ゲスト:国際災害レスキューナース 辻直美さん
西村)大阪府茨木市のラジオネーム・備えあれば憂いなしさんから、こんなメッセージをいただきました。「去年10月に孫娘が産まれました。赤ん坊のための備蓄品は何をどれだけ準備しておいたら良いでしょうか」
きょうは、このメッセージにお答えします。ゲストは、国際災害レスキューナースの辻直美さんです。
辻)よろしくお願いいたします。
西村)赤ちゃんの防災は何から始めたら良いですか。
辻)赤ちゃんだけではないのですが、地震が起きたときには揺れで死なないこと、怪我をしないことが大切。そのためにできる対策は「床に物を置きっぱなしにしない」こと。
西村)我が家は今もおもちゃが散らかってそうです...。
辻)おもちゃが散らかっていたり、文房具があちこちに落ちていたりしたら、揺れたとき、踏んで足を怪我したら大変です。一日中片付けるのは無理なので、オススメは「寝る前リセット」。赤ちゃんや子どもがいておもちゃが多い家庭は、100均の蓋付きのボックスを買ってきて、その中に散らばっているおもちゃを全部入れてください。おもちゃだけではなく、テーブルの上に出しっぱなしになっている文房具も全部入れてください。入れたら蓋を閉めて寝ればOK。
西村)箱にポイポイと入れるだけだったら簡単ですね!
辻)10秒かからないです。ちょっと余裕があるなら、出かける前やご飯食べるときにも癖づけると、床に何もない状態ができます。
西村)理想的な状態ですね。
辻)赤ちゃんや子どもの目線と大人の目線は全然違う。危険なものが全く違います。落ちてきそうなものがないかを確認するのに一番いい方法は、スマホで動画を撮ること。子ども目線で動画や写真を撮るとよくわかります。家具や引き出しの固定も確実にやってください。山積みの絵本が落下して死亡した例もあるので、たくさん絵本がある場合は、落ちてこない場所に移動してください。
西村)本棚の上の隙間に押し込んでいます。
辻)中途半端に差し込むのではなく、入れるならギチギチに入れた方が良いです。落ちにくくなるので。子どもと一緒に寝ていると、お母さんお父さんは子どもを守ることができるけど、自分の体に落ちてきて怪我をしてしまったら、子どもを守れなくなります。地震のときの落ちる・倒れる・移動する・飛ぶという動きから守ってください。
西村)引き出しが飛び出て怪我をするということもありますね。
辻)引き出しロックや樹脂性の耐震版で家具を固定してください。突っ張り棒なども使って、家具が自分の方に倒れてこないようにしてください。
西村)大人だったら引き出しが飛び出しきても大丈夫と思うかもしれませんが...。
辻)子どもだったら顔に当たるかもしれません。撮った動画をテレビなどの大きな画面で見るとよくわかりますよ。
西村)自宅で避難生活をする場合、どんな備えが必要ですか。
辻)ライフラインがストップしたことを想定して、水や食料、災害トイレ1週間分を家族の人数分用意してください。赤ちゃんがいる場合は、お湯を使わずに飲める液体ミルクが便利です。缶や紙パックもあるので用意してください。
西村)水はどれぐらい備蓄したら良いですか。
辻)基本的に3L。1Lが生活用水で、2Lが飲食用。赤ちゃんそこまで飲まないけどうまく家族分に回しましょう。余裕があった方良いです。母乳で育てている場合は全然足りません。汗でほとんど出ていってしまうからです。液体ミルクがあると心の余裕になると思います。手持ちの哺乳瓶のアジャスターをつけて飲めるものもあります。環境が変わったり、ストレスがかかったりすると、いつもと同じ量の母乳が出るとは限らないからです。普段とは違うところで飲ませているから赤ちゃんがうまく飲んでくれないこともあり得ます。液体ミルクは常温保存もできるのでぜひ買っておきましょう。
西村)普段から液体ミルクも飲ませておくと備えになりそうですね。
辻)母乳のお母さんの場合は、1.5倍のカロリーが必要。充実した美味しい災害食も用意しておいてください。
西村)オススメはありますか。
辻)カレーがオススメ。ご当地カレーを買っておいたら良いと思います。近江牛とか神戸牛とかちょっと美味しいものを買っておく。災害食は塩分が多いので味が濃く、その分おしっこが出やすくなるので、水は多めに備蓄しておきましょう。オムツも必要。粉ミルク、お尻拭き、瓶詰めやレトルトパウチの離乳食も備蓄しておきましょう。
西村)ラジオネーム・備えあれば憂いなしさんのお孫さんは去年10月に生まれたとのことで、今ちょうど離乳食が始まる時期ですね。
辻)いざというときにレトルトの離乳食を食べられる子にもなるために、普段から手抜きでレトルト食品を使っておきましょう。その味に慣れておけば赤ちゃんにとって災害食もいつもの食事になります。意外と食べてくれますよ。
西村)普段の家庭での食事はもちろん、外出時に持っていくのも良いですね。瓶詰めやレトルトの離乳食もしっかりと備蓄をしておきましょう。
辻)子どもの場合、普段食べているお菓子、ジュースは排除しがち。大人は災害に対して、質素、倹約なんです。耐える、我慢する、最低限のもので...って。
西村)確かにそんなイメージがあります。
辻)エンタメがないと頑張れません。みんなが盛り上がるおかし、ゲーム、ジュース、常備できるパンなどを備蓄して、食べるエンタメを意識してみてください。長期保存できるものも普段から食べて慣れておきましょう。
西村)アクセサリーのおまけが付いたお菓子を娘のために防災袋に入れておこうかな?
辻)良いと思います。気持ちがアガるんだったら良いですよね!
西村)ほかに栄養面を考えて、備蓄しておくと良いものはありますか。
辻)わたしは、フリーズドライのスープや味噌汁を普段から買っています。楽に美味しい味噌汁が飲めるし、きちんと野菜も摂れます。無添加で1年間保存できる紙パックの野菜ジュースも常備しています。1日1本飲めば十分野菜が摂れます。
西村)それを毎日飲みつつ、ローリングストックしているのですね。
辻)いざとなったら温めてスープにもできるし、離乳食にも使えます。普段から食べているもので、災害食に転用できるものを探すのも楽しいですよ。いろいろ探してみてください。災害時に摂取しにくいミネラル、ビタミン、食物繊維が入った食品も探しておいてください。
西村)お気に入りを多めに購入して、ローリングストックをしましょう。家が被災して、避難所に行くときは何を持ち出したら良いですか。
辻)生活に必要なものは全部持っていかなければなりません。避難所は、床と屋根を貸してくれるだけ。避難所に行けば自分のものは全部用意されていると思うかもしれませんが、持っていった防災リュックで3日間を過ごすことになります。72時間分、生活に必要なものを持っていきます。水、食料、災害トイレ、灯り。灯りはヘッドライトやネックライトなど両手が空くものが良いです。場所によっては床に直接寝ないといけないので、トラベルピローも。体が冷えるかもしれないので、圧縮してバスタオルをいれておくのも良い。冬場に必ず使うのは、アルミのレスキューシート。体育館の床は冷たくてそのまま寝ると体温を奪われます。体が濡れている場合は、低体温症になってしまうので、アルミシートを使ってください。
西村)簡易トイレをするときや着替えの際の目隠しにもなりますね。
辻)旗のように振って、SOSするとヘリからはよく見えます。アルミシートは使い勝手が良いです。
西村)コンパクトにできますしね。
辻)5センチ角ぐらい。軽いし、カバンの中にいつも入れておいても邪魔になりません。
西村)どこで買ったら良いですか。
辻)100均に売っています。100均になかったらホームセンターへ。お値段で折り合いがつくものを買って、3回使って実証実験をして決めます。
西村)3回も実証実験をするんですか!?
辻)1回目はうまくいきません。でも失敗ではありません。2回目も失敗するかも知れない。でも3回目は自分のやり方でできると思います。その上で、コスパ、心地良さ、使いたいと思うかで決めます。買っただけではダメなんです。
西村)ドキッとしている人が多いのでは?わたしもそうです。
辻)防災グッズを買って終わりの人が多いんです。普段使っていないものは、災害時の絶対使えない。必ず3回使ってください。プチプラ価格ならチャレンジしやすいですよね。1000~2000円なら躊躇するけど100均で買えるものならすぐに買いに行くことができます。
西村)いろいろと入れてしまいそうになります。
辻)わたしは、食料、排泄、睡眠、医療、衛生、情報、エンタメとカテゴリーに分けて備えています。赤ちゃんや子どもは、移動するときに歩いてくれるとは限りません。ベビーカーは道がデコボコなって使えないことが多いです。抱っこ紐は絶対必要。腹帯でも代用できますが、わたしは、スリングがイチオシです。手軽で授乳ケープにもブランケットにもなる。汎用性があるので荷物が一つでも減ると思います。金具を取ったら長い布になるので、いろいろ使えると思います。
西村)ベビーカーがあった方が、ベビーベッド代わりに寝かせられるし...と思うお母さんもいるかも...。
辻)阪神・淡路大震災のときに宝塚に友人が住んでいて、助けに行ったとき、途中まで原付バイクで行ったのですが、すぐパンクして。そこから歩きましたが、道に亀裂が入り、隆起していて、あちらこちらに自転車などが捨ててありました。車も当然使えない。ベビーカーで通ることは難しいと思います。お母さんが落ち着かないと子どもって泣き止まないんです。どれだけ正しい抱っこをしてもお母さんの不安は赤ちゃんに伝わる。そんなときは、深呼吸をすること。深呼吸というと、まず吸うと思っているかもしれませんが、体がガチガチだと空気が入らないから浅い呼吸になる。まずは吐く。必ず吐いてから吸う深呼吸を3回してください。そのときに右手を胸に手を当てて、「大丈夫」と言ってください。
西村)言葉の魔法ですね!
辻)これで落ち着くので普段から旦那にイラッとしたときもこれをやってみて(笑)。子どもが水をこぼしたときも。成功体験を持っておくと、いざというときに深呼吸しただけで落ち着くからやってみてください。
西村)リスナーに伝えたい事はありますか。
辻)本当にいつ何が起こるかわかりません。30年間に数%の確率で地震が起こるということは、30年先に起きそうと思いますが。そんなことはない。今この瞬間に起きるかもしれない。
西村)最近もいろんなところで地震が起こっています。
辻)そんなときに安心して生活できるためには準備が必要。難しいことはしなくていい。100均に行って、蓋付きの箱を買ってきて、中にものを入れるだけでいい。「災害は怖いけど、防災はおもしろい」そう思ってやってみてください!
