ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん
西村)9月1日は、「防災の日」です。毎年9月1日頃は、暦の上では、二百十日(にひゃくとうか=立春の日から数えて210日目)にあたり、台風が襲来しやすい時期ともされています。
きょうは、MBSお天気部の気象予報士 前田智宏さんに台風や豪雨への備えと命を守る避難行動について聞きます。
前田)よろしくお願いいたします。
西村)そろそろ台風シーズン突入でしょうか。
前田)まさに8~9月が台風シーズン。9月は日本に上陸する台風も増える時期です。関空の連絡橋にタンカーがぶつかった2018年の台風21号も9月上旬でした。防災の日制定のきっかけにもなっている伊勢湾台風も9月に上陸しました。
西村)台風は年間にどれぐらい発生するのでしょうか。
前田)平均で25~6個発生します。上陸も接近も8~9月が1番多いです。今年は、日本付近はそれほど台風の被害を受けていません。
西村)まだ大きな台風の被害はないですね。
前田)だからこそ、これからが怖いと思います。なぜ台風が来なかったかというと、これまで勢力の強い太平洋高気圧がガードしていたからです。その影響で猛烈な暑さが続き、海面水温がどんどん高くなっています。台風が勢力を落とさずに日本に近づく恐れがあるので、これから近づいてくる台風には注意が必要です。
西村)台風に対しての備え・避難行動について教えてください。
前田)台風は事前に情報を得て、備えることができます。まずは天気予報をこまめにチェックしましょう。台風が発生したら早めに避難行動を考えることが大事。これから台風の発生が増えるのでまずは情報を掴む。台風がやってきそうなら、どのような行動を取ればいいのか家族で確認してください。
西村)旅行と重なりそうなときもあるかもしれませんね。
前田)早めのスケジュール調整も必要。自分のいる場所にどんな危険があるかをハザードマップで事前に確認しましょう。台風は屋内にいればやり過ごすことができる災害です。
西村)ハザードマップはインターネットでも簡単に見ることができますね。
前田)国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」で、家の周り、旅行先、実家など日本各地のマップを確認することができます。土砂災害など災害ごとに確認して、危険ならどこに避難するのか、いつ避難するのかを決めておくことが大事。
西村)土砂災害のリスクがある場合、どんなところに避難したら良いですか。
前田)まずは斜面や崖から離れること。土砂災害警戒区域から離れることが大事。土砂災害の対象の避難場所を確認しましょう。
西村)地震の場合と津波や高潮などの土砂災害、それぞれで避難場所が違うこともあります。
前田)災害によって避難場所が違うので細かく確認しましょう。
西村)どんなタイミングで避難すれば良いですか。
前田)さまざまな気象情報がありますが、大雨警戒レベルの数字で判断できます。大雨警戒レベル3=高齢者等避難です。避難に時間のかかる人は、このタイミングで避難を始めましょう。警戒レベル4になると危険な場所にいる人は全員避難となります。警戒レベル4が出た場合は身を守らなければならないと覚えておいてください。
西村)先日、レベル4で土砂崩れが起きていたところもありました。レベル3で早めに避難した方が良いかもしれません。人によってタイミングも違いますよね。
前田)それを事前に決めておくことが大事。警戒レベル5になると、災害が起きていてもおかしくないタイミング、すでに災害が起きているタイミングになります。
西村)川溢れて浸水したり、土砂災害が起こっていたり...。
前田)レベル5で避難を始めていては手遅れになってしまうので、レベル4で避難を完了させることを心がけてください。警戒レベル5は、身の危険を感じるレベルだと思います。
西村)その場合、外に出ることは難しいので、安全であれば家の中で避難する方が良いですね。自宅避難をするにはどんな備えが必要ですか。
前田)飛ばされやすいものは家の中にしまっておく、固定しておくことが必要です。
西村)7年前の大阪の台風の時に、友人がベランダに置いていた洗濯機が飛ばされたと言っていました。
前田)置いてあるものが凶器にもなりかねないし、周りの人の命を脅かす恐れも。濡れた雑巾1枚でも窓ガラスを突き破ることがあります。小さなものでもほったらかしにしないこと。これからのシーズン、まだまだ暑さが続きます。家の中で避難していて、停電したときはさらに暑さ対策が必要。電気が止まっても涼を取れるような準備が必要です。
西村)前田家ではどんな備えをしていますか。
前田)首元を冷やすネッククーラーと水をいれて凍らせたペットボトルを準備しています。これをうまく使えば体を冷やすことができます。
西村)体を冷やしたあと、水が溶けたら料理や水分補給にも使えますね。
前田)風呂に水を張って、体をつけると涼をとることができます。エアコンや扇風機が使えなくなったら、どうやって涼むのかを考えておきましょう。
西村)携帯電話の充電器も必要ですね。
前田)充電を常に満タンにしておく、モバイルバッテリーを用意しておく。スマートフォンは連絡を取る、情報を得るのに必要です。最悪の事態を想定して準備をしておきましょう。
西村)今月に入って各地で線状降水帯が発生しています。夜間の発生が多いですね。
前田)線状降水帯に限らず、統計的に夜中や早朝に大雨、豪雨災害の発生が多いです。研究でも明らかになってきていて、特に九州地方は、豪雨災害は夜中、早朝に起きやすいということがわかっています。今月、九州で線状降水帯が相次いで発生しましたが、九州では夜間に東シナ海から吹き込む風が強まって、湿った空気が流れ込みやすくなります。夜間は気温が下がって上空が冷えることで、大気の状態がより不安定になると考えられます。これは九州に限らずどの地域でも起こることです。
西村)わたしたちのいる近畿地方でも起こりますか。
前田)関西でも、夜間に急激に状況が悪くなることがあります。
西村)寝ていて起きたら浸水していた...とか。逃げられない状況になっていることもありますね。
前田)情報を得るのが難しい、行動を移すのが難しい暗い時間帯になると、大きな被害にもつながりかねません。
西村)夜中に避難情報が発表されたらどうしたら良いですか。
前田)情報が出た時には、ためらわずに避難行動を取ること。心配なら暗くなる前に避難を済ませる。どこで線状降水帯発生の恐れがあるのかは、半日前にはわかるので、暗くなる前に避難を済ませることも可能です。そのような情報が出された時、その時点で何らかの行動をとっておくこと。急激に状況が悪くなることもあるので、ベストな避難方法だけではなく、セカンドベストの策も考えておくのも重要です。
西村)例えばどんなことですか。
前田)避難所に行くことが難しいなら、近くの親戚の家、知り合いの家に身を置くことができるように、事前に連絡を取っておく。それも対策のひとつになります。
西村)安心につながりますね。自分たちだけではなく、離れて暮らす家族、実家のお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんにも連絡して話をしておくのも大切ですね。
前田)何もない時にこそ、話合いをしておくことが大事だと思います。
西村)今日は、台風や豪雨から命を守る避難行動についてお話を伺いました。
前田さんありがとうございました。