第1544回「被災者の健康を守る"災害用トイレ"」
ゲスト:サンコー 土井誠司さん

西村)地震や台風などの大きな災害が発生し、電気や水道が止まると水洗トイレは使えなくなります。過去の災害でも水が流せなくなった避難所のトイレは、瞬く間に汚物であふれかえり、不衛生な状態が続きました。災害時のトイレ問題は大きな課題です。
きょうは、災害用トイレの普及に取り組んでいる株式会社サンコーの土井誠司さんにスタジオにお越しいただきました。
 
土井)よろしくお願いいたします。
 
西村)サンコーさんはどんな会社ですか。
 
土井)創業1962年、今年で64年目になります。本社は和歌山県海南市にあります。清掃用品やペット用品などを中心に"暮らしをより快適にするもの作り"をコンセプトに、生活用品全般の開発・製造・販売をしています。
 
西村)災害用トイレも販売しているのですか。
 
土井)トイレの問題が社会問題になったのは1995年の阪神・淡路大震災からです。その頃から弊社は携帯トイレを商品化していました。
 
西村)阪神・淡路大震災以前から携帯トイレを販売していたのですね。なぜそんなに前から、携帯トイレを作っていたのですか。
 
土井)約40数年前、マイカーブームや週休2日制の導入によって、アウトドアやレジャーを楽しむ人が増えました。弊社は長時間車で移動するファミリー層に向けて、携帯トイレや折り畳み式の簡易トイレをレジャー用トイレとして商品化していました。阪神・淡路大震災をきっかけに、レジャー用トイレから災害用トイレにシフトチェンジしていったのです。
 
西村)レジャー用も災害用も同じなのですか。
 
土井)同じです。簡易的に組み立てられるトイレ、すぐに用を足せるもの、凝固剤が入っているものなど数種類あります。
 
西村)自宅のトイレでも使うことができるのですね。
 
土井)袋と凝固剤が入ったセット、30回・50回分もあります。オムツのような形で用を足せるものや組み立てタイプもあります。
 
西村)使った後はどうするのですか。
 
土井)各自治体に従って通常のゴミとして廃棄することができます。
 
西村)サンコーさんは、各地の防災イベントなどへの参加をはじめ、災害用トイレの啓発活動に積極的に取り組んでいます。3月に和歌山市民図書館で開催された「凝固剤の体験会」を取材しました。その様子をお聞きください。
 
音声・土井)凝固剤を使ったことはありますか。
 
音声・参加者)ないです。
 
音声・土井)成人の尿は200~400cc。今から尿の代わりに水を入れます。これが凝固剤。この粉末を中にふりかけるだけです。30~40秒ぐらいで固まります。
 
音声・参加者の子ども)1、2、3、4、5...28、29、30!
 
音声・参加者)ちゃんと固まってる。すごい!すごい!
 
音声・参加者の子ども)(固まった水を触って)ゼリーみたい。気持ちいい!
 
音声・参加者)これなら安心ですね。
 
音声・土井)通常ゴミと一緒に捨てられます。試供品を家で使ってみてくださいね。

 
音声・ディレクター)防災トイレを使ったことはありますか。
 
音声・参加者)使ったことないです。
 
音声・ディレクター)凝固剤を固めたことはありますか。
 
音声・参加者)ないです。
 
音声・土井)凝固剤は粉状になっていて、ふりかけるだけ。30~40秒ぐらいで固まります。
 
音声・参加者)思ったより早く固まって驚きました。何かあったときに、初めて使うと思うんですけど...きょう勉強できて良かったです。

 
西村)初めて体験した親子のようすをお届けしました。楽しんでいましたね。
 
土井)お子さまも、楽しく体験していただきました。
 
西村)このスタジオでも凝固剤を固める体験をしました。透明のカップに尿の代わりに水を入れて凝固剤を入れると、白い粒がどんどん広がって、水を包み込んでゼリー状になりました。30~40秒ぐらいで固まります。固まったものが目の前にあるのですが、触ってみるとモチモチしています。ここまでしっかり固まってくれたら捨てやすそう。凝固剤だけではなく、このセットの中には汚物用の黒い袋も入っていますね。
 
土井)袋には使用方法や注意事項を印刷しています。
 
西村)わかりやすいです。便器と便座の間に汚物袋を挟んで、その上に便座を乗せてしっかりと固定。用を足した後は汚物の上にまんべんなく凝固剤をふりかける。最後に汚物袋を取り出して、袋の口をしっかりと結んで廃棄する、と書かれています。体験会では凝固剤を初めて使ったという人もいましたね。
 
土井)啓発活動の一環でイベントや防災講座に参加していますが、「備蓄はしているけど使ったことがない」という人も多いです。災害はいつどこで起こるかわからないので、使い方を知ってもらいたいです。
 
西村)凝固剤に使用期限はありますか。
 
土井)弊社の商品は、開封しない限り半永久的に使用できます。一般的には約10~15年の試用期間が多いです。安心して備蓄できると思います。通常の保存方法なら問題ありません。
 
西村)凝固剤の体験会で、「災害用トイレや凝固剤は備えているけど数が足りない」という人がいました。インタビューをお聞きください。
 
音声・ディレクター)災害用トイレの備えはしていますか。
 
音声・参加者)一応しています。簡易トイレとか凝固剤とか。いくつかは用意しています。
 
音声・土井)1日1人約5回トイレに行くので1週間分で35回分が必要です。
 
音声・参加者)そんなに用意できないですけど...。もしものときは、それぐらいいるんですね。南海トラフもいつ来るかわからないので、最低35個は備えないといけないですね。

 
西村)トイレの回数に応じた備えが必要なのですね。
 
土井)経済産業省や内閣府などの指針では、災害時の備蓄目安は1人1日最低5回トイレに行くと換算して、1週間で35回分。家族4人なら140回分のトイレの備蓄を推奨しています。
 
西村)サンコーさんが積極的に災害用トイレの普及に取り組んでいる理由は何ですか。
 
土井)弊社は和歌山県の企業です。南海トラフに警戒が必要な和歌山県に少しでも役に立てるように、昨年10月に和歌山県と「災害時の物資の調達等に関する協定」を締結しました。災害時に60万回分の携帯トイレを速やかに提供できるように弊社の倉庫に備蓄しています。啓発活動用に試供品を3000回分寄贈しました。災害時、食料や物資はすぐに送られてきますが、食べるとトイレは我慢できません。トイレは健康面で非常に大切。命に関わることです。不衛生なトイレは感染症が蔓延する可能性も。助かった命を避難所生活で失って欲しくないです。
 
西村)トイレが汚いと排泄を我慢して、水分を控えてしまいます。そうすると脱水症状、エコノミークラス症候群の危険もありますね。助かった命を守り、日常を取り戻すためにトイレは大切ですね。
 
土井)日本トイレ協会でトイレの備蓄率を調査しました。2025年の備蓄率は28.8%。これは4分の1程度。4分の3がまだ備蓄されてない状況。8年前は15.5%でした。
 
西村)ちょっと増えてきているのですね。
 
土井)近年の風水害や能登半島地震、南海トラフ地震情報で、8年間で備蓄率は増えていますが、トイレは後回しになりがち。食べ物は我慢できてもトイレは我慢できません。各家庭でポータブル便器やバケツ、ナイロン袋、凝固剤を備蓄していれば、安心で清潔なトイレが確保できます。水や食料と同様に、災害用トイレの必要性を高めていきたい。啓発活動を行っているところです。
 
西村)アウトドアや車で出かけるときに実際に使ってみるのもいいですね。普段の生活で取り入れていきたいと思います。土井さんありがとうございました。