オンライン:備え・防災アドバイザー/ソナエルワークス代表 高荷智也さん
西村)先週、台風6号が上陸し、新たな防災気象情報が本格的に運用されました。和歌山県では5段階の警戒レベルで最も高い「レベル5 氾濫特別警報」が出ました。それぞれの警戒レベルでどんな避難行動をとれば良いのか。備え・防災アドバイザーで、ソナエルワークス代表の高荷智也さんに聞きます。
高荷)よろしくお願いいたします。
西村)なぜ、新たな防災気象情報が作られたのですか。
高荷)分かりにくかった情報をわかりやすくするためです。これまでは、それぞれの危険を促すカテゴリーごとにどのぐらい危ないのかが良くわからなかった。言葉が整理されていなかったり、該当する情報があったりなかったり。同じ特別警報でもレベル4相当のものもあれば、レベル5相当のものもありました。それを全て整理して、数字で横に並べてわかりやすくしたのが今回の改正です。
西村)どのように改正されたのですか。
高荷)気象庁から注意報や警報が発表されるときは、警戒レベルを表す数字が一緒に発表されるようになりました。具体的には、「レベル2注意報」、「レベル3警報」、新設された「レベル4危険警報」。そして一番危ないのは、「レベル5特別警報」。数字と言葉が全て1対1で横に並んだところが特徴です。
西村)災害の種類も伝えられるようになりましたね。
高荷)今回は4種類の体系別に分けられるようになりました。川の氾濫を知らせる河川氾濫情報、大雨に対する警戒を促す大雨情報、土砂災害の情報、海からの浸水に注意する高潮の情報です。河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮の4種類の言葉にレベルをつけて発表されるようになったので、見た目は非常にわかりやすくなりました。
西村)新しい防災気象情報が先週の台風6号で本格的に運用されましたね。
高荷)気象庁からいろいろな情報がレベル付きで発表されました。確かにわかりやすくなったと思います。今までは、表を良く見なければ、どのぐらい危ないのかが判断できなかった。今回は「レベル4大雨危険警報」などと言葉を聞くだけで、危険な状況を理解できるようになりました。より実践的になったと思います。
西村)それぞれのレベルで具体的にどんな行動すれば良いのか教えてください。まず、「レベル1早期注意情報(白)」、「レベル2注意報(黄)」については、何か行動を起こした方が良いですか。
高荷)レベル1、レベル2は、わたしたち個人が警戒をする必要はありません。会社や学校の防災担当、防災に関わる人が確認する段階。わたしたちは、日頃から防災意識を高く持っておけば、あわてることはありません。
西村)家族で確認しておくことはありますか。
高荷)水害シーズンの前に、住んでいる町のハザードマップを見ておきましょう。自宅にとどまると危ない状況になったら、どこに逃げれば良いのか。避難する必要があるのか。ハザードマップの確認は平時に行ってください。実際に逃げるときには避難所に持っていく防災リュックの中身も点検しておきましょう。
西村)「レベル3警報(赤)」が出たらどのように行動したら良いですか。
高荷)ここからは、わたしたちの行動に関わってきます。「レベル3警報(赤)」「レベル4危険警報(紫)」「レベル5特別警報(黒)」は実際に避難をする段階です。「レベル3警報(赤)」が出たら、高齢者、赤ちゃんがいる家族、妊婦、車椅子に乗っている人、怪我をしている人など、避難に時間がかかる人で、命に危険が生じる可能性がある場所に住んでいる人は、早めに避難を始める。この警戒レベルに紐づく情報は、気象庁の新たな防災気象情報に加えて、もう1種類の情報があるんです。それは、みなさんがお住まいの自治体、市町村から発表される避難情報。これは、わたしたちに具体的に避難行動を促すための情報として発表されるものです。「レベル3警報(赤)」の場合は、「高齢者等避難」という名称の情報が市町村から発表されます。今回、気象庁の情報改編にあたって、理解してほしいことがあります。気象庁から発表される情報はあくまでも自然現象に関する評価ということ。大雨・高潮・土砂災害などの危険度を知らせるのが気象庁から発表される注意報や警報。それを受けて、避難の呼びかけをするのは、気象庁ではなく自治体です。気象庁から出てくる情報はあくまでも参考にして、自分が逃げるかどうかの判断は自治体から発表される避難情報を確認してください。「レベル3警報(赤)」の場合は、自治体から「高齢者等避難」が出たら早めに行動を始める、と覚えておいてください。2種類の発表元があることを知っておいてほしいです。
西村)自治体の情報も必ずチェックしておきましょう。このレベル3のときは車避難でも良いですか。
高荷)「高齢者等避難」の状況では、それほど雨風が強くなっていない可能性があるので、車やタクシーを使うなど、一番移動しやすい方法で避難をすれば大丈夫です。自治体等によっては、まだそれほど雨が強くなくても、雨風のピークが夜中になる場合、日が沈む前に早めに情報を出して、避難を促す場合もあります。
西村)「レベル4危険警報(紫)」が出たらどのように行動したら良いですか。
高荷)気象庁からは、「レベル4危険警報(紫)」という名称で発表されますが、実際に気にしてほしいのは、自治体から発表される「避難指示」という言葉。「避難指示」が出たら、「その場にとどまり続けると命に危険が生じる人は全員逃げて」という意味です。洪水で3m沈む、土砂災害の直撃を受ける場所に住んでいる人、一戸建てやマンションの低層階に住んでいる人は、その場にとどまると命に危険が生じるので「避難指示」が出たら逃げてください。一方、ハザードマップで色がついていても、マンションの高層階に住んでいて、自宅にとどまっていれば命に危険が生じない場合は、無理に避難所に逃げる必要はありません。その場にとどまることができるなら、「避難指示」が出ても自宅にとどまってください。ただ、停電・断水が起こる可能性はあるので、備蓄品の準備は必ず行っておきましょう。
西村)「我が家は大丈夫だろう」と思っていたら、実は危険な場所で、大雨の中避難しないといけなくなったら大変ですね。
高荷)大雨で道路が冠水している、崖が崩れ始めているなどの状況で逃げるのは本当に危ないです。命に危険が生じます。極力足元が沈む前に逃げて、早めに避難を完了してください。とはいえ、どうしても避難が遅れて、危ない状況の中、歩いて逃げなければいけない場合もあり得ます。そんなときは、装備品をきちんと身につけて逃げる準備をしてください。
西村)どんなものを準備しておくと良いですか。
高荷)足元が不安定な状況で避難をするときは、できるだけ両手を空けましょう。雨具は傘ではなく、両手が自由になるレインコート上下を身につける。両手が荷物でふさがってしまうと安全行動を取れなくなるので、リュックを背負って両手を自由にしましょう。どうしても夜中に逃げなければならない場合、懐中電灯を手に持つのではなく、ヘッドライト、ネックライトを使用して両手を自由にするのがポイント。開いた両手は、できれば片方の手に長い棒を持ってください。傘や杖、登山やスキー用のストック、カメラの一脚とか何でもいいので棒状のものを足元に突き出しながら歩いてください。マンホールの蓋が外れて穴が開いてないか、側溝がないか、道路と用水路の境界に注意してください。片方の手に棒を持って足元を確認しながら歩かなければ、穴に落ちて命を落とすことがあります。体が濡れたまま体を乾すことができなければ、夏でも凍死してしまう恐れがあります。袋に入れた着替えやタオルをたくさん持っておきましょう。
西村)もう一つ一番上の「レベル5特別警報(黒)」は、災害が発生している状態です。この情報が出たらどのように行動したら良いですか。
高荷)気象庁からは「レベル5特別警報(黒)」が出ます。自治体からは「緊急安全確保」という名前の情報が出ます。「緊急安全確保」の中には、「避難」という言葉が入っていません。文字通り、緊急に安全を確保する段階。どこかで災害が起こっている状態なので、迂闊に避難を始めると、命を落としてしまうかもしれません。家の中で一番高い場所、ベランダや屋根などによじ登る、レジャー用の浮き輪を膨らませて掴まる、明るい色の服を着る、ライトを振るなどして救助を待つ段階。「自分がいる場所で、最大限命を守る行動をとる」これがレベル5です。自治体から「緊急安全確保」が出たら、その場で情報収集をしながら、どのような行動をとれば命を守れるか、救助を待つことができるかを考える段階です。必ず「避難指示」が出たタイミングで避難をしておきましょう。
西村)改めてリスナーのみなさんに伝えたいことはありますか。
高荷)いきなりやってくる地震とは違い、水害は数日前、数時間前から情報が出続けます。逃げれば必ず命を守ることができます。近年起こっている水害の被害のほとんどは、ハザードマップ通りに起こっています。ハザードマップを見て危険な場所に住んでいる場合には、逃げろと言われたら逃げること。これで命を守ることができます。ためらわずに避難をしてほしいと思います。
西村)高荷さん、どうもありがとうございました。
