第1348回「清水國明さんに聞く!アウトドアで防災力アップ」
オンライン:アウトドア愛好家・タレント 清水國明さん

西村)アウトドアの知識や経験は、災害時にも役立ちます。
きょうは、芸能界きってのアウトドア愛好家である、タレントの清水國明さんに、アウトドアで防災力をつける方法を教えてもらいます。
 
清水)よろしくお願いいたします。
 
西村)清水さんは、以前から被災地に支援に行ったり、熊本地震の被災地にトレーラーハウスを提供する活動をしています。
 
清水)被災地で僕が備蓄しているトレーラーハウスを仮設住宅ができるまで使ってもらっています。3.11を期に、新潟や九州、広島で活動しています。
 
西村)きょうは、アウトドアの知識を防災に活かす方法についていろいろ教えてください。まず、アウトドア初心者に必要な備えには、どんなものがありますか。
 
清水)そもそも、キャンプ道具をたくさん揃えなければならなないというのは間違いなんです。
 
西村)キャンプをするには、寝袋やさまざまなギアを揃えないといけないのかと...。
 
清水)アウトドア用品を揃えなくても、毛布、鍋、やかんを持っていればいいわけです。知識がない初心者もベテランも同じ人間。太古の昔から、人間には自然との付き合い方が遺伝子に組み込まれています。暑い・寒い・痛いなどを感じることが体にインプットされている。自然体で自然の中に入っていくと勝手にスイッチが入ります。暑ければ汗をかくし、寒ければ毛穴を縮めて体温を保とうとします。そんなふうに体が覚えていることを目覚めさせるために、自然の中で過ごした方が良いと思います。
 
西村)頭で考えるよりも、体で感じろということですね。
 
清水)うちには3歳になる息子がいます。わたしは72歳なのですが、4人目の嫁さんがいまして(笑)。先日、僕が小さい頃遊んでいた河原に息子を連れていったら、ものすごく成長したんです。トイレトレーニングをしていたのですが、それまで家の中で恥ずかしいと逃げ回ってしなかったのに、川の中で遊んでいたらオシッコができるようになりました。帰ってきてから家のトイレでもできるようになって。びっくりしました。そのうち、次のハードルであったウンチもできるようになりました。自然の中で過ごすと子どもは成長するんだなと改めて感じましたね。
 
西村)人間の本能が呼び覚まされるのですね。守られすぎたらダメなんですね。アウトドア初心者の私たちは、まず何をすればいいのでしょう。
 
清水)とは言うものの、やはり自然は危険と背中合わせ。例えば、河原がキレイだからと、中州の砂地のところにテント張るのは危険。上流で雨が降っていると増水することもあります。上流から下流まで長い川では、上流で降った雨が1時間遅れぐらいで増えることもあるので油断は禁物。初心者は普通のキャンプ場から慣らしていった方が良いです。
 
西村)安全な場所とはどのような場所ですか。見定めるポイントはありますか。
 
清水)川なら、上流から流れてきたゴミがどこに引っかかっているかを見る。ゴミがくっついているところまでは、増水したときに水が来るんです。なるべく高台で、逃げるルートをしっかり確保して、その方向に車を向けて停めておくなどの備えは必要です。昔の海軍は「出船の構え」といって、船は必ず港の外に向けて停めていました。それと同じように、靴の脱ぎ方や車の停め方など、パニックになったときに、すぐに逃げられるようにスタンバイをすることを日頃から意識しておきましょう。
 
西村)まさに生きる力ですね。
 
清水)先人の知恵でもあります。
 
西村)そういうことを子どもたちにも教えていきたいです。いつもどんなときでも楽しむだけではなく「もしここで災害が起きたら」というシミュレーションをすることが大切なんですね。
 
清水)アウトドアで快適に安全に過ごすために、日頃から癖付けておいてほしいことがあります。レストランに入ったときは、1秒でメニューを決めるということです。
 
西村)清水さんは、いつも1秒でメニューを決めているのですか!?
 
清水)決めてますよ。僕は、お店に入る前に何を食べるかを先に決めて座るんです。同時に何かあったときに脱出できる出口も確認します。メニューを見てから悩むようでは、パニックになったときに「どっちから逃げよう...」と悩んでしまうと思います。日頃から、即断・即決ができる準備をしています。セッカチとかイラチとも言いますが(笑)。そのような訓練はしておいた方がいいですよ。
 
西村)日頃から判断力・決断力を磨くことが大事なんですね。わたしはメニューをなかなか決められないので...きょうから改めます。初心者は安全なキャンプ場で、どんな体験をしたら良いのでしょうか。
 
清水)テントの中で、土の上で寝るということは良い体験になると思います。
 
西村)今は、グランピングなどで、豪華なベッドで寝たり、寒いときはストーブをつけたりしますよね。そうではなく、まずは土の上で寝てみる。不自由な体験、サバイバルなキャンプをすることですね。
 
清水)キャンプの醍醐味は、地球の上に背中をピタッとくっつけて土の上に寝ること。「地球の上で寝てる!」という感覚になります。暑い・寒いを体で調整しながら、一晩過ごすことがすごく良い経験になると思います。キャンプは、夜明け前にすごく寒くなるんです。そんなことを体験しないまま大人になる人が多いことにびっくりしました。真っ暗な時間から、鳥がチュンチュンと鳴き始める瞬間を体験する。たくさんのことを学ぶことができます。
 
西村)夏休みに子どもたちにも体験させたいです。子どもの防災力アップに必要なことを教えてください。
 
清水)親が余計な口出しをしないことです。「危ない!」「そっちに行ったらダメ!」「怪我するよ!」などと言えば言うほど、子どもはヤンチャに動くんです。
 
西村)心当たりがたくさんあります!
 
清水)トレッキングの企画で野山を歩いているときに、子ども連れのお母さんが、子どもに「目をつぶって!」と言ったんです。理由を聞いたら、「木の枝が目に刺さるといけないから」と。目をつぶっていたら歩けないですよね(笑)。そんなことを言わなくても子どもは危険を察知したら本能的に目をつぶります。親が言えば言うほど、子どもの本能が無視されて余計危ない。"親子の縁切り時間"を設けましょう。自然の中は、家庭にいるときの300倍ぐらい注意しないと危険がいっぱいですから。「親は守ってくれない、自分の命は自分で守らなければならない」と思わせること。子どもが転んでも、見守るだけで助けなければ「あれ、なんで助けてくれないんだろう?」となります。「泣き続けてもパパやママは守ってくれない」と思ったら、子どもは自分で自分の身を守るようになります。子どもは、硬い、高い、暗い、大きいなどに対して、ビビる本能がちゃんとありますから。安全に身を守る本能をダメにしてしまうのは、親の余計なアドバイスです。
 
西村)子どもの本能を信じてあげる。親と離れる時間を作るということが大切なんですね。
 
清水)ケガをしても「良かったね」と言ってあげた方が良いです。ナイフで切り傷を負っても「指が落ちなくてよかったね」と。うちの娘や息子にもそう言っています。刃物が指に入った瞬間の電気がピリッと走る嫌な感覚を覚えることによって、他人を傷つけなくなるし、自分もケガに気をつけるようになる。そんな最初の経験ができたことを喜ばないといけません。
 
西村)経験が記憶にも教訓にもつながるのですね。親は子どもにどうしても口出ししてしまいます。親元を離れて子どもにサバイバルキャンプを体験させたいと思うのですが、清水さんの活動の中で、子どもにキャンプを体験させる企画があるんですね。
 
清水)「防災訓練」を100回するよりもサバイバルキャンプを1回するほうが身につきます。わたしは、瀬戸内海に無人島を一つ持ってます。そこへみんなを閉じ込めて、帰るに帰れないサマーキャンプを10日間やります。
 
西村)それだけ聞いたらちょっと怖そう(笑)。きっと楽しいですよね!
 
清水)楽しもうと思う人は楽しめます。楽しませてもらおうと思う人はダメ。
 
西村)どんなアクティビティがあるのかな?と思ったんですけど、そういうことではないのですね!
 
清水)自分で楽しむ、人のせいにしない、自修自得。そして、自分も自由だけど他人も自由。他人の自由を邪魔する権利はありません。自修自得、自己責任、自他自由という3つの約束さえ守ってくれたら、あとは好きにしてもらって構いません。タイトルは、「2022年サマーキャンプ『生きるチカラ楽校』」。楽しむための学校です。校長先生である僕が自ら楽しんでいるところを見せようと思っています。
 
西村)清水校長先生と一緒に、大自然の中で思いっきり楽しみながら、生きる力や防災力も学ぶのですね。途中参加、途中帰宅もOKとのこと。
 
清水)アメリカなら1~2ヶ月サマーキャンプをするらしいのですが日本は短いです。10日間のプランもあるのですが、長いと思う人もいるから、途中で来て、途中で帰ってもOKです。2泊3日とか。今申し込みがあるのは、5日間が最長かな。
 
西村)親元を離れた子どもたちが、清水さんとスタッフのみなさんと一緒に暮らして、帰ってきた後の成長も楽しみです。生きる力を高めるためのお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。
きょうは、アウトドアに詳しい清水國明さんに、アウトドアで防災力をつける方法を伺いました。