オンライン:東北大学災害科学国際研究所 准教授 佐藤翔輔さん
西村)寒い日が続いています。こんな時期に地震が起こったらどうしたら良いのでしょうか。阪神・淡路大震災や能登半島地震は1月、東日本大震災は3月に発生。寒い時期の避難になりました。去年12月の青森県東方沖地震でも、気温0℃に近い寒い深夜にたくさんの人が高台へ避難しました。
きょうは、寒い時期の避難について、東北大学 災害科学国際研究所 准教授 佐藤翔輔さんに聞きます。
佐藤)よろしくお願いいたします。
西村)真冬に地震が起きたらどんな状況に陥るのでしょうか。
佐藤)建物が壊れなくても、ライフラインが止まってしまうことがあります。電気が止まれば、エアコンや電気ストーブ、ホットカーペットなどが使えなくなります。ガスが止まれば、ガスファンヒーターも使えません。暖房器具が使えない状況になります。また、コンロや電気ポットも使えないので、温かい食べ物も食べられなくなります。特に低体温症には注意が必要。ずっと寒い環境にいると、体の中心部の温度が下がり、重度の場合は昏睡状態、最悪の場合は心拍停止に至ってしまいます。
西村)恐ろしいですね。
佐藤)東日本大震災では、宮城県内だけで約20人が低体温症で亡くなっています。
西村)命を守ることができても亡くなってしまった人が20人もいるのですね。低体温症の初期症状は?
佐藤)初期は体がガタガタ震えて、その後、血の巡りが悪くなり、昏睡状態になったり、呼吸ができなくなったりします。
西村)低体温症になりやすい人もいるのですか。
佐藤)高齢者は低体温症になりやすいと思います。地震、津波からの避難で、浸水で水をかぶってしまった人がよく低体温症になります。東日本大震災では、津波から命は守られたけど、濡れたままの状態でいて低体温症になり、亡くなった人がたくさんいました。
西村)東日本大震災では、木に捕まって何時間もしのいでいたという人の話を聞いたことがあります。冬場の避難はどのような困難があるのでしょうか。
佐藤)寒さも大敵ですが、移動そのものが大変。雪が降る地域では、雪が降れば積雪が道を阻み、雪が降っていなくても道路が凍結します。歩行でも車でも移動に時間がかかってしまいます。
西村)さらに夜は真っ暗ですしね。
佐藤)冬に青森市内で移動にかかる時間を検証してみたことがあるのですが、避難場所に行くまでに普段の2倍ぐらいの時間がかかりました。
西村)寒い中、もし夜に地震が発生したら、路面が凍結しているかもしれません。真っ暗の中、寝起きで避難することになりますね。なんとか避難できたとして、その先はどうなりますか。
佐藤)東北地方では、これまで寒い時期に地震・津波が頻発したので、避難所の対応がかなり進んでいます。具体的には、毛布の数が増えたり、新たな暖房器具が設置されたりしています。しかし、数に限りがあるので、避難者全員が十分に暖が取れるというわけではありません。
西村)地震を経験していない地域は対策が足りない可能性も?
佐藤)おそらく多くの自治体では、避難所に暖房や毛布が十分ないと思います。避難所の体育館は、すごく天井が高いですよね。
西村)ただでさえ寒いイメージがあります。
佐藤)温かい空気は上に逃げ、床がとても冷たいので、どんどん体温が奪われてしまいます。高齢者など寒さに弱い人は、暖房がある教室に優先的に移動してもらう配慮も大事。
西村)高齢者、病気を抱えてる人、妊婦など配慮が必要な人がいます。前もって決めておくと良いですね。避難するとき建物に入れないこともありますよね。
佐藤)青森の地震では、避難所がいっぱいで、多くの人が車中避難をしたと聞いています。そのような場合、注意しなければいけないのが、エコノミークラス症候群。同じ姿勢が続くとエコノミークラス症候群になり、最悪の場合死亡してしまうケースもあります。
西村)熊本地震のときもよく聞きました。適度な運動が必要ですね。
佐藤)たまに外に出て少し歩くだけでも変わります。体動かすことを心掛けてください。
西村)15年前の東日本大震災のとき、避難所に行く前に、高台で何日も過ごしたという人の話を聞いたことがあります。佐藤さんが会った人の中にも、冬の避難で困ったという人はいましたか。
佐藤)建物が何もない高台にいた人が多数いました。その人たちは、近場にあるもので焚き火をして、暖を取ったそうです。やったことがないとできないと思いますので、キャンプなどで、そのような技術を身につけることも大事だと思います。
西村)キャンプだったら、楽しみながら暖を取る術も学ぶことができそう。真冬の避難はいろいろな備えが必要ですね。東日本大震災のときはどうでしたか。
佐藤)いくつか避難所を回りましたが、たくさんの人が床に座っていました。何も敷かないで座ってる人もたくさんいました。床は冷たいので、そこに触れている面積が大きければ大きいほど体温が奪われてしまいます。ダンボールやブルーシートなど、床と自分の間に熱をシャットダウンするものを敷いて、なるべく体から体温が逃げない工夫をすることが重要です。
西村)毛布以外にも備えておくと良いものはありますか。
佐藤)ダンボールも使えますよ。学校にあるブルーシートやテントの帆も使えます。面で広げられるものなら重ねれば重ねるほど、熱を遮断することができます。
西村)在宅避難でも使えそうですね。
佐藤)ライフラインが止まると、暖房器具が使えなくなるので、電気・ガスを使わずに体を保温することになります。家の中でも衣服・毛布・カイロなどの防寒対策が必要です。
西村)改めて真冬の避難、避難後には、どんな備えが必要でしょうか。
佐藤)避難中も避難後も、体温が奪われないように防寒をしっかりして、小さい毛布やカイロを準備しておきましょう。
西村)上着が必要ですね。
佐藤)急いで避難するとき、後のことも考えて、厚手の上着を取るアクションも必要。非常持ち出し袋を枕の近くのも良いと思います。
西村)食事の面はどうですか。
佐藤)温かいものが食べられるようにしておくこと。ライフラインが止まると、コンロや電気ポットが使えなくなる。カセットコンロがあれば、お湯を沸かせるし、温かい料理を作ることもできます。最近、小学生と話す機会があったのですが、今の小学生は、カセットコンロを知らない子もいるそうです。最近は、家庭のコンロがIHになり、鍋を囲む機会が減ったせいもあるかもしれません。カセットコンロは便利なので、一家に1台以上はぜひ備えてください。
西村)カセットコンロとガスボンベ、湯せん可能なポリ袋も備えておくと良いですね。そのほかに心構えはありますか。
佐藤)一度やってみることが大事。避難訓練は、学校や地域で一斉にやるものというイメージがあるかもしれませんが、個人的に訓練をしてもかまいません。時間がある夜に、避難場所まで行ってみても良いと思います。ひとりひとりの単位で一度試してみてください。
西村)やってみないとわからないことがたくさんありそうです。佐藤さんありがとうございました。
