第1333回「大学生が小学生に防災出前授業」
ゲスト:関西大学 学生団体KUMC 防災教育班 
    社会安全学部 新3年生 牧野葵さん
    社会安全学部 新3年生 至田圭織さん

西村)きょうは、防災教育をテーマにお届けしていきます。子どもたちに防災を伝える活動をしている大学生のおふたりに来ていただきました。
関西大学 社会安全学部の新3年生で、学生団体KUMCのメンバー、牧野葵さん(20)至田圭織(20)さんです。よろしくお願いいたします
 
牧野・至田)よろしくお願いします。
 
西村)学生団体KUMCはどんな団体ですか。
 
牧野)KUMCは社会安全学部と総合情報学部に属している約180名のメンバーで構成されていて、防災教育版班、ハザード班、イベント班の3つの班にわかれて活動しています。
 
西村)おふたりは何班ですか?
 
至田)わたしは全部に入っています。
 
牧野)わたしは防災教育班とハザード班に入っています。
 
西村)おふたりはなぜ防災を学ぼうと思ったのですか。
 
牧野)私は高校2年生の時に大阪北部地震を経験しました。自分が知っている町が変わった姿で報道されているのを見て、初めて災害に対して恐怖を感じました。それがきっかけで勉強してみたいと思い、この学部を志望しました。
 
西村)大阪北部地震では実際に揺れを感じましたか。
 
牧野)感じました。
 
西村)そのときどう思いましたか。
 
牧野)怖かったです。ちゃぶ台の下に滑り込みました。
 
西村)実際に体験したことも含めて防災を学ぼうと思ったのですね。至田さんは?
 
至田)わたしは第1志望で関西大学の社会安全学部に入りました。社会安全学部では、自然災害以外にも社会災害についても学ぶことができます。その中で防災の勉強していくうちに興味を持ちました。
 
西村)KUMCの防災教育班はどのような活動をしているのですか。
 
牧野)防災教育班は、主に私たちが属している社会安全学部がある高槻市の小学校をメインに防災授業を行っています。学校から依頼を受けて、打ち合わせを行って、パワーポイントで教材を作り、小学校に出向いたりオンラインで授業を行ったりしています。
 
西村)コロナ禍でなかなか対面授業が難しいのですね。どんなテーマで授業をしているのですか。
 
牧野)最近は水害や地震について。土砂災害について触れることが多いですね。
 
西村)実際にどんなふうに授業しているのか聞いてみましょう。スタッフが先日取材をしてきました。3月2日に高槻市立磐手小学校5年2組の子どもたちに至田さんが授業をしている様子です。
 
音声・至田)防災授業をしたいと思います。よろしくお願いします。2018年に大阪北部地震があったのですが覚えていますか?
 
音声・子どもたち)覚えてる!震度6弱のやつやろ?
 
音声・至田)大阪北部地震では震度6弱の地震が起きました。大きな地震が起きたらどうなると思いますか?
 
音声・子どもたち)ブロック塀が倒れてくる!
 
音声・子どもたち)家が壊れる!
 
音声・子どもたち)地面が割れる!
 
音声・子どもたち)津波!

 
西村)大阪北部地震は今から4年前。児童のみなさんは1年生の頃です。よく覚えていますね。
 
至田)わたしも授業をしていて驚きました。
 
西村)オンラインでの授業ですが、子どもたちの反応はすごく良いですね。コロナの影響でオンラインの授業が多いのですか。
 
牧野)私たちは子どもたちと比べると外出範囲が広いので、依頼を受けたときに、オンラインか対面か希望を聞くようにしています。やはりオンライン希望の学校が多く、私たちの健康のことも考えて基本的にはオンラインで授業を行っています。
 
西村)牧野さんは同じ時間に、隣の5年1組の子どもたちに授業を行っていました。1組ではどんな話をしたのですか。
 
牧野)1組でも同じパワーポイントを用いて授業をしました。クイズをやったのですが、先生から難しい問題をお願いされて。作るときに私たちが小学生のときにできなかった問題を考えたのですが、子どもたちはすぐ答えてしまって。驚かされる場面がありました。
 
西村)それはどんな問題だったのですか。
 
牧野)災害用非常伝言ダイヤルの電話番号を月の3つの中から選んでください。
1番 117
2番 711
3番 171

 
西村)正解は?
 
牧野)3番 171です。
 
至田)「忘れていない(171)」と覚えてね、と紹介しました。
 
西村)そういう語呂合わせだったのですね!防災や災害は難しいという声も聞きますがクイズ形式で楽しく学ぶって良いですね。
 
牧野)楽しく学んでもらうのが一番と思っています。
 
西村)オンラインの授業ではパソコンの画面越しに子どもたちと話しますよね。難しいと思うことはありますか。
 
至田)小学生の声が聞こえにくいことがあります。答えてもらう人に前まで来てもらうなど工夫はしているのですが、コミュニケーションがいづらいことも。
 
西村)牧野さんはどうですか。
 
牧野)わたしも授業をやるときは、コミュニケーションがしづらいと常に感じています。本当は、1人1人の表情を見て授業を進めたいのですが、パソコン1台の画面に生徒全員が映っている状態なので。
 
西村)みんなの表情がわかりにくいこともありますよね。牧野さんはどんな工夫をしてわかりやすく伝えているのですか。
 
牧野)楽しんで覚えてほしいと考えているので、授業では子どもたちに問いかけをたくさんするようにしています。例えば「大きな地震が起きたらどんなことが起こると思う?」「非常用持ち出し袋の中には何を入れたらいいと思う?」などです。
 
西村)実際に磐手小学校5年2組の子どもたちが答えていますので聞いてください。
 
音声・牧野)非常用持ち出し袋は避難するときに持っていくものです。中には生きるために必要なものを入れておきましょう。みんなどんなものをいれたらいいと思う?
 
音声・子どもたち)お金!
 
音声・子どもたち)非常食!
 
音声・子どもたち)ラジオ!
 
音声・子どもたち)飲料水!
 
音声・子どもたち)薬とか包帯!
 
音声・子どもたち)懐中電灯と電池たくさん!
 
音声・子どもたち)手袋!
 
音声・子どもたち)携帯トイレ!
 
音声・牧野)みんないっぱい出てくるねー!

 
西村)みんなたくさん答えてくれていますね。懐中電灯だけではなく、電池もたくさんというのは大きなポイント。携帯トイレと答えた子がいましたが、知らない子もいるのでみんなと一緒に考えることはすごく大切ですね。今聞いていただいたのは、至田さんが授業をした5年2組の子どもたちだったのですが、牧野さんも同じ質問をしたそう。子どもたちはどんなふうに答えていましたか。
 
牧野)答えてくれる内容はほとんど同じでした。生きていくために何が必要かと聞いたので、食べ物や飲み物という答えが多かったです。
 
西村)まずは何が大事かを考えることも大切なことだと思います。実際におふたりは非常持ち出し袋を準備していますか。
 
牧野)非常持ち出しセットを取り寄せて家に置いてあります。
 
至田)私も家族と一緒に防災リュックを作って玄関の近くに置いて、すぐに持ち出せるようにしています。
 
西村)中に入れるものは、家族会議で決めたのですか。それともそれぞれが必要と思うものを入れていますか。
 
至田)購入したセットのほかに必要と思うものを入れています。
 
西村)至田さんが非常持ち出し袋にプラスしたものは何ですか。
 
至田)わたしは目が悪いので眼鏡を入れています。新しい眼鏡に買い替えたときに前に使っていたものを入れています。
 
西村)古い眼鏡を捨てるのではなく、非常用持ち出し袋に入れておくのですね。ほかに入れておいた方がいいと思うものはありますか。
 
牧野)コロナ禍では、マスクは絶対に必要。消毒液や除菌シートは小さいものでもいいので入れておいたら良いと思います。わたしも以前作った非常用持ち出し袋に入れていなかったと思うので確認します。
 
西村)今だからこそ必要なものもありますね。みなさんも、今一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
おふたりは、子どもたちにこれからどんなことを伝えていきたいと思っていますか。
 
牧野)子どもたちに防災知識をもってもらいたいですが、それ以外にも実際の災害の写真を見たときに、自分ならどう行動するかを考えながら授業を受けてもらえたらうれしいです。
 
西村)大きな地震にあったことがない人には、想像できるツールが大事になってきますよね。至田さんは授業をしていて、子どもたちから教わったことや気づいたことはありますか。
 
至田)授業でクイズを作成したときに、知らなかったことや新しい発見がありました。
 
西村)それは何だったのですか。
 
至田)地震のときに避難する場所として、ガソリンスタンドは危ないと思っていたのですが、危なくないということを初めて知って。
 
西村)それはどんなクイズだったのですか。
 
牧野)「地震のとき逃げる場所として、一番安全な場所はどこでしょう?」というような問題だったと思います。
ガソリンスタンドは、ガソリンを扱っているので、簡単に壊れないように頑丈に作られています。災害時に避難する壊れにくい場所として最適。

 
西村)私も知らなかったです。クイズを通して防災を伝えているおふたり。子どもたちの反応はいかがですか。
 
牧野)磐手小学校の授業で川の増水に関して話をしたのですが、通常時の川の写真の後に増水時の川の写真を見せたんです。「雨が降るとこうなりますよ」と。そのとき「オー!」と歓声があがったんです。それがすごくうれしかったです。
 
西村)自分ごとに置き換えるきっかけにもなりますね。至田さんは印象的な反応や感想はありましたか。
 
至田)「クイズが楽しかった」などクイズに関する感想が多くてとてもうれしかったです。
 
西村)みんなで楽しみながら学ぶことの大切さを改めて感じますね。コロナ禍で活動がしにくい状況もあると思いますが、今の状況からどんなふうに変わっていったら良いと思いますか。
 
至田)わたしたちは、オンラインでしか防災授業をやったことがないのですが、子ども同士が意見交換できたら、子どもが主体的になれると思っています。
 
西村)牧野さんはこれからどんな活動をしていきたいですか。
 
牧野)今は子どもたちに向けて防災授業をしていますが、高齢者に向けた活動もできたらと考えています。先日「むすび塾」のオンラインミーティングに参加したのですが、そのときに高齢者の中には、災害時に逃げない選択を取る人がいると聞いて。逃げない選択肢をとらせないためにはどうしたらいいのか考えました。
 
至田)わたしも高齢者に向けて防災を伝えていきたいと思っています。わたしたちは防災を伝えていく立場ですが、学んでいくことも大事なので、語り部さんなどに話を聞いて、防災についてもっと知っていきたいです。
 
西村)学びを深めていくからこそ、子どもたちや高齢者に伝えられることも変わっていきますよね。わたしもラジオでみなさんに防災を伝えていますが、学んで、リスナーのみなさんと一緒に考えていきたいと思いました。これからもまた活動について聞かせてください。
きょうは、子どもたちに防災を伝える活動をしている関西大学 学生団体KUMC 防災教育班 牧野葵さんと至田圭織にお話を伺いました。