第1349回「コロナ感染拡大 改めて考える在宅避難」
オンライン:イラストレーター・防災士 草野かおるさん

西村)きょうのテーマは在宅避難です。今まで、番組で何度も取り上げましたが、新型コロナ第7波による感染が拡大する中、改めて、災害時に避難所に行かないという選択肢が注目されています。
そんな在宅避難のコツについて「おうち避難のためのマンガ防災図鑑」にまとめたイラストレーターで防災士の草野かおるさんにお話を伺います。
 
草野)よろしくお願いいたします。
 
西村)草野さんが防災活動を始めたきっかけは?
 
草野)阪神・淡路大震災です。子育て1年目で東京に住んでいました。被災はしていないのですが、テレビからショッキングな映像が流れてきてこれは他人ごとではないと。子どもたちを守らければと思ったことがきっかけです。
 
西村)その後どんな活動をしたのですか。
 
草野)PTAや地域の集まりで活動していました。体育館に泊まったり、炊き出しをしたりといった防災訓練に参加してレポートを書いていました。参加する人は意識が高いのですが、参加しない人は他人ごと。そんな人たちに私たちが訓練したことをわかりやすく伝えたいと思ったんです。体育館で寝ると床が硬い、寒いなど、いろいろな気づきがあったので、それを漫画や絵に書いて新聞を作っていました。そんな活動が私の原点です。
 
西村)体験したからこそ伝えたいという思いが高まったのですね。その後、2011年に東日本大震災が起こりました。そのときは揺れを感じましたか。
 
草野)山梨へ旅行中だったのですが、停電で一晩かかって大渋滞の中、帰宅しました。自分は防災の知識があると思っていたのですが、いろんなことが通用しなくて自信を失いました。もう1度勉強したいと思い、テレビやラジオの情報をメモして、有効な知恵をストックしていきました。
 
西村)草野さんはそこで終わらなかったんですよね。
 
草野)キッチンで防災の知恵を4コマ漫画に描いて娘に自慢していたんです。娘に「ここで描いているだけでは意味がないから表に出さなきゃ」と言われて。ブログの始め方についての本を買ってきて、ブログで漫画を発信しはじめました。
 
西村)2018年には防災士の資格を取って、防災に関する書籍も出版するようになった草野さん。在宅避難のコツについて書いた「おうち避難のためのマンガ防災図鑑」という著書からおうち避難のコツについて聞いていきたいと思います。おうち避難には大切なものが3つあるということなのですが、1つ目は何でしょうか。
 
草野)1つ目は「明かり」です。災害時は、暗い中で転んでケガをするというニュースを毎回目にします。最低限の明かりが必要です。
 
西村)本の中にも、停電時に懐中電灯を探していたお母さんが転ぶ描写があります。明かりを探すときに部屋が散らかっていたり、何かが倒れてきたりして、ケガをすることもあるかもしれません。部屋を片付けておくことも大事ですね。明かりのある場所が瞬時にわかるようにする工夫やコツはありますか。
 
草野)我が家では、玄関とトイレにある小さな収納に1個ずつ懐中電灯を置いています。探す範囲が狭いほうが見つけやすいからです。家族にも伝わりやすい場所がオススメです。
 
西村)わたしは、枕元に懐中電灯を置いているのですが、大きな揺れだと懐中電灯が飛ばされて、他の場所に落ちてしまうこともあります。
 
草野)よく聞きます。ベッドの下に転がったら取れなくなりますよね。
 
西村)しかも真っ暗だと探すのも大変。どうしたら良いのでしょう。
 
草野)懐中電灯に暗闇で光る「蓄光シール」を貼っておくと、真っ暗な中でも見つけやすいですよ。
 
西村)それは素晴らしいアイディアですね。
 
草野)寝室の明かりのスイッチや眼鏡ケースに貼っておくのも良いですね。
 
西村)災害時はもちろん、普段から役立ちますね。明かりついて教えていただきました。2つ目のポイントは?
 
草野)水です。本にも水の確保についてのアイディアをたくさん書いています。
 
西村)水はどんなものをどれぐらい用意したら良いのでしょうか。
 
草野)一般的には、1人1日3L。3L×家族の人数×できれば2週間。大変な量になります。現実的には、ペットボトルを1ケース家に置いて、あとは、水を確保できる場所を防災地図で調べて、そこからどうやって水を運ぶかを考えています。
 
西村)公園の水道も使えますね。断水してしまったら、どこから水をもらうことができるかをあらかじめチェックしておくことも大切なのですね。改めて地図を見てみようと思います。断水がいつ解消するかわからない中、生活用水をどのように使っていくかもポイントですね。
 
草野)お風呂の水を貯めておく習慣をつけるのも良いです。お風呂の水があるだけで、ちょっとしたお洗濯もできますし、下水道が無事ならトイレを流すこともできます。
 
西村)身近にあるもので洗濯に使えるものはありますか。
 
草野)ジッパー付きの袋に下着などを入れて、重曹を溶かして服の上からもんでゆすいで、干すとキレイになります。臭いも取れます。大きいものは無理でも、下着くらいならお洗濯が可能です。
 
西村)重曹は、洗い流ししやすいのですか。
 
草野)重層はちょっと水に溶けにくいのですが、残っても食品にも使える天然の素材なので問題ありません。
 
西村)日々の生活のアイディアが節約にも繋がりますね。災害時だけではなく、普段から活用していきたいと思います。おうち避難のコツ3つ目は何でしょう。
 
草野)トイレの備えです。
 
西村)仮設トイレを使わせてもらったら良いのではないですか。
 
草野)仮設トイレは、最短でも翌日~3日後ぐらいにならないと設置されません。
 
西村)被害の状況にもよりますね。市販の携帯トイレを備えておくと良いという専門家の声もよく聞きますが、草野さんはどのような対策しているのですか。
 
草野)市販の携帯トイレは1個100円以上します。コスパを考えると、凝固剤の代わりになるのが犬のオシッコを固めるペットシーツ。Mサイズでペットボトル約1本分の水を吸ってくれます。便器にビニール袋をかけて、ペットシーツの吸収する面を上に向けて、用をたして、ビニールごと縛って、ゴミの収集が始まるまで溜めておきましょう。100円ショップでは、10枚入り100円で売っています。1枚10円で済むんですよ。
 
西村)そんなに安いのですね!安くてかさばらないペットシーツ。これは真似したいと思います。
 
草野)45Lのゴミ袋とペットシーツをトイレに備えておくだけでも、防災になります。
 
西村)ぜひ実践していきたいと思います。コロナ禍での在宅避難でほかに気をつけなければいけないことは?
 
草野)マスクや使い捨てのペーパータオルなど衛生的な消耗品は、日頃から多めにストックしておきましょう。場所があれば、最低でも1ヶ月分はストックしておいてほしいです。水を使わずに歯磨きできる歯磨きシートも100円ショップで売っています。ティッシュペーパーを指に巻きつけて、歯の表面の汚れを取るだけでもスッキリしますよ。
 
西村)参考にしたいと思います。きょうは「おうち避難のためのマンガ防災図鑑」の著者、イラストレーターで防災士の草野かおるさんにお話を伺いました。