09月28日(日)
第1512回「能登の復興を伝える"まちのラジオ"」
オンライン:まちのラジオ 代表 山下祐介さん
能登半島地震と豪雨災害の被災地・石川県輪島市町野町で、災害FM「まちのラジオ」(88.2MHz)が開局しました。仮設住宅に暮らす被災者を中心とした地元住民に、復興状況やイベント案内、お天気など、生活に必要な情報を伝えるラジオ局です。
町野地区では、地震や豪雨災害の後、テレビ電波やインターネットが不安定になり、情報の入手が一時、困難になりました。そこで、地元住民らでつくる「町野復興プロジェクト実行委員会」が、災害時に活用できるラジオ局「まちのラジオ」の開設を提案し、実現に向けてクラウドファンディングなどの活動を開始。今年7月7日に全国で56局目となる「臨時災害放送局」として開局しました。
「まちのラジオ」では、現役の消防士や警察官、元高校教師、スーパーの店員など地元住民が日替わりでパーソナリティーを務める90分間の生放送番組「まちのWA!」(月~金)を中心とした放送を行っています。番組では、「まちのラジオ」代表 兼パーソナリティーで本業はコメ農家の山下祐介さんに、能登の復興にかける思いを聞きます。
石川県輪島市町野地区 臨時災害放送局「まちのラジオ」
https://saigaifm.hp.peraichi.com/machino/
(番組内容は予告なく変更する場合があります)
09月21日(日)
第1511回「なぜ高台の空港駐車場が浸水?」
オンライン:だいち災害リスク研究所 所長 横山芳春さん
今月5日、静岡県などに大きな被害をもたらした台風15号で、気象庁は「観測史上最大クラスの竜巻が発生した」と発表しました。静岡県内では電柱が折れたりトレーラーが横転したりして、住宅の被害は2000棟を超えました。竜巻は9月が最も多く、海に近い平野部で起こりやすいそうです。
さらに今回の台風では、高台にある富士山静岡空港の駐車場で、数十台もの車が水に浸かりました。標高約130m、山を切り開いてつくった空港がなぜ浸水したのでしょうか。地形の高低差を見ると、駐車場だけ数10cmほど低い「くぼ地」になっていることがわかります。そのため、本来なら谷に向かって流れる雨水が、くぼんだ部分に溜まり続け、浸水したとみられています。
こうした事例は全国各地にあります。高台であっても、周囲と比べて低く、排水を妨げる障害物のある場所で起きやすいといいます。道路の中央分離帯が雨水の流れを遮ったり、落ち葉が排水を妨げたりして浸水した例もあるそうです。地形や地質から災害が起きた要因を調査するエキスパートの横山芳春さん(だいち災害リスク研究所所長)に、浸水リスクの高い場所と対策について聞きます。
西村愛のひとこと
数十cmの高低差でも、排水ができないと車が浸水するなど大きな被害が出てしまうんですね。高低差がある場所のサインは
◎少し坂になっていて、雨の日に水が流れていく
◎雨の後に、水たまりがよく残っている
これから家を買ったり、借りるときは、あえて雨の日に見に行くことも大切。雨樋がきちんと機能しているかなど、確認しておきましょう。
09月14日(日)
第1510回「能登の被災地で実施中"災害ケースマネジメント"」
ゲスト:大阪公立大学大学院 文学研究科 准教授 菅野拓さん
被災者を個別の事情に応じて支援する「災害ケースマネジメント」は、2011年の東日本大震災で注目を集めた新しい仕組みです。5月28日に「災害ケースマネジメント」の実施を後押しする改正災害対策基本法が国会で可決・成立し、今後ますますの普及が期待されています。
災害はある地域に、稀にしか起こりません。突然の大災害に見舞われた自治体の、災害のプロではない職員が、被災者支援の全てを担う今の態勢には限界がありました。「災害ケースマネジメント」の名付け親でもある大阪公立大学大学院文学研究科の菅野拓准教授は、被災者支援の在り方について、「"餅は餅屋"の発想で、専門性の高いNPOや企業に協力してもらうことが必要だ」と指摘します。
実は、能登半島地震の被災地では、先行して「災害ケースマネジメント」が実施されています。石川県は社会福祉協議会などと協力して、「地域支え合いセンター」を設置し、それぞれの被災者の事情に応じた支援を行っています。番組では、能登半島地震の被災地で実際に行われている「災害ケースマネジメント」と、今後の課題について、菅野さんに聞きます。
西村愛のひとこと
被災者のもとに出向いて支援をする『災害ケースマネジメント』。今回の法改正で、避難先を問わず福祉サービスなど支援が受けられるようになったのは、心強いですね。被災地では、周りも大変な中、自分の困りごとを話すのを遠慮してしまう方が多いと聞きます。専門家が話を聞いてその人にあった支援を提案、つなげてくださるのが嬉しいです。『災害ケースマネジメント』が全国、世界に広がって、あたりまえの支援方法になりますように。
09月07日(日)
第1509回「カムチャツカ半島沖地震で見えた"津波避難"の課題」
オンライン:東北大学災害科学国際研究所 教授 今村文彦さん
7月30日にカムチャツカ半島付近で発生した巨大地震による津波で、避難は適切に行われたのか、政府が検証を始めました。この地震では、津波警報・注意報の全面解除まで32時間もかかりました。
長時間にわたり注意報が出ていた理由は「津波の反射」です。津波はハワイ諸島や南米にまで到達し、陸地に反射して日本列島に押し寄せました。さらに海底にある山脈にも津波が反射。行ったり来たりを繰り返し、おぼんの中で水を動かすように長く波が揺れ続けました。
遠く離れた場所で発生した津波は、最初は同心円状に広がるものの、日本に到着する時には、反射した別の波も集約されて、大きな波になりがちです。速い波が前の波を追い越して高さが増す場合もあります。
津波避難は長時間に及ぶことを想定しておかなければなりません。カムチャツカ半島沖の地震津波では、猛暑の中での長時間避難による熱中症リスクや、車避難による渋滞など、さまざまな課題が浮き彫りになりました。津波避難の課題と対策について、東北大学災害科学国際研究所の今村文彦教授に聞きます。
西村愛のひとこと
『津波の反射』初めて知りました!長時間にわたり津波警報や注意報が出ていた理由を知ると、津波避難に対する備えの大切さを改めて感じます。変化する情報を把握するために必要な、携帯ラジオやモバイルバッテリー。暑さ対策も忘れずに。避難は徒歩避難が原則です。我が家は、どのタイミングで、どこに避難するのか。私も家族と一緒に考えておきます。
08月31日(日)
第1508回「台風・豪雨から命を守る避難行動」
ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん
9月1日は、「防災の日」です。1923年9月1日に発生した「関東大震災」や、1959年9月に襲来した「伊勢湾台風」をきっかけに制定され、毎年、この日を中心に防災訓練や自然災害への啓発活動が行われています。
毎年9月1日頃は、暦の上では、二百十日(立春の日から数えて210日目)にあたり、古くから台風が襲来しやすい時期とされています。MBSお天気部の気象予報士・前田智宏さんは、「猛暑の影響で日本近海の海水温が高い今、台風が近づくと勢力を落とさずに接近・上陸の恐れがある」と、警鐘を鳴らします。
今月は、各地で「線状降水帯」も発生し、川が氾濫したり、土砂災害も起こっています。「線状降水帯」は半日前から都道府県ごとに発生予測情報が出されるようになりましたが、夜中から早朝にかけて発生することが多く、避難行動が遅れがちです。番組では、前田さんに台風や線状降水帯による豪雨への備え、そして、命を守る避難行動について聞きます。
西村愛のひとこと
ハザードマップを見て自宅が土砂災害や浸水の危険がある場所にある、など、避難が必要なら、早めの避難が大切だなと改めて感じました。
天気予報や市区町村から出される避難情報(警戒レベル)をチェックし、明るいうちに避難を済ませておきましょう。警戒レベル3は自主的に避難するタイミング。警戒レベル4までに全員避難です!
08月24日(日)
第1507回「紀伊半島豪雨の教訓を絵本で伝える」
ゲスト:和歌山大学客員教授 後誠介さん
2011年9月、台風12号の影響で大きな被害が出た「紀伊半島豪雨」。和歌山県内では土砂災害が多発し、三重・奈良・和歌山の3県で88人の死者・行方不明者が出ました。雨が降り続くと、土砂が川底に溜まったり、流木が橋に引っかかったりして、川の水は行き場を失い"あっという間"に氾濫してしまいます。
この水害の教訓を子どもたちに伝える絵本「川がパンクしちゃった!もりのがっこうとどうぶつたち」(はる書房)が今年6月に出版されました。絵本では、動物たちが通う森の学校の近くの川が大雨でパンク(氾濫)してしまいます。動物たちの住む集落は浸水被害に遭いましたが、励まし合いながら復興に向かうという物語です。
絵本を企画したのは、地質学を専門としている和歌山大学の後誠介客員教授です。きっかけは、幼稚園で開催した減災学習会でした。真剣に聞いてくれる子どもたちの姿を見たときに、子どもたちの"感性に訴える防災教育"が必要だと感じたそうです。番組では、絵本「川がパンクしちゃった!もりのがっこうとどうぶつたち」の全編朗読と、後さんがこの絵本に込めた思いを聞きます。
↓エンディングでご紹介したイベントの詳細はコチラ↓
8月27日(水)~ 31日(日)
大阪・関西万博 能登半島地震 被災地のイベント「石川の日」
https://expo2025-ishikawa.jp/
西村愛のひとこと
この夏も各地で豪雨の被害が出ています。水害のことを知らないまま、親と離れた場所で子どもが被災したら‥。親は子どもが心配で、無理をしてでも迎えに行き、危険な状況に遭うかもしれません。この絵本は、かわいい動物たちが、豪雨災害について学術的に伝えるだけでなく、助け合いの心も教えてくれます。大人や外国人の方にも、わかりやすく伝えることができますね!
08月17日(日)
第1506回「天気予報が消えた日~気象学者の遺言」(再放送)
取材報告:亘佐和子プロデューサー
今年6月に亡くなった気象学者の増田善信さん(101歳)のインタビューを、追悼と反戦の思いをこめて再放送します。
天気予報や気象に関する情報が軍事機密だった時代がありました。元気象庁気象研究所・研究室長の増田善信さんは、当時のことをよく覚えています。1941年12月8日、日本軍の真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まった日、増田さんは京都府宮津市の観測所に勤務していました。中央気象台の無線を聞いて天気図を書こうとしたら、いつもとは全く異なる数字の暗号が流れてきました。戦況を有利に運ぶため、この日から気象情報は暗号化され、市民には秘匿されたのです。
天候が変わりやすく海が荒れる冬、地元の漁師にも天気予報を伝えることができませんでした。一方で、増田さんは、特攻出撃する兵士に天気図の説明をして送り出すという辛い仕事もしました。
戦争中、気象情報が伝えられなかったために失われた命がありました。1942年8月の周防灘台風では、台風の位置や進路に関する情報が市民に伝えられず、死者・行方不明者が1100人を超えました。情報が隠され、命が軽んじられた時代でした。「天気予報は平和のシンボル。天気予報がなくなるような時代を再びつくってはならない」という増田さんのメッセージを、あらためて伝えます。
↓エンディングでご紹介したイベントの詳細はコチラ↓
ハッピーラッシュ♪♪♪vol.33~ 祝!20周年。コラボで能登へつなぐ歌
https://t.livepocket.jp/event?pvtoken=h7IPff6ZQ72IenLtdyIOtlKkYaShrCFzU6999T4Zj2bdj4OTIpb4CnBTprOQye5Y&agent=pc&type=normal&previewtime=2025-04-25%2005%3A07%3A00
西村愛のひとこと
毎日、あたりまえのように聞いている"天気予報"命を守るために使われる情報ですが、戦争中は命を奪うためにも使われることがあったんですね。守れたはずの命が守れなかった歴史を、再び繰り返すことがないように。
"天気予報は、平和のシンボル"
増田さんが遺してくださった言葉、想いを、これからも大切に伝えていきたいです。
08月10日(日)
第1505回「旅行や帰省先での災害に備える」
オンライン:東北大学 災害科学国際研究所 准教授 佐藤翔輔さん
7月30日、ロシア・カムチャツカ半島付近で発生した地震で、北海道から和歌山県の広い範囲に津波警報が出された際は、大勢の観光客が避難する事態となりました。
旅行先や帰省先での災害に備えることをテーマに、東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授に聞きます。
佐藤さんは、昨年1月1日に発生した能登半島地震について、帰省や旅行中に地震・津波に巻き込まれた人たちに対する調査を行いました。地震発生時に石川・富山・新潟の3県を訪れていた人のうち約1割が、建物の倒壊など甚大な被害に遭い、津波の被害を受けた人もいました。
普段いる場所ではない所で災害が起きると、どんなことに困るのでしょうか。佐藤さんの調査では、「そのときいた建物の安全性が分からなかった」「避難場所が分からなかった」「情報を集めるのに苦労した」という声が多く寄せられました。避難場所をあらかじめ調べていなかった人も多かったということです。
実は、佐藤さん自身も、能登半島地震の際、新潟県の実家に帰省中でした。旅行や帰省のシーズンを前にどんな備えが必要なのか、迎え入れる側の家族や親族はどうすればよいのか、改めて考えます。
西村愛のひとこと
実家に帰省したり、旅行に行く時は、移動中のスキマ時間などに、現地のハザードマップを確認し避難について決めておくなど準備が必要。災害が起こった後に調べるとインターネットがつながらないこともあります。受け入れる側も住まいの耐震や備蓄の確保、全員が身を守るスペースの確認をしておく事が大切です。防災について家族で語り合うキッカケにするのもいいですね。
08月03日(日)
第1504回「和歌山県などに津波警報~そのとき、白浜の旅館では」
電話:紀州・白浜 温泉旅館「むさし」女将 沼田弘美さん
7月30日午前8時25分ごろ、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード8.7(推定)の地震があり、北海道から和歌山県の太平洋沿岸部に津波警報が発表されました。岩手県の久慈港では1.3mの最大津波を観測、近畿でも和歌山県の白浜町で40cmの津波が観測され、全国で200万人超に避難指示が出されました。
白浜町では海水浴場や海に近い観光地が立ち入り禁止となり、JRやバスなど公共交通機関がストップ、スーパー・コンビニエンスストアなども閉店しました。温泉旅館「むさし」では、宿泊客でない人も受け入れ、館内に滞在してもらいました。海外からの観光客も多く、スマートフォンの翻訳アプリなどを駆使して、状況を説明し対応しました。南海トラフ地震を想定して普段から避難者の受け入れについて考えてきましたが、新たな気づきや課題もあったということです。女将の沼田弘美さんに、当時の状況と観光客への対応について聞きます。
西村愛のひとこと
自分が地震を体感していないのに、津波から避難をしないといけない。それが、もし、海外の旅行先で起こったら、言葉もわからず、より混乱してしまいそうです。沼田さんが教えてくださった和歌山県の防災アプリは避難先の検索や津波のシミュレーションもできます。旅行先に到着する前に確認しておくと安心ですね。まわりに外国人の方がいたときも冷静に避難の案内ができるように備えておきたいと思います。
07月27日(日)
第1503回「夏休みに取り組みたい 『ジュニア防災検定』」
オンライン:防災アナウンサー 奥村奈津美さん
夏休みに子どもと大人が一緒に防災について学べる「ジュニア防災検定」を紹介します。
「ジュニア防災検定」は、「防災教育推進協会」が実施する小学生以上の子どもを対象にした検定です。自然災害の特徴や災害への備えなど知識を問う筆記試験に加えて、「防災自由研究」が課されるのがユニークなポイントです。地域の災害リスクを調べたり、登下校ルートの安全性を確認したり、子ども自身がテーマを決めて研究します。多くの子どもが取り組む「家族防災会議レポート」では、家族で避難場所や連絡方法について話し合い、備蓄の確認も行います。こうした取り組みを通じて、保護者の防災意識も高まるそうです。
問題を暗記するだけでなく、テーマを決めて自主的に調べることで、いざというときの判断力や行動力を養うことにもつながります。防災アナウンサーの奥村奈津美さんをゲストに、「ジュニア防災検定」を通して親子で防災を学ぶ意味について聞きます。
防災アナウンサー 奥村奈津美さん 公式ホームページ
https://natsumiokumura.com/
西村愛のひとこと
子どもたちの視点、面白いですね。非常用トイレ使いやすさNO.1選手権、大好きな歴史をテーマに"熊本城の防災力"について発表するなど、様々なアイデアに感心しました。夏休みだからこそ、じっくり時間をかけて研究ができるし、家族みんなで防災に取り組むキッカケにもなりますね!