第1304回「大都市災害の帰宅困難者対策」
オンライン:東京大学大学院工学研究科 教授 廣井悠さん

今月7日夜に首都圏を襲った最大震度5強の地震では、多くの鉄道が運休し、通勤客らが足止めされました。今回は、深夜であったことやコロナ禍で人出がおさえられていた影響で、大きな混乱はありませんでしたが、タクシーを待つ長い列ができ、行政や鉄道会社が提供した滞在場所で夜を明かした人もいました。
大都市での「帰宅困難者」は10年前の東日本大震災の際も発生しましたが、対策は進んでいるのでしょうか。都市災害に詳しい東京大学大学院の廣井悠教授は、大規模災害が発生したら「『帰らない、迎えにいかせない』対応が重要」と話します。多くの人が一斉に帰宅しようとすることで群衆事故が起きたり、車両の渋滞で救助活動を阻害したりするおそれがあります。「帰宅行動を社会全体で抑えて救助活動を優先する『移動のトリアージ』が必要」と廣井教授は呼びかけます。
また、これまでの帰宅困難者対策は、大都市での平日昼間の発生という最悪のパターンのみを想定して考えられてきましたが、曜日や時間帯、季節や気候によって大きく問題が異なります。2018年の大阪北部地震で「出勤困難者」が多く出た関西では、関西広域連合がガイドラインを作成し、時間帯別での行動パターンを示して災害時の帰宅困難者の混乱を減らす呼びかけを行っています。
番組では、廣井悠教授とオンラインでつなぎ、大規模都市災害に備えた帰宅困難者対策について聞きます。 

(番組内容は予告なく変更する場合があります)

第1303回「水道施設の耐震化」
オンライン:神戸大学大学院工学研究科 准教授 鍬田泰子さん

和歌山市の紀の川にかかる水管橋が崩落し、6万世帯で1週間近く断水が続きました。「水管橋」は河川や水路などにかかる水道管専門の橋です。崩落の原因は橋のアーチから水道管をつっている鋼管製の「つり材」の破断で、雨や鳥の糞などで腐食が進んでいたものとみられます。崩落した水管橋は1975年に完成し、2023年で耐用年数の48年となるものでした。
また、今月7日に首都圏で最大震度5強を記録した地震では、東京都内23か所で地中の水道管から漏水が発生し、道路が冠水しました。水道管自体の破損ではなく、空気弁が振動で故障したことが原因で、断水は起こりませんでした。しかし、ライフラインである水道が、地震発生時に大きな被害を受けることをあらためて想起させる出来事でした。
法定耐用年数を超えた水道管の割合は全国平均で17.6%(2018年度)にのぼり、老朽化が深刻です。耐震性の高い水道管に切り替えていく作業も進んでおらず、耐震化適合率は約40%にとどまります。水道事業の経営悪化や技術者の減少など日本の水道が抱える問題点と、防災対策の必要性について、地震工学が専門の神戸大学大学院工学研究科の鍬田泰子准教授に聞きます。
 
西村愛のひとこと
耐震性のある水道菅への切り替えが、なかなか進まないのは、費用の問題もあるということ。今まで水道代は安い方がいいと思っていたけれど、ライフラインを守るために使われるなら...考えが変わりました。いつ起こるかわからない地震や水道菅、水管橋の老朽化に備えて、水や給水タンク、簡易トイレなど備蓄も大切ですね。

第1302回「福祉避難所への『直接避難』」
オンライン:跡見学園女子大学教授 鍵屋一さん

一般の避難所で過ごすことが難しい高齢者や障害者を受け入れる「福祉避難所」。自治体は公共施設や福祉施設に福祉避難所を設置する責任があるのですが、災害時に避難者が殺到するのを懸念し、その場所をほとんど事前に公表していません。
そのため、介助が必要な高齢者や障害者も、最初は一般避難所に行きます。そして対象者と認められて受け入れ態勢が整った段階で、ようやく福祉避難所に移送されるという「二次避難所」として運営されているのが実情です。
しかし、高齢者や障害者が何度も避難所を移るのはたいへんです。被災直後、厳しい環境の一般避難所へ行くことをあきらめ、自宅や車中泊で過ごす人も大勢います。その結果、東日本大震災では関連死の90%以上、熊本地震でも80%が高齢者で、障害者の死亡率は2倍というデータもあります。
そこで今年5月、政府はガイドラインを改訂。福祉避難所の事前公表に消極的な自治体に対し、受け入れ対象者をあらかじめ公表し、二次避難ではなく「直接避難」できるよう事前調整を図るよう求めました。とは言え、実際にどこまで対応できるのか、課題は山積しています。
高齢化社会を迎え、ニーズが高まる福祉避難所の役割と課題について、ガイドラインに関するワーキンググループ座長を務めた跡見学園女子大学・鍵屋一教授に話を聞きます。
 
西村愛のひとこと
5月にガイドラインが改訂され、個別の災害支援計画を作るようになったのは、大きな一歩ですね。でも人手が足りない状況をどう解消すべきか、課題もあります。災害関連死から命を守るためにも、実際に支援が必要な方や、支援する方の声を取材し、リスナーの皆さんと語り合いたいなと思いました。

第1301回「相次ぐ盛り土の崩落~近畿でも被害」
取材報告:新川和賀子ディレクター

静岡県熱海市で大規模な土石流が発生してから3ヵ月となります。この災害は、違法な盛り土が原因だとして、被災者や遺族ら70人が先月28日、土石流の起点となった土地の所有者らを相手取って損害賠償を求める裁判を起こしています。
大雨による盛り土の崩落は、近畿地方でも起きています。2017年の台風21号による大雨で大阪府岸和田市大沢町の盛り土が大規模に崩落し、ふもとを流れる牛滝川をせき止めたため、道路が冠水して1人が亡くなりました。上流の集落は浸水して大きな被害が出ました。大阪府や岸和田市は、盛り土の土地の所有者に複数回にわたって指導を行ってきましたが、崩落は防げませんでした。現在、盛り土を一律に規制する法律はなく、地方自治体の条例にもバラつきがあります。大阪府は、条例による指導には限界があることから、国に対して法制化の要望を行っています。
相次ぐ盛り土の崩落の背景にある問題点について、岸和田の事例を取材した番組ディレクターが報告します。
 
西村愛のひとこと
年々増えている、土砂災害。今回の岸和田のケースは『あの盛り土がなければ...』と思わずにはいられません。今後、私たちが住んでいる場所でも起きるかもしれないと思うと、怖いです。一刻も早く、強制力があり重い罪になる法律を作って、二度と同じことが起こらないようにしてほしいです。

第1300回「大阪にある世界最高性能の気象レーダー」
大阪大学大学院 工学研究科 助教 和田有希さん

大阪大学吹田キャンパスに世界最高性能の気象レーダーがあります。私たちが普段スマートフォンなどで見ているのは気象庁の雨雲レーダーで、雨雲を1回観測するのに5分以上かかります。しかし、ゲリラ豪雨を生み出す積乱雲は5~10分で大きく成長するので、従来の気象レーダーでは、ゲリラ豪雨の雲の卵を見つけられたとしても、観測している間に雲の形状が大きく変化し、データが出たときにはすでに遅いということがあります。
阪大の気象レーダーは30秒でデータ観測ができ、リアルタイムで雲の変化がわかるので、警戒や避難の時間を確保できます。京阪神や奈良など、吹田キャンパスから半径60キロのエリアをカバーしていて、このデータが生かされれば、野外でのイベント、航空機や船舶の運航にも役立ちます。しかし現在は、研究のためだけに使われています。
この阪大レーダーの観測結果を一般の人にも公開し日常生活に役立ててもらいたいと、大阪大学大学院工学研究科の研究室がクラウドファンディングに取り組んでいます。雨雲データを見てもらうためのインターネットサイトを構築する資金で、目標額は600万円、9月30日が期限です。
https://readyfor.jp/projects/handai-radar
このレーダーはどんなものなのか、どんな可能性があるのか、大阪大学大学院工学研究科助教の和田有希さんに話を聞きます。

西村愛のひとこと
日々の生活で欠かせない雨雲レーダー。私もよく見ています。
身近な大阪大学に世界最高性能を誇る気象レーダーがあったなんて!予測が難しいと言われているゲリラ豪雨を、いち早く的確にとらえられるのは助かりますね。豪雨災害が増えている近年、命を守るためにも欠かせないものなので、公開サイトの制作を実現してほしいですね。

第1299回「マンションの停電対策」
マンション防災士 釜石徹さん

番組リスナーから「マンションに住んでいます。台風のシーズンで、停電が心配です」というメールが届きました。近畿を直撃した2018年9月の台風21号の被害は記憶に新しいところです。1300本以上の電柱が損壊し、のべ220万軒が停電。完全復旧までに16日間かかりました。地震や津波では、沿岸部にある発電所が被害を受け、停電がさらに長期にわたる可能性があります。「マンション住民が身を守るための第一の選択肢は在宅避難。10日以上の停電状態での在宅避難に備えよう」と語るマンション防災士・釜石徹さんに話を聞きました。
まず停電に備えるものとして紹介できるのが、充電式と乾電池式ラジオ、停電時自動点灯ライト、モバイルバッテリーです。モバイルバッテリーは、自分の携帯電話のバッテリーが何時間もつか知っておき、1日使える分を充電できる容量のものを携行するとよいといいます。
また、災害時は携帯電話の通話ができない事態が想定されるので、ショートメール、LINEやTwitterなどのSNS、災害伝言ダイヤル(171)など、さまざまな連絡手段を考えておくことが必要です。災害伝言ダイヤルは、親しい人同士が無事を確認するためにメッセージを録音したり聞いたりするもので、無料で利用できます。慣れるために体験利用してみることも大切です。番組では、停電に動じず在宅避難を続けるための技術をお伝えします。
  
西村愛のひとこと
釜石さんは、台風などで停電した時の有効な連絡手段として、相手の携帯番号を宛先にして送る『ショートメール』と、『171災害用伝言ダイヤル』を紹介してくださいました。『171』は毎月1日と15日に体験利用ができますよ。散歩するときに家の近所の公衆電話を探しておいて、体験するのもいいですね!

第1298回「大雨の危険度をリアルタイムで知る"キキクル"」
気象庁 大気海洋部 気象リスク対策課 水害対策気象官 太田 琢磨さん

大雨による災害があとを絶ちません。迫りくる危険をどのように把握して行動につなげればよいのでしょうか。
大雨による災害の危険度を一目で確認できるのが、気象庁のウェブサイト「キキクル(危険度分布)」です。「土砂災害」「浸水害」「洪水害」が発生する危険度が5段階で色分けされ、地図上にリアルタイムで表示されます。情報は10分ごとに更新され、1~3時間先の予測も伝えています。気象警報は該当する範囲が広いため、地域のどこで災害が発生するのかわかりにくいことがありますが、キキクルは1キロ四方という細かい網目上で危険度が表示され、より身近な危機が把握できます。気象庁のウェブサイトでは、2017年7月に九州北部豪雨が発生した際の洪水キキクルを紹介しています。それによると、河川の氾濫が発生する直前にキキクルは「非常に危険」を示すうす紫色で表示され、氾濫が発生した時にはすでに災害が発生している可能性が高い濃い紫色に変わっていて、実際の災害と危険度表示がほぼ一致しています。
インターネットやスマホの普及により、私たちはリアルタイムで高度な情報を得ることができるようになりました。番組では、キキクルの開発と運用を担当する、気象庁水害対策気象官の太田琢磨さんとオンラインでつなぎ、キキクルの仕組みや活用方法を聞きます。

気象庁 キキクル(危険度分布)
https://www.jma.go.jp/bosai/risk/#lat:35.460670/lon:134.681396/zoom:6/colordepth:normal/elements:flood&hazardmap
 
過去の災害事例 2018年西日本豪雨のときのキキクル(危険度分布)
https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/meshjirei/jirei01/doshamesh/index.html
 
西村愛のひとこと
以前から「キキクル」を見ていて疑問に感じていたことを、太田さんがわかりやすく説明してくださいました。1キロ四方=およそ学区ごとの情報がわかるので、より避難のタイミングを決めやすくなりますね。コロナ禍でおうち時間が増えている今、家族で「キキクル」をチェックする練習をしてみてはいかがでしょうか?

第1297回「紀伊半島豪雨10年~夫を亡くした無念を語る」
電話:和歌山県那智勝浦町在住 久保栄子さん

和歌山・奈良・三重の3県で88人の死者・行方不明者を出した紀伊半島豪雨から10年となります。和歌山県那智勝浦町で夫を失った久保栄子さん(78)は、無念の思いを胸に、防災士の資格を取得し、各地で被災体験を伝えています。
久保さんは平屋建ての自宅で、夫と長女の3人で暮らしていました。2011年9月3日、台風12号が高知県に上陸し、紀伊半島に接近。4日未明に那智川が氾濫して避難指示が出されます。久保さんの家の中に流れ込んできた水は、みるみるうちに胸の高さまできました。窓から外に出て、家族3人で軒下の雨どいにつかまりましたが、濁流にのまれてしまいます。約100メートル流された久保さんは、偶然手に触れたフェンスにつかまり、九死に一生を得ました。長女も屋根にのぼることができて助かりましたが、夫は遺体で見つかりました。
夫の死をなかなか受け入れられず苦しんだ久保さんですが、ある講演会で出会った女性防災士に刺激を受け、防災士の資格を取得。自分の体験を紙芝居にして、伝えるようになりました。「もっと早く避難していれば」という後悔は消えることがないと言います。久保さんに豪雨災害・河川氾濫の恐ろしさと、避難の大切さを聞きます。
 
久保栄子さんの被災体験紙芝居

https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/080604/top_d/fil/KamishibaiJapanese.pdf

西村愛のひとこと
久保さんが語る、紀伊半島豪雨。深夜、真っ暗闇の中で濁流が押し寄せる中の避難、どんなに怖かったことか...。久保さんが描かれた紙芝居は、とてもわかりやすく、子どもにも、被災体験がない大人の皆さんにも届けたいと思いました。リンク先から、ぜひご覧下さい。今は台風シーズンです。あらためて備えの確認を!

第1296回「なぜ真夏に大雨が降り続いたのか」
オンライン:筑波大学 助教 釜江陽一さん

今月11日から、停滞する前線の影響で全国で雨が降り続きました。九州北部を中心に記録的な大雨となり、佐賀県嬉野市では降り始めから4日間で総雨量が1000ミリを超えました。これは、8月の1ヵ月間に降る雨量の3倍以上に相当します。本来なら晴天が続く8月になぜ広範囲で雨が降り続いたのでしょうか。
筑波大学の釜江陽一助教(気象学)の解析によると、この時期、西日本から東日本にかけての約2000キロにわたって多量の水蒸気が帯状に流れ込む「大気の川」が形成されていました。偏西風が蛇行し、太平洋高気圧が南下するなど稀な気象条件が重なり、梅雨末期のような気圧配置が長く続いたことによって「大気の川」が出現したとみられています。水蒸気は次々と積乱雲を生み、各地で大雨をもたらしました。釜江助教は「2018年の西日本豪雨の気圧配置と似ており、水蒸気量は同程度とみられる」と説明しています。水蒸気量の増加には、地球温暖化の影響も考えられるといいます。
夏の豪雨災害はなぜ起きるのでしょうか。釜江助教とオンラインでつなぎ、今夏の大雨のメカニズムや地球規模で起きる気象の異変について聞きます。
 
西村愛のひとこと
"大気の川" 今回、初めて聞きました!
釜江さんがわかりやすく説明してくださり、想像力もフル回転!おかげさまで子どもにも、ちゃんと説明できるようになりました。日々沸き起こる「なんで?」の疑問にも、ちゃんと向き合うことが、命を守ることにつながるのだなぁと感じました。

第1295回「大雨被害~佐賀県武雄市からの報告」
オンライン:おもやいボランティアセンター代表 鈴木隆太さん

前線の停滞で8月11日から降り始めた雨は、全国各地で記録的な降水量を記録しています。佐賀県武雄市では市内を流れる六角川が氾濫し、約1650棟が床上・床下浸水したとみられます。
2019年8月の豪雨災害の被災者支援のために立ち上げられた一般社団法人「おもやい」(武雄市)の事務所も、床上浸水しました。自ら被災し片付けに追われる中、住民からの援助要請が相次いでいます。2年前に浸水した場所が再び被害を受けていますが、今回のほうが浸水の範囲も深さも大きくなっているといいます。避難生活をしながら、日中は被災した自宅に戻り、泥かきや片付けを続ける住民たちが大勢います。
2年前との最大のちがいは、新型コロナウイルスの感染拡大で、ボランティアが県内在住者に限られることです。短期間で2度被災したことで、住民の精神的なショックも大きく、これからの復旧作業は難航することが予想されます。「おもやい」では、支援金の募集も始めました。代表の鈴木隆太さんに武雄市の被災状況と住民の声、私たちができる支援について話を聞きます。

一般社団法人「おもやい」
https://omoyai.org/
https://www.facebook.com/omoyaivc/

「おもやい」活動支援
https://omoyai.org/shien/

西村愛のひとこと
今回の豪雨で佐賀県で亡くなった方がいらっしゃらなかったのは、2年前の教訓が生かされ、地域の消防団や"おもやい"の皆さんをはじめ、身近な方の声かけがあったからこそなんだな、と実感しました。今すぐお手伝いに行けないのが心苦しいですが、引き続き、関西からも応援していきます。旅行ができるようになったら武雄温泉にも行きますね!