第1548回「今年の暑さと新しい防災気象情報」
ゲスト:MBS気象予報士 前田智宏さん

西村)気象庁は、最高気温が40℃以上の日の名称を「酷暑日(こくしょび)と新たに決定しました。また、先週から「新しい防災気象情報」の運用も始まりました。
きょうは、今年の暑さの傾向と、避難行動の判断材料となる「防災気象情報」について、MBS気象予報士 前田智宏さんに聞きます。
 
前田)よろしくお願いいたします。
 
西村)新たに「酷暑日」という呼び名が決定しました。なぜこの名前が必要になったのですか。
 
前田)近年、暑さが尋常ではないですよね。40度以上の著しい高温が毎年のように観測されています。去年は兵庫県・貝原、丹波市、京都府・福知山市でも40℃を上回り、「猛暑日」(35度以上)という基準では足りなくなってきたので、今回新たに「酷暑日」という新名称が決まりました。
 
西村)「猛暑日」という名称はいつ頃からあるのですか。
 
前田)「猛暑日」は2007年に予報用語として決まりました。気候変動や都市化の影響で、35度以上の高温を表現する言葉が必要になったんです。その年の新語・流行語のトップテンにも入りました。それから20年足らずで、さらに上のランクの言葉を作らないといけなくなりました。
 
西村)どんどん暑さが加速しているのですね。今回、どのように「酷暑日」という名前が決まったのですか。
 
前田)名称募集のアンケートが行われました。みなさんの意見を広く集めようということで、13の案の中から「酷暑日」が選ばれました。ほかには「激暑日」「超猛暑日」「サウナ日」といった案もありました。
 
西村)サウナ日...!蒸し暑いですものね。
 
前田)「自宅待機日」という行動と結びつけた名称もありました。結果的に専門家の意見も踏まえて総合的に判断した結果、「酷暑日」という名前に決まりました。
 
西村)一般公募をすることで普段の会話にも出てきやすくなりますね。
 
前田)みなさんの暑さに対する警戒を一つ高めるきっかけになれば。まとめると、
最高気温25℃以上=夏日(なつび)
最高気温30℃以上=真夏日(まなつび)
最高気温35℃以上=猛暑日(もうしょび)
最高気温40℃以上=酷暑日(こくしょび)
です。また、最低気温が25℃以上=熱帯夜と呼ばれます。最低気温が30℃以上の日も増えてきているので、"スーパー熱帯夜"という言葉も必要になるかも。

 
西村)やはり今年の夏も暑いのですか...。
 
前田)猛暑になりそうです。今年はエルニーニョ現象が発生する見通しもあります。エルニーニョ現象が起きると、一般的に日本は冷夏になりやすいのですが、今年は、エルニーニョ現象が起きても猛暑になりそうです。
 
西村)それはなぜですか。
 
前田)地球温暖化が進んでいるので、ベースの気温自体が高くなっているからです。エルニーニョ現象だけではなく、海水温の影響も受けるので、エルニーニョ=冷夏という公式は当てはまりません。気象庁も6~8月の気温は、全国的に平年より高くなると発表しています。
 
西村)早め早めの暑さ対策が必要ですね。
 
前田)前倒しで暑さが来ています。兵庫県・豊岡で、史上初めて5月に35℃以上の猛暑日が観測されました。
 
西村)熱中症の患者も増えていますか。
 
前田)搬送者数は増えてきています。ジメジメ、ムシムシした暑さになると熱中症のリスクも高まります。水分補給や休憩をしっかり取る、エアコンを取り入れる等を意識してください。
 
西村)先週から「新しい防災気象情報」の運用が始まりました。何がどう変わったのですか。
 
前田)これまでわかりにくかった「防災気象情報」が整理されました。これまでの「警報」「注意報」に加え、近年、気象災害が激しくなり、予測技術が向上したことにより、「特別警報」「土砂災害警戒情報」など、さまざまな情報が追加されました。名称が入り乱れ、「複雑でわかりにくい」という声があったので、今回災害ごとに名称を整理したんです。
 
西村)災害ごとに分けたのですね。どんなふうに分かれているのでしょうか。
 
前田)大雨・河川氾濫・土砂災害・高潮の4種類の災害ごとに分けられ、注意報・警報・特別警報の3種類に危険警報が加わりました。警報の前に"レベル"という形で数字が必ずつきます。レベル2=注意報、レベル3=警報、レベル4=危険警報、レベル5=特別警報という形に。今までレベル4に当たる情報が複雑でしたが、それを危険警報として一律で設けることになりました。
 
西村)なぜこの4種類の情報に整理されたのですか。
 
前田)この4つの災害は、避難行動が伴うもの。いつ、誰が、どのように避難をするかが危険度ごとに変わります。例えば、土砂災害が起こりやすい地域に住んでいる人は、早い段階で避難しなければならない...など。暴風雨、大雪の災害は、誰もが基本的に不要不急の外出を避けることになるのでわかりやすいのですが、この4つの災害は、人によって、住んでいる場所によって行動が変わるので、今回整理されました。
 
西村)自分はどうするべきかがわかりやすくなったのですね。
 
前田)レベルの数字があることで、直感的に危険度を判断できるようになりました。
 
西村)子どもや外国人観光客にも伝えやすくなりそう。
 
前田)数字がつくことによって、長い名称を覚えなくても済みます。レベル4=土砂災害危険警報という長い名称もありますが、レベル4と聞けば、危険が迫っていることがわかる。わたしたちが伝えるときも、これまでは「大雨警報が発表されました」と伝えていたところを、「レベル3の大雨警報が発表されました」と伝えるようになります。危険度イメージしてもらいやすくなると思います。
 
西村)レベルの数字と、わたしたちが取るべき行動を教えてください。
 
前田)レベル3=危険な場所から、高齢者など避難に時間がかかる人は避難を始めてください。レベル4=危険な場所から全員避難。みなさん、このレベル4をしっかりと覚えて意識しておいてください。レベル5になると、既に災害が発生している状況なので、レベル5の情報が出てから避難すると手遅れになってしまうこともあります。レベル4が出たら、「危険な場所からは避難する」と覚えておいてください。
 
西村)レベル5=既に災害が発生している。もう手遅れになっているということなんですね。
 
前田)レベル5は、危険が迫っているので、どこかに移動して避難すると危険な状況。今いる場所でとにかく命を守る最善の行動をとらなければなりません。必ずレベル4の時点で行動を起こすことを意識してください。
 
西村)表には色もついていますね。
 
前田)レベル3=赤色、レベル4=紫色、レベル5=黒色。色も一緒に結びつけてイメージしてください。
 
西村)レベル3(赤色)の高齢者とは、妊婦、障がいのある人、怪我をしている人、幼い子どもと暮らしている人、ペットと一緒に過ごしている人も含まれますね。
 
前田)はい。家族でどの段階で行動をとるかを話し合っておくと良いですね。
 
西村)自分の家族だけではなく、近所に一人暮らしの高齢者がいる場合は、レベル3で声をかけに行きたいと思います。避難に時間がかかる人たちは、レベル3(赤色)で避難する。レベル4(紫色)で危険な場所から全員避難、そしてレベル5(黒色)は目の前に危険が迫っている状態なので、外に出ると危険。家の中で垂直避難をしましょう。手遅れになる前に必ずレベル4(紫色)の時点で、危険な場所から全員避難しましょう。ほかに覚えておくと良いこと、事前にやっておくと良いことはありますか。
 
前田)自分はどのレベルで行動するのか、自分の中に基準を持っておく。住んでいる場所、職場、学校の危険度を、あらかじめハザードマップで確認しておきましょう。
 
西村)ハザードマップの確認の仕方がわからない、今手元にハザードマップがない、という人はどうしたら良いでしょうか。
 
前田)インターネットでも確認することができます。「重ねるハザードマップ」というウェブサイトでは、それぞれのリスクごとに"重ねて"危険な場所を確認できますので、うまく活用してください。同時に、線状降水帯に関する情報も新しくなりました。これまでは半日前に線状降水帯発生の発生を伝えていましたが、今回、直前の予測も出されるようになりました。これも大きな進化。線状降水帯が発生する2~3時間前に発表されます。線状降水帯に関する予測技術も高まってきているので、情報をうまく活用して、これからの大雨台風シーズンを乗り切ってください。
 
西村)最近では、河川のライブカメラもあります。大雨のときに川を見に行くことは、もうしなくて良いですね。
 
前田)そのようなツールをうまく活用するのも大事なことですね。
 
西村)前田さん、どうもありがとうございました。