第1515回「台風や豪雨時、浸水から車を守る」
オンライン:アウトドア防災ガイド あんどうりすさん

西村)先月中旬、記録的な大雨に見舞われた三重県四日市市。四日市駅前の地下駐車場には大量の水が流れ込み、車274台が浸水しました。
きょうは、アウトドア防災ガイドで、車の防災に詳しいあんどうりすさんに台風や豪雨のときの車の防災について教えてもらいます。
 
あんどう)よろしくお願いいたします。
 
西村)あんどうさんはアウトドア防災ガイドとして、この番組にたくさん出演していただいていますが、車の防災にも詳しいのですね。
 
あんどう)夫がモータージャーナリストをしているので、一緒に車と防災の情報を発信しています。
 
西村)そうなんですね。そこで今回は、車の防災についてお聞きします。台風や大雨のときに車が駐車場で浸水しているのを見かけます。これはどのように防いだら良いのでしょうか。
 
あんどう)四日市の駐車場の浸水は、「管理者が扉を閉めていなかった」「故障を知りながら修理していなかった」という個別の事情がありますが、ここ数年、急速に状況が悪化する浸水害が増えてきています。ほかの場所でも同じようなことが起こる可能性はあると思います。四日市の場合は、21時53分に浸水害の大雨警報が発表になり、22時14分までの1時間の雨量が123.5mmで、観測史上最高を記録しました。
 
西村)あっという間だったのですね。
 
あんどう)都市部は通常1時間に50mmくらいの雨が降ると内水氾濫のリスクがあります。排水が追いつかないからです。1時間に100mmの雨はどれくらいの雨かイメージしにくいと思いますが、1m✕1mの範囲に1時間に1回、100kgの力士が1人落ちてくると思ってください。あらゆる場所、広い面で力士が落ちてくると考えてみてください。
 
西村)ものすごい重量ということですね。
 
あんどう)100mm=10cmでたいしたことはないと思ってしまいますが、すごい威力です。東京都で1時間に100mmの雨が降ったとき、10分ぐらいで浸水したという話もあります。相当怖い状況です。
 
西村)他人事ではありませんね。自分の車を地下の駐車場に停めているときに大雨が降ってきたら、どのタイミングで車を移動させるか悩んでしまいます。
 
あんどう)最近の雨は急速に状況が悪くなるので、警戒レベル4で避難していてはもう遅いです。警戒レベル3だとまだ間に合うかもしれません。四日市の大雨のときは、警戒レベル3の洪水警報が19時40分に出されました。市の対策本部も立ち上がっていて、2時間ぐらい余裕がありました。
 
西村)警戒レベル3相当なら、大丈夫かなと思いがちですよね。
 
あんどう)「高齢者等避難」は、"高齢者だけが避難"というイメージですが、警戒レベル3は、"高齢者でも避難できる余裕を持ったタイミング"です。だからこそ、その状況で危ないと判断するのが難しいと思います。球磨川の水害では、警戒レベル3のときに雨が止んで晴れてきていました。まだ大丈夫、と思いがちですが、低い土地に車を停めている場合には危ないと判断してほしいです。
 
西村)最近は雨の量も増えてきているので、あっという間に膝から腰の高さまで浸水してしまいます。"晴れてきたから大丈夫"ではなく、"晴れているからこそ避難のチャンス"と思った方がよさそうですね。覚えておく数字としては、「警戒レベル3」ですね。
 
あんどう)車を停めた場所が、浸水エリアではないかハザードマップで確認しておきましょう。国土交通省が運営しているハザードマップを検索すると、「重ねるハザードマップ」と「自治体のハザードマップ」が出てきます。「重ねるハザードマップ」は住所を入力すれば、その場所のリスクがわかります。「自治体のハザードマップ」はPDFになっていて、自分でリスクがある場所を調べます。「重ねるハザードマップ」にはない内容や過去の浸水リスクが書かれている場合もあるので、両方調べておきましょう。「重ねるハザードマップ」は、小さな川の情報や用水路の浸水については、反映していない場合があるので注意が必要です。
 
西村)小さな川や用水路もあふれると危険ですか。
 
あんどう)川の大きさに関わらず氾濫すると危険です。用水路は、道路が浸水するとどこにあるのかわからなくなってしまいます。用水路がある場所だけ流れが速くなっていて、引ずり込まれてしまう危険性があります。
 
西村)用水路のところが流れが速くなるのはなぜですか。
 
あんどう)川でも速い流れと緩い流れがありますよね。浅いところは緩いけど、深いとことは流れが速く、引き込まれてしまいます。国土交通省のYouTube「きみの街にひそんでいる。気をつけ妖怪図鑑」という動画がわかりやすいです。そこに「妖怪ひっぱりだこ」というのが出てきます。用水路にいるタコみたいな妖怪が速い流れに引きずり込んでくるんです。
 
西村)子どもと一緒に見ても楽しそうですね。小学生編、高校生編などあるんですね。
 
あんどう)セリフが違ったりするだけで、内容は大体一緒です。
 
西村)高齢者にも伝えやすそうです。
 
あんどう)この動画はよく公演でも使っていて、大人気です。アンダーパスや木造家屋倒壊の危険性などをわかりやすく妖怪で説明しています。いい動画なのに、あまり知られていません。ぜひ検索して見てみてください。
 
西村)事前にいろいろ調べておくことが大切ですね。
 
あんどう)車を運転している人はハザードマップでいつも停めている場所、職場や学校などを調べておきましょう。高低差がある場合があるので、移動している途中に、よく浸水している場所がないかチェックしておきましょう。川や橋の近くは低くなっている場合があります。Googleマップの自転車ルートで検索すると、道の高低差が出てきます。
 
西村)旅行先もチェックしておくとよさそうですね。
 
あんどう)旅先で被害にあう場合もありますので、駐車場だけではなく、旅先の浸水区域も調べておきましょう。
 
西村)車を守りたいときできることは、ほかにもありますか。
 
あんどう)台風が来そうなとき、マンションの1階や地下に車を停めている人が、上の階に停められるように練習しているマンションもあります。上の階の権利を持っている人たちと協力して避難させるのです。
 
西村)みんなで練習するのは良いですね。コミュニケーションをとることができる関係性も素晴らしいですね。
 
あんどう)ほかにもショッピングモールの屋上駐車場など、高さがある駐車場を臨時避難場所として使えるように自治体と協定を結んでいるところもあります。オープンスペースになっていると端の方は台風だと外から物が飛んでくるので、注意が必要です。
 
西村)外から物がとんできて、車が破損することもありますね。
 
あんどう)真ん中のスペースは人気ですぐ埋まってしまうそうです。和歌山など台風に慣れている地域では、若い人でも車を避難させるのが当たり前で、すぐ行動しているのを見たことがあります。当たり前のところは当たり前なんだなと。
 
西村)家族も周りの人もそのようにしてきたのでしょうね。
 
あんどう)過去に浸水被害があったのだと思いますが、「台風のときには車も避難するのが当たり前」と考えているのがすごいなと思いました。
 
西村)地下駐車場だけでなく、家の駐車場でも浸水被害にあうこともあります。旅行先、職場でもどこに停めるかをあらかじめ決めておいた方が良いですね。
 
あんどう)水は必ず高いところから低いところに流れていくので、ほんの10cmの段差でも乗り越えられずに低いところに流れていくこともあります。少しでも高いところに停めると良いと思います。台風は事前に知ることができる災害。急激に悪化してくる雨は、悪化してきてからは何もできないことも多いのですが、事前に情報をしっかりキャッチして、警戒レベル3ぐらいから車を安全に守る方法を検討してください。高台にできるだけ車を避難させてください。
 
西村)あんどうさん、ありがとうございました。