オンライン:危機管理アドバイザー 国崎信江さん
西村)新年度がスタートしました。就職や進学などで、この春から一人暮らしを始めたという人も多いのではないでしょうか。
きょうは、危機管理アドバイザーの国崎信江さんに、一人暮らしの備えについて聞きます。
国埼)よろしくお願いいたします。
西村)一人暮らしの人の災害への備えは、何から始めたら良いでしょうか。
国埼)一人暮らしだと、「収納スペースが少ない」「食材を使い切れない」などの理由から、その日食べられる分だけを買う生活をしがちです。でも在庫を持たない暮らしは災害時に不安。非常食に限らず、レトルトカレーやパスタ、シリアル、缶詰、お菓子など長期保存が可能な食べ物を普段から多めに買っておくと安心です。これを"家庭内流通備蓄"といいます。
西村)それは"ローリングストック"のことですか。
国埼)そうです。わたしは25年前からこの方法を社会に発信しています。「普段の食事を多めに買って、食べたら補充する」を繰り返せば、災害時も食べ物に困りません。
西村)国崎さんは自宅でどんなものを備えているのですか。
国埼)わたしは、日頃から果物を多めに用意しています。バナナ、キウイ、みかんなど3種類以上の果物を常備していて、食べたら補充しています。果物は水分もビタミンも取れるし、火も水も使わずにすぐ食べられる非常食の王様です。
西村)わたしも早速真似したいと思います。ほかにも大切な備蓄はありますか。
国埼)食べた後の心配はトイレ。停電でトイレの水が流せない、地震で便器が壊れることもあるもしれません。災害用トイレや除菌スプレー、トイレットペーパー等も忘れずに備えてください。1日の排せつ回数×1週間分は、用意をしておくと安心です。
西村)トイレには明かりも用意しておいた方が良いですか。
国埼)トイレに窓がないこともあります。懐中電灯やランタンを置くのもオススメですが、我が家では蓄電電球を置いています。トイレやお風呂、廊下に蓄電式の電球を置いておくと、停電したら自動的に電気が点くので、停電で真っ暗になってもあわてず行動できると思います。
西村)明かりがあるとないとではかなり変わってきますね。
国埼)日常的に使えて、かつ災害時に役立つものをどんどん揃えましょう。卓上のカセットコンロも引っ越しを機に備えてください。電気やガスが止まった場合でも調理ができます。温かいお湯を沸かすこともできます。
西村)一人暮らしの人は、カップラーメンをストックしている人も多いと思います。
国埼)卓上のカセットコンロがあれば、お湯を沸かすことができるので、災害時もカップ麺を食べることができます。
西村)水もしっかり用意しておいた方が良いですね。
国埼)スマホ用のモバイルバッテリー、可能であれば小型のポータブル電源があると良いです。若い人はテレビを置かずに、スマホのみで情報を取ることもあると聞いています。スマートフォンは災害時の大事な情報源なので、スマートフォンの充電用にモバイルバッテリーやポータブル電源があると安心。
西村)ラジオも今はスマホで聞いている時代なので、情報を得るためにもスマホは重要ですね。食料・水・トイレは何日分ぐらい備えたら良いですか。
国埼)多めに備蓄しましょう。少なくとも3日分といわれていますが、わたしは過去の被災地における支援の活動の経験から、1週間~10日分、それ以上あっても良いと思っています。3日ぐらいしたら救援が来て物資が届くと言われていますが、道路の事情等でなかなか物資が届かないこともあります。能登半島地震では、十分に物資が届くまで2~3週間かかったところも。さらに孤立する場所では、十分な備えをしておかないと安心して過ごせません。せめて1週間~10日分。我が家は1ヶ月分揃えています。
西村)1ヶ月分となると、かなりの量になるのでは。
国埼)まず冷蔵庫の中にあるもの、長期保存できる米やパスタの量をチェックしてください。普段備えているものだけで2週間分くらいあることに気づきます。一人暮らしなら、今の段階では備えが足りないこともあるかも知れませんが、これからちょっとずつ多めに買って備蓄を増やすことを心がけてください。
西村)ちょっと多めに買い置きをしておくだけで、「今日は手抜きをしたい」「今日は買い物に行けない」という日も安心ですね。ほかにはどのような備えが必要ですか。
国埼)家具の置き方も工夫してください。ベッドに倒れかかる位置に家具や本棚等を置かない。玄関につながる避難導線に物を置かない。
西村)どういうポイントに気をつけたら良いですか。
国埼)扉の近くに物を置くと、地震の揺れで物が倒れたら、閉じ込められてしまいます。入口付近にはできるだけ倒れそうな物を置かないでください。
西村)玄関に大きな姿見鏡を置いている家もありますね。
国埼)玄関に姿見があると、みだしなみのチェックに便利ですが、倒れないようにワイヤーをかけて固定をするなどの工夫をしましょう。
西村)ほかの部屋についてはいかがでしょうか。
国埼)トイレや入浴時に地震が起きると、閉じ込めにあう恐れがあります。一人暮らしの場合は外からの助けを待つことができないかもしれません。冬場に閉じ込められると低体温症になる危険性も。トイレのドアや鍵は閉めなくてもいいです。浴室には、防災用の笛や防水対策をしたスマホを持ち込むなど、閉じ込めに備えてください。
西村)そこまで考えたことはありませんでした。自分がケガをしても、助けに来てもらえずにそのままになってしまうことが一番怖いですね。
国埼)浴槽で閉じ込められたときは、裸なのでバスローブとかタオルとか羽織れるものも置いておくと良いと思います。
西村)一人暮らしだと被災したことを周りに伝えられない場合もあると思います。
国埼)災害時に探してくれる人をあらかじめ作っておくことが大切です。地域やマンションの防災訓練に参加して、いざというときに助けてもらえる人間関係を作っておく。気にかけてくれる人が近所にいるだけで、災害時の不安は軽減されます。
西村)単身用のマンションでは、防災訓練が行われてないこともあるかもしれませんし、仕事の都合で防災訓練になかなか参加できない人もいるかもしれません。そういうときはどうしたら良いですか。
国埼)わたしが推奨しているのは、近所になじみのお店を作ること。地元の人が経営している居酒屋、カフェ、コンビニ、お花屋さん、クリーニング店などで普段から雑談をして良い関係を作っておく。店主さんと仲良くしておくことで、いざというときに助けてもらえる可能性を高める。災害への備えを十分にして新生活を楽しんでください。
西村)素敵な方法ですね。でも、初対面の人と話すことが苦手な人もいると思いますが、どんなことから始めれば良いですか。
国埼)行きつけのお店で、「また来ました」「いつも美味しいですね」「ここのコーヒー好きなんです」など毎回ちょっと一言添えることで、会話が弾むと思います。ちょっとずつ会話を広げていくことを意識してみてください。
西村)ちょっとした一言で、人柄が見えるから会話も楽しくなりますね。そのようなつながりを作っておくとどのようなメリットがありますか。
国埼)相手が信頼できると判断した場合は、「わたしは近くのマンションに住んでいます」ということを伝えて、「災害が起きたときに連絡してくれるとうれしい」と話をしておくと安心です。
西村)具体的に住んでいる場所を伝えたり、SOSを出したりすることは大切ですね。引っ越したばかりのときや見知らぬ土地で災害にあった場合、情報を得るにはどうしたら良いですか。
国埼)災害時には、情報がなくて不安になる人が多いと思います。デマや誤った情報に振り回されないこと。行政や地域の自主防災組織に状況を聞いたり、避難所に掲示されている情報を入手したり、避難所でラジオやスマートフォンで情報を得ている人に状況を聞いてみるのも大切なことだと思います。
西村)国崎さんどうもありがとうございました。
