オンライン:香川大学 准教授 竹之内健介さん
西村)台風や豪雨などの災害に見舞われた際、避難すべきかどうか、判断に迷うことがあるかもしれません。
きょうは、そんな避難の判断となる基準「避難スイッチ」を提唱する香川大学 准教授 竹之内健介さんにお話を聞きます。
竹之内)よろしくお願いいたします。
西村)「避難スイッチ」とはどんなスイッチですか。
竹之内)今年も大雨が降るシーズンとなり、先日も台風6号が日本にやってきました。みなさんは、避難について考えていますか。避難は大変ですし、いつ避難するか悩んでしまう人も多いと思います。「避難スイッチ」とは、避難のタイミングをあらかじめみんなで決めておくことです。
西村)なぜ必要なんでしょうか。
竹之内)日本では毎年各地で、大雨による災害が起きています。「まさかこんなことになるとは思わなかった」「こんなこと初めてだ」という言葉が多く聞かれます。危険度を理解していても、いざそのような状況になると「本当に危ないのかな」「本当に避難しないといけないのかな」と悩んでしまう人が多いと思います。前もって「避難スイッチ」を決めておくと、逃げ遅れを防ぐことができます。
西村)先日の台風6号で和歌山県に大雨が降り、大きな被害が出ましたね。
竹之内)新しい防災気象情報も始まり、今回の台風は注目されました。思ったより雨が降った地域、意外に大丈夫だった地域があるかと思います。台風は予測はされていても、危険度は毎回変わります。台風が来ることはわかっていたと思いますが、どんなことになるのか、どんな台風なのかを考えたかどうかが、大切なポイントになると思います。
西村)和歌山県で雨風を受けた人はもちろん、遠く離れた場所に住んでいたとしても、自分だったらどのタイミングで避難するのかを想像して知ることはとても大切ですね。避難指示が出ても避難しない人は多いのでしょうか。
竹之内)避難率数%という場合もあります。10~20%が多いです。特定の地域に対して出された避難指示では、避難率80~90%になるときもありますが、どこで災害が起きるかわからない状況だと避難率は低いですね。
西村)避難の判断となる「避難スイッチ」はどのように決めれば良いのでしょうか。
竹之内)大きく3つのポイントがあります。1つ目は、周りの様子や環境の変化。例えば、「普段見ている川が見たこともないような水量になっている」「裏山からいつもと違う音がする」などいつもと様子が違う場合は、避難を考える上で重要なタイミングになると思います。2つ目は周りの人からの呼びかけです。「近所の人が避難を始めている」「消防団やコミュニティの人々に声をかけられた」という状況は、重要な「避難スイッチ」になります。3つ目は行政からの避難指示を活用すること。土砂災害に関しては、山の様子がいつもと違う場合は、かなり危ない状況。土砂災害に備えている地域では、山から流れてくる水量、濁り具合を参考にしながら、みんなで声を掛け合って避難をしている地域もあります。
西村)みんなで声を掛け合うことは大切ですね。川を見に行きたくなる人もいるかもしれません。
竹之内)最近では、さまざまな技術を使った情報があります。川には、水位計がつけられていますし、カメラも性能が良くなっていて、夜間でも昼間のように見えるカメラがたくさん設置されています。川は見にいかずに、そのような情報を利用しましょう。最近ではスマホのアプリサービスなどを使って情報共有をしている地域もあります。
西村)近所の住民や消防団から声をかけられて逃げて、命が救われた例もありますか。
竹之内)先ほどの3つのポイントは、避難に成功した地域の人々を調査した結果です。この3つが、「避難スイッチ」として非常に重要。3つのポイントをうまくいかしながら、避難に成功している事例はたくさんあります。
西村)それはどこの地域ですか。
竹之内)メディアの報道では、被害があったところが着目されますが、いろんな方法でうまく避難できている事例も全国にあります。周りの環境の変化、周りからの呼び掛け、避難情報をうまく活用して避難していることがわかっています。西村さんならどの情報を一番参考にしますか。
西村)わたしは2です。ご近所さんや消防団の人に言われたら「逃げなきゃ!」と思います。
竹之内)周りの人から言われると、一緒に避難しようと思いますよね。一方、都市部では、周りの人と交流がない人も多く、周りからの呼びかけを「避難スイッチ」にすることが難しいかもしれません。そういう場合は、公的な情報を活用して、避難ルートを話し合っておきましょう。都市部は、ビルに囲まれているため、近くの川について知らないことも多い。自分の周りにどんな川があるのか、どんな危険があるのかを確認しておきましょう。それぞれの地域、コミュニティによって、自分なら何を「避難スイッチ」にすると一番いいのかを考えておいてください。
西村)どんな「避難スイッチ」がありますか。
竹之内)アナログですが川の石です。「ある石が隠れたらみんなで声かけをする」というルール作りをしてる地域もあります。みんなが知っているものを目印にするのは重要なポイントです。最近ではさまざまな観測技術が活用されています。川の浸水センサーが起動したら、「避難スイッチ」として避難を開始する地域もあります。
西村)地域ごとに取り組みの差があるのですね。
竹之内)一番重要なのは、外からの情報だけに頼るのではなく、自分たちの地域、家族では何を「避難スイッチ」とするのかをしっかりと考えることが大切です。ハザードマップで自分の住んでいる場所、地域の危険度、避難先を確認しておくことが一番重要です。
西村)避難する必要のある人は、散歩をしながら、周りを見つつ、避難場所まで歩いてみるのもいですね。
竹之内)非常に良いと思います。子どもと散歩して、川の様子を見ながら、「この川は大雨のとき、どんなふうになるのかな」と災害時をイメージしておくことも「避難スイッチ」の参考になると思います。
西村)我が家は小さい子どもがいたり、母が車椅子に乗っていたりするので、雨の中避難することを迷って、避難が夜中になってしまいそう。夜中に避難指示が出た場合、避難を始めても良いのでしょうか。
竹之内)避難指示が出るということは、行政から避難が求められている状況。かなり危険な状況なので、家庭でどうするかをしっかり考えておく必要があります。夜危ないのか、昼危ないのか。避難や準備に時間がかかる家庭もあると思います。状況に合わせで「避難スイッチ」も少し変えていくことが必要。最近では「明日までの警報等の見通し」といって、台風が来ているときに、どの時間に避難指示が出るのかをあらかじめ伝えてくれる新情報もあります。新たな防災気象情報だけではなく、そのような新しい情報もたくさんあるので、それらを活用してください。夜危なくなりそうだったら、早めに避難するなど、公的な情報をうまく活用して、3つのポイントをうまく組み合わせて考えてください。
西村)「明日までの警報等の見通し」はどこを見たらわかるのでしょうか。
竹之内)気象庁のホームページにあります。住んでいる地域の注意報や警報のページに書かれているので、ぜひ確認してみてください。
西村)気象庁のホームページを活用して、自治体からの情報も受け取って、「避難スイッチ」をみんなで決めていきましょう。竹之内さんどうもありがとうございました。
竹之内)これからの大雨シーズンなので、きょうは、家族で「避難スイッチ」について考えていただければと思います。
