第1516回「台風や豪雨時の車避難の注意点」
オンライン:アウトドア防災ガイド あんどうりすさん

西村)台風や豪雨の際の避難手段として車を利用する人も多いのではないでしょうか。しかし土砂降りの中での車避難には、水没や転落など多くの危険が伴います。
きょうは、アウトドア防災ガイドで、車の防災に詳しいあんどうりすさんに、台風や豪雨のときの車避難の注意点について教えてもらいます。
 
あんどう)よろしくお願いいたします。
 
西村)台風や豪雨のときの車避難の注意点を教えてください。
 
あんどう)「雨に濡れたくない」「高齢者がいる」などの理由で、車避難をしたい人も多いと思います。2019年に東日本に被害をもたらした台風19号では、犠牲者の3割が車中死でした。橋を渡ろうとしたとき、手前の道路が陥没して落ちてしまった例もあります。冠水している夜道をヘッドランプで照らすと、水で反射して真っすぐな道に見えることがありますが、進むとすり鉢状になっている場合も。冠水した道には、想定を超えるリスクがあると思ってください。
 
西村)恐ろしいですね。暗い時間、土砂降りのときに車で移動してはいけませんね。
 
あんどう)夜は夜のリスク、昼は昼のリスクがあります。夜は本当に怖いと思います。農村部で道路が冠水すると、田んぼや畑で用水路と道路の区別がつかなくなり、路外に落ちると水没するリスクが高まります。都市部では、道路の縁石にタイヤをぶつけてパンクさせたり、乗り上げてしまったりするリスクも。縁石ぐらいの高さまで冠水したら走らないこと。最近はマンホールが吹っ飛んだりしていますよね。
 
西村)マンホールの下から水が持ち上がって噴水のようになりますね。
 
あんどう)その上を車が通ってしまったら、バーンと下から水が来てしまうこともあります。脱輪で済めばいいですが、何が起こるかわかりません。水圧受けることになるので、冠水した道は非常に怖いと思っておいてください。
 
西村)冠水した道には、たくさんのリスクがあるのですね。
 
あんどう)泥水だったら何も見えないので、どこに縁石があるかもわからなくなります。
 
西村)歩道か車道か見分けがつかなくなりますね。縁石まで冠水したら、車避難はやめておいた方が良いですね。もし車が浸水してしまった場合は、どうなるのでしょうか。
 
あんどう)最近の車の電気系統は、脆弱ではなくなっているので、「冠水した道でも走りました」というような走行動画をみかけます。でもテストコースはまっすぐで、縁石もありません。そのような動画を見ると、「自分もいけるかも」とチャレンジ精神を持ってしまって、浸水した道を進んでしまう人もいます。気をつけてほしいです
 
西村)冠水した道で自分の前に走っている車がいたら、行けるかもしれない、と走ってしまいそうです。
 
あんどう)前の車が進むと、止まることが難しいかもしれません。エンジンが止まらなくても、ドアの敷居(タイヤの半分くらい)より水深が深くなると、浸水するリスクが高まります。車は雨が中に入らないように、ドアのところにパッキンのようなゴムがついています。雨が入らない程度のものなので、水圧を受けたら耐えられません。軽いパッキンなので水圧まで想定してないからです。水圧をかけると、じわじわ水が入ってくる可能性があります。そうすると、布張りの床の下には、良い車ほど厚いフェルトのようなものが車全体に敷かれていて、それが全部水を吸い取ります。そうすると、車が臭くなります。浸水した道には汚物も含まれるので、それを全部吸ってしまう。水がキレイだったとしても、後からカビ臭くなり、修理代がかかることになります。
 
西村)臭くなるのはイヤですね......。
 
あんどう)車が臭くなると思うと、水の中を進むのはやめようと思いますよね。車の臭さを気にして引き返すと、命を守ることができます。
 
西村)でも、どうしても迎えに行かないといけない事情などで、冠水した道へ車を走らせてしまったとき、冠水した道路で車が動かなくなってしまったらどうなりますか。
 
あんどう)ドアのあたりまで浸水すると水圧でドアが開けられなくなって脱出が不可能になります。そんなときは、浸水時に車から脱出するためのツールを利用してください。先がとがった金槌などで、窓ガラスを割ります。
 
西村)車から出られなくなってしまうのですか。
 
あんどう)ドアが開けられないので、窓ガラスを割るしかなくなります。そのまま天井まで浸水してしまうと、ドアが開くことがありますが、どこまで待っていいかわからないので、窓ガラスを割るツールが必要。
 
西村)窓ガラスを割るツールは、どんなものがありますか。
 
あんどう)先が尖った金槌のような物があります。振りながら窓を割るツールです。フロントガラスは、割れにくい合わせガラスになっているので、簡単には割れません。運転席の横や、後部の窓の四隅は割れる場合があります。高級車ほど横のガラスも割れない仕様になっているので、どんなガラスが使われているか調べてください。ネットでは、「ヘッドレストを取り外して窓ガラスを割ることができる」という情報が出回っていますが、JAFの実験では割れないという結果が出ています。車のヘッドレストは、衝撃を受けたときに頭を守るためのもの。簡単には取り外せなくなっているので、水没したときにうまく取り外せないこともあります。割ることも難しいので、専用のツールを持っている方が命を守ることができると思います。
 
西村)いろんなツールがあるんですね。あんどうさんがおすすめのものはありますか。
 
あんどう)国民生活センターや消費者庁はJIS規格のものを推奨しています。正規品と名前が一文字違うものなど、怪しい製品が多いからです。規格をクリアしているものはシートベルトカッター付きのものが多いです。車が横転したときに、自分の体重の重みでシートベルトが切れなくなることがあります。脱出するためにシートベルトカッターがあると役に立つので持っておいてください。これは、水没対策用ではなく、事故で車が炎上したときに脱出するためのもの。普段から備えておきましょう。水害で窓を割らければ出られないほどの状況では、窓から出ることができても流されてしまうリスクがあります。水に入ることで病気になることもあります。"ツールを持っているから安心"ではなく、そのような事態になる前に決断する、浸水しないようにすること何よりも大事です。
 
西村)早めの避難・決断が大事ですね。道具を揃えていたら安心してしいますが。
 
あんどう)浸水した道に入ってしまったら、窓ガラスを割っても助かるかわかりません。浸水して歩けない道は、車で走ることも危険になります。1.5m/sの水流になると、歩行者には、両足に約8.6kgずつの力がかかります。水の塊が押し寄せてくるので、3m/sになると木造家屋が倒壊してしまうことも。流れが速い水は怖いです。ハザードマップを見て、車で避難するときは、警戒レベル3で安全な場所に避難しましょう。「Yahoo!防災速報」や「NERV防災」など自治体が推奨するアプリを入手して、早めに判断してください。冠水した道には突っ込まないようにしましょう。
 
西村)警戒レベル3=高齢者等避難で避難できればベター。明るい時間の方が良いですね。
 
あんどう)明るい時間に避難するのが良いですが、明るくても雨がたくさん降っていると危険です。
 
西村)事前にハザードマップをチェックしておくことも大切。アプリも役立つのですね。
 
あんどう)雨がひどくなる前に通知を受け取れると思います。
 
西村)平時に、家族や友達と一緒に確認をしておきましょう。わたしたちの親世代も高齢者も今は、スマートフォンを持っている人も多いですし。うちの母は、まだアプリは使いこなしていないのですが......。
 
あんどう)防災アプリを入手して、一緒に使う練習をしてみてください。字が大きくなるから高齢者も使いやすいと思います。
 
西村)一緒にチェックして設定しておくと良いですね。
 
あんどう)"冠水した道を入ると車が臭くなる"ことも覚えておいてください。
 
西村)覚えておきます。早めの避難を心がけておきたいと思います。あんどうさん、ありがとうございました。

第1515回「台風や豪雨時、浸水から車を守る」
オンライン:アウトドア防災ガイド あんどうりすさん

西村)先月中旬、記録的な大雨に見舞われた三重県四日市市。四日市駅前の地下駐車場には大量の水が流れ込み、車274台が浸水しました。
きょうは、アウトドア防災ガイドで、車の防災に詳しいあんどうりすさんに台風や豪雨のときの車の防災について教えてもらいます。
 
あんどう)よろしくお願いいたします。
 
西村)あんどうさんはアウトドア防災ガイドとして、この番組にたくさん出演していただいていますが、車の防災にも詳しいのですね。
 
あんどう)夫がモータージャーナリストをしているので、一緒に車と防災の情報を発信しています。
 
西村)そうなんですね。そこで今回は、車の防災についてお聞きします。台風や大雨のときに車が駐車場で浸水しているのを見かけます。これはどのように防いだら良いのでしょうか。
 
あんどう)四日市の駐車場の浸水は、「管理者が扉を閉めていなかった」「故障を知りながら修理していなかった」という個別の事情がありますが、ここ数年、急速に状況が悪化する浸水害が増えてきています。ほかの場所でも同じようなことが起こる可能性はあると思います。四日市の場合は、21時53分に浸水害の大雨警報が発表になり、22時14分までの1時間の雨量が123.5mmで、観測史上最高を記録しました。
 
西村)あっという間だったのですね。
 
あんどう)都市部は通常1時間に50mmくらいの雨が降ると内水氾濫のリスクがあります。排水が追いつかないからです。1時間に100mmの雨はどれくらいの雨かイメージしにくいと思いますが、1m✕1mの範囲に1時間に1回、100kgの力士が1人落ちてくると思ってください。あらゆる場所、広い面で力士が落ちてくると考えてみてください。
 
西村)ものすごい重量ということですね。
 
あんどう)100mm=10cmでたいしたことはないと思ってしまいますが、すごい威力です。東京都で1時間に100mmの雨が降ったとき、10分ぐらいで浸水したという話もあります。相当怖い状況です。
 
西村)他人事ではありませんね。自分の車を地下の駐車場に停めているときに大雨が降ってきたら、どのタイミングで車を移動させるか悩んでしまいます。
 
あんどう)最近の雨は急速に状況が悪くなるので、警戒レベル4で避難していてはもう遅いです。警戒レベル3だとまだ間に合うかもしれません。四日市の大雨のときは、警戒レベル3の洪水警報が19時40分に出されました。市の対策本部も立ち上がっていて、2時間ぐらい余裕がありました。
 
西村)警戒レベル3相当なら、大丈夫かなと思いがちですよね。
 
あんどう)「高齢者等避難」は、"高齢者だけが避難"というイメージですが、警戒レベル3は、"高齢者でも避難できる余裕を持ったタイミング"です。だからこそ、その状況で危ないと判断するのが難しいと思います。球磨川の水害では、警戒レベル3のときに雨が止んで晴れてきていました。まだ大丈夫、と思いがちですが、低い土地に車を停めている場合には危ないと判断してほしいです。
 
西村)最近は雨の量も増えてきているので、あっという間に膝から腰の高さまで浸水してしまいます。"晴れてきたから大丈夫"ではなく、"晴れているからこそ避難のチャンス"と思った方がよさそうですね。覚えておく数字としては、「警戒レベル3」ですね。
 
あんどう)車を停めた場所が、浸水エリアではないかハザードマップで確認しておきましょう。国土交通省が運営しているハザードマップを検索すると、「重ねるハザードマップ」と「自治体のハザードマップ」が出てきます。「重ねるハザードマップ」は住所を入力すれば、その場所のリスクがわかります。「自治体のハザードマップ」はPDFになっていて、自分でリスクがある場所を調べます。「重ねるハザードマップ」にはない内容や過去の浸水リスクが書かれている場合もあるので、両方調べておきましょう。「重ねるハザードマップ」は、小さな川の情報や用水路の浸水については、反映していない場合があるので注意が必要です。
 
西村)小さな川や用水路もあふれると危険ですか。
 
あんどう)川の大きさに関わらず氾濫すると危険です。用水路は、道路が浸水するとどこにあるのかわからなくなってしまいます。用水路がある場所だけ流れが速くなっていて、引ずり込まれてしまう危険性があります。
 
西村)用水路のところが流れが速くなるのはなぜですか。
 
あんどう)川でも速い流れと緩い流れがありますよね。浅いところは緩いけど、深いとことは流れが速く、引き込まれてしまいます。国土交通省のYouTube「きみの街にひそんでいる。気をつけ妖怪図鑑」という動画がわかりやすいです。そこに「妖怪ひっぱりだこ」というのが出てきます。用水路にいるタコみたいな妖怪が速い流れに引きずり込んでくるんです。
 
西村)子どもと一緒に見ても楽しそうですね。小学生編、高校生編などあるんですね。
 
あんどう)セリフが違ったりするだけで、内容は大体一緒です。
 
西村)高齢者にも伝えやすそうです。
 
あんどう)この動画はよく公演でも使っていて、大人気です。アンダーパスや木造家屋倒壊の危険性などをわかりやすく妖怪で説明しています。いい動画なのに、あまり知られていません。ぜひ検索して見てみてください。
 
西村)事前にいろいろ調べておくことが大切ですね。
 
あんどう)車を運転している人はハザードマップでいつも停めている場所、職場や学校などを調べておきましょう。高低差がある場合があるので、移動している途中に、よく浸水している場所がないかチェックしておきましょう。川や橋の近くは低くなっている場合があります。Googleマップの自転車ルートで検索すると、道の高低差が出てきます。
 
西村)旅行先もチェックしておくとよさそうですね。
 
あんどう)旅先で被害にあう場合もありますので、駐車場だけではなく、旅先の浸水区域も調べておきましょう。
 
西村)車を守りたいときできることは、ほかにもありますか。
 
あんどう)台風が来そうなとき、マンションの1階や地下に車を停めている人が、上の階に停められるように練習しているマンションもあります。上の階の権利を持っている人たちと協力して避難させるのです。
 
西村)みんなで練習するのは良いですね。コミュニケーションをとることができる関係性も素晴らしいですね。
 
あんどう)ほかにもショッピングモールの屋上駐車場など、高さがある駐車場を臨時避難場所として使えるように自治体と協定を結んでいるところもあります。オープンスペースになっていると端の方は台風だと外から物が飛んでくるので、注意が必要です。
 
西村)外から物がとんできて、車が破損することもありますね。
 
あんどう)真ん中のスペースは人気ですぐ埋まってしまうそうです。和歌山など台風に慣れている地域では、若い人でも車を避難させるのが当たり前で、すぐ行動しているのを見たことがあります。当たり前のところは当たり前なんだなと。
 
西村)家族も周りの人もそのようにしてきたのでしょうね。
 
あんどう)過去に浸水被害があったのだと思いますが、「台風のときには車も避難するのが当たり前」と考えているのがすごいなと思いました。
 
西村)地下駐車場だけでなく、家の駐車場でも浸水被害にあうこともあります。旅行先、職場でもどこに停めるかをあらかじめ決めておいた方が良いですね。
 
あんどう)水は必ず高いところから低いところに流れていくので、ほんの10cmの段差でも乗り越えられずに低いところに流れていくこともあります。少しでも高いところに停めると良いと思います。台風は事前に知ることができる災害。急激に悪化してくる雨は、悪化してきてからは何もできないことも多いのですが、事前に情報をしっかりキャッチして、警戒レベル3ぐらいから車を安全に守る方法を検討してください。高台にできるだけ車を避難させてください。
 
西村)あんどうさん、ありがとうございました。

第1514回「写真洗浄ボランティア"あらいぐま大阪"」
ゲスト:あらいぐま大阪 篠原佳代子さん

西村)2011年の東日本大震災をきっかけに始まった「写真洗浄ボランティア」。津波で流され、海水や泥で汚れてしまった写真を洗浄し、持ち主に返すボランティア活動です。この活動はその後、「あらいぐま作戦」として全国各地に広まりました。
きょうは、2019年から大阪を拠点に、写真洗浄の活動を始めた「あらいぐま大阪」の代表 篠原佳代子さんにスタジオにお越しいただきました。
 
篠原)よろしくお願いいたします。
 
西村)「あらいぐま大阪」はどんな活動を行っているのですか。
 
篠原)このボランティア活動は2011年の東日本大震災をきっかけに始まりました。その後、西日本豪雨(2018年)や熊本豪雨(2020年)などもあり、全国的に広まりました。わたしは、西日本豪雨のときに倉敷市真備町で初めて写真洗浄ボランティアに参加しました。写真洗浄という活動があるのは知っていましたがなかなか行く機会がなくて。真備町にはボランティアで入っていたので、写真洗浄ボランティアに一度行ってみようと始めました。
 
西村)被災者が大切にしている写真を洗浄する体験をして、どう思いましたか。
 
篠原)そんなに難しくなくて、やりやすいボランティアでした。とても手間がかかる作業なので、たくさんの人の手が必要だと思いました。思い出を守ることができるので、やりがいがあると思います。
 
西村)篠原さんはなぜ代表になって、大阪で活動しようと思ったのですか。
 
篠原)真備町に毎週通えないので、写真を送ってもらったり、持ち帰ったりすることができれば、大阪でもできると思いました。呼びかけたところ、トントン拍子で話が進み、毎週活動ができるように。自分がやりたかったことをやったら、みなさんが集まってくれたんです。
 
西村)毎週日曜日に大阪市阿倍野区の桃ケ池公園市民活動センターで写真洗浄会が開催されています。先月行われた「あらいぐま大阪」の写真洗浄会にわたしも参加してきました。そのようすをお聞きください。
 
音声・西村)「あらいぐま大阪」の活動場所にやってきました。きょうの参加メンバーは約10人。多くが大学生です。みなさん作業を進めています。篠原さん、わたし初めてなのでやり方を教えてください。
 
音声・篠原)アルバムが濡れてしまった場合は、早く乾かすことが大事。濡れたままにしておくとどんどん劣化が進んで、インクが溶けて何が映っているかわからなくなります。アルバムが乾いたら、写真を剥がします。次に剥がした写真を洗い流して干します。洗い残りや水滴の汚れをエタノールでふいて綺麗にして、ポケットアルバムに入れてお返しします。
 
音声・西村)きょうは、どんな作業をするのですか。
 
音声・篠原)きょうは、アルバムの台紙から写真を剥がす作業です。
 
音声・西村)どちらの被災地の写真ですか。
 
音声・篠原)昨年9月の奥能登豪雨で被災した輪島の写真を大阪で預かったものです。
 
音声・西村)こちらの写真はかわいらしい男の子が写っています。保育園の写真でしょうか。水に濡れて粒がついています。これはカビですか?
 
音声・篠原)台紙が黒くなっている部分はカビです。黒や緑になっています。粒はインクが溶けた状態で乾いたものです。台紙の糊に写真を貼っていくタイプのアルバムは、糊にカビができます。まず台紙から写真を剥がすためにフィルムをカッターナイフで切ります。このときに裏の写真を切ってしまわないように、フィルムだけを切ってください。
 
音声・西村)力を入れすぎると裏の写真まで切ってしまうんですね。フィルムをやさしく切って、カッターナイフの先の部分を写真の下に滑り込ませて優しく剥がしていきます。最初の写真を剥がしているところですが、間に黒い粒々が予想以上に多くついています......今取れました!
 
音声・篠原)簡単に剥がれる場合もありますし、このように台紙が一緒に付いてきてしまうことも。なるべく写真を守って作業してください。
 
音声・西村)家族の思い出が伝わってきて、すごく温かい気持ちになります。カッターで大切にフィルムを切っています。
 
西村)アルバムの汚れ具合がすごくかったです。白いアルバムが泥と水に浸かってシワシワになっていて、ページも張り付いていました。写真の汚れを丁寧に取り除いていくと見えてくる表情があるんです。不器用なわたしに務まるのか心配でしたが、篠原さんが優しく丁寧に教えてくれました。ありがとうございました。
 
篠原)こちらこそありがとうございます。
 
西村)台紙も波打っていて汚れもすごいのですが、丁寧に剥がす作業は大変ですね。
 
篠原)そうですね。より多くの人に手伝ってもらえたらと思います。
 
西村)どの作業が一番大変ですか。
 
篠原)状態によりますが、西村さんに体験してもらった、アルバムから写真を剥がす作業は時間がかかります。最初の干す作業は、なかなか乾きにくいので大変かもしれません。みなさんに手伝ってもらう工程ではないのですが。
 
西村)アルバムが泥に浸かってしまったら、すぐに干しておいた方が写真の再生には効果的なのですね。
 
篠原)汚れてビニール袋に入れてしまう人が多いですが、濡れた状態のまま泥を落としてからすぐに干してください。ページが重ならないように広げて干すと写真を守ることができます。
 
西村)わたしが取材に行った日は、追手門学院大学の学生さんたちが参加していました。学生さんにお話を聞きました。
 
音声・西村)写真洗浄のボランティアに参加するのは何回目ですか。
 
音声・学生A)2回目です。
 
音声・西村)何がきっかけでこのボランティアを知ったのですか。
 
音声・学生A)大学のボランティアの部活で存在を知って、やりがいがあって、楽しそうと思って参加しました。写真が手元に帰ってきたときにうれしいと思ってもらえるようにやっています。
 
音声・西村)実際に被災地には行ったことはありますか。
 
音声・学生B)被災地に行ったことはないのですが、行ったことがなくても、被災者に対して何かできるのがいいなと思って。少しでも力になれたらと参加しています。
 
西村)もうひとり、お話を伺ったのは、「あらいぐま大阪」で2年以上、写真洗浄ボランティアを続けている西川利子さんです。西川さんは、自分自身の家族の思い出を重ねながら作業を行っているそうです。
 
音声・西川さん)写真洗浄をしていると無になれるんです。この写真、多分幼稚園の運動会だと思うんですけど、"うちの娘の運動会もこんなんやったな..."と。わたしも思い出すきっかけになる。きっとこのアルバムの持ち主もこれが帰ってきたら、被害にあう前の暮らしを思い出して、先に進む小さなきっかけになるんじゃないかなと思います。
 
音声・西村)一番印象的だった写真は。
 
音声・西川さん)生まれたばかりの赤ちゃんの写真がいっぱいあって。おっぱいをあげている写真があったんです。その赤ちゃんが大きくなっていたら、これは絶対残しておいてあげたいなと思いました。
 
西村)作業している人にも思いがあるんですよね。西川さんは60代。この日は大学生が多かったのですが、いつもどんな人が参加しているのですか。
 
篠原)SNSを見て、個人で参加してくれる人もいますし、最近は大学生が団体で参加してくれています。よく来てくれる小学校2年生の女の子もいます。座って手作業ができるので、高齢者もたくさん参加しています。
 
西村)お孫さんと、おじいちゃん・おばあちゃんが一緒に参加することもできるのですね。被災地に行きたいけど行けない人が、大阪できるというのも良いですね。どうやってこの写真を預かるのですか。
 
篠原)能登半島地震や奥能登豪雨で被災したアルバムは、「あらいぐま能登」からアウトソーシングで預かったり、直接持ち主から送ってもらったりしています。現場作業に入っているボランティア団体から声をかけてもらってつながることもあります。
 
西村)洗浄後のアルバムを持ってきてもらいました。こんなに綺麗になるんですね!泥をウェットティッシュで拭いて、枠が白くなっている部分はあるのですが、ここまで綺麗になるのなら捨てない方が良いですね。返却したときの持ち主の反応はいかがですか。
 
篠原)高齢者は写真に対する思いが強く、「生きてきた証。本当にありがとう」と言ってくれます。「これから生きていく糧になる」と言ってもらったこともあります。
 
西村)写真につけられていた付箋からアルバムを作った人、撮影した人のお子さんへの愛情も伝わってきます。写真は心の復興に欠かせないものですね。
 
篠原)やりがいがあります。写真が水に濡れたり、泥をかぶったりすると捨てしまう人が本当に多いのですが、このように残せるので、捨てないでほしいです。捨てることはいつでもできます。捨ててしまったら終わりなのでぜひ残してほしいです。
 
西村)ありがとうございます。写真洗浄ボランティア「あらいぐま大阪」に参加したい人はインスタグラムとFacebookで情報発信しているので、「あらいぐま大阪」で検索してみてください。篠原さんどうもありがとうございました。

第1513回「豪雨災害からペットを守る」
オンライン:ペットサロン「犬処ケンケン」代表 北森ちかさん

西村)各地で台風や大雨が相次ぐ中、家族でもあるペットの命をどう守ればいいのでしょうか。
きょうは、全国動物避難所協会の理事で、2019年台風19号が発生した際に、被災した飼い犬を受け入れた経験がある長野県須坂市のペットサロン「犬処ケンケン」代表の北森ちかさんに聞きます。
 
北森)よろしくお願いいたします。
 
西村)「犬処ケンケン」は、どのような施設ですか。
 
北森)地域密着型のペットサロンを作りたいと、2007年にオープンしました。当時はトリミングやシャンプー、宿泊などを行う一般的なトリミングサロンでした。今はシッターやセラピー、トリマーの育成なペット関連の事業を幅広く展開しています。
 
西村)北森さんは、2019年の台風19号で、被災した飼い犬を受け入れたそうですね。台風19号は千曲川が氾濫し、多くの家屋が浸水した災害。避難所での生活を余儀なくされた人もたくさんいました。北森さんはなぜ被災した動物を預かることになったのですか。
 
北森)トリミングサロンに連れて行けないペットのために、2010年に移動トリミングカーでのサービスを開始しました。翌年の2011年の東日本大震のときに、フードの備蓄、衛生対策等ができるということで、須坂市に協定書の提案書を提出。2015年に民間での全国初となる災害協定を締結しました。そこから犬たちを預かることにつながりました。
 
西村)衛生対策に具体的に聞かせてください。
 
北森)浸水して泥まみれのペットたちを避難所で預かるのは難しいですよね。トリミングカーは、水と電気があれば、ラジエーターでお湯が沸かせるので、足先だけでも洗ってあげることができます。衛生面が気になるペットたちのために始めました。
 
西村)それは飼い主にとってもありがたいですね。具体的にはどんな流れで預かるのですか。
 
北森)台風19号のときは、18時の閉店前から大雨がひどくなって、17時にSNSで呼びかけを開始。18時に大雨警報が出て、避難所に避難するように行政から通達が出ていました。呼びかけてはいたのですが、「うちは大丈夫だ」と動かなかった人もいました。その後、行政からも依頼があり、19時半ぐらいには、中型犬の人慣れしていないペットが連れてこられて預かりました。その日は2匹ぐらい。その夜は14ヶ所、1800人が避難所で生活していたようで、車中泊をしたペットは18件くらいあったそうです。そのようなペット受け入れをその夜から始めました。
 
西村)SNSで呼びかけたときは、どのような文章を発信したのですか。
 
北森)「ワンちゃんはうちで預かるので逃げてください」とそれだけです。災害時は電話もつながらなくなるので、できるだけ早めに呼びかけました。
 
西村)どんな思いで発信したのですか。
 
北森)ワンちゃんを抱っこしたおばあちゃんが避難所に行ったら、追い返されたこともあったようで。軽トラックの荷台にワンちゃんをつないで逃げたら、軽トラックごと浸水してしまったという話も聞いたことがあったんです...。
 
西村)そういったこともあって「まずはうちに預けてほしい」という思いがあるんですね。
 
北森)長野県は車社会なので、車中泊する人も多いのですが、高齢者は車の中よりも避難所できちんと寝たいと思います。そういう人たちのワンちゃんを預かるためにも、発信したい気持ちがありました。その後も、浸水した家の片付けや買い物をするために、半日預かりや1日預かりをしました。ペット可のアパートを探すまでの2~3ヶ月にわたって長期間預かることになった例も。全部で20匹弱ぐらい預かりました。
 
西村)お散歩とか大変ではないですか。
 
北森)須坂市のドッグランのイベントに参加したり、愛犬クラブやしつけ方教室のみなさんがボランティアでお手伝いに来てくれたり。オープンの頃から、地域密着型でやってきたことが手助けになったと思います。
 
西村)受け入れる側も助け合いのつながりがあったのですね。
 
北森)市役所の生活環境課は、ゴミの対応に追われていました。14日間で3587台の災害ゴミが出て、須坂市のドッグランは仮ゴミ置き場になってしまったんです。市役所もゴミ対応に追われて、ペットどころではなくなっているというのが実際のところでした。
 
西村)長期だと何日ぐらい預かったのですか。
 
北森)3ヶ月くらい。これまでも留学や入院で長期預かりをよくしていたので大変ではなかったです。"うちの子プラン"というプランで自宅に連れて帰って面倒見てあげたことも。宿泊場所に慣れていないワンちゃんにも3ヶ月間ストレスなく預かることができるように工夫していました。
 
西村)台風や大雨に備えて、飼い主はどんな注意が必要だと思いますか。
 
北森)雨が止んだら解決するのではなく、その後の作業や預け入れの長期化を考えて対策をしてほしいです。ケージで預かるのが一番良いですが、車中泊や多頭飼育の場合、みんなを連れて避難所に行くのは大変。1泊だったら良いですが、長期化することを考えるとケージにずっといれているとお互いがしんどくなってしまいます。できるだけ人慣れ、犬慣れをさせて、犬の経験値をあげることが大事だと思います。
 
西村)在宅避難ができるとしたらどんな準備をしておくと良いですか。
 
北森)犬を連れて旅行やキャンプに行くと災害の訓練になります。キャンプで犬たちと少し不便な思いをしてみる。電気がない、寝床が定まらない、周囲に音がするなど...。そんな場所でも落ち着いて寝られるか。11月中旬にさまざまな避難所を回ったのですが、犬が1匹吠えたらみんな吠えてしまう、少し外で音がすれば吠えてしまう、という状況でした。そうなると人間も犬もしんどくなってしまいます。できるだけ穏やかに過ごすことができるように対策をすることが大事だと思います。
 
西村)家族みんなでキャンプを楽しむことも大きな備えになるのですね。在宅避難に関して、いくつか部屋がある一戸建ての場合、備えておくことや普段からのしつけで心がけておくことがありますか。
 
北森)1階が浸水した場合、2~3階でケージやサークルで待たせることができたら、1階の片付けができます。ケージに入って待っていられるようにしつけておくことも大事。
 
西村)車中泊の備えもしておいた方が良いですか。
 
北森)布団など家の匂いのついたものがあれば、ワンちゃんも心細くないと思います。最近は手作りのペットフードも流行っていて、ドックフードを食べれらないワンちゃんもいるので、ドックフードはある程度食べられるようにしておきましょう。
 
西村)車中泊のときだけではなく、ほかの場所に避難する、預けるときにも大事なことですね。災害時のペットの預け先にはどんなところがありますか。
 
北森)ある学校では、先生が機転を利かせてペットと避難できる部屋を作ってくれたそうです。でも動物が苦手な人、動物アレルギーの避難者もたくさんいるので、それも難しくなると思います。近所に預けられる親戚やペット可のホテルがないか確認しておきましょう。
 
西村)親戚の家は、浸水しないエリアなければいけませんね。
 
北森)はい。ペットホテルだとすぐに満杯になってしまうことも。ペットホテルは、不安な飼い主もいると思うので、ペットと一緒に泊まることができるホテルをチェックしてください。量販店の資材売り場ならペットも入れるので、協会に登録してもらえないかお願いして回っているところです。ガソリンスタンドの待合室もペットの避難所として開放させてもらえたらいいなと。「全国動物避難所マップ」をチェックするなど、ペットを預け入れすることができる場所を調べておくと良いと思います。
 
西村)台風は予測ができる災害。しっかり備えておきたいですね。北森さん、どうもありがとうございました。

第1512回「能登の復興を伝える"まちのラジオ"」
オンライン:まちのラジオ 代表 山下祐介さん

西村)能登半島地震の被災地、輪島市町野町で災害FM「まちのラジオ」が開局しました。日替わりで地元住民がパーソナリティを務め、地域の生活情報や気象情報、復興状況などを伝えています。
きょうは、「まちのラジオ」の代表で、番組のパーソナリティも務めている山下祐介さんにお話を伺います。
 
山下)よろしくお願いいたします。
 
西村)「まちのラジオ」はいつ、どのように開局されたのですか。
 
山下)令和7年7月7日に開局しました。輪島市の東にある町野町地区を中心に情報を届けるラジオ局です。臨時災害放送局という制度を利用して開局しました。
 
西村)わたしも町野町に行ったことがあります。去年の夏、キリコ祭のお手伝いでお邪魔しました。輪島市の中心から車で30分ですが、電車とバスで行ったこともあります!
 
山下)町野町は電車とバスで来るのがすごく困難な地域です。大変ではなかったですか?
 
西村)そのときは、まだ地面がでこぼこしていましたが、海も山もあってすごく自然が美しい場所ですよね。
 
山下)海も山もあってのどかな地域です。
 
西村)町野町は、能登半島地震と去年9月の奥能登豪雨で被害を受けました。テレビやインターネットで情報は入手できましたか。
 
山下)能登半島地震直後が一番大変でした。テレビはもちろん、ライフラインが全て使えなくなりました。地震直後は、電波塔への電源供給も絶たれたので、テレビをつけても映らず、スマートフォンも1~2週間使えませんでした。とにかく情報が得られないことに不安を感じました。奥能登豪雨のときは、地震のときほど長くはなかったですが、一時的にテレビが見られない、携帯つながらない状況だったので、情報を得ることが難しかったです。
 
西村)情報が入ってこないと不安になりますね。
 
山下)情報が得られないと不安になるということを、身を持って体験しました。
 
西村)なぜラジオやろうと思ったのですか。
 
山下)仮設住宅の整備も進み、多くの人が仮設住宅や自宅で過ごすようになってくると、地域に必要な情報が伝えきれていないと感じました。豪雨のときに情報が届かないことを経験したので、何とか情報を届けたいとSNSを活用しようと考えたのですが、高齢者が多いこの地域にでは、SNSもLINEもハードルが高い。そんなとき、臨時災害放送局という制度があると知りました。農作業中にラジオを聞いている高齢者も多いので、この地域では、ラジオの方が多くの人に情報を伝えられるのではないかと思ったんです。
 
西村)先週オンエアされた「まちのラジオ」を聞いてもらいましょう。
 
音声・パーソナリティ宇羅香織さん)9月17日水曜日、時刻は12時となりました。ラジオの前のみなさん、こんにちは。まちの復興情報番組「まちのWA」。きょうの担当は、農家の嫁の宇羅香織と...
 
音声・パーソナリティ山下祐介さん)"奥能登の山P"こと山下祐介の2人でお届けしております。
 
音声・宇羅さん)山下さん、7月7日から放送を開始して、なんと50回目の放送だそうですね。
 
音声・山下さん)全く気づいていませんでした。50回もやってきたんですね!もう50なのか、まだ50なのか。
 
音声・宇羅さん)まだ...にしときましょうか(笑)。
 
音声・山下さん)そんな、50回を祝福してくれているのか。ちょっと外が...。
 
音声・宇羅さん)先ほどから(雷が)ゴロゴロと。
 
音声・山下さん)雷が鳴っていますね。雨もまあまあ強いですね。
 
音声・宇羅さん)稲刈りは、今日はできませんね。
 
音声・山下さん)ちょっときびしいですね。

 
西村)すごくほのぼのしたラジオですね。
 
山下)地域のラジオ局として、まちのみんなで番組作ることを意識しています。和やかに地元の話をなるべく入れて楽しめるように。
 
西村)町野町から離れて暮らすわたしも、その輪の中に入れてもらったような気分になりました。
 
山下)まさにそんな場所を広げていきたいという思いもあって、この番組名をつけました。
 
西村)稲刈りの話も出てきましたね。
 
山下)パーソナリティを務めていた宇羅さんは専業農家。稲刈りシーズン真っ只中ということで、稲刈りの話になりました。
 
西村)稲刈りはできましたか。
 
山下)あの日はさすがに無理でしたけど、その後の晴れ間を見計らって稲刈りできました。みんな順調に作業が進んでいるようです。
 
西村)「まちのWA」はどんな番組ですか。
 
山下)月~金曜の昼12時から90分間の生放送をしています。町の復興状況や地域で暮らす人々にとって重要な情報を、リクエスト曲を交えて放送しています。スタジオの近くに小学校・中学校があり、子どもたちに給食の時間に聞いてもらうためにこの時間に放送しています。子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで幅広い年代のリクエスト曲が集まっています。
 
西村)和やかな空間が想像できます。"きょうの給食のメニュー"も発表されているとか。
 
山下)お子さん、お孫さんがいない人にも「今の子どもたちってこんなの食べてるんだ!」とか「これちょっと美味しそう!」と知ってもらうことができます。家庭のメニューに活かしてもらうこともできると思って。
 
西村)いろいろなゲストの方も出演しているそうですね。
 
山下)今は道路や河川の工事真っ只中なので、国土交通省に復興状況を伝えてもらっています。輪島警察署には「秋の全国交通安全運動週間」と防犯について伝えてもらいました。ほかにも地元の輪島塗の職人さんとか。フラっとスタジオに遊びに来てくれた人が飛び入りで出てもらうこともあります。地元の人が関わって、地元の人が知りたくなる情報を届けています。
 
西村)地元の人がフラっと寄って参加できるのがいいですね。スタジオはどんな場所にあるのですか。
 
山下)スタジオがある場所は、能登半島地震の前は栗農家の住宅兼作業場でした。栗農家さんは、建物が倒壊したため静岡県に移住。公費解体後、「地元のために有効に使ってほしい」ということで、敷地を借りて、7畳ほどのプレハブを建ててスタジオにしています。
 
西村)7畳ほどのプレハブということは、結構距離が近いのですね。
 
山下)距離が近く、アットホームなスタジオです。
 
西村)見に来てくれた人の顔が見えるのですか。
 
山下)窓ガラスの前にベンチを置いています。ベンチからスタジオの中を覗くこともできます。
 
西村)ラジオ越しの会話も楽しいですね。山下さんは、本業は米農家。ほかにも地元住民のみなさんがパーソナリティを担当しているのですね。
 
山下)「まちのラジオ」のスタッフには、ラジオ局やテレビ局で働いたことがある人は1人もいないんです。ラジオパーソナリティの経験がある人ももちろんいません。みなさん本業があって、休日にこのラジオでパーソナリティをしています。消防士さん、近所のスーパーの店員さん、元高校教師など、いろんな立場の人が日替わりで登場します。ミキサー、ディレクター、パーソナリティなどをオールマイティーに担当しています。
 
西村)喋るだけでも大変なのに、機械の操作もゼロから覚えたのですね。苦労したことはありますか。
 
山下)機械の操作も難しかったのですが「声で何かを伝える」ということがいかに難しいことなのかがわかりました。開局を目指したとき、我々はラジオのことを全く知らない素人だったので、「喋るだけだったらできそう」と思っていたんです。テレビは映像を撮るから難しそうだけど、ラジオはマイクの前で喋るだけだから簡単だと思っていました。でも実際にスタートすると、なかなかそういうわけにはいかないんです。
 
西村)放送を続けてきて、リスナーからはどんな反響がありますか。
 
山下)「いつも楽しみに聞いているよ」「みんな頑張ってるね」という応援のほかにも、「天気はこういうふうに伝えた方がいいよ」「今日の交通情報は何を言ってるかわからなかった」というアドバイスが来ることも。そのような声があるということは、きちんと聞いてくれている証拠。みんなでラジオを作っている実感があって励みになります。昨日も夜、フラっとご近所さんが来てくれて。本当にアットホームです。
 
西村)「まちのラジオ」を通して、これから地元の住民のみなさん、リスナーにどんなことを伝えていきたいですか。
 
山下)地域のみなさんと一緒に町の復興に向かって進んでいきたいです。リクエストカードも用意しているので、テーマとらわれることなく、みんなで会話をするように、このラジオを使ってほしいです。気軽にみんなでつくるラジオなので、いろんなメッセージをいただけたら。
 
西村)生活がより楽しくなっていきそうですね。山下さん、どうもありがとうございました。

第1511回「なぜ高台の空港駐車場が浸水?」
オンライン:だいち災害リスク研究所 所長 横山芳春さん

西村)今月5日、静岡県内に大きな被害をもたらした台風15号について、気象庁は、観測史上最大クラスの竜巻が複数発生したと発表しました。また今回の台風では、山の上にある空港の駐車場が浸水して、多く車が水に浸かってしまいました。なぜこうした被害が発生したのか。
きょうは、だいち災害リスク研究所 所長で、地形や地質から災害が起きた要因を調査している横山芳春さんにお話を伺います。
 
横山)よろしくお願いいたします。
 
西村)今回の台風では、なぜ竜巻による被害が起こったのですか。
 
横山)台風というと台風から吹く強風で被害が出ると思いがちですが、低気圧が発生して風が吹き荒れるので、竜巻も発生しやすいです。気象庁の統計では、9月が一番竜巻の起きる回数が多いです。
 
西村)今回の台風15号では、竜巻でどのような被害がありましたか。
 
横山)多数の家屋の被害があり、亡くなった人もいます。
 
西村)静岡県にこれほどの被害が出てしまった原因は?
 
横山)沿岸部には、海から暖かく湿った空気が流入しやすいので、竜巻は太平洋側の地域で発生頻度が高いです。山側の地域は竜巻が発生しにくいですが、平地では気流が障害物に遮られずに回転しやすいので、竜巻が起きやすくなります。静岡県は条件が揃っています。
 
西村)関西では滋賀県に竜巻注意情報がよく発表され、被害も発生しています。滋賀県も竜巻が発生しやすい地域ですか。
 
横山)紀伊半島など山側の地域に比べると、琵琶湖周辺は平地が多いので竜巻が発生しやすいです。
 
西村)滋賀県は平野部が多く、琵琶湖もあるので竜巻が発生しやすいのですね。今回の台風15号では、竜巻のほかに山の上にある空港の駐車場が浸水しました。この駐車場はどんな場所にあるのですか。
 
横山)被害があった富士山静岡空港は、標高130mの山の上にあります。富士山からは少し離れた地域にあり、山を人工的に切り拓いて滑走路を作った空港です。
 
西村)そこの駐車場が浸水したのですね。
 
横山)低い場所の川沿いなら浸水するイメージがあると思いますが、山の上の駐車場が浸水して驚いた人が多かったです。
 
西村)こんなに高いところにあるのに浸水してしまったのはなぜですか。
 
横山)地形の高低差によるものです。浸水した駐車場は、空港の端にあるのですが、そこだけ数十cm低くになっています。記録的な豪雨が降ったときは、くぼんだ場所があると、そこに水が集まってしまいます。排水がうまくできないと浸水してしまいます。
 
西村)洗面器に水がたまるイメージですか。
 
横山)そうです。洗面器の底のような場所に駐車場があって、そこに雨水が集まってしまいました。
 
西村)数十cmの高低差でも大きな被害が出るのですね。
 
横山)数十cmでも低いと水が集まります。風呂の底から水を抜くようにどんどん水が抜けていけばよいのですが、お風呂を排水していても、周りからどんどんホースで水を入れていったら水位が上がってしまってしまいますよね。それと同じ現象です。
 
西村)車の持ち主は、かなりショックでしょうね...。
 
横山)まさか山上の駐車場に車を置いて、水につかるとは思っていないでしょうからね。
 
西村)車はどれぐらい浸水したら走行できなくなるのでしょうか。
 
横山)車によりますが、車高の低い車なら30cmぐらいでも走行不能に。タイヤの半分ぐらいまで水に浸かると故障に至ります。
 
西村)この事例は、ほかの地域でも起こり得ることですか。
 
横山)高台であってもどこでも、大雨が降った場所で、周りよりも低い場所なら同じようなことが起こり得ます。
 
西村)横山さんは、実際にこのような事例で浸水した場所に調査に行ったことはありますか。
 
横山)内水氾濫が起きた場所や原因を現地に調べに行っています。最近多いのは、高台でも周りより低い場所で起こる被害。水は低いところに集まります。今回の空港の事例と同じように、数十cmでも低い場所があったり、妨げになる障害物があったりすると浸水が起きます。
 
西村)障害物とはどんなものですか。
 
横山)中央分離帯やガードレールの基礎が20~30cm高いとダムのようになってしまうことがあります。
 
西村)そこに水が溜まってしまうのですね。
 
横山)壁や建物が障害となって、人工的なくぼ地を作ってしまうことがあります。
 
西村)アンダーパスもそうですか。
 
横山)アンダーパスはまさにそのようなパターン。線路をくぐるために周りの道路を低くしているので、浸水被害が起きやすいです。
 
西村)このような浸水は、全国どこでも起こり得るのですね。高台にありながら周りと比べると少し低い場所とは、具体的にはどんな場所がありますか。
 
横山)車で走っていたらほとんどわからないと思いますが、自転車で走るとわかりやすいです。少し坂になっている場所、雨の日に水が流れていく場所など。水溜りがよく残っている場所は周りより低いので浸水しやすいです。
 
西村)排水が悪い場所とはどんな場所ですか。
 
横山)ゴミなどで側溝が詰まっていると排水能力が低くなるので、きちんと排水ができないことで、浸水してしまいます。
 
西村)台風シーズンは「側溝の掃除をしておきましょう」といわれますね。
 
横山)12月に実際にあった事例では、紅葉シーズンの落ち葉が多い時期に雨が降って、周りより低いところに落ち葉が詰まって、うまく排水できずに浸水に至ったケースがあります。
 
西村)落ち葉は軽いものなので大丈夫かな...と思いますが。
 
横山)大量に集まって排水を妨げてしまうと、水が溜まってしまうので、浸水が起きやすくなります。
 
西村)先週実家に帰ったときに、排水溝に落ち葉がたまっていたので久しぶりに掃除をしてみたんです。泥も一緒にたまっていて掃除が大変でした。しっかりチェックしておいた方が良いですね。
 
横山)台風シーズンの前にはきちんと側溝の掃除をして、水が流れるようにしておきましょう。
 
西村)一般的な下水道の排出能力は、どのように想定されているのですか。
 
横山)都市部で1時間当たり50mmの雨に対応できるように設計されていることが多いです。
 
西村)最近は、1時間に100mmのゲリラ豪雨が降ることもあるので、簡単に超えてしまいますね。

横山)場所によっては、75mmで設計されているところもありますが、それでも最近は80~100mmを超える雨が頻繁に降っているので、想定外が起きやすくなっています。
 
西村)ほかにも実際に調査した場所で、具体的な事例はありますか。
 
横山)田畑があると土の中に水が浸透していきますが、今は、道路は全部アスファルトでおおわれています。都市部ほど水害が起きやすいことも。周りよりも少し低い場所、場合によっては、普段は意識しない自宅の駐車場などに水がたまることもあります。地図やハザードマップでよく土地の高さを確認すること。ハザードマップで色がついてない場所でも内水氾濫が起きることがあります。水をふさぐような構造物によって人工的に低い場所になっていないか注意してください。
 
西村)インターネットで地域名を入れるとすぐに確認をすることができます。ほかにも調べる方法がありますか。
 
横山)方法はふたつあります。一つは現地を実際に見ること。これから家を買おうとしているとき、借りるときなど内見をするときは、一般的には晴れている日の方が日当たりがわかりますが、雨の日に見ることをおすすめします。
 
西村)あえて雨の日に見るのですね。
 
横山)大雨の日に家の雨樋がきちんと機能しているか。しっかり雨水が流れているか。自宅に水が集まるのか、自宅から離れたところに水が流れていくのかを確認しておきましょう。水が集まりやすいと、大雨が降ったときに浸水しやすいです。
 
西村)大きなポイントですね。
 
横山)ハザードマップの中でも内水氾濫を想定した内水ハザードマップを見てください。内水氾濫は、雨水が処理しきれずに起きるものになので、川がない場所でも起こります。周りよりも低い場所は内水氾濫が起きやすくなるので、ハザードマップで確認してください。ハザードマップで色がついていない場合は、標高がわかる地理院地図を見てみましょう。10~20cm単位の高低差もわかるので、自宅と周りの標高をチェックすると、水が集まりやすい場所の目安がわかります。
 
西村)自宅や勤務先、新しく家を買うときにはぜひチェックしましょう。
横山さんありがとうございました。

第1510回「能登の被災地で実施中"災害ケースマネジメント"」
ゲスト:大阪公立大学大学院 文学研究科 准教授 菅野拓さん

西村)被災者の個別の事情に応じて支援する「災害ケースマネジメント」。東日本大震災で注目を集めた被災者支援の新しい仕組みです。5月28日、「災害ケースマネジメント」の実施を後押しする法改正が可決・成立し、今後ますますの普及が期待されています。この「災害ケースマネジメント」は、能登半島地震の被災地でも実施されています。
きょうは、能登で行われている「災害ケースマネジメント」について、大阪公立大学大学院 文学研究科准教授 菅野拓さんにお聞きします。

菅野)よろしくお願いいたします。

西村)「災害ケースマネジメント」の特徴を教えてください。

菅野)被災者はさまざまな困りごとを抱えています。「家が壊れてしまった」「仕事を失ってしまった」「借金が返せなくなった」など個別の事情を抱えているので、一律の支援だけは生活再建できません。支援制度は複雑でよくわからないという人も。自治体や支援者側から被災者を訪問し、事情を聞きながら支援していく仕組みが「災害ケースマネジメント」。行政やNPOだけではなく、"餅は餅屋"で法律の支援が必要なら弁護士、家の支援が必要なら建築士...というふうに寄り添いながら長期的に生活再建を支援していくことを「災害ケースマネジメント」と呼んでいます。

西村)能登半島地震の被災地では「災害ケースマネジメント」が実施されているそうですね。

菅野)はい。石川県、輪島市、珠洲市などの被災者や金沢などに2次避難している人に対して、支え合いセンターが配されて、訪問しながら支援する体制が築かれています。在宅避難者にも情報や支援を届けています。

西村)在宅避難者は、なぜ仮設住宅などに避難できなかったのでしょうか。

菅野)微妙に壊れて住めないこともない場合や避難所にそもそも行けなかったという人も。雑魚寝の避難所など劣悪な避難環境も理由。女性は着替えや洗濯にも困りますよね。高齢者は感染症も心配。過酷な環境が続く避難所より、家にいた方がいいという人が出てきます。壊れた家で留まる人も多いです。

西村)「みんな大変だから、わたしの困り事なんて...」っていう声も聞いたことがあります。そんな中、支援する側から声をかけることは大切なことだと思います。能登では具体的にどんな支援が行われているのですか。

菅野)健康被害がある場合は、医療や福祉のサービスを利用することもあると思いますが、家が壊れて壁に亀裂が入った場合、修理するきにどんな支援制度があるのだろう?と思いますよね。

西村)わからないですし、不安になりますね。

菅野)建築士や弁護士が訪問することで、修理の金額などの相談にのることができる。「これなら住み続けられるな」「これぐらいかかるなら、町に出て、新しいところに住んだ方がいいな」というような判断ができます。能登ではこのような支援を展開しています。

西村)実際に支援した人に話を聞いたことはありますか。

菅野)はい。いきなり「支援者です」と来ても頼れないですよね。何度も訪問して信頼関係を作るとポロっと本音が出てきます。被災者の選択をどのように後押ししてあげられるか。被災者は「選択肢がわからない」「選択肢が無限にあるように見える」などの状況で、不安に置かれています。そこに寄り添い、信頼関係を作って一緒に一歩を踏み出してあげるのです。

西村)何から手をつけて良いかわからない中、話を聞いてくれることで整理ができて、先の見通しもできますね。家に訪問してくれるのはありがたいですね。

菅野)どんな支援制度があるかはなかなかわからないもの。そこにいきなり困りごとが押し寄せてくると大変です。そこに寄り添うだけで状況が変わると思います。

西村)支援の例を聞かせてください。

菅野)介護やケアの支援もあります。家族や地域の人と一緒に住んでいて、福祉サービスを使っていなかった人が、地域の状況が変わって介護サービスを使いたいとき、申請や手続きの問題が出てくる。そんなところも寄り添っています。日常生活の環境作りも支援しています。

西村)今回「災害ケースマネジメント」を実施する上での課題は。

菅野)担い手不足です。少子高齢化が進んでいて、奥能登は高齢化率が5割。介護施設で働いている人の年齢も70歳ということも。今回の災害で大変だったのは、若い人も仕事を失ってしまったことです。「隆起によって港が使えなくなり、漁ができなくなった」「田んぼや畑が崩れてしまった」など。若い人ほど仕事を求めて、金沢や他の地域に出て行ってしまう。一体誰がその地域自体を支えるのかということに。介護や福祉業界は、普段からほかの地域も人手不足ですけ。人がいなくて、事業所が閉鎖してしまうこともあります。そんなところに災害がやってきてしまう。命や生活をつなぐ大事な職業に従事する人が集まらないのです。

西村)「災害ケースマネジメント」を普及させるにはどうすれば良いのでしょうか。

菅野)5月28日に災害対策基本法や災害救助法などの法律に福祉サービスの提供が規定されました。規定はされたけど、誰がやるのという話。人手不足の福祉業界をどう変えていくのかがポイントになってくる。実際には福祉の現場で働いている人が、災害が起きたらそこに応援に行くことになりますが、そんな余力がないところで応援に人を出せるわけがない。その余力をどのように平時からつけていくのか。福祉現場の処遇を改善することもひとつ。今の給料は、介護保険法は障害者の総合支援法によって国で決めています。そこを災害時のことも考えて上乗せしておくとか。そのような議論をしていかなければなりません。関連死を防ぐ問題を平時から考えておく。これを"フェーズフリー"と言っています。

西村)その議論は進んでいますか。

菅野)ちょっとずつ進んでいると思います。被災者支援を考えた平時からの体制整備を踏まえて、法改正をしようという動きが厚生労働省でも出てきている。それはぜひ進めていただきたいと思います。

西村)大きな一歩になりますね。

菅野)今までは避難所や仮設住宅を作るなど場所作りを中心に考えられていましたが、福祉や医療は人。大きく変わった一歩となりました。

西村)2026年度に防災庁が設置予定です。この動きには期待できそうですか。

菅野)期待しています。防災庁設置の準備の議論に関わってきましたが、6月4日に報告書も出しました。今までは内閣府が国の防災をしていて、職員さんは2年交代なんです。国土交通省や厚生労働省に戻ってしまうので、大きな法改正や制度設計がしにくかった。

西村)海外で避難所は違うのでしょうか。
 
菅野)台湾、アメリカ、イタリアなどはNGOが国や行政と連携して支援しています。費用は国や自治体が出し、得意なところは"餅は餅屋"でやるという体制が組まれています。
 
西村)日本も防災庁ができて変わっていくのでしょうか。
 
菅野)いろんなところと連携・協働型で、災害対応しなければならない。そのような体制を実現していくことが防災庁に期待される役割だと思います。
 
西村)菅野さんどうもありがとうございました。

第1509回「カムチャツカ半島沖地震で見えた"津波避難"の課題」
オンライン:東北大学災害科学国際研究所 教授 今村文彦さん

西村)7月30日にロシアのカムチャツカ半島付近で発生した地震について、政府は津波避難が適切に行われたのか、検証を始めました。今回の地震では、津波警報・注意報の全面解除まで
32時間もかかり、猛暑での長時間の避難に加え、各地で車による渋滞も発生しました。
きょうは、津波避難の課題について、東北大学 災害科学国際研究所 教授 今村文彦さんに聞きます。
 
今村)よろしくお願いいたします。
 
西村)今回のカムチャツカ半島付近で起きた地震では、遠く離れた日本でも津波が発生しました。津波警報・注意報の全面解除まで32時間もかかったのはなぜですか。
 
今村)日本は環太平洋に位置していて、このエリアでは巨大地震が起きます。発生する津波が大きいので、たとえ離れていても伝わってきます。今回もカムチャツカ半島から遠く離れたハワイや南米まで津波が低減せずに伝わりました。
 
西村)津波の勢いが弱まることなく日本にも伝わってきたのですね。どういう仕組みで伝わるのでしょうか。
 
今村)地震から直接来た波もありますし、ハワイやハワイの周辺の海底にある山脈に反射して、日本に向かってくる波もあります。
 
西村)津波が山脈にぶつかって跳ね返ってくるのですか。
 
今村)海山は円錐状なので、波が反射した場合、同心円状に広がります。その一部が日本に到達しました。環太平洋をおぼんの中の水だと思ってください。水を動かすとおぼん全体に広がっていきますよね。いろんな面に反射して水が動くのと同じ原理です。長い間、いろんな方向から波が来るので、32日間、警報・注意報が続いたのです。
 
西村)長く続いても津波の勢いは衰えないのですね。
 
今村)1~2万km伝わっても津波は弱まりません。過去にも遠いところで発生した津波が日本に来襲した事例があります。最近では2010年のチリ中部地震。一番大きなものは1960年のマグニチュード9.5のチリ地震による津波。日本でも100名以上が犠牲になりました。当時、環太平洋では国際的な警報システムがなかったので、前触れも警報もなく津波が来て、多くの人が亡くなってしまったんです。
 
西村)今の時代は警報・注意報があるので、情報をしっかりと把握して行動しないといけませんね。
 
今村)今回のように揺れがなくても遠くから津波がくることがあります。今は警報システムが充実しているので、情報をしっかり取ってください。
 
西村)今回のように、海外で発生した地震は揺れを感じないので、逃げようと思わない人も多いかもしれません。実感がないと行動に結びつきませんよね。
 
今村)突然スマホに津波注意報がきて、警報に切り変わって多くの人は驚いたと思います。
 
西村)でも行動した方が良いですよね。
 
今村)警報・注意報は、確実に根拠のある気象庁からの情報。特に沿岸部にいる場合はすぐに離れて、周辺の避難場所に移動してください。
 
西村)7月30日は夏休み中で、海にいた人も多かったと思います。海にいるときに警報・注意報が出たときにどこに避難すれば良いのかおしえてください。
 
今村)海水浴場ではライフセーバーからの指示があります。沿岸部では屋外のスピーカーから防災無線がながれます。スマホからも情報を得ることができますが、海水浴では持っていない場合もあるので、周辺のスピーカーからの情報に注意してください。
 
西村)ライフセーバーからはどのように指示が出るのですか。
 
今村)スピーカーや津波フラッグで指示を出します。大きな旗を振って遠くにいる人にもわかるようにします。仙台市では、スピーカーとカメラが搭載されたドローンで注意を呼びかけたという例も。
 
西村)今の時代ならではの知らせ方ですね。遊んでいるときでも危険が迫っていることがあるかもしれないので、しっかりと耳と目も働かせておくことが大切ですね。ほかに津波避難の注意点はありますか。
 
今村)猛暑の中、長時間にわたる避難では暑さ対策も大切。さまざまな冷却用アイテムがあるので、非常用持ち出し袋に準備してください。
 
西村)首を冷やすものなど、最近便利なものいろいろありますよね。
 
今村)一方、冬の場合は防寒対策が必要。季節に応じてチェックすると良いと思います。
 
西村)冷却スプレーやポンと叩いて涼しくなるものなど。冬場だったらカイロなどのあったかグッズも揃えておきたいですね。
 
今村)長時間避難する可能性があるので、準備が必要です。
 
西村)長時間とは、どれぐらいの時間を想定しておいたら良いですか。
 
今村)今回は1日半でした。それぐらいは長く続くと思います。
 
西村)津波が起こって高台に避難してから、一時避難の場所に移動するのでしょうか。
 
今村)これはケースバイケース。まずは近くの高台に移動して、今回のように最大波が遅れる場合は、2次的、3次的な避難場所に移動をしなければならない場合もあります。どのタイミングで移動するのかと避難場所の確認が重要です。
 
西村)一時的な避難でも、長い時間になった例は過去にありましたか。
 
今村)東日本大震災もそうです。2010年のチリ中部地震では、東北地方では警報が出て、1ヶ所で長く避難した人もいます。津波の場合は、徒歩避難が原則。車を使うと渋滞する可能性があるからです。渋滞で車が動かなくなると津波に飲み込まれてしまいます。
 
西村)東日本大震災のときにもそのようなことがあったのでしょうか。
 
今村)はい。沿岸部ではかなりの場所で渋滞が起きました。
 
西村)救急車も通れなくなりますね。
 
今村)津波避難に車はできるだけ使わないこと。車が必要な高齢者や歩行困難な人が優先的に車を使えるようにしてほしいです。
 
西村)高齢者、障がい者、妊婦などが車を優先的に使えるように譲り合いの心を持つことが大切ですね。
 
今村)地域で話し合って決めてほしいですね。
 
西村)一人暮らしで足の不自由なおばあちゃんが近所にいる、という場合は、話し合って、車で避難場所まで連れて行く約束をしておくとお互い安心ですね。
 
今村)地域ごとにそういうルールを作っておくと安心。途中で渋滞が発生する可能性も低くなります。支援する人を1人に固定すると難しい点も出てくると思います。
 
西村)歩くことができる人は徒歩で避難。誰が助けに行って、誰が徒歩で避難するのか、地域で避難の練習をしておくとスムーズに進みそう。
 
今村)避難の練習をすると課題が出てくると思います。車の避難も含めて、地域で課題解決をしましょう。
 
西村)そのほかに、もの・行動でも準備しておくべき備えはありますか。
 
今村)情報収集にはスマホや携帯ラジオが重要。長時間の避難に備えて予備のバッテリーを準備しておくと良いと思います。
 
西村)先ほど、一時避難で高台などの避難所に行って、その後、別の避難所に行くというお話がありました。それぞれどんなところで、どれぐらい滞在するのでしょうか。
 
今村)これもケースバイケース。平野部から山の方に行くときは、一時避難から高いところに移動できます。避難ビルでは、どのタイミングで移動するのか、次の避難場所がどのくらい離れたところにあるのか。そこが安全かなどを訓練で確認しておきましょう。
 
西村)きょうは、海外で発生した地震の津波避難について、どう行動すれば良いのかを教えていただきました。今村さんどうもありがとうございました。

第1508回「台風・豪雨から命を守る避難行動」
ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 前田智宏さん

西村)9月1日は、「防災の日」です。毎年9月1日頃は、暦の上では、二百十日(にひゃくとうか=立春の日から数えて210日目)にあたり、台風が襲来しやすい時期ともされています。
きょうは、MBSお天気部の気象予報士 前田智宏さんに台風や豪雨への備えと命を守る避難行動について聞きます。
 
前田)よろしくお願いいたします。
 
西村)そろそろ台風シーズン突入でしょうか。
 
前田)まさに8~9月が台風シーズン。9月は日本に上陸する台風も増える時期です。関空の連絡橋にタンカーがぶつかった2018年の台風21号も9月上旬でした。防災の日制定のきっかけにもなっている伊勢湾台風も9月に上陸しました。
 
西村)台風は年間にどれぐらい発生するのでしょうか。
 
前田)平均で25~6個発生します。上陸も接近も8~9月が1番多いです。今年は、日本付近はそれほど台風の被害を受けていません。
 
西村)まだ大きな台風の被害はないですね。
 
前田)だからこそ、これからが怖いと思います。なぜ台風が来なかったかというと、これまで勢力の強い太平洋高気圧がガードしていたからです。その影響で猛烈な暑さが続き、海面水温がどんどん高くなっています。台風が勢力を落とさずに日本に近づく恐れがあるので、これから近づいてくる台風には注意が必要です。
 
西村)台風に対しての備え・避難行動について教えてください。
 
前田)台風は事前に情報を得て、備えることができます。まずは天気予報をこまめにチェックしましょう。台風が発生したら早めに避難行動を考えることが大事。これから台風の発生が増えるのでまずは情報を掴む。台風がやってきそうなら、どのような行動を取ればいいのか家族で確認してください。
 
西村)旅行と重なりそうなときもあるかもしれませんね。
 
前田)早めのスケジュール調整も必要。自分のいる場所にどんな危険があるかをハザードマップで事前に確認しましょう。台風は屋内にいればやり過ごすことができる災害です。
 
西村)ハザードマップはインターネットでも簡単に見ることができますね。
 
前田)国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」で、家の周り、旅行先、実家など日本各地のマップを確認することができます。土砂災害など災害ごとに確認して、危険ならどこに避難するのか、いつ避難するのかを決めておくことが大事。
 
西村)土砂災害のリスクがある場合、どんなところに避難したら良いですか。
 
前田)まずは斜面や崖から離れること。土砂災害警戒区域から離れることが大事。土砂災害の対象の避難場所を確認しましょう。
 
西村)地震の場合と津波や高潮などの土砂災害、それぞれで避難場所が違うこともあります。
 
前田)災害によって避難場所が違うので細かく確認しましょう。
 
西村)どんなタイミングで避難すれば良いですか。
 
前田)さまざまな気象情報がありますが、大雨警戒レベルの数字で判断できます。大雨警戒レベル3=高齢者等避難です。避難に時間のかかる人は、このタイミングで避難を始めましょう。警戒レベル4になると危険な場所にいる人は全員避難となります。警戒レベル4が出た場合は身を守らなければならないと覚えておいてください。
 
西村)先日、レベル4で土砂崩れが起きていたところもありました。レベル3で早めに避難した方が良いかもしれません。人によってタイミングも違いますよね。
 
前田)それを事前に決めておくことが大事。警戒レベル5になると、災害が起きていてもおかしくないタイミング、すでに災害が起きているタイミングになります。
 
西村)川溢れて浸水したり、土砂災害が起こっていたり...。
 
前田)レベル5で避難を始めていては手遅れになってしまうので、レベル4で避難を完了させることを心がけてください。警戒レベル5は、身の危険を感じるレベルだと思います。
 
西村)その場合、外に出ることは難しいので、安全であれば家の中で避難する方が良いですね。自宅避難をするにはどんな備えが必要ですか。
 
前田)飛ばされやすいものは家の中にしまっておく、固定しておくことが必要です。
 
西村)7年前の大阪の台風の時に、友人がベランダに置いていた洗濯機が飛ばされたと言っていました。
 
前田)置いてあるものが凶器にもなりかねないし、周りの人の命を脅かす恐れも。濡れた雑巾1枚でも窓ガラスを突き破ることがあります。小さなものでもほったらかしにしないこと。これからのシーズン、まだまだ暑さが続きます。家の中で避難していて、停電したときはさらに暑さ対策が必要。電気が止まっても涼を取れるような準備が必要です。
 
西村)前田家ではどんな備えをしていますか。
 
前田)首元を冷やすネッククーラーと水をいれて凍らせたペットボトルを準備しています。これをうまく使えば体を冷やすことができます。
 
西村)体を冷やしたあと、水が溶けたら料理や水分補給にも使えますね。
 
前田)風呂に水を張って、体をつけると涼をとることができます。エアコンや扇風機が使えなくなったら、どうやって涼むのかを考えておきましょう。
 
西村)携帯電話の充電器も必要ですね。
 
前田)充電を常に満タンにしておく、モバイルバッテリーを用意しておく。スマートフォンは連絡を取る、情報を得るのに必要です。最悪の事態を想定して準備をしておきましょう。
 
西村)今月に入って各地で線状降水帯が発生しています。夜間の発生が多いですね。
 
前田)線状降水帯に限らず、統計的に夜中や早朝に大雨、豪雨災害の発生が多いです。研究でも明らかになってきていて、特に九州地方は、豪雨災害は夜中、早朝に起きやすいということがわかっています。今月、九州で線状降水帯が相次いで発生しましたが、九州では夜間に東シナ海から吹き込む風が強まって、湿った空気が流れ込みやすくなります。夜間は気温が下がって上空が冷えることで、大気の状態がより不安定になると考えられます。これは九州に限らずどの地域でも起こることです。
 
西村)わたしたちのいる近畿地方でも起こりますか。
 
前田)関西でも、夜間に急激に状況が悪くなることがあります。
 
西村)寝ていて起きたら浸水していた...とか。逃げられない状況になっていることもありますね。
 
前田)情報を得るのが難しい、行動を移すのが難しい暗い時間帯になると、大きな被害にもつながりかねません。
 
西村)夜中に避難情報が発表されたらどうしたら良いですか。
 
前田)情報が出た時には、ためらわずに避難行動を取ること。心配なら暗くなる前に避難を済ませる。どこで線状降水帯発生の恐れがあるのかは、半日前にはわかるので、暗くなる前に避難を済ませることも可能です。そのような情報が出された時、その時点で何らかの行動をとっておくこと。急激に状況が悪くなることもあるので、ベストな避難方法だけではなく、セカンドベストの策も考えておくのも重要です。
 
西村)例えばどんなことですか。
 
前田)避難所に行くことが難しいなら、近くの親戚の家、知り合いの家に身を置くことができるように、事前に連絡を取っておく。それも対策のひとつになります。
 
西村)安心につながりますね。自分たちだけではなく、離れて暮らす家族、実家のお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんにも連絡して話をしておくのも大切ですね。
 
前田)何もない時にこそ、話合いをしておくことが大事だと思います。
 
西村)今日は、台風や豪雨から命を守る避難行動についてお話を伺いました。
前田さんありがとうございました。

第1507回「紀伊半島大水害の教訓を絵本で伝える」
ゲスト:和歌山大学客員教授 後誠介さん

西村)2011年、台風12号の影響で、紀伊半島を中心に大きな被害が出た紀伊半島豪雨。和歌山県内では土砂災害が多発し、三重、奈良、和歌山の3県で88人の死者と行方不明者が出ました。この豪雨の教訓を子どもたちに伝える絵本「川がパンクしちゃった!もりのがっこうとどうぶつたち」が出版されています。
きょうは、この絵本を企画した和歌山大学 客員教授 後誠介さんにスタジオにお越しいただきました。
 
後)よろしくお願いいたします。
 
西村)「川がパンクしちゃった!もりのがっこうとどうぶつたち」はどんな絵本ですか。
 
後)動物たちが通う"森の学校"が舞台。近くを流れる川が大雨で氾濫してしまうという物語です。雨が降り続くと、堤防が決壊しないのに川があっという間にパンク(氾濫)してしまいます。大人も見落としていることを子どもと一緒に気づき合いながら、読み進められる絵本にしました。
 
西村)「堤防が決壊していないのにあっという間にパンクしてしまう」ということが、絵本でどのように描かれていくのでしょう。後さんは、元々絵本を書く仕事をしていたのですか。
 
後)絵本は初めてです。専門は地質学です。2011年の紀伊半島豪雨の後に、地盤災害の合同調査が3つの県で編成されました。合同調査団のメンバーに加わり、現地調査をしたり、報告をまとめたりしました。それをベースに、「紀伊半島大荒れ」という本を執筆。その一部を絵本にしました。
 
西村)「川がパンクしちゃった!もりのがっこうとどうぶつたち」の朗読をお届けします。どうぞお聞きください。
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「川がパンクしちゃった!もりのがっこうとどうぶつたち」
 
「ざあ ざあ ざあ、雨が ふる。
あきずに ざあ ざあ ふりつづく。
だけど、小川は あふれてない。
お山も どっしり そこにある」
 
もう なん日も 雨が やみません。
でも、だれかが そう うたいだすと、
森のがっこうの みんなは
ほっとしました。
「雨も きっと あしたには やむよね」
 
ところが、 おしごとででかけていた
こうちょうせんせいの ふくろうが、もどってくると さけびました。
 
「みなさん、にげましょう!
もうじき そばの小川が あふれます!
くわしいことは あとで はなします!
もっと たかいところへ にげましょう!」
 
せんせいの かおは しんけん そのもの。
 
「きっと なにか あったんだ......」
 
以下略
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西村)後さんはなぜこの本を企画したのでしょうか。
 
後)3年前に和歌山県新宮市の幼稚園で、幼稚園児に減災学習会を開催したことがきっかけです。寸劇風に水害の話をしたところ、子どもたちが真剣な眼差しで聞いてくれて、質問もありました。「お父さんとお母さんがいないときにこういうことになったらどうしたら良いですか」と。
 
西村)子どもたちはそれが一番不安なんですね。
 
後)「隣近所の大人の人を頼るんだよ」「おじちゃん助けて!おばちゃん助けて!と言ってね」と答えました。
 
西村)隣近所の大人たちが冷静になれないかもしれません。この絵本で知らなければいけないと感じました。
 
後)子どもたちの感覚、感性に訴える防災教育が必要だと感じたんです。寸劇のまま中途半端で終わらせるのではなく、全国で普遍的に使えるものができないかと考えて絵本にしました。
 
西村)2011年の紀伊半島豪雨での経験や調査を絵本に盛り込んだとのこと。和歌山のみなさんは、紀伊半島豪雨について語り継ぎをしているのでしょうか。
 
後)語り継ぎをしていますが、みなさん年齢を重ねています。経験していない人や当時は幼かった人も多く、正しくは知りません。救助活動をしたことがない町や県の職員が増えています。
 
西村)絵本を通して伝えていくことはとても大切ですね。これまでに水害をテーマにした絵本は、あったのでしょうか。
 
後)物語になっている水害の絵本は、ほぼないと思います。津波や地震の絵本は東日本大震災がきっかけになって作られるようになりました。
 
西村)新たに紀伊半島号を題材にした絵本を作るとなると、いろいろ工夫した点もあったのでは。
 
後)文を担当した黒川さんは、夢の持てる物語にしたいとこだわりました。「怖い」「汚れる」だけではなく、最後は夢を持てるようなストーリー展開にしたいと。
 
西村)救助に来てくれたシーンがありました。みんなで炊き出しをするシーンも。復興へと進んでいく道のりが描かれていました。
 
後)防災絵本の中には、絵本の形をとっていても土砂災害や水害について解説した解説本のようなものあります。絵を担当した吉田さんもこだわっていて、よく見るとページごとに少しタッチが違います。わたしは、学術的な視点にこだわりました。そのような3つの視点からこの絵本ができました。
 
西村)それぞれのプロが手がけて、わかりやすく、楽しく伝えられるように、希望が持てる絵本にしようと描かれたのですね。だから、絵のタッチについては、川があふれているシーンは、輪郭が太めに描かれています。動物たちが避難所で夜を明かすシーンは、優しいタッチで描かれています。よく見てみると、ウサギの子どもが赤い車のおもちゃを持っていて。「避難所に行くときは車のおもちゃを持っていこう!」と思いました。登場人物は全員動物というのもこだわりですか。
 
後)こだわりです。動物の方が子どもにはうったえることができると思いました。
 
西村)わたしの娘もかわいい動物に惹かれていました。川がパンクする理由もわかりやすく描かれていたので、この絵本を読んだ後に「パパ!なんで川がパンクすると思う?」と夫に言っていました。そんなふうに家族で語り合うきっかけになる。この絵本で子どもたちに一番伝えたいことは何ですか。
 
後)豪雨災害は、少しずつ事態が悪化していくのではなく、ある時点で川があっという間に溢れて、あっという間に避難できなくなります。これを伝えたい。子どもが水害に関する知識を持って、率先して避難者になってくれたら、大人たちも変わると思います。この絵本をきっかけに、親子で、地域で、避難行動につながる会話をしてもらえたらうれしいです。
 
西村)「川がパンクしちゃった!もりのがっこうとどうぶつたち」は、書店やインターネットで購入することができます。みなさん、ぜひご覧ください。