第1415回「阪神・淡路大震災『伝承合宿』」
取材報告:亘佐和子プロデューサー

阪神・淡路大震災の被災者支援や復興まちづくりを担ってきた人たちが今、60代や70代になっています。若い世代が経験や知恵をどう受け継ぐのかが課題です。今月、神戸市北区の「しあわせの村」で、1泊2日の「伝承合宿」が行われました。企画したのは、
NPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯り(HANDS)」代表の藤本真一さんで、16歳から79歳までの60人が参加しました。講師は神戸大学名誉教授の室崎益輝さん、被災者支援の「がんばろう!!神戸」を立ち上げた俳優の堀内正美さん、「被災地NGO恊働センター」顧問の村井雅清さんら8人です。
 「神戸市内で被害の小さかった人たちが、自分の生活防衛に走り、なかなか被災者支援に動かなかった」「ボランティアのコーディネーターは本当に必要なのか」など、さまざまな問題提起がされました。震災を知らない若い世代が語る意味についても、話し合われました。震災29年に向けてどんな議論があったのか、合宿を取材した記者がリポートします。
  
西村愛のひとこと 
『講義』ではなく『だべる』だからこそ、世代や立場を越えた本音トークができたのかなと思いました。私も周りの友人や家族と語り合うお題をたくさん頂いたなと思います。今回、話を聞いてわからなかったことは、今なら経験者に聞きに行ける。この合宿から伝承の輪が広がっていく未来を感じました。

第1414回「歌手・伍代夏子さんが訴えるペットの同室避難」
オンライン:歌手/りく・なつ同室避難推進プロジェクト アンバサダー 伍代夏子さん

飼い主にとっては大切な家族であるペット。環境省は、災害時に原則としてペットもいっしょに避難するようガイドラインで示していますが、鳴き声やアレルギーなどを気にして避難所に行かない人が多いのが現実です。また、いっしょに避難しても、ペットは飼い主と離れた別の場所に集められる場合がほとんどです。
今年7月、愛犬家である歌手の伍代夏子さんが、「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」を立ち上げました。「りく」は伍代さんの飼い犬の名前「陸」からとっています。
「東日本大震災で炊き出しを行った際、避難所に入れなかった飼い主が、犬とともに焚火で暖を取る姿が忘れられない」と伍代さんは言います。飼い主に置いていかれたペットが、"捨てられた"と勘違いし、体調を崩して亡くなることも多いと聞き、「一緒に避難できる環境をつくりたい」と、同室避難の重要性を訴えています。まずは同室避難できる場所の確保が必要で、今年10月には台風などの自然災害が多い鹿児島県奄美市役所を訪問して、市長に協力を訴えました。同室避難の課題と可能性について、伍代夏子さんに聞きます。
 
西村愛のひとこと
①『同行避難』...ペットとともに安全な場所まで避難する行動のこと②『同伴避難』...被災者が避難所でペットのお世話をすること③『同室避難』...ペットと飼い主さんが避難所の同じ部屋で過ごすこと。"福祉避難所"のように、発災前から場所を分けて"ペット同室避難所"をつくることができたらいいのになぁと思います。

第1413回「救助で命を落とさないために」
オンライン:静岡大学 防災総合センター 教授 牛山素行さん

豪雨や台風で、地域住民の救助・避難誘導など「共助」の活動中に亡くなるケースが、この20年余りで少なくとも11件発生していることがわかりました。2018年の西日本豪雨では、岡山県倉敷市真備町で、車に取り残された住民を救おうと避難所から救助に向かった地域の町内会長が亡くなりました。長崎県西海市では2021年、大雨の中、一人暮らしのお年寄りから「怖いから来てほしい」と頼まれ、様子を見に行った民生委員が命を落としています。
調査を行った静岡大学・防災総合センターの牛山素行教授によると、自分や家族以外の人の避難の手助けや見回りなどの中で死亡するケースが、ここ数年は毎年のように起きているといいます。
「共助」は災害時にとても重要です。しかし、救助のために自らが犠牲になることは回避しなければなりません。訓練を受けていない"一般の人"が他人を助けに行く場合は、特に慎重な判断が必要です。共助の活動中の人的被害をどう防げばよいのでしょうか。牛山教授とともに考えます。
 
西村愛のひとこと
避難の途中に『助けて!』と言われたら、専門知識のある消防などに連絡!まずは自分の命を守ることを優先に。早い段階で避難することも大切ですね。近所の高齢の方や障がいのある方に『一緒に避難しましょう!』と声をかけるのも、避難の警戒レベル3"高齢者等避難"の段階で!早めの避難・声かけを心がけたいと思います。

第1412回「世界津波の日~津波防災を考える~」
ゲスト:稲むらの火の館 館長 崎山光一さん

毎年11月5日は「世界津波の日」です。「世界津波の日」は、1854年の安政南海地震による津波が、いまの和歌山県・広川町を襲った時に、実業家の濱口梧陵が稲むらに火をつけ、村人を高台へ導いて津波から救ったという逸話「稲むらの火」の故事にちなんで制定されました。
広川町にある「稲むらの火の館」は、濱口梧陵の功績を伝える記念館と、津波防災教育センターを備えた施設です。館内には16メートルの水槽内で実際に津波をおこし、そのメカニズムを見て学べるシミュレーションや、津波の恐ろしさを体感できる3D映像などもあり、課外学習の場として連日、多くの子どもたちが訪れています。
館長の崎山光一さんは、「津波で命を落とさないように、ひとりでも多くの子どもたちに津波防災を学んでほしい」という思いから、「稲むらの火の館」を訪れる子どもたちに過去の災害の教訓を伝え続けています。番組では、崎山さんをゲストにお迎えし、津波防災について詳しく聞きます。

稲むらの火の館
https://www.town.hirogawa.wakayama.jp/inamuranohi/

西村愛のひとこと 
子どもリポーターの桃佳さんが学んだのは、津波の恐ろしさ、避難の方法だけではありません。濱口梧陵さんのお話を聞いて、被災後の助け合いの大切さ、思いやりの気持ちも育っていたことが素晴らしいなと思いました。私も家族や友人と『稲むらの火の館』へ行き、楽しみながら学んで、地震や津波に備えます!