第1533回「災害時に役立つ常備薬」
ゲスト:MBSお天気部 気象予報士 林保捺美さん

西村)きょうは、災害時に役立つ常備薬についてお伝えします。
ゲストは、MBSお天気部の気象予報士で薬剤師と防災士の資格も持つ林保捺美さんです。
 
林)よろしくお願いいたします。
 
西村)災害時は、医療機関にかかりにくくなるので、薬の備えも必要ですね。一昨年発生した能登半島地震では、災害関連死が直接死の2倍以上になりました。薬剤師としてどのように思われましたか。
 
林)せっかく命が助かっても、その後の避難生活の中で命を失うことは、とてももったいないことだと感じています。災害時に、避難先で体調を崩して亡くなる災害関連死を減らしていけたらと思います。
 
西村)災害時はいつもと違った状況に陥るので、持病がある人は心配ですね。
 
林)高血圧の人は災害時に血圧が上がりやすくなります。災害時は、体調の変化が起きやすいです。災害時は、いつものように医療機関を受診できない状況に陥る可能性も。薬の流通が滞ってしまう恐れもあるので、薬を備えておくことが大切です。
 
西村)どんな薬を備えたら良いですか。
 
林)持病の有無で変わりますが、慢性の病気を持っている人は、まずは病院でもらう処方薬をきちんと備えてください。最低3日分のお薬を備えてください。できれば1週間分あれば安心ですが、患者さんの中には、毎回病院に行くたびに病気の状態が変わる人もいるので、その人に合った備え方が大切。薬を備えるときは医師への相談も欠かせません。
 
西村)林さんは、備えている薬はありますか。
 
林)わたしは子どもの頃から気管支喘息を持っていて、幼い頃は毎週病院に行くほどでした。大人になって改善されていますが、日常から発作止めの薬を必ず持ち歩くようにしています。狭心症、てんかん、精神薬などは必ず備えてください。
 
西村)薬は、主治医に相談したらもらえるのでしょうか。
 
林)災害時は、病院の予約をしている日に必ず行けるかわからないので、日頃から余分にもらっておくことが大切です。
 
西村)「備えとして多めに持っておきたいので、多く出してもらえますか」という相談したら良いですか。
 
林)3ヶ月ぐらい長期で出せる薬もあります。しかし、抗精神病薬などは期限があるものも。医師への相談が必要です。
 
西村)わたしは花粉症なので、先日耳鼻科に行ったときに多めに薬を出してもらいました。そんなふうに相談してみることが大切ですね。
 
林)長期でもらったとしても、体調が途中で変化してしまった場合は、すぐに病院に行って、その都度自分に合った薬を飲んでください。
 
西村)持病がない人でも薬を備えておいた方が良いですか。
 
林)もちろん備えておいた方が良いです。環境が悪い避難生活では、健康な人もストレスがたまり、免疫力が低下して風邪をひきやすくなります。市販薬を備えておいてください。具体的にどんな薬を備えておけば良いのか。風邪のウイルスは、200種類以上あるんです。
 
西村)そんなにあるんですか。
 
林)避難所は体育館などすごく密閉された空間なので、感染症が流行りやすくなります。
 
西村)寒いと窓を開ける機会も少なくなりそう。
 
林)ウイルスは、低温と乾燥で増殖します。風邪薬を備えておくことが大切ですが、風邪にはいろんな症状がありますよね。
 
西村)頭痛、鼻水、咳など...。
 
林)いろんな症状に対応できる総合風邪薬がおすすめです。あとは、解熱鎮痛剤。熱を下げる、痛みを取るお薬です。例えばロキソプロフェン、イブプロフェンなどがあります。このお薬には注意点があります。大人は大丈夫ですが、子どもや妊婦はアセトアミノフェンという成分が良いです。
 
西村)なぜですか。
 
林)子どもや妊婦は、副作用が発生することがあるからです。胃に優しいアセトアミノフェンを使いましょう。大人は、ロキソニンでもアセトアミノフェンでもどちらを使ってもOKです。
 
西村)子どもや妊婦など胃に負担をかけたくない人は、アセトアミノフェンが良いのですね。
 
林)はい。例えばカロナールとか。胃腸を壊しまうことがあるので、胃と腸それぞれに対応できる薬を備えてください。胃が痛い、もしくは吐き気がするときは、胃に作用する薬を。下痢や便秘には、腸に作用する薬を用意しておいてください。
 
西村)それぞれ買い揃えておくと良いですね。
 
林)皮膚の薬もあれば良いですね。乾燥すると皮膚が荒れるので、保湿剤や炎症を抑えるステロイド剤も備えておきましょう。
 
西村)わたしも子どもも皮膚が弱いので、よく皮膚の薬を塗っています。日頃からどんな薬が合うか試しておくのも大切ですね。
 
林)その通りです。急に使うと合わない可能性もありますので、日頃から使ってみることも大切です。
 
西村)災害時には、胃腸炎も流行るのではないかと心配です。胃腸炎に関して、薬を飲むときの注意ポイントはありますか。
 
林)ノロウイルスなどウイルス性の胃腸炎の場合は、下痢や嘔吐の症状があります。そのとき下痢止めを使って下痢を止めるのはNGです。ノロウイルスに感染すると、体外にウイルスを排出しようとして下痢が起こります。それを無理やり止めてしまうと、体内にウイルスを残してしまうことになるので、我慢して便を出してしまうことが大事。体は脱水症状になってしまうので、経口補水液などで水分補給をしてください。
 
西村)経口補水液も最近いろいろな種類がありますよね。
 
林)経口補水液は、人の体液と同じような組成になっています。経口補水液は、脱水症状を防ぐことができるので、日頃から備えておきましょう。夏場は、熱中症対策にも役立つと思います。
 
西村)薬剤師の視点から見て、薬以外にも備えておくと良いものはありますか。
 
林)感染対策のためのマスク、アルコール除菌シート。避難所で感染症を流行らせないようにマスクをしましょう。熱が出ていないか確認するために、体温計も備えておいてください。季節に合った備えも必要。春は花粉症の薬、夏から秋にかけては虫刺されの薬など。絶対に備えておいて欲しいものは簡易トイレです。避難所では、たくさんの人がトイレを使うので、衛生状態が悪くなり、感染症が流行りやすくなります。仮設トイレの設置に時間がかかることもあるので、簡易トイレは備えておいてほしいです。
 
西村)簡易トイレは、避難所はもちろん、家でも使うことができます。非常用持ち出し袋用と家用と両方備えておきたいですね。ほかに薬以外に備えておくと良いものはありますか。
 
林)口の中の健康も保ってほしいです。口のケアが不十分だと病気が発生することがあります。阪神・淡路大震災では、肺炎で亡くなった方が多く、誤嚥性肺炎で亡くなった人がたくさんいました。口の中の菌が気道を通って、肺にウイルスが到達してしまうと、炎症が起きてしまうのです。
 
西村)だから口のケアが必要なのですね。どんなものを備えておくと良いですか。
 
林)災害時は水が使えなくなることがあるので、水なしでケアできる歯磨きシートがおすすめ。特に高齢者は口の嚥下機能も弱まっているので、誤嚥性肺炎起きやすい。歯ブラシや歯磨き粉とあわせて歯磨きシートも備えておきましょう。
 
西村)改めて災害時の薬の使い方について教えてください。
 
林)薬は使い方、量によっては、薬にも毒にもなります。間違えた服用の仕方をすると、体にとって悪い影響が出てきてしまう。緊急時、災害時だからといって、量を増やしたり、間違ったのみ方をしたりしないことが大切。自己判断は避けましょう。
 
西村)病院から処方された薬と市販薬を一緒に持っているときは、どんな注意が必要ですか。
 
林)処方薬と市販薬で成分が重複するときがあります。相性の悪い薬もあるので、処方薬を持っている人は、市販薬を薬局で買うときに、薬剤師さんに飲み合わせを確認した上で購入し、備えるようにしましょう。
 
西村)自分が飲んでいる薬の成分をきちんと知っておかないといけないですね。
 
林)成分を全て把握することは難しいと思うので、「お薬手帳」を必ず持っておいてください。薬の名前を把握していたとしても、10mm、20mmなど容量に違いがあることも。そこまで完璧に把握している人はなかなかいないと思います。「お薬手帳」があれば、自分が今、どんな薬をのんでいるのか、過去にどんな薬をのんできたのかがすべてわかります。副作用歴やアレルギー歴のメモも用意しておきましょう。
 
西村)そうしておくと完璧ですね。もし避難所で薬が足りなくなった場合、「お薬手帳」があれば、医師が来たときにきちんと伝えられますね。
 
林)「お薬手帳」がないと医療が入っても、薬が処方できない状況になりかねません。薬情(薬の写真やのみ方が記載された紙)を備えておくのも良いです。
 
西村)お薬手帳と薬情、アレルギーや副作用歴のメモも一緒に備えておきましょう。林さんありがとうございました。