね。
 
加藤)はい。Facebook あるいはホームページに詳しい情報が出ております。 Facebook で「ピースプロジェクト」と検索していただくと、日々の活動も更新されていますので、見ていただいて活動に賛同していただける方は、ご寄付いただければありがたいと思います。
 
千葉)加藤さん、きょうはどうもありがとうございました。
どうぞ十分気を付けて活動を続けてくださいね。
 
加藤)ありがとうございます。
 
NPO法人「ピースプロジェクト」 寄付先
https://www.peace-project.net/support/