第1528回「阪神・淡路大震災31年【4】~落下物への対策」
ゲスト:アウトドア防災ガイド あんどうりすさん

西村)阪神・淡路大震災31年のシリーズ4回目の特集は落下物への対策です。
きょうは、兵庫県立大学大学院で、家具類の転倒・落下・移動に関する調査・研究をしたアウトドア防災ガイドのあんどうりすさんにスタジオにお越しいただきました。
 
あんどう)よろしくお願いいたします。
 
西村)あんどうさんは、なぜ家具類の転倒・落下・移動に関する調査研究をしたのですか。
 
あんどう)防災のレクチャーをしているときに、「賃貸なので家具固定ができない」という悩みが多かったんです。賃借人でも家具固定できるように、助成金などの政策について研究しているときに、「どれぐらいの人が、どんな家具で亡くなったのか」について調べようしましたが、国はデータを持っていませんでした。家具で何人亡くなったかわからないままでは、論文が書けないので調べました。新聞記事や遺族集、証言集などあらゆるデータを探しました。
 
西村)ひとつひとつ、あんどうさんが調べていったのですか。
 
あんどう)別の先生たちが調べたデータも参考にしました。阪神・淡路大震災については、大阪公立大学の生田先生が約7000件のデータから家具で亡くなった人は33人という数字を出していました。それに加えて阪神・淡路大震災以降の大阪北部地震、熊本地震、北海道胆振東部地震、能登半島地震などの地震も含め、死者が出ている地震についてはすべて調べました。
 
西村)大変だったのではないですか。
 
あんどう)「家具で死なないための対策」を研究しているのに、どれだけの人が家具で死んでいるのかがわからなくて悔しかった。遺族集を読んでいると本当につらくて。何とかしなければという想いでした。
 
西村)この調査をしてどんなことがわかりましたか。
 
あんどう)大きくふたつのことがわかりました。一つは、阪神・淡路大震災以降の人が亡くなった地震で、少なくとも48人が家具の転倒・移動・落下で死亡しているということです。
 
西村)48人もいるのですね。
 
あんどう)そのうち、阪神・淡路大震災以外の死者は15人。15人がどのような家具で亡くなったのかわかりますか。すごくびっくりしました。
 
西村)大きなタンスかなと思いました。
 
あんどう)たんす、食器棚、本棚あたりかなと思いますよね。その内、9人が亡くなった原因は、本の落下だったんです。
 
西村)辞書や子どもの教科書は重いですよね。
 
あんどう)2009年の静岡県内で発生した駿河湾地震(最大震度6弱)で、亡くなった43歳の人は、天井まで積まれた1000冊以上の本や本を入れた衣装ケースが落ちてきて窒息死しました。
 
西村)圧死ではなく窒息死だったのですね。
 
あんどう)本の落下で亡くなった人の死因はほとんどが窒息死だそうです。たくさんの本は人の命を奪うこともあるんです。胆振東部地震でも4人が家具で亡くなっていますが、その内3人が本の落下により亡くなっています。大阪北部地震でも本の落下で亡くなっている人がいます。
 
西村)本は重いので、しっかりと対策をしておかないといけないですね。
 
あんどう)自分の体重と同じくらいの重さのものが体に乗ることによって、呼吸ができなくなります。落下対策をしてください。
 
西村)本の落下で死亡した人の年代について、データは出ていますか。
 
あんどう)本の落下によって亡くなった9人のうち8人が30~50代。若い人たちが多いです。震度6強以上になるとたんすが一緒に倒れてくるので、家具による圧死が多くなりますが、震度5弱~6弱でも本の落下だけで亡くなってしまいます。
 
西村)震度5弱でも本の下敷きになって亡くなってしまうのですね。
 
あんどう)寝ている部屋には、落ちてくるものを置かないようしてください。
 
西村)先月、青森でも地震がありました。そのときのデータは出ていますか。
 
あんどう)そのときは図書館で本がたくさん落下しました。過去の地震でも図書館で本の落下がありましたが、夜中の地震が多かったので死者は出ていません。本の固定は非常に難しく、対策をしていても落下してしまいます。
 
西村)昼間に自分が図書館にいるときに地震が起こったらどうしようと思います。
 
あんどう)緊急地震速報がきたら、すぐに本から離れましょう。
 
西村)図書館に行ったら、もし今地震が起こったらどこに逃げるか、子どもたちと話しておいた方がいいですね。
 
あんどう)それはとても大事なこと。寝ている部屋では、本は下の方に置く、ロッカーに入れて扉を締めるなど、本が落下しないように対策をしてください。
 
西村)娘が保育園に通っているのですが、保育や学校現場ではどうですか。
 
あんどう)本が落ちてくることを子どもたちに教育してほしいです。保育園ではタンスの下で子どもが寝ている場合もあります。子どもたちが寝ている部屋には物を置かないようにしましょう。
 
西村)保育園では、避難経路になる階段に本棚があります。本棚の本が全部飛び出してきたら逃げるのが大変だと思います。
 
あんどう)逃げられなくなります。体重と同じ重さの本が体にのると窒息死します。子どもたちの体重は軽いので心配です。
 
西村)どんな対策をしたら良いですか。
 
あんどう)東京消防庁による3つの対策は、「本を減らす」「レイアウトを工夫する」「固定する」です。下の方に重たい物を置く。寝室や移動経路に本を置かない。本棚を固定しているだけでは、本は落下してきてしまう可能性があります。固定をするためにいろいろなグッズがありますが、震度7クラスや長周期の揺れが起きると難しいかもしれません。
 
西村)これを機に本の落下防止対策をしっかりとしていきたいと思います。
 
あんどう)本の落下で亡くなっている人が多く、後世に伝えられていないことがつらかったので、これからもみなさんと一緒に落下物対策を伝えていきたいと思っています。今回、本の落下が原因で亡くなった人には、30~50代や一人暮らしの人が多かったことがわかりました。一人暮らしの人6人全員が本の落下で亡くなっていたんです。発見までに時間がかかっていました。一人暮らしで狭い部屋だった可能性もあります。一人暮らしの人は、ぜひ落下物対策をしてください。
 
西村)あんどうさん、どうもありがとうございました。